新刊紹介:「経済」9月号

「経済」9月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
◆随想『二人の徳衛さん』(野村拓*1
(内容紹介)
 「二人の徳衛」とは誰かというと俳優の花沢徳衛 - Wikipedia氏と東京経済大学名誉教授の柴田徳衛 - Wikipedia氏ですね。お二人との思い出が回想されています。柴田氏が出てくるのは「研究者つながり」ですが、何で花沢氏が出てくるのかというと花沢氏は

花沢徳衛 - Wikipedia
 日本共産党の党員でもあり、党歴は50年を越えた。各種選挙で共産党候補者の推薦人になり、しんぶん赤旗紙上にたびたびコメントを寄せ掲載された。刊行したエッセイ著作は、しんぶん赤旗に連載したコラム記事や週刊誌などに寄稿したものへ加筆したものと新たに書き下ろした原稿を纏めて構成したものである。
◆著書
・『花沢徳衛の恥は書き捨て』(1986年、新日本出版社
・『幼き日の街角』(1987年、新日本出版社
・『芝居は無学の早学問』(1994年、近代文芸社
・『脇役誕生』(1995年、岩波書店

ということで「俳優」云々では無く「共産党支持者つながり」ですね。


世界と日本
◆世界的に広がるコロナ禍:注目される大資本の活動を規制する提案(金子豊弘)
(内容紹介)
 副題「大資本の活動規制」と言う観点からコロナ禍について論じられています。

参考

新型コロナが問う日本と世界/資本主義の構造的問題/政治学者 白井聡さん
 多くの識者が指摘していますが、新型ウイルスによる感染症の発生の背景には、発展途上国における乱開発があります。森深くに眠っていたウイルスが、開発が進みすぎることによって人間世界に出てきてしまって問題を起こす。途上国が自然を破壊しながら工業化を進めることで豊かになろうとする。それ以外に豊かさへの道がないという世界資本主義の構造こそが問題なのです。先進国は途上国を搾取し、途上国は自然を搾取する。この搾取の連関構造の問題は、しっぺ返しのように先進国住民にとっての巨大な脅威となって戻ってきました。

公正な税制でコロナ対処を/トマ・ピケティ氏が主張/富裕層への課税 大企業巻き込む…
 フランスの経済学者トマ・ピケティ氏*2はこのほど、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で「暴力的な不平等を目の当たりにしている」として、危機に対処するため富裕層に課税し公正な税制を確立することが必要だと主張しました。

コロナ危機は日本と世界のあり方を問うものとなっている/志位委員長の発言
 一つは、新自由主義の破綻が明らかになったということです。新自由主義――すべてを市場原理にまかせて、資本の利潤を最大化していこう、あらゆるものを民営化していこうという流れが、今度のパンデミックによって破綻がはっきりしました。
 それは、EU(欧州連合)によって医療費削減などの緊縮政策を押し付けられた国ぐにが大きな犠牲を強いられているということを見ても明らかです。
 日本を考えてみても、「構造改革」の掛け声で、医療費削減政策が続けられ、急性期のベッドを減らしていく、公立・公的病院を統廃合していく、どんどん保健所を減らしていく、こういうやり方によって、日常的に医療の逼迫(ひっぱく)状況をつくってしまったことが、こういう危機に対してたいへんに脆弱(ぜいじゃく)な状態をつくりだしています。
 雇用を考えても、労働法制の規制緩和を続けて、「使い捨て労働」を広げてしまった。人間らしく働けるルールを壊してきた。そのことの矛盾が、いまコロナ危機のもとで、派遣やパートで働く人々の雇い止めという形で噴き出しています。
 新自由主義による社会保障・福祉の切り捨て路線を転換して、社会保障・福祉に手厚い国をつくる、労働法制の規制緩和路線を転換して、人間らしい労働のルールをしっかりつくりあげていくことが強く求められていると思います。


生活保護裁判で不当判決(小久保哲郎*3
(内容紹介)
 赤旗などの判決批判記事紹介で代替。

赤旗生活保護削る国に追従/原告の請求 すべて棄却 名古屋地裁/くじけない 控訴へ
生活保護費判決 減額の手法に違和感:東京新聞 TOKYO Web
<社説>生活保護訴訟判決 制度の趣旨を尊重せよ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
生活保護費減額に「最低」と言われる判決を下した名古屋地裁の論理 | 生活保護のリアル~私たちの明日は? みわよしこ | ダイヤモンド・オンライン
生活保護費引き下げを容認する判決は法治国家の放棄? 木村草太教授「法律の文言も趣旨も無視している」(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース


特集『奪われる住:居住福祉・日本の課題』
◆コロナ禍で噴き出す住まいの貧困と戦う(稲葉剛*4
◆対談「『人間の安全保障』と居住福祉:コロナ・パンデミック時代の社会構想」(大本圭野*5、井上英夫*6
(内容紹介)
 稲葉論文では「貧困者の居住問題」を中心に「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人等として活動する稲葉氏の取り組みが紹介されています。
 大本、井上対談も副題「コロナ・パンデミック時代の社会構想」から分かるように問題意識は「コロナで更に深刻化する貧困者の居住問題にどう対応していくか」ということで稲葉論文と共通しますが、具体的紹介は小生の無能のため省略します。
参考
赤旗生活困窮者支援/安全な住まい 行政の責任で/住居喪失者に「個室」を市民・団体が声あげる

論点:新型コロナ 広がる「格差」 - 毎日新聞
 「ステイホーム」と言われているが、今、肝心の「ホーム」のない人や家を失いかけている人が急増している。
 深刻なのは、ネットカフェの休業で住む場所を失った人々だ。(ボーガス注:稲葉氏が代表理事を務める)一般社団法人「つくろい東京ファンド」でこの3週間に受けた相談は約120件。新型コロナウイルスの影響で仕事が減り、所持金が底をつきかけていた人が多い。相談の2割は女性。虐待やDV被害から逃れ、ネットカフェに避難していたらしい20代の女性もいた。

 そもそも「ネットカフェに住んでる」と言うこと自体が異常な話ではあります。あそこは勿論もともとアパート、マンションのような「住むこと」が目的の施設ではありませんので。そもそもは二次会などで「終電に乗り遅れた人間」を「一晩ぐらいなら面倒見ます」つう話でしか無かったわけです。とはいえ、貧困者にとっては「借りられるアパートやマンションが無い」わけです。「家賃が高すぎて借りられない」以前に「(家賃滞納を危惧する大家が)貸してくれない」わけです。

「閉ざされた扉をこじ開ける」稲葉剛氏|日刊ゲンダイDIGITAL
 東京五輪の陰で路上や住居から排除される人々、ネットカフェ難民をはじめ多様化する住まいの貧困、生活保護をめぐる政府や役所との攻防など、さまざまな問題が取り上げられる。
「路上生活者や住居喪失者を相部屋に20人も詰め込むような、無料低額宿泊所といった貧困ビジネスもいまだにあるんです。感染拡大している状況でそこに送る意味やリスクをわかっているんですかと、都の(生活)保護課長に訴えました。都が確保したというビジネスホテルの活用なども含め交渉を続けて、4月17日にようやく厚労省から『原則、個室対応』という事務連絡が全国の自治体に出されましたが、残念ながらまだ徹底されていません」
 根底にあるのは、世間一般にも役所にも根強い「社会保障の利用は国民の権利ではない。おこぼれ、恩恵だ」という考えだという。


◆「住生活基本計画」は住宅危機に応えるか(坂庭国晴*7
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
赤旗主張/住生活基本計画/深刻な住まいの現状の打開を
 4年前の記事ですが残念ながら「政府の方針が4年前に大転換したわけではない」ので、現在においても指摘が該当します。
赤旗家賃低廉制度改善を/宮本議員 自治体負担が問題


◆若者の住まいの現実と住宅支援の課題(小田川華子*8
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
若者の住まいの貧困――定住と漂流 / 小田川華子 / 社会福祉学 | SYNODOS -シノドス-
 4年前の古い記事(小田川氏執筆)ですが残念ながら「若者の住まいの現実と住宅支援の課題」は小田川氏の認識では「あまり変わっていない」ので、
1)実家に定住する若者は「経済的貧困」から「実家から離れられない」のであって必ずしも「好きで親と居住しているわけでは無い」
2)「幼い頃、親と死別した」など「実家が無い社会福祉施設出身の若者」はそうした意味でハンデを負っている
3)貧困な若者は「家賃が安いシェアハウス」や「企業の社員寮」に住む傾向が高いが、「それしか選択肢が無い」という意味で望ましい物では無い
4)社員寮に住んでいる場合、ア)企業倒産や解雇が住居の消失につながってしまう、イ)ブラック企業が「社員寮」を「社員を服従させるための脅しの材料」に使う等の問題があるため、そうした意味でも社員寮は望ましい物では無い
5)そうした問題の解決法として「低所得者に対する家賃補助制度」が考えられる
など、今回の経済「小田川論文」と内容がかなり重複します。


