■赤旗『沖縄県議会の独伊調査、渡久地修 共産党県議団長 総務企画委員長に聞く(上)、伊、法令で低空飛行規制』
「英仏などではなく」、ドイツ、イタリア調査なのは「日本は敗戦国だから仕方がない」などという暴論がウヨ方面で出されるからですね。
「日本同様の敗戦国であるドイツ、イタリア」と比べても日本は酷いわけで「敗戦国だから」なんてのは言い訳になりません。
まあウヨ連中は今度は「ヨーロッパ人(ドイツ、イタリア)よりアジア人が酷い扱いなのは仕方がない。日本は他のアジア諸国(韓国やフィリピン?*1)よりはましだ」と言い出すんでしょうか?
つうかこういうときに「敗戦国だから仕方がない」「アジア人だから(以下略)」などおよそ「自称愛国者とは思えない腰抜けぶり」ですが。
イタリアでは、元NATO(北大西洋条約機構)第5戦術空軍司令官のレオナルド・トリカリコ氏、ランベルト・ディーニ*2元首相と意見交換しました。
1998年に米海兵隊機が低空飛行でロープウエーのケーブルを切断し、ゴンドラに乗っていた20人が死亡した事件では、NATO軍地位協定で「公務中」の事故について第1次裁判権は米側にあり、米国の軍法会議でパイロットらは無罪となりました。トリカリコ氏は「なぜ無罪になるのか」と強く抗議し、米国に「これはやりとりではなく強制だ」と迫って低空飛行のルールを変える法令をつくったことを紹介。「低空飛行がなくなり、市民はいま安心して生活しています」と話しました。
変わった事は大変いいことですが、1998年時点ではイタリアの扱いも相当に酷かったわけです。
【ここから産経です】
【正論】皇位の安定的継承は男系が前提 国士舘大学特任教授・日本大学名誉教授・百地章 - 産経ニュース
「安定的継承」というなら「皇位継承者が多いほど安定する」わけでむしろ女帝容認でしょう。そして日本の歴史にも数が少ないとはいえ女帝はいるし、海外にも「英国のエリザベス2世女王」など女帝はいるわけです。ここまで女帝に反対する理由が本当に意味不明です。
憲法の条文だけ見て「世襲」でありさえすれば、男系でも女系でも構わないとする意見もないわけではない。しかし、政府見解は憲法制定以来、今日まで「男系」ないし「男系重視」で一貫しており、これを無視することはできない。
憲法制定時の内閣法制局「想定問答」は「皇統は男系により統一することが適当であ〔り〕、少なくとも、女系ということは皇位の世襲の観念の中には含まれていない」というものであった。制憲議会でも「世襲」の意味について、金森徳次郎*3憲法担当大臣は「本質的には現行の憲法〔明治憲法〕と異なるところはない」と答えている(昭和21年)。
その後も、「古来の日本の国民の一つの総意と申しますか、国民の信念と申しますか、つまり男系相続ということで実は一貫して参っておる」(林修三内閣法制局長官、34年)「男系をもって貫くということが、世襲の精神に合うものではないか」(宇佐美毅宮内庁長官、39年)「男系の男子が皇位を継承されるというのが、わが国古来の伝統であって、その伝統を守るということで現在のような規定ができた」(角田礼次郎*4内閣法制局長官、58年)といった答弁が繰り返されてきた。
さらに平成に入ってからも、「この規定〔憲法第2条〕は皇統に属する男系の男子が皇位を継承するという伝統を背景として決定された」(加藤紘一*5内閣官房長官、平成4年)「政府としては、男系継承が古来例外なく維持されてきたことを認識し、そのことの重みを受け止めつつ、皇位継承制度のあり方を検討すべき」(安倍晋三*6内閣官房長官、18年)「古来、ずっと長くそういう形〔男系〕で続いてきたことの歴史的な重みというものをしっかりと受けとめ〔る〕」(野田佳彦*7首相、24年)と、男系重視の答弁がなされている。
