新刊紹介:「経済」2024年1月号

「経済」1月号を俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
◆随想「非正規の「非」は除外の字」(中嶋祥子)
(内容紹介)
 自らの体験をもとにした小説「非正規のうた」(2023年、光陽出版社)を刊行した筆者が著書に対する思いを述べていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考
「それは私だ」と共感させる力 評者 荒川昤子 (作家)/『非正規のうた』中島祥子 著・・・今日の「赤旗」記事 - (新版)お魚と山と琵琶湖オオナマズの日々2023年08月27日

中嶋祥子「非正規のうた」(「民主文学」22年1月号~連載中) - 石崎徹の小説2022.7.29
 職業訓練校の非常勤講師として、都および区に雇われているすべての非常勤労働者のための組合を作ったら、目の敵にされて、訓練校自体を民間委託されて、非常勤講師たちは行き場を失った。
 その過程をつぶさに書いた作品。表現上のフィクションはあるとしても、大筋はノンフィクションらしく思われる。


世界と日本
全米自動車労組ストライキ田中均
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
フォードと暫定合意/米自動車労組 賃上げ25% スト終結2023.10.27
賃上げ25%など暫定合意/米自動車労組 ステランティスと2023.10.30
労働者たたかい「記録的進歩」/25%賃上げ暫定合意/全米自動車労組 スト終結2023.11.1
「ビッグ3」との新協約承認/米自動車労組 25%賃上げ・手当など2023.11.20


プーチン大統領の中国訪問(平井潤一)
(内容紹介)
 人民日報の記事紹介で代替。中国が中露友好をアピールし「NATOのような敵対的な態度」を取らないとはいえ、「ウクライナ侵攻を擁護しているわけではない点」に注意すべきでしょう。
習近平国家主席がプーチン露大統領と会談--人民網日本語版--人民日報2023.10.19


◆日本の研究力低下が露わに(土井誠*1
(内容紹介)
 赤旗等の記事紹介で代替。勿論「学術予算の減少」が大きな理由でしょう。この状況下で「大軍拡」など学術研究を衰退させる自殺行為でしかない。この点、学術研究に予算をつける中国は「実に賢明」であり、このままでは「中国>絶対に越えられない壁>日本」となる日も遠い日のことではない。
自然科学の「研究力」、中国が米国を抑えて世界1位に 日本は5位:朝日新聞デジタル2023.6.21
〈データで見る研究力〉論文数トップ500大学 中国勢の台頭鮮明に - 日本経済新聞2023.7.7

自然科学分野で引用回数多い論文の数 日本は過去最低の13位 | NHK | 文部科学省2023.8.8
 他の論文に引用された回数が各研究分野で上位10%に入った注目度の高い論文の数は、平均で多い順に、
▼1位の中国が5万4400本余り、
次いで
アメリカが3万6200本余り、
▼3位のイギリスが8800本余りでした。
 一方、日本は3700本余りで、過去最低だった前回の12位よりもさらに順位を1つ落として13位まで後退し、データが残る1981年以降で最も低い順位となりました。
 また、1年当たりの平均の論文数でも、中国が46万4000本余りで世界1位となったのに対し、日本は去年と同じ5位で、7万700本余りでした。

赤旗日本の研究者の現状/時間と資金が不足/『ネイチャー』掲載2023.10.17


特集「激動の世界2024」
◆世界の戦火を止めるには:九条による「安心供与」(中野晃一*2
(内容紹介)
 架空問答で書いてみます。

「ガザ紛争をどう見ますか」

「米英仏独伊の人権、民主主義が欺瞞的な代物であることが露呈したと言うべきでしょう。勿論ハマスの行為は許されません。しかしだからといって『ハマス打倒のためなら何でも許される』というイスラエルの態度は許されるものではない。しかし、米英仏独伊はイスラエルに甘い。勿論、これは米英仏独伊と対立するロシアが正しいという話ではない。所詮、米英仏独伊のいう人権や民主主義とは自国の国益を正当化するためのマヌーバーにすぎないように思います」