◆住宅建設産業の技能者育成と労働組合(奈良統一*9
(内容紹介)
 住宅建設産業の技能者育成について筆者が役員を務める全国建設労働組合総連合(全建総連)の取り組みが紹介されています。

参考
全建総連技能者育成支援基金 資格取得で活用を | 未分類 | 全建総連東京都連
建設国保補助・賃上げを/全建総連と党国会議員団 懇談
建設技能者の育成を支援する議員連盟 第4回総会を開催 - 立憲民主党


◆建築技術と住環境を守る:新建築家技術者集団設立50周年によせて(片方信也*10
(内容紹介)
 新建築家技術者集団の取り組みが紹介されていますが、具体的紹介は小生の無能のため省略します。


◆コロナ禍と休業・失業の増大(伍賀一道*11
(内容紹介)
 伍賀氏が以前執筆した伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「雇用・失業の新局面 ― 休業者600万人の衝撃」 (5/31) – NPO法人 働き方ASU-NETを加筆訂正したものであり、そちらも参照して欲しいとのことです。

参考
赤旗
コロナ失業 住居失う/清水氏「事態防ぐ支援ぜひ」
主張/コロナ直撃の雇用/働く人を守りぬく対策を急げ
休業者・失業者支援法案/野党 衆院に共同提出/政府案への対案
失業・休業支援拡充を/コロナ 政府に宮本・倉林両氏/「運用柔軟に」
コロナ禍 シングルマザー深刻/減収・失業・休業補償なし/札幌・支援団体と紙氏懇談


◆コロナ対策に見る公衆衛生の現状と弱者切り捨て社会(唐鎌直義*12
(内容紹介)
 「弱者切り捨て社会」については内容的には
◆コロナ禍で噴き出す住まいの貧困と戦う(稲葉剛)
◆コロナ禍と休業・失業の増大(伍賀一道)やこの、経済「伍賀論文」の元となった伍賀一道(金沢大学名誉教授) 「雇用・失業の新局面 ― 休業者600万人の衝撃」 (5/31) – NPO法人 働き方ASU-NET
等と当然ながらかなり重複します。
 「公衆衛生の現状」とは「PCR検査をしない怠慢&病床不足」ですね。病床不足は責任放棄の病床削減/高橋氏、医療法改定案に反対/衆院厚労委ということで「病床が過剰」との誤った判断から国が意図的に減らしてきたことに起因する物で「人災と言っても過言では無い」でしょう。病床の問題については「まだ具体策は何もない」ので「どこまで本気かはともかく」、さすがに安倍政権も「なんとかしたい」と言い出しましたが、PCRに至っては世田谷区の取り組みなどを「不要不急の検査は必要ない」と未だに否定するのだから「なんともかんとも」「呆れて二の句が継げない」ですね。
 なお、浅井基文氏もブログ記事
中国の新コロナ・ウィルス対策:総括と教訓
中国の徹底したコロナ対策
中国の新コロナ・ウィルスPCR検査推進政策
北京市のコロナ対策(3)
北京市「新型コロナ・ウィルス戦争」40日間(総括記事)
新コロナ・ウィルス対策:成否を分かつ中日の基本姿勢の違い
コロナ対策と経済政策を「両立」させるための前提条件:中国のアプローチから学ぶこと
日本のコロナ対策の致命的問題:世界の共通認識の受け入れを拒む「井の中の蛙」
などでご指摘されてることですが唐鎌氏も浅井氏同様に「病床不足を早急に是正しようと仮設病院を早急に増設」したり「感染拡大防止のためにPCR検査を徹底的に実施」したりする中国について「これらの取組がどれだけ功を奏してるかは議論の余地がある*13」「もちろんこれらを高評価するとしても香港デモなどの民主主義的問題がちゃらになるわけではない、『それはそれ、これはこれ』で別問題である*14」としながらも「動機が何でアレ、習政権の積極的なコロナ感染防止&治療はやる気があるのか疑わしい無為無策、無責任の安倍政権よりずっとマシでは無いのか」と中国を高評価しています(というか「中国以外の国の名誉(?)」の為に断っておけば、安倍レベルにコロナ対策が無茶苦茶なのは俺の理解では米国のトランプとブラジルのボルソナロぐらいしか居ませんが)。
 中国に悪口雑言するしか能の無いリベラル21の連中(阿部治平、澤藤統一郎、田畑光永など)とは違い、浅井氏、唐鎌氏は「公正な中国評価」かと思います。
 先日今日の中国ニュース(2020年8月7日分) - bogus-simotukareのブログで紹介した中国が科学論文数で初の世界一 文科省調査、米国抜く 日本は低迷 - 産経ニュースといい新型コロナ対応と言い、我々は「大いに中国から学ぶべき点がある」と思います。それはもちろん「香港デモなどの民主主義的問題」において「中国を全面支持する」と言う話ではありません。「それはそれ、これはこれ」「是々非々」です。俺も浅井氏も唐鎌氏も「中国のコロナ対策を評価する(ただし、唐鎌氏の場合は『熱意』限定で、俺と浅井氏は『成果』も評価)」と書いてるだけで「中国の全てを評価する」とは何一つ書いていません。
 まあ、こう書くと一部の「反中国」連中(例:阿部治平、澤藤、田畑、Mukkeとか)の以前からの「ボーガスは不当に中国を美化してる」という誤解、曲解が助長されるのでしょうが俺はそう言う意見です。