「憲法上は男系か女系かなど定められてない(皇室典範に委ねられてる)」「あえて言えば男女同権の観点からは女帝が容認されるべきではないか*8」というのが通説的見解でしょう。金森大臣以下、野田総理に至るまで政府の見解は学会通説には支持されておらず、「男系にこだわる日本の保守層」に忖度したに過ぎません。
しかもその政府にしても「伝統的には皇室の世襲は男系世襲だったので、政府としては女系世襲は考えてない。皇室典範に女系世襲を定める気はない」とするだけで「女系だと違憲だ」としているわけではない。ただし、百地*9らウヨだとたぶん「皇室典範を改正し女帝を容認したところで憲法制定者の意思に反し違憲*10」と公言し、皇室典範に女帝が定められても「違憲訴訟を起こす*11」と言い出すかもしれません。
憲法学界でも有力な学者が「男系」説であり、美濃部達吉*12博士は「皇統は専ら男系に依〔る〕」(『日本国憲法原論』)、宮沢俊義*13東大教授でさえ*14「わが国では、皇族の身分をもたない者は皇位継承の資格はないが、皇族の身分をもつためには、かならず『男系』により皇統に属することが必要」(『憲法(改訂版)』昭和44年)と述べている。また、小嶋和司*15東北大教授は「男系制を正当としよう」(「『女帝』論議」)、佐藤幸治*16京大教授も「皇統は男系性を要求される」(『憲法(第3版)』)とされている。
率直に言って「百地の指摘が事実だとしても」こういう説は少数説でしょう。
なお、産経や百地だと「皇統は専ら男系に依る(美濃部氏)」「皇族の身分をもつためには、かならず『男系』により皇統に属することが必要(宮沢氏)」「男系性を要求される(佐藤氏)」とは「現状ではそれが必要とされている、要求されている」という単なる「現在の事実の指摘に過ぎない文章」を「それを是としている価値判断」として歪曲引用している疑いが否定できません。何せここに名前が出てくるメンツの内、佐藤氏は、女帝を容認する答申を出した「小泉*17内閣における皇室典範に関する有識者会議」のメンバーの一人ですから(ちなみに法律家としては佐藤氏の他に園部逸夫氏*18(元最高裁判事)が有識者会議メンバー)。佐藤氏が有識者会議で「女帝反対論を述べた」なんて報道もなかったかと思います。まあ、さすがに「男系制を正当としよう(小嶋氏)」とは「価値判断」でしょうが。
ちなみにウィキペディア「小嶋和司」によれば
小嶋と芦部信喜*19(東大教授)の意見が真っ二つに分かれたのは、1985年の中曽根康弘*20総理大臣時代に藤波孝生*21官房長官の私的諮問懇談会「閣僚の靖国神社参拝問題に関する懇談会」(いわゆる靖国態)のメンバーとして二人が討議した靖国神社公式参拝問題であった(参考文献:高見勝利*22『芦部憲法学を読む』(2004年、有斐閣)、「〔座談会〕芦部信喜先生の人間と学問」ジュリスト№169)。
だそうです。小生は「法学部卒なのに」正直、不勉強なので小嶋氏の学説についてよく知らない*23のですが、「芦部氏が中曽根参拝について違憲論だったこと(まあそれが通説ですが)」位はさすがに知っています。ということは、「芦部氏と意見が対立した」という小嶋氏はおそらく「中曽根参拝合憲論だった」のでしょう。つまりは小嶋氏は「百地や西修」のような右寄りの学者です。そんな人間・小嶋氏が「女帝は違憲だ」といっても「苦笑いするだけ」の話でしょう。まともに取り上げる価値もない。
しかし産経も今回は「一応、憲法学者を持ち出すことが出来て良かった」ですね。
産経は持ち出せる憲法学者がいないと、憲法学者でも何でもない人間を平気で持ち出しますから。あるいは憲法学者でも「百地章(日大)」「西修*24(駒沢大)」といった札付きのウヨ連中を持ち出すわけです。
それはともかく、こういうことを言い出した産経や百地は「皇室典範が改正されたら違憲訴訟を起こす」覚悟を決めてるんでしょうか?