「日本の軍事大国化は欧米ではどう評価されてるのでしょうか」
A
「米国が特にそうですがNATO諸国も、日本の軍事大国化を歓迎していると思います。それは中露を敵視し、封じ込めるには日本の力を借りたいという極めて党利党略的な代物でしょう。そこには『日本はアジアの国、欧米よりは格下の国』で絶対に『我々、欧米には反逆できない』という差別的な視線もあるように思います。日本の侵略被害国である中韓等とは立ち位置が大きく違うわけです。
 そもそも米国歴代政府が『朴正熙軍事独裁(韓国)』『マルコス独裁(フィリピン)』『ピノチェト独裁(チリ)』等を容認してきたことを考えれば、反体制派の誘拐や殺害も辞さなかった朴(金大中拉致)やマルコス(アキノ暗殺)、ピノチェト(コンドル作戦)等に比べたら『誘拐や殺人をしないだけ』まだまともな『安倍、岸田の無法』容認など、米国やその同盟国(英仏独伊)にとって大したことではないのでしょう。現在もバイデン政権はイスラエルのネタニヤフ政権の無法を容認しています。我々はNATONATO主要国(英仏独伊)の軍事的な危険性についてもっと警戒すべきだと思います。『ウクライナ戦争でウクライナを支援する正義の存在=NATO』のように認識するのは話を単純化しすぎです」

「中台危機についてどう思いますか」
A
「米国は『巨大な中国市場』を無視できないと言う意味で中国と全面対決しがたい状況にはあります。一方の中国も『巨大な米国市場』を無視できない立場にありますが、米国が『軍拡を進めるため』か『反中国ウヨ層への人気取りか』はともかく、中台危機を煽り、中国がそれに反発してるために不測の事態を危惧しています。なお、私個人は米中対立は1980年代の日米貿易摩擦のような代物で本質は経済対立だと思っています。」

憲法九条についてどう思いますか」
A
憲法九条があるからこそ日本は中国や東南アジアの侵略に進んだ戦前と違い、あるいは世界各地で戦争をしている米国と違い、戦争を自分からは起こせない、起こさない国となった。この意義は極めて大きいと思います」


イスラエルの領土拡大のプロセスとしての『新ガザ戦争』(平井文子*3
(内容紹介)
 架空問答で書いてみます。

「ガザ紛争をどう見ますか」

「明らかにイスラエルには油断、おごりがありました。しかしハマスイスラエルを圧倒する軍事力があるわけではない。イスラエルは火事場泥棒としてガザの完全支配、イスラエル領土化を企んでるように思います。つまりイスラエルの目的は単にハマス打倒ではなくパレスチナ自治政府の否定(パレスチナの完全なイスラエル化)とみるべきでしょう。あえて言えばそれはプーチンが当初狙っていたとみられる『ウクライナ全土支配』と違わないでしょう。プーチン同様にネタニヤフが停戦に消極的なのもある意味当然です。にもかかわらず米英仏独伊のロシアとイスラエルの扱いの違いには怒りを禁じ得ません。
 問題はメディア統制を強めるネタニヤフ政権によって『イスラエル批判=ハマス擁護』のネガティブキャンペーンが公然と行われてることです。そうした中、ネタニヤフの無法は必ずしもイスラエル国民に批判されない。頭の痛い問題ではあります」


◆誌上シンポ「グローバル資本主義を問う」(所康宏*4、長田華子*5山中達也*6、井出文紀*7
(内容紹介)
 まず所氏が南米について、長田氏がバングラデシュについて、山中氏がチュニジアについて、井出氏がマレーシアについて、報告した上で議論が展開されてますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


