今日の中国ニュース(2023年9月25日分)

【主張】国連安保理 台湾有事でも機能困難だ - 産経ニュース
 確かに「中国が台湾に侵攻した場合」、今のロシアのように安保理で拒否権を発動するでしょう。
 但し「独立宣言しない限り侵攻しない」「原則は平和統一」と中国が表明している以上「侵攻の可能性は低い」。 
 独立宣言もないのに侵攻したら嘘つきになるし、その場合、「現在ロシアに対して行われてるような欧米の経済制裁も必至」だからです。
 また「ロシアが米国の軍事支援を受けるウクライナに苦戦してること」を考えれば「中国が台湾侵攻した」として米国の軍事支援を長年受けている台湾に「当然に勝てるとは限らない」。
 そんなリスクを犯してまで独立宣言もないのに「大義名分のない戦争(独立宣言があった場合は『事前警告していた』という大義名分が一応ある)」をするメリットは中国にはない。中国政府が合理的に物を考えれば「独立宣言無しでの侵攻はあり得ない」しその程度の合理性は中国にあると俺は見ます。
 一方で「独立宣言したら侵攻もあり得る」という中国の表明を無視して「侵攻できる物ならしてみろ」と台湾が独立宣言する可能性も低いでしょう。本当に侵攻されたら被害は甚大です。現状でも「事実上独立状態」だからそんな危険を犯す必要もない。台湾政府が合理的に物を考えれば「独立宣言強行はあり得ない」しその程度の合理性は台湾にあると俺は見ます。
 なお、「国連加盟前、欧米主要国家(米英仏独等)との国交樹立前(1960年代)」「経済力が台湾に劣ってる頃(1980年代まで?)」なら「台湾独立なんか認めたらこちら(中国)が国際社会での地位が落ちぶれてしまう」という危機感があったでしょうが、「経済力が台湾を大幅に上回る今」、内心「何が何でも統一(独立阻止)」という思いが中国政府に本当にあるかどうか。
 「毛沢東、鄧小平達レジェンドが統一を口にしていた以上、今更独立容認なんて言えない」という面がありはしないか。

 朝鮮戦争では安保理決議により朝鮮国連軍が創設された。北朝鮮を支援したソ連は、安保理を欠席するという「失策」をおかしたため、拒否権を行使できなかった。

 これが果たして失策だったのかは議論の余地があるのではないか。
 不破氏は

赤旗『スターリン秘史 巨悪の成立と展開』第6巻を語る(下)/スターリン、朝鮮戦争の真相を語る2016.4.5
不破
 1月13日には、(ボーガス注:台湾に国連代表権を認め)中国の国連代表権を認めないことへの抗議を理由にして、国連安全保障理事会のボイコットを始めます。
 問題になるのは国連安保理のボイコットです。抗議の欠席なら短期間で終わるのが普通ですが、ソ連はボイコットを朝鮮戦争開始の時期まで続けました。ソ連が欠席していたために、朝鮮戦争が始まった時、米軍を「国連軍」として派遣する決議などがアメリカの思うままに安保理を通過しました。自分たちに不利になることがわかっていて、なぜそんな態度をとったのか。ずっと謎となっていた問題でした。
 1950年8月、この疑問をスターリンに手紙で直接ただしたのがチェコスロバキア大統領のゴトワルト*1でした。
 スターリンは8月27日付の手紙でそれに答え、ボイコットは、「米国政府にフリーハンドを与え…さらなる愚行をおこなう機会を提供」するため意識的に取った行動だと説明し、朝鮮戦争への参加によって「米国が現在ヨーロッパから極東にそらされていることは明らか」、そのことは「国際的なパワーバランスからいって…われわれに利益を与えている」、「米国はこの戦いで疲弊してしまうだろう」と書いているのです。
 スターリンは、アメリカを朝鮮戦争に引き出すことを狙ったが、ソ連自身は戦いたくないわけですよ。そのための「第二戦線」ですからね。代わりに中国に戦わせて米軍をアジアに引きつけさせたいのです。

として「東欧への米国の介入」を阻止するため「あえて国連軍成立を容認した」として「スターリンの計略」と見ています。

 今も朝鮮国連軍は日韓両国に存在し、朝鮮半島有事の際には機能できる。

 産経は第二次朝鮮戦争が起こることに何の躊躇もないのかもしれませんが勿論そんなことはあってはならないことです。まあ米国政府に常識があれば*2そんなことはあり得ませんが。

 既存の常任理事国の同意なしに拒否権廃止はできない。中露両国が廃止に応ずることはあるまい。

 中露だけをやり玉に挙げる産経ですが「米英仏」も応じないでしょうし、彼らの拒否権発動が「常に正しい」わけでもない。

*1:1896~1953年。チェコスロバキア首相、大統領、チェコスロバキア共産党書記長を歴任。「米国のスパイ」の濡れ衣で、スラーンスキー元チェコスロバキア共産党書記長、クレメンティス元外相(いずれも死刑)、グスターフ・フサーク(終身刑にされるがゴトワルト死後復権チェコスロバキア共産党第一書記、大統領を歴任)を粛清したため悪名高い(クレメント・ゴットワルト - Wikipedia参照)

*2:今後、朝鮮半島で戦争があるとして可能性があるのは「米国の北朝鮮侵攻」だけでしょう。