無能な俺でも紹介できる範囲で紹介しておきます。
◆「政治とカネ」問題が自民党政治からの抜本的転換を求めている(上脇博之*1)
(内容紹介)
Q&A形式で書いてみます。
Q
なぜ自民党は裏金を必要としたのでしょうか?
A
一つはやはり選挙(国会議員、地方議員等)での買収工作でしょう。
もう一つ私が上げたいのは
1964年自由民主党総裁選挙 - Wikipedia
1964年に池田勇人*2総裁の任期満了を受けて行われた自民党総裁選のことである。三選を期する池田(池田派領袖)が、池田の政権運営に批判的であった佐藤栄作*3(佐藤派領袖)、藤山愛一郎*4(藤山派領袖)を破って三選を果たした。
この総裁選にはかつてないほどの「裏金」が投入され、次のような酒にかけた隠語まで登場した。
「生一本」(所属している派閥の意向に従うこと)
「ニッカ」(二派閥から金をもらうこと)
「サントリー」(三派閥から金をもらうこと)
「オールドパー」(あちこちの派閥から金をもらい、結局誰に投票したか不明なこと)
という過去の自民党総裁選での買収工作です。
長期政権で「自民党総裁=事実上の首相」になってしまったのでそういうことが横行するわけですが、自民党総裁選は建前では「政党の総裁選」でしかない(野党の党首選と変わらない)ため、公職選挙法の適用がない。さすがに今では自民党総裁選も、そこまで酷くないようですが「派閥議員に派閥ボスが金を配る」「自派閥によいポスト(政務三役、党役員)を得るために派閥ボスが、党内有力者(党三役など)に金を配る」という形で自民党という政党は「裏金を使うことが半ば当たり