多国籍企業の規制と人権(筒井晴彦*8
(内容紹介)
 赤旗等の記事紹介で代替。
ジャニーズ以外にもこんなにも…日本の問題 国連人権理事会作業部会の指摘 女性も、障害者も、労働者も…:東京新聞 TOKYO Web2023.8.12
赤旗なんだっけ/国連「ビジネスと人権」って?2023.8.13


◆気候危機とグローバル・サウス(深草亜悠美)
(内容紹介)
 「CO2による気候危機(温暖化)」に主たる責任があるのは経済先進国(グローバルノース)であり、先進国側は「温暖化を引き越さない経済発展」を自ら目指すと共に、そうした方向性を「グローバルサウス」にも広げる責務があると論じている。


◆問われる国際金融体制の行方:ブレトンウッズ会議から80年(英吉利)
(内容紹介)
 ドル体制が「米国の覇権」を生んでいるとしてより「民主的な国際金融体制」を主張。さしあたり特別引出権(SDR)の強化が現実的であろうとしている。


EUNATOの行方(木戸衛一*9
(内容紹介)
 反EUの立場ではないものの「現状のEUは経済大国(英仏独等)と発展途上国(東欧等)との間に格差を生み、前者が後者を搾取してはいないか」「今のままのEUでいいのか」との疑念が表明されている。
 NATOについてはもっと手厳しく、ロシアのウクライナ侵略を口実に「拡大」をし、むしろ地域の安定を損なうのではないかとの懸念が表名されている。


ウクライナ侵攻下の欧州軍事市場と軍事産業(山崎文徳*10
(内容紹介)
 ロシアのウクライナ侵攻を口実に欧州で進む軍拡への懸念が表明されている。
参考

ヨーロッパは冷戦期の軍拡競争に逆戻り…防衛費対GDP比2%超が続出 市民生活に影響も:東京新聞 TOKYO Web2023.2.24
 世界銀行によると、欧州連合EU)各国平均の対GDP防衛費比率は冷戦期の1960年には3.8%だったが、冷戦終結を経て90年代後半から2%を切り、近年は1.5%前後で推移していた。多大な犠牲者を出した第二次大戦の教訓が欧州各国を軍縮に向かわせていた。
 しかし2014年のロシアによるクリミア半島併合を受け、NATO加盟国は同年、対GDP比率を24年までに2%に増やすことを誓約した。NATOが発表した22年の想定値では加盟30カ国のうち9カ国しか達成していないが、昨年2月の侵攻開始直後、世論に非戦論が強かったドイツが現状の1.4%から2%への大幅増強を表明。これを機に各国の動きが活発化した。
 特に積極的なのは、ロシアに近い東欧や北欧諸国だ。22年想定値で2.4%だったポーランドは今年中に4%へ伸ばす方針。バルト3国も3%への増強を表明

*1:共産党学術・文化委員会事務局長

*2:上智大学教授。著書『戦後日本の国家保守主義』(2013年、岩波書店)、『右傾化する日本政治』(2015年、岩波新書)、『私物化される国家』(2018年、角川新書)等

*3:著書『アラブ革命への視角』(2012年、かもがわ出版

*4:明治大学教授。著書『米州の貿易・開発と地域統合』(2017年、法律文化社

*5:茨城大学准教授。著書『バングラデシュの工業化とジェンダー』(2014年、御茶の水書房)、『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?:ファストファッションの工場で起こっていること』(2016年、合同出版)

*6:駒澤大学准教授

*7:近畿大学准教授

*8:著書『働くルールの国際比較』(2010年、学習の友社)、『8時間働けばふつうに暮らせる社会を:働くルールの国際比較2』(2017年、学習の友社)

*9:大阪大学招聘教授。著書『ドイツ左翼党の挑戦』(2013年、せせらぎ出版)、『変容するドイツ政治社会と左翼党』(2015年、耕文社)、『若者が変えるドイツの政治』(2022年、あけび書房)

*10:立命館大学教授