黒井文太郎に突っ込む(2023年12月15日分)

黒井文太郎
 ロシア側の和平案とは、実質的にウクライナ降伏(単にNATO非加盟確約だけでなく、ウクライナ軍の解体と傀儡政権樹立を狙ったもの)が前提なので、和平案にあらず

 「ロシアの目指す和平」は「現状の支配地域(開戦後、支配しているドネツク州、ルガンスク州ザポリージャ州、ヘルソン州の4州)維持」「ウクライナNATOEUの非加盟」「プーチンに対するICCの逮捕状撤回」等は狙ってるでしょうが、さすがにもはや実現困難な「ウクライナ軍の解体と傀儡政権樹立」は狙ってないでしょうし、そんなことは黒井も分かった上での「デマの流布」でしょう。
 「領土を割譲」「NATO非加盟」で「いいのか?」等ならまだしも「傀儡政権ができていいのか?」というデマは止めたらどうなのか(呆)。
 これはやはり「反露」黒井が1)「ウクライナが領土割譲する形での終戦(停戦)」を望んでないこと、2)但し、「領土割譲していいのか?」と言っても領土割譲・和平派の意見が変わらず「領土割譲で終戦(停戦)の可能性が否定できない」との認識から「領土割譲しても終戦(停戦)しないことは明白」と主張しているのでしょう。つまり黒井の主張は客観的な事実認識に基づいていると言うよりは「領土割譲・和平派」相手には「領土割譲しても終戦(停戦)しないことは明白」と言わないと説得できないという判断に基づく「党利党略による結論ありき」と見るべきでしょう。

黒井文太郎
 プーチン*1習近平*2=革命防衛隊*3(イラン)=金正恩*4=アサド*5=ルカシェンコ*6の「悪の枢軸*7」陣営が勝利してそれに対峙する世界を考えたら、ウクライナ支援の一択

 ウクライナ支援という結論*8の是非はともかく「悪の枢軸」とは事実に反する虚構にすぎません。「中国等」は国益判断で、ロシアと個別に付き合ってるだけで「NATO(米国陣営)」や「過去のワルシャワ条約機構ソ連陣営)」のような陣営を構成してるわけではない。
 そして「ウクライナ戦争でロシアが勝利したら、中国が台湾に侵攻する」等といった関係性はどこにもない。
 そもそも「勝利」といっても、もはやあり得る「ロシアの勝利」は「現状の固定」であってさすがに「首都キーウ陥落、ゼレンスキー政権崩壊、ロシアがウクライナ全土支配」ではない。その程度で「中国が台湾に侵攻する」わけもない。
 むしろこんなことを黒井が言えば「そんなデマを飛ばさないとウクライナ支援が正当化できないのか?」「早期終戦(停戦)論者を例外なく『悪の枢軸』側とレッテルを貼りたいのか?」と疑われても文句は言えないでしょう(実際、黒井はそうなのかもしれませんが)。

黒井文太郎
◆鶴岡路人*9
 何度でも言いますが、ウクライナが領土の一部を諦めても戦争は終わりません。プーチンはウに関する目標が変わっていないと明言。非ナチ化、非軍事化、中立化を求め続けるとのこと。

 「反露」黒井と鶴岡が1)「ウクライナが領土割譲する形での終戦(停戦)」を望んでないこと、2)但し、「領土割譲していいのか?」と言っても領土割譲・和平派の意見が変わらず「領土割譲で終戦(停戦)の可能性が否定できない」との認識から「領土割譲しても終戦(停戦)しないことは明白(後述するようにそのように見なせる根拠はないと思いますが)」と主張していることが窺えます。つまり黒井、鶴岡の主張は客観的な事実認識に基づいていると言うよりは「領土割譲・和平派」相手には「領土割譲しても終戦(停戦)しないことは明白」と言わないと説得できないという判断に基づく「党利党略による結論ありき」と見るべきでしょう。
 なお、プーチンの思惑がどうかは部外者には分かりませんが「戦争目的は変わってない」など「態度がでかい」から「終戦(停戦)の考えがない→できない」とは限りません。
 プーチンとしては「ウクライナが領土割譲を認めれば終戦(停戦)してもいい」など「本音では終戦(停戦)したい」が「終戦(停戦)条件をできる限りロシアに有利にするため(この場合、交渉が始まると条件を下げる可能性がある)」あるいは「終戦(停戦)するなというロシア国内のタカ派をなだめるため」に交渉が始まってない段階や、交渉初期では「妥協意思ゼロ、戦争を何処までも継続する覚悟がある」とふかしてる可能性があるからです。勿論、黒井らが言うように「本心でプーチンが妥協意思ゼロ」の可能性もありますがそれは表向きの発言だけでは分かりません。ロシアとウクライナのような敵対関係なら特にそうですが、交渉というのは「お互いが包み隠さずに本心を言って、それでまとまる」というようなきれい事では必ずしもない。
 勿論「仮にプーチンがハッタリをかましてる(内心ではロシアに有利な条件なら終戦(停戦)してもいいと思ってる)としても、そんな企みのある奴と交渉したら、終戦(停戦)がロシア有利になりかねない」のは事実ですが、一方で2022年2月の開戦から1年以上が経過し「終わりの見えない戦争」をこのまま続けていいのかという問題もある。
 正直、問題を真面目に考えれば「交渉が上手くいく保証はない」とはいえ「ここまで簡単に抗戦を主張できない」でしょう。
 黒井らは「ウクライナ戦争版の救う会(目的はプーチン打倒)」としか言い様がない。救う会もどう見ても拉致解決ではなく「北朝鮮打倒」が目的でしょうが。

*1:ロシア大統領

*2:中国国家主席中国共産党総書記)

*3:ここだけ他と違い「最高指導者ハメネイ」「ライシ大統領」ではない点が謎です。革命防衛隊が暴走し、それにハメネイやライシが引きずられてるとでも言いたいのか?

*4:北朝鮮国務委員長(朝鮮労働党総書記)

*5:シリア大統領

*6:ベラルーシ大統領

*7:ロシアや中国と歴史的につながりのある共産国キューバ」「ベトナム」「ラオス」が入ってないのは1)除外理由はともかく「悪の枢軸」陣営から除外してるのか、2)単に書かなかっただけで「悪の枢軸」陣営扱いなのかは不明です。

*8:当然ながら「ウクライナ支援支持」は黒井のような「悪の枢軸」論支持を意味しません。

*9:慶應義塾大学教授。著書『EU離脱』(2020年、ちくま新書)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(2023年、新潮選書)等