今日のロシアニュース(2021年12/23日分)

<視点>変貌したロシア ソ連崩壊30年 権威主義は必然か 外報部・常盤伸:東京新聞 TOKYO Web
 大日本帝国が崩壊しても「昭和天皇」「岸信介*1」「賀屋興宣*2」「重光葵*3」など、「戦前の政治指導者たち(まあ昭和天皇国家元首から象徴に転落しましたが)」が生き残り続けたこと、その結果「戦前の払拭(靖国問題など)が不十分であること」を我々は知っています。
 その意味で「ロシアの現状」は全く不思議ではありません。日本であれ、ロシアであれ、体制が崩壊しても「旧体制の指導者たち」は生き残ろうとするのであって、そうそう簡単に払拭できるものではない。そうした「他山の石」的な認識が東京新聞記事に見られないことは「何だかなあ」ですね。


ロシア、北方領土と千島列島に免税特区 22年初めに法改正案を採択 | 毎日新聞
 有料記事なので途中までしか読めませんが一応紹介しておきます。


ソ連崩壊、6割が「残念」 10年で11ポイント増―ロシア世論調査:時事ドットコム
 「白河の清きに魚の住みかねて元の濁りの田沼恋しき(松平定信の改革に期待したが、前任者の田沼意次の方がましな気がしてきた)」という川柳を連想させる話です。
 「経済的に豊かとはいえず、独裁的なプーチン体制で自由とも民主的ともいえず、ソ連時代に比べれば『ソ連ワルシャワ条約機構コメコン(経済相互援助会議)の崩壊』で国際的影響力も落ちたこと」でこんなことになるのなら「ソ連を崩壊させずに(そして可能ならワルシャワ条約機構コメコンも残して)ソ連の大国としての地位を保った上で、経済的豊かさや自由、民主主義が追求できなかったか」と言う話でしょうね。さすがにソ連体制をそのまま美化してるとは思いません。


ロシア、LNGに賭ける 北極海航路で8割アジアへ : 日本経済新聞
 賭けると言うよりは、ソ連崩壊後、工業製品の競争力が大幅に失われ、それを打開できず、当面「LNGや石油など天然資源に頼らざるを得ない」ということでしょう(まあ、工業大国・米国もシェールオイル開発に力を入れているので、ソ連が工業大国でも天然資源開発自体はしたのでしょうが)。「過去の工業大国・ソ連(そして中国、韓国など現在、工業大国になった国が、過去においてソ連に比べれば競争力が劣っていたこと)」を考えれば現状はロシア人にとって相当の屈辱でしょう。
 もちろんこれは「中国企業の工業製品に競争力があること」を考えれば「独裁の問題」と言う話ではない。
 おそらく、プーチンではなく、他の誰かが大統領でも、また、その誰かが民主的政治家でも、今の経済的苦境を打開することは難しかったのではないか。


【正論】岸田政権の対露外交が問われる 青学・新潟県立大学名誉教授・袴田茂樹 - 産経ニュース

 日本の軍部や政府はその後、スターリンに、日本と米(連合国)の和平交渉の仲介を必死で依頼しようとしていた。

 確かに「佐藤*4駐ソ大使」が「ソ連は信用できない」「和平工作の見込みは乏しい(そもそも明らかに日本の立場が連合国に対して弱いのに、日本をわざわざかばう理由はソ連にはない)」と報告していたのにそれを無視した「日本政府はアホ」ですが、とはいえ「ソ連を使った和平工作を否定した場合」、出てくる答えは1)松代大本営で徹底抗戦か、2)無条件降伏の「二択しか現実的にはない」事に注意が必要です。
 1)や2)では「自らの身の安全が保てない」として、その「二択」を選びたくなかったのは「昭和天皇自身」であり昭和天皇に忖度した結果、当時の内閣や軍部は「ソ連を使った和平工作」にすがったわけです。なぜなら「米国が仲介役として相手をしてくれそうな政治力のある中立国」は当時ソ連しかなかったからです。
 なお、「安倍がやたらプーチンに甘い」のと「昭和天皇ソ連を使った和平工作にすがった」のは全然違います。
 後者については「ソ連を使った和平工作」を否定したら1)松代大本営で徹底抗戦か、2)無条件降伏の「二択しか現実的にはない」のに対して、安倍は「そんな切羽詰まった状況にはない」からです。そういう意味では「安倍の方がより愚劣」といえるでしょう。


露「NATO弱体化」へ揺さぶり 米、主導権奪われる - 産経ニュース
 「NATO弱体化」云々以前に「冷戦後、『対ソ連同盟だったはず』のNATOは何のためにあるのか(対ロシア同盟に鞍替えしたのか?、など)」「必要なのか」がまずは問われるべきでしょう。
 あるいは「ボーガスはロシアびいき」の誤解を恐れず書けば、「ロシアとの対立を助長していいのか」つう問題もあるのではないか。

*1:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、戦犯容疑者として身柄拘束されるが結局不起訴。日本民主党幹事長、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*2:戦前、第一次近衛、東条内閣蔵相。戦後、戦犯として終身刑判決を受けるがいわゆる逆コースで仮釈放。公職追放も解除され政界に復帰。自民党政調会長(池田総裁時代)、池田内閣法相など歴任

*3:東条、小磯内閣で外相。戦後、戦犯として禁固7年の判決を受け、公職追放処分も受けるがいわゆる逆コースで、服役終了後、公職追放が解除され政界に復帰。改進党総裁、日本民主党副総裁(鳩山総裁時代)、鳩山内閣外相など歴任

*4:1882~1971年。ベルギー大使、フランス大使、林内閣外相、イタリア大使、ソ連大使など歴任(佐藤尚武 - Wikipedia参照)