【参考:浅井氏の『中国コロナ対策』評価】

中国の徹底したコロナ対策
 中国の武漢市では、無症状感染者を洗い出し、コロナ再発を未然防止することを目的として、5月14日から6月1日までの間、6歳以下を除く武漢市民全員を対象(検査実数は989万9828人)としたPCR検査を行いました。その結果は、無症状感染者300人(検出率0.303人/万人)、要追跡濃厚接触者1174人(全員隔離・経過観察)という、関係者も驚く素晴らしい結果だったとされます。武漢市の場合、この検査に要する費用(9億元)は武漢市政府及び区政府が負担しました(住民負担ゼロ)。
 また、寧波(検査:41.1万人)、杭州(同40.1万人)、温州(同31.2万人)などの大都市を抱える浙江省では、「検査すべきものは全員検査する、検査を望むものは全員検査する」に基づき、4月8日から6月1日にかけて、重点地区、重点対象者の217万人に対するPCR検査を実施しました。その結果、医療関係者76.7万名の全員が陰性、通院患者及び入院患者(1日当たり6.1万人検査)は全員陰性、入院患者付添人全員に対する検査結果では無症状感染者1人だったそうです。

中国の新コロナ・ウィルスPCR検査推進政策
 中国のコロナ対策の原則は「4つの早い」措置です。「4つの早い」措置とは、「早期発見、早期報告、早期隔離、早期治療」を指します。「4つの早い」措置の中でももっとも中心とに位置づけられるのは、PCR検査能力の向上及び検査範囲の拡大です。
 端的に言って、中国のコロナ対策と日本(安倍政権)のコロナ対策の違いは、「人命:主、医療(の都合):従」(中国)対「医療(の都合):主、人命:従」(日本)であり、両国の対応は世界におけるコロナ対策における両極端にあるということができるでしょう。(ボーガス注:コロナ対策で)中国が大きく歩を進めることとの対比においても、日本は本当に「救いがない国」と思います。

北京市のコロナ対策(3)
 7月10日、北京市は新コロナ・ウィルス防疫コントロール工作に関する記者会見を行い、感染流行を抑え込んだと公式に表明しました。今回の北京市の鮮やかな取り組みについては、7月7日付けのブルームバーグ通信も、"Beijing Just Reported No Cases. Here's How They Turned It Around"と題する記事で、北京がわずか4週間で抑え込んだことに関する分析記事を掲載し、これを賞賛しています。特にブルームバーグは、武漢の際は都市の全面封鎖措置を取ったのに対して、北京では重点を絞り込む取り組みによって成功したことを重視し、他の国(西側諸国を除く)にとっても参考になると指摘しています。
(中略)
 以上、北京市のコロナ対策が一段落しましたので、大雑把なまとめ的紹介をしました。その趣旨は、北京と東京都の「天と地」の違いを皆さんに実感していただきたいからです。
 北京の場合、6月11日以前の徹底した取り組みで感染者ゼロを実現したことが出発点にあります。したがって、6月11日に感染流行が起こったとき、以上に述べたような対策(日本でいう「クラスター」対処的な「外科手術式定点抗疫」)がとれたのです。東京も日本全体も「感染者ゼロ」を実現するための徹底した取り組みは議論にも上りません。はじめから「実現不可能」という暗黙の了解があるとしか思われません。これは最初から「負け戦」です。「井の中の蛙大海を知らず」というほかありません。
 中国のやることはとにかくケチをつけなければ気が済まない日本社会の狭い了見では、せっかくすぐお隣で行われている素晴らしい実践にも目が行かず、ましてや、そこから学ぶという姿勢は皆無です。(ボーガス注:親中国メディアとはとても言えない)アメリカのブルームバーグでさえ高い評価をしているのに、本当に悲しいことです。

北京市「新型コロナ・ウィルス戦争」40日間(総括記事)
 中国の取り組みの最大の特徴は、「4つの早い(発見・報告・隔離・治療)」原則に基づき、「感染者は1人も見逃さない」徹底した取り組みを妥協することなく行うことにあります。そこにあるのは、徹底したPCR検査によって無症状感染者を含めて根こそぎにし、後顧の憂いを断ち切るという強い政策的意志です。
 安倍政権・小池都政の最大の問題は、初動を誤ったのに、感染者数、死者数が少なかったという奇跡にあぐらをかいて反省もせず、国民・都民の自覚ある行動を求める以外は、事実上何らの積極的なコロナ対策を講じていないことにあります。初動の誤りとは、「医療崩壊を防ぐ」ために「クラスター」対策に問題を矮小化し、「忍者」「一匹狼」を野放しにしたことにあることは、これまでコラムで度々指摘してきました。ちなみに、WHOは繰り返し、早期の発見・隔離・治療が対策のカギであることを強調しています。
 今、東京及び全国各地で起こりつつある感染者数激増は、野放しにされた「忍者」「一匹狼」による市中感染の広がりの結果であることは見やすい道理です。この深刻を極める事態に直面してもなお安倍政権・小池都政が相変わらず無為無策のままであり、安倍政権に至っては火に油を注ぐ以外の何ものでもない「Go Toキャンペーン」に固執する様を見ると、もはや絶望感に襲われます。
 社会主義・中国のような取り組みは不可能にしても、「北京モデル」から学ぶべき点は少なくないと確信します。新華社記事(要旨)を紹介するゆえんです。

新コロナ・ウィルス対策:成否を分かつ中日の基本姿勢の違い
 新コロナ・ウィルス対策に成果を収めている中国と感染爆発におびえる日本とを分けるのは、「最悪の事態を考えて小さなことも見逃さない」中国と「最悪の事態を考えず目先のことしか扱わない」日本との基本姿勢の違いにあります。

日本のコロナ対策の致命的問題:世界の共通認識の受け入れを拒む「井の中の蛙」
「原則として各国・各地域が承認しているのは、『PCR検査を最重要事項とする』ことだ。最短時間内にPCR検査能力を最大限に高め、可能の限りを尽くしてもっとも精確に感染者を見つけ、探し出す。そうすれば、その後に来る防疫措置は直ちに歩調を合わせて進むことができる。」
 これは、香港で感染が急拡大しているのにどう対処するべきかという問いに対して、上海・復旦大学付属華山医院感染科主任で、上海市新コロナ・ウィルス医療ケア専門家グループ組長の張文宏が述べた答です。コロナ対策の要諦に関する世界の共通認識を、「医療体制崩壊阻止」が至上命題になってしまっている日本では今もなお頑強に受け入れようとしない。ここに、感染爆発の危機に直面する日本の問題のすべてがあります。
 世界を見ると、WHOのテドロス事務局長がコロナを抑え込んだと評価したのは中国、カナダ、ドイツ、韓国であり、カンボジアニュージーランドルワンダなども流行出現を回避している、とテドロスは指摘しました(7月27日)。


◆座談会「ウーバーイーツの労働問題と「働き方改革」」(土屋俊明*15、川上資人*16笠井亮*17
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

主張/ギグワークの急増/究極の「使い捨て労働」根絶を
 深刻な問題になっているのは、配達員が「労働者」でなく「個人事業者」と扱われるため、交通事故に遭ってもまともな補償がないなど無権利状態にあることです。
 笠井氏は、バイクで配達中に事故に遭ったにもかかわらず、家計を支えるため、けがが完治しないうちに無理して働かざるをえない40代の配達員の過酷なケースを示し、実態を告発しました。
 笠井氏は、労災保険の適用外とされていることに、現場の配達員から「命綱をつけないでビルの窓ふきをやっているようだ」と悲鳴が上がっていること、最低賃金も適用されず、ウーバーから報酬切り下げが一方的にメールで通知されていること、配達員が働き方や報酬の改善を求めて組合をつくり団体交渉を求めても拒否していることなどを一つ一つ示して、「これが健全なやり方ですか」と厳しく政府に迫りました。首相も「そうした雇用に似た形が広がっていくことは、決していいとは思っていない」と表明せざるをえませんでした。
 フランスでは、ウーバーのようなやり方に対し、働き手保護の社会的責任を義務付ける法律が制定されました。人間らしい労働に反するやり方をなくすことは、日本の政治の大きな責任です。

論戦ハイライト/衆院予算委 笠井議員の質問/8時間働けば 普通に暮らせる社会を
 笠井氏は、都市部で増えている配達代行サービス「ウーバーイーツ」の働かせ方の実態を安倍首相に突きつけました。
 ウーバーイーツは、スマートフォンのアプリで飲食物の配達を受発注するサービス。配達員は使用者であるウーバーの指揮命令を受けますが、労働者でなく「個人事業主」として扱われています。
 笠井氏は、労働組合「ウーバーイーツユニオン」の配達員の声をとりあげ、三つの問題点をただしました。
 一つは、労災保険がないことです。飲食店が配達員を雇うのと違い、ウーバーとの雇用関係がなく(ボーガス注:配達中の交通)事故でも補償されません。
 二つ目に、賃金の規定がなく最低賃金も適用されない問題です。
 3点目には、団体交渉権の保障がされていない問題です。笠井氏は、配達員が働き方や報酬の改善を求め、労働組合を結成し団体交渉を求めても拒否していると指摘しました。


◆大企業の金融重視経営への転換とアベノミクス(藤田宏)
(内容紹介)
 「金融重視経営」とはわかりやすく言えば「企業がその儲けを株主配当や社員への給与に還元するのでは無く、国債購入など財テクに利用している」と言う話です。そうした金融重視経営を公的マネー投入 株価つり上げに66兆5000億円/アベノミクス 異常事態という形で助長しているのがアベノミクスであるが、そうした「無茶苦茶な株価つり上げ」は不健全であり、一日も早くそうした行為から政府は撤退すべきだというのが結論です。


プーチン*18ロシアの20年(下)(岡田進*19
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」8月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した「◆プーチンロシアの20年(上):経済の現状と課題(岡田進)」の続きです。
 前回、小生は

新刊紹介:「経済」8月号 - bogus-simotukareのブログ
 プーチンエリツィン時代の「ズタボロな経済」を立て直すことによって、一定の支持を国民から得た。
 しかし、ロシアの外貨獲得源は現在、もっぱら「石油や天然ガス」といった資源輸出であり、ソ連時代に崩壊した工業生産力を立て直すことにはプーチン政権も成功していない(この点はスマホメーカーのファーウェイや家電のハイアール、パソコンのレノボなど工業生産力を発展させている中国との違いである)。
 そのため、「コロナの影響(原油需要の減少)」「米国によるシェールオイル増産」で資源価格が低迷するとロシアの経済成長にはブレーキがかかっている。
 その結果としてプーチン政権支持率も一時に比べ低迷している(もちろん20年に及ぶ長期政権による「飽き」もありますが)。
 また、ロシアの経済成長低迷という意味では「クリミア侵攻後の欧米の対ロシア経済制裁」と言う要素も重要である。工業生産力立て直しのためにロシアは鄧小平時代・中国の改革開放的な「外資導入」をもくろんでいたが、それは大きく挫折せざるを得なくなった。
 ロシアは欧米に変わる外資導入先として日本、中国、韓国、インドなどをもくろんでいるが、今のところ目立った成果は出ていない。

と書きましたが、今回もこうした問題が主として論じられています。
 さてこうした中、

ロシア改憲成立 プーチン氏続投へ道―北方領土交渉は困難:時事ドットコム
 ロシアで1日実施されたプーチン大統領(67)の長期続投を可能にする憲法改正の全国投票は2日、開票作業が終了した。中央選挙管理委員会によると、賛成が77.92%。過半数の要件を満たし、改憲成立が決まった。反対は21.27%。既に20年間君臨してきたプーチン氏は2036年まで権力の座にとどまることが可能になる。
 プーチン氏は現在、通算4期目(連続2期目)で、24年に任期満了を迎える。現行憲法は連続3選を禁じているが、改正憲法には任期数をリセットして「ゼロ」とする内容が盛り込まれ、5選出馬に道が開かれた。大統領任期は6年で、プーチン氏が24年からさらに2期12年務めた場合、83歳になる計算だ。

ということでプーチン改憲により、更なる長期政権を可能にしました。
 また、

ロシアで新内閣発足 プーチン氏が政府管理を強化 (写真=ロイター) :日本経済新聞
 ロシアのプーチン大統領は21日、15日のメドベージェフ*20内閣の総辞職を受け、新たな閣僚を任命した。15日に任命したミシュスチン*21新首相に次ぐ第1副首相に側近のベロウソフ大統領補佐官(経済担当)を就け、自ら政府管理を強める姿勢を鮮明にした。新内閣の目玉となったのはベロウソフ第1副首相で、9人の副首相のうち唯一、第1副首相の肩書を持つ。12年から13年まで経済発展相を、13年からは経済担当の大統領補佐官を務めており、プーチン氏の信頼が厚い。今後は政府のナンバー2として、プーチン氏が15日の年次教書演説で示した社会保障強化と経済成長の実現を急ぐ。
 一方、ラブロフ*22外相とショイグ*23防相(中略)は留任した。ベロウソフ氏の第1副首相就任に伴い、シルアノフ*24第1副首相兼財務相は第1副首相を解かれた。財務相としては残り、今後もマクロ経済の安定を担当する。

ということで「長く首相を務めてきた最側近メドベージェフ氏」が首相を更迭(現在は安全保障会議副議長)され、「別の側近ベロウソフ氏」が第一副首相に登用されたわけです。
 これらの「最近の新しい動き」をどう評価するのかが今後のポイントでしょう。
 素直に考えれば「ポスト・プーチン」としてメドベージェフ氏に代わり、ベロウソフ氏が浮上したと言うことになるでしょうが。
 あるいはプーチンが「長期政権を実現する」にあたり「首相在任が長いメドベージェフ氏」の「大統領ポスト簒奪」のクーデター(?)を恐れ、「より扱いやすいであろう」ベロウソフ氏を登用したと言うことなのか(なお、近年、メドベージェフの首相在任が長いことで「飽き」が生じつつある上に「反体制派から汚職疑惑が暴露されメドーベジェフの支持率が下降傾向にあること」も首相更迭の一因かもしれません)。

*1:著書『医療改革』(1984年、青木書店)、『20世紀の医療史』(2002年、本の泉社)、『医療の社会科学』(2003年、本の泉社)、『講座医療政策史(新版)』(2009年、桐書房)、『医療の政治力学』(編著、2011年、桐書房)、『新・国保読本』(2014年、日本機関紙出版センター)など

*2:著書『21世紀の資本』(2014年、みすず書房)、『格差と再分配:20世紀フランスの資本』(2016年、早川書房)、『不平等と再分配の経済学』(2020年、明石書店

*3:生活保護問題対策全国会議事務局長。弁護士

*4:つくろい東京ファンド代表理事立教大学特任准教授、「住まいの貧困に取り組むネットワーク」世話人生活保護問題対策全国会議幹事、「いのちのとりで裁判全国アクション」共同代表。著書『ハウジング・プア』(2009年、山吹書店)、『生活保護から考える』(2013年、岩波新書)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために:野宿の人びととともに歩んだ20年』(2015年、エディマン)、『貧困の現場から社会を変える』(2016年、堀之内出版)、『閉ざされた扉をこじ開ける:排除と貧困に抗うソーシャルアクション』(2020年、朝日新書)など。個人サイト稲葉剛公式サイト

*5:東京経済大学名誉教授。著書『「証言」日本の住宅政策』(1991年、日本評論社)、『日本の居住政策と障害者をもつ人』(2006年、東信堂)など(大本圭野 - Wikipedia参照)

*6:金沢大学名誉教授。著書『住み続ける権利』(2012年、新日本出版社)など(井上英夫 - Wikipedia参照)

*7:著書『どうする住宅難時代』(1991年、学習の友社)

*8:東京都立大学非常勤講師

*9:全国建設労働組合総連合(全建総連)書記次長

*10:新建築家技術者集団代表幹事。日本福祉大学名誉教授。著書『まちづくり構想計画』(1993年、部落研ブックレット)、『「歴史的街区」は再生できるのか』(編著、2013年、かもがわ出版)など(片方信也 - Wikipedia参照)

*11:金沢大学名誉教授。著書『現代資本主義と不安定就業問題』(1988年、御茶の水書房)、『雇用の弾力化と労働者派遣・職業紹介事業』(1999年、大月書店)、『「非正規大国」日本の雇用と労働』(2014年、新日本出版社)など

*12:立命館大学教授。著書『日本の高齢者は本当にゆたかか』(2001年、萌文社)、『脱貧困の社会保障』(2012年、旬報社)など

*13:として唐鎌氏が「中国の熱意」は評価しながらも、取組『成果』への評価を保留するのに対し、浅井氏は「中国政府発表が正しいのならば」という前提条件付きですが「中国の取組は概ね成功していると思う」と『成果』も高評価しています。俺個人も浅井氏に同意見です。

*14:こう書かないと1)唐鎌氏や月刊経済が『不当に中国・習近平政権をべた褒めしてる』だの、2)『ボーガスが捏造紹介して、唐鎌氏を中国シンパに見せかけている、唐鎌氏に対する名誉毀損だ』だの曲解するバカ(例:俺のことを澤藤統一郎の憲法日記 » これが、法輪功を邪教と決め付ける根拠?で中国シンパ呼ばわりした澤藤統一郎)が出かねないのであらかじめお断りしておきます。なお、唐鎌論文での中国政府のコロナ対策評価について正確に知りたい方は直接、唐鎌論文をお読み下さい(唐鎌論文の主旨は『中国のコロナ対策紹介ではない』『安倍政権は中国を後進国扱いしてるようだが、お前らのコロナ対応の方がよほど酷いじゃ無いかという安倍批判にすぎない』ので浅井論文に比べ『中国のコロナ対策』への言及は非常に軽い扱いでしかありませんが)。まあ、澤藤のような「反中国の輩」は「月刊経済の唐鎌論文」を読んですらも「唐鎌は不当に中国を美化してる」と言いかねないと思いますが。たぶん浅井氏の中国「コロナ対策」評価も澤藤にとっては「浅井は不当に中国を美化してる」なのでしょう。俺個人は阿部、澤藤、田畑ら「リベラル21一味」の方が「不当に中国を低評価してる」と思いますが。

*15:ウーバーイーツユニオン組合員

*16:日本労働弁護団常任幹事・事務局次長

*17:日本共産党衆院議員。党常任幹部会委員。党国際委員会副責任者

*18:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相などを経て大統領

*19:東京外国語大学名誉教授。著書『ロシアの体制転換』(2005年、日本経済評論社)、『新ロシア経済図説』(2010年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『ロシアでの討論:ソ連論と未来社会論をめぐって』(2015年、ロゴス)など

*20:プーチン政権大統領府第一副長官、大統領府長官、第一副首相、大統領(メドベージェフが大統領の時期、プーチンは首相兼与党「統一ロシア」党首)、プーチン政権首相等を経て、現在、安全保障会議副議長(ドミートリー・メドヴェージェフ - Wikipedia参照)

*21:連邦税務局長官(国税庁長官)から首相に大抜擢。その政治的実績のなさから実質的な内閣のトップは「メドーベジェフ内閣経済発展相、経済担当大統領補佐官」を経て第一副首相に就任したベロウソフ氏とも言われる(ミハイル・ミシュスティン - Wikipedia参照)。

*22:外務次官、国連大使などを経て2004年から現在まで外相を務める政権幹部(セルゲイ・ラブロフ - Wikipedia参照)

*23:非常事態相、モスクワ州知事などを経て2012年から国防相を務める政権幹部(セルゲイ・ショイグ - Wikipedia参照)

*24:2011年から現在まで財務相を務める政権幹部(アントン・シルアノフ - Wikipedia参照)。