今日の中国ニュース(2021年4月22日分)

拘束の中国人学者を起訴 スパイ罪、北海道で勤務 - 産経ニュース
 何とか一日も早い帰国を望みたい。そのためには事実問題、「日中の外交交渉」しかないでしょう。しかし、中国政府が(機密情報を理由に?)詳しい発表をしないので「何が何だか分からない」と言うのも全く困ったもんです(以上は、中国批判というよりは「単なる事実の指摘」です)。なお、ググったところ、身柄拘束された袁氏には『アメリカと日華*1講和』(2001年、柏書房)と言う著書があるとのこと。


独外相、中国とのデカップリングは「間違った道」 - ロイターニュース - 国際:朝日新聞デジタル

 ドイツのマース*2外相は21日、中国とは相違点が多くあるが、欧州連合(EU)は孤立主義的な姿勢を強めることなく、中国に関与する必要があるとの見解を示した。
 中国の王毅*3国務委員兼外相とのオンライン会談を前に語った。
 「EUは中国をパートナーであると同時に競合相手、体制上のライバルと見なしている」と述べ、「この3つの観点全てにおいて、中国政府との強力で持続可能な対話チャンネルが必要だ。デカップリングは間違った道だ」と強調した。

 デカップリング(decoupling)とは「カップリング(coupling=カップルになること)」に否定の意味の「de(デ)」が付いてるので要するに「カップルにならないこと=(この文脈では)対立すること」ですね。
 もちろん「ODAと日本企業進出のデカップリング」といえば「日本企業の紐付きでない」と言う意味になるので文脈によって意味が変わる言葉です。
 deがついて意味が逆になる言葉には他にも

◆de+increase(増加)=decrease(減少)
◆de+inflation(インフレ)=deflation(デフレ)
◆de+construction(建設)=destruction(破壊)

とかいろいろありますが(こういうのは俺も学生時代はそれなりに覚えました)。
 つまり「平たく言えば」マース外相は「ドイツ企業にとっての中国ビジネスの重要性を考えたら、我々ドイツは中国といたずらに対立する道は選択しない」と明言したわけです。
 もちろんこれはマース氏個人の意見の訳もなく「メルケル首相ら政権与党の総意」でありドイツ財界の考えでもあるでしょう。
 産経ら反中国ウヨが何を言おうとも「これが中国を巡る国際社会の現実」です。産経が希望するような反中国路線を「ドイツがとらないであろうこと」はもちろん「他の諸外国(勿論、日本を含む)」だってそんな路線はとらないでしょう。


中韓の原発汚染水処理基準は低い? 外交部、「概念のすり替えだ」--人民網日本語版--人民日報
 1)いわゆる「アルプス」で「トリチウム以外の放射性物質が全て除去され、汚染水にはトリチウムしか残ってない」と言えるか疑問、
 2)トリチウムが日本政府がいうほど安全か疑問
というのは「中国以外の汚染水放出・反対派からも出ている指摘」であり、全く正論だと思いますが頭痛がするのは「自民党経産省、電力会社、電力労組」に怯えているのか、日本のマスコミ、特にテレビ局がそうした報道をまるでしないことですね。
 さすがに「ワクチン接種の遅れ」では菅批判するとは言え、「それ以外では露骨に菅批判から逃げる日本のテレビ局」には心底呆れます。


原発処理水「飲用に適さない」 台湾側、麻生氏に反論:朝日新聞デジタル
 ということでウヨ連中は「台湾の慰安婦問題(台湾にも元慰安婦はおり日本政府に批判的)」「台湾の尖閣問題(台湾も尖閣の領有権を主張)」同様に今回も「台湾は反日中韓とは違う親日国家」というフィクションを維持するために「見て見ぬ振り」でしょうが、麻生の暴論には「ウヨが悪口する中韓政府だけでは無く」台湾政府も「婉曲な形」とはいえ批判をしています。
 それにしても

・海洋放出が決まった東京電力福島第一原発の処理水について、麻生太郎財務相が「飲んでも何ということはない」などと発言したことをめぐり、台湾で原発行政を担う「原子力委員会」トップの謝暁星主任委員は21日、「もちろん飲用には適さない」と述べた。
・飲用に適さない根拠までは言及しておらず

て「朝日はアホか」ですね。そんなことは馬鹿馬鹿しくて台湾政府だって「わざわざ言う気にならなかった」だけの話でしょう。
 もちろん「麻生をボコボコにして日本との関係をいたずらに悪くしたくなかった」というのもあるでしょう。
 まさか朝日は「台湾政府が明確に根拠を上げなかったから麻生の言い分が間違ってるとは言えない」とかばう気なのか。「なら朝日の記者が麻生と一緒に飲めよ」と言いたくなりますね。


「棚上げ合意なかった」「中国は国際法違反」 米シンクタンク、尖閣問題でシンポ - 産経ニュース

 兼原信克*4内閣官房副長官補は、4半世紀異議を唱えなかった中国が尖閣領有の主張を始めたのは昭和44年に国連が石油埋蔵の可能性を示唆してからで、「同47年の日中国交正常化、同53年の日中平和友好条約交渉で尖閣諸島『棚上げ』合意はないことは公開外交記録で明らか」と述べた。

 よくもまあこんなデマが放言できたもんです。もちろん尖閣問題で日中間で棚上げ合意があったなんてことは、国会でも答弁されている - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)などが指摘するように「棚上げ合意」は存在します。この種のデマ右翼が詭弁で否定しているだけの話です。
 しかしこの兼原、兼原信克 - Wikipediaによれば、「第2~4次安倍内閣内閣官房副長官補」とはいえ、「元・外務省国際法局長」、つまり「政治家では無く外務官僚」、それも「建前では国際法解釈の専門家」ですからね。よくも恥知らずにデマが飛ばせるもんです。まともな人間なら、いくら「安倍に媚びることによって出世した」とはいえ「安倍が退任した今」ここまで恥知らずにはなれないでしょう。兼原一人に留まらず、「外務省の国際法解釈は、自民党に媚びへつらっており、嘘八百、デタラメ三昧」というイメージを世間に与えますからね。
 ついでに指摘しておけば、兼原ら反中国ウヨが「中国は反日だが台湾は親日国家」というフィクションを維持するために「尖閣領有権については中国政府だけで無く、台湾政府も主張していること」を無視するのもいつものことです。

*1:この場合の「華」とは「中華民国(台湾)」のこと

*2:第3次メルケル内閣法相を経て、現在、第4次メルケル内閣外相

*3:駐日大使、中国共産党中央台湾工作弁公室主任(国務院台湾事務弁公室主任兼務)などを経て国務委員(外交担当)兼外相

*4:著書『戦略外交原論』(2011年、日本経済新聞出版社)、『歴史の教訓』(2020年、新潮新書)、『安全保障戦略』(2021年、日本経済新聞出版社