麻生太郎氏「子供産まない方が問題」と発言、撤回 - 産経ニュース
正直、麻生*25の暴言には「トランプやベルルスコーニ、石原慎太郎*26や橋下*27の暴言同様」に「またか(うんざり)」という感想ですが、やはり「きちんと批判し続けていく必要がある」のでしょう。
*1:いや実際、日本と比べてどうなのか知りませんが。
*2:首相、外相など歴任
*5:中曽根内閣防衛庁長官、宮沢内閣官房長官、自民党政調会長(河野総裁時代)、幹事長(橋本総裁時代)を歴任
*6:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相
*7:鳩山内閣財務副大臣、菅内閣財務相、首相、民進党幹事長(蓮舫代表時代)を歴任
*8:ただし「身分制度(皇族)自体が憲法の法の下の平等の例外」なので「女帝を認めなくても男女平等違反で違憲とまでは言えない」とするのが通説かと思います。
*9:日本会議常任理事・政策委員、神道政治連盟政策委員、「21世紀の憲法と日本」有識者懇談会事務局長、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」幹事長、国家基本問題研究所理事などを歴任したプロ右翼活動家。著書『政教分離とは何か』(1997年、成文堂選書)、『靖国と憲法』(2003年、成文堂選書)、『憲法の常識 常識の憲法』(2005年、文春新書)、『憲法と日本の再生』(2009年、成文堂選書)など
*10:小生も法学部卒とは言え、この件には全く無知ですが百地曰く「そういう違憲説も一部にはある」ようです。「小泉内閣における皇室典範に関する有識者会議」メンバーを務めた園部逸夫氏(元最高裁判事)が女帝容認であることでも分かる様に、到底通説とは言えませんが。
*11:ただしそういう訴訟が認められるか分かりませんが。「当事者(皇族)じゃないから、訴える資格がなく違法無効な訴訟」ということで終わるかもしれません。
*14:「でさえ」て(苦笑)。宮沢に対する百地や産経の敵意を伺うことが出来ます。
*15:著書『日本財政制度の比較法史的研究』(1996年、信山社出版)
*16:著書『日本国憲法と「法の支配」』(2002年、有斐閣)、『憲法とその“物語”性』(2003年、有斐閣)、『現代国家と人権』(2008年、有斐閣)、『世界史の中の日本国憲法』、『立憲主義について』(以上、2015年、左右社)など
*17:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相などを経て首相
*18:著書『最高裁判所十年』(2001年、有斐閣)、『皇室制度を考える』(2007年、有斐閣)など
*19:著書『憲法判例を読む』(1987年、岩波セミナーブックス)、『宗教・人権・憲法学』(1999年、有斐閣)など
*20:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相、自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相
*21:大平内閣労働相、中曽根内閣官房長官、自民党国対委員長(中曽根総裁時代)など歴任
*22:北海道大学名誉教授、上智大学名誉教授。著書『宮沢俊義の憲法学史的研究』(2000年、有斐閣)、『現代日本の議会政と憲法』(2008年、岩波書店)、『政治の混迷と憲法:政権交代を読む』(2012年、岩波書店)、『憲法改正とは何だろうか』(2017年、岩波新書)など
*23:つうか正直に言えば芦部説についても不勉強ですが。
*24:著書『日本国憲法を考える』(1999年、文春新書)、『日本国憲法はこうして生まれた』(2000年、中公文庫)、『憲法改正の論点』(2013年、文春新書)など。なお、ウィキペディア「西修」を信じるならば意外なことに女帝容認の立場だそうです。
*25:橋本経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)、首相など歴任。現在、第二~第四次安倍内閣副総理・財務相