今日の産経ニュースその2(2023年5/16、17日分)(副題:ジャニー喜多川の性加害)

【主張】ジャニーズの謝罪 少年性被害の実態解明を - 産経ニュース

 性被害の実態については「当事者であるジャニー喜多川に確認できない中で、個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではない」として事実認定を拒んだ。
 これでは幕引きを図るためだけの、形ばかりの謝罪と受け止められても仕方あるまい。

 安倍と統一協会の癒着については「安倍氏の死亡で確認できない(自民)」という「実態解明拒否」を黙認しながら「ジャニーズ事務所の同様の釈明(ジャニー氏が死亡したから確認できない)」は「被害者など関係者への調査である程度分かるのでは」と批判する「いつもながらダブスタ」「安倍応援団」の産経です(そのジャニーズ非難の理屈なら「安倍氏の死亡で確認できない」も勿論成立しない)。
 ジャニー死亡直後ではなく、また「世論の批判に渋々」とはいえ、まだ「ジャニー死後」、彼の批判を始めたジャニーズ事務所の方が「未だに安倍批判がろくにできない自民党や産経」よりずっとマシです。

 近年は、映画・演劇界でのセクハラやスポーツ界のパワハラなどで深刻な告発が相次いでいる。
 芸能界やスポーツ界といった、ある種の閉鎖社会における旧態依然を許容してきた悪弊は、もはや通用しないと知るべきだ。

 セクハラやパワハラは勿論「芸能界やスポーツ界」限定ではない(政財官界でもある)ので認識としておかしいでしょう。
 なお、映画・演劇界でのセクハラやスポーツ界のパワハラについてはググってヒットした以下の「比較的最近の記事」を紹介しておきます。
劇作家・谷賢一さんとの契約解除 セクハラ提訴で所属事務所 - 産経ニュース2022.12.24
JFL鈴鹿 三浦泰年監督パワハラ行為で処分 4試合ベンチ入り停止|NHKスポーツ2023.3.3
G大阪、退任の森下仁志ユース監督の威圧的言動を「パワハラ認定」選手スタッフに複数回 : スポーツ報知2023.3.31

 ジャニー氏による少年に対する性加害については、これを報じた週刊文春ジャニーズ事務所名誉毀損で訴えた民事裁判で、東京高裁が平成15年、その事実を認定していた。
 それにもかかわらず、同氏が令和元年に死去した際には、産経新聞を含むほとんどのメディアが、「男性アイドルの名伯楽」などと礼賛報道に終始した。
 「故人への配慮」といった言い訳は通るまい。

 産経もついに「それにもかかわらず、同氏が令和元年に死去した際には、産経新聞を含むほとんどのメディアが、「男性アイドルの名伯楽」などと礼賛報道に終始した。「故人への配慮」といった言い訳は通るまい。」と一定の反省を表明しました(「産経だけではない」という言い訳付きですが)。
 それにしても産経には

「性被害」慰安婦については「金をもらってた」といって日本軍を擁護するんだから「(被害告発者は)当時は見返りにデビューさせてもらってた」と言ってジャニーを擁護しろよ。ダブスタは良くないぞ、産経(棒読み)

と皮肉を言いたくなります。


【産経抄】5月16日 - 産経ニュース

 高校に入学して間もない頃、近所のおばさんが本人には内緒で映画*1のオーディションに応募した。数百人の若者とともに面接を終えて会場を出ると、男の人に声をかけられた。差し出された名刺には、「ジャニーズ事務所社長、ジャニー喜多川」とあった。
▼2週間後に事務所を訪ねるといきなりNHKに連れていかれた。すでに翌年の大河ドラマへの出演*2が決まっていた。その日のうちに北海道の旭川へ飛び、コンサートの舞台に立った。歌手の郷ひろみさんが小紙のインタビューで、デビューの経緯を語っている。
▼郷さんのスター性を最初から見抜いていた。ジャニー氏のプロデューサーとしての辣腕ぶりを物語るエピソードである。4年前に87歳で亡くなってからも、その薫陶を受けた男性アイドルをテレビで見かけない日はない。

【1】郷は1971年にジャニーズに入所するが、その後1975年にジャニーズを退所し、わずか4年の在籍で、今は別の芸能事務所(バーニングプロ)にいるため、当然、ジャニーズ退所後の活躍の方が注目される
【2】ジャニーズについては、「1980年代のたのきんトリオ*3、シブがき隊*4、少年隊*5光GENJI*6」「1990年代以降のSMAP*7TOKIO*8、V6*9KinKi Kids*10、嵐*11」等のイメージが強いことで「郷=ジャニーズ」と言うイメージはあまりないかと思いますが、「デビューはジャニーズ」だったわけです。
 なお、ジャニーの性加害の問題が表面化した今となっては、郷のジャニーズ退所も「性加害」問題(郷が被害に遭いそうになった)があったのかもしれません。仮にそうだとして、スカウトされた恩義があるとは言え、ジャニーズが「大手として躍進」するのは「たのきんトリオ」などの1980年代なので郷もジャニーズを去ることにそれほどの躊躇はなかったでしょう。
 勿論「たとえそうだとしても」、もはや郷がそれについて語ることはなさそうです。

▼ただし「芸能界の帝王」として君臨した人物には、裏の顔があった。
 事務所の未成年のタレントに対する性加害問題である。ジャニー氏の姪*12にあたるジャニーズ事務所藤島ジュリー景子社長が公式サイトで謝罪し、再発防止に取り組む姿勢を強調した。

 ジャニー死後、ここまで事態が激変するとは「(藤島ジュリーなど後継者に比べ)ジャニーがやり手だった」とともに「ジャニーの個人的犯行」ということでさすがに「死後まで、かばいきれない」ということでしょう。

 実はジャニー氏によるわいせつ行為の疑惑は昭和40年代から持ち上がっていた週刊文春は20年前からキャンペーン報道を続けてきた。
 ジュリー氏は叔父の性加害の事実を認定したわけではないから、実態の解明が必要である。一方で、事務所の閉鎖体質を「異常」と表現していた。この問題に対して小紙を含めた新聞、テレビは沈黙してきた。その「異常」にも厳しい目が向けられている。

 ジャニー氏によるわいせつ行為の疑惑は昭和40年代から持ち上がっていたですが、ジャニー喜多川 - Wikipediaによれば、ジャニー喜多川が最初のグループ「ジャニーズ」をデビューさせたのが1962年(昭和37年、なお1967年(昭和42年)に解散)、産経が取り上げた郷ひろみのデビューが1971年(昭和46年)なので「え、そうなの?(ジャニーズ事務所結成当初から被害があったの?)」とびっくりです。
 確かに

ジャニー喜多川 - Wikipedia参照
 ジャニーが事務所に所属する男性タレントに対して猥褻な行為を行っているという噂は1960年代からあり、一部の雑誌で報じられていた。
◆週刊サンケイ*13(1965年(昭和40年)3月29日号、産経新聞出版局)「『ジャニーズ売り出し』のかげに」
◆女性自身(1967年(昭和42年)9月25日号、光文社)「ジャニーズをめぐる『同性愛』裁判、東京地裁法廷で暴露された4人のプライバシー*14

という記載がありますね。
 それはともかく産経もついに「小紙を含めた新聞、テレビは沈黙してきた。その「異常」にも厳しい目が向けられている。」と一定の反省を表明しました(「産経だけではない」という言い訳付きですが)。

*1:郷ひろみ - Wikipediaによれば「潮騒」(三島由紀夫原作、1971年公開、東宝

*2:郷ひろみ - Wikipediaによれば、NHK大河ドラマ『新・平家物語』(1972年)に平清盛(少年期は内田喜郎(1953年生まれ(なお、郷は1955年生まれ)で当時ジャニーズ事務所所属)、大人時代は仲代達矢)の弟・経盛役(但し、少年期のみ、大人時代は古谷一行)でデビュー。

*3:当時のメンバーは全てジャニーズを退所

*4:当時のメンバーは全てジャニーズを退所

*5:元メンバーのうち東山紀之(1966年生まれ)は今もジャニーズに所属。ジャニーズ所属タレントでは一番の年長者とされる。

*6:元メンバーのうち内海光司(1968年生まれ)、佐藤アツヒロ(1973年生まれ)は今もジャニーズに所属。

*7:元メンバーのうち木村拓哉(1972年生まれ)は今もジャニーズに所属

*8:現在はジャニーズ事務所関連会社の株式会社TOKIO(社長はTOKIOリーダーの城島茂(1970年生まれ))所属

*9:元メンバーのうち坂本昌行(1971年生まれ)、長野博(1972年生まれ)、井ノ原快彦(1976年生まれ)、岡田准一(1980年生まれ)は今もジャニーズに所属

*10:今もジャニーズに所属

*11:少なくとも建前では解散ではなく無期限休止

*12:ジャニー社長体制で副社長を務め、ジャニー死後は会長、名誉会長を務めた「メリー喜多川(ジャニーの姉)」の娘

*13:1988年に『SPA!』にリニューアル

*14:ジャニーズメンバーは真家ひろみ(1946~2000年:1982年からタクシー運転手に転職し、その模様がフジテレビ『ザ・ノンフィクション』や、猪瀬直樹の著書『二度目の仕事:日本凡人伝』 (新潮文庫)で取り上げられた)、飯野おさみ(1946年生まれ:1972年に「劇団四季」に入団しミュージカル俳優に転向)、中谷良(1947年生まれ)、あおい輝彦(1948年生まれ)の4人。なお、中谷は後に著書『ジャニーズの逆襲』(1989年、データハウス)でジャニーの性加害を暴露したとのこと(ジャニーズ (グループ) - Wikipedia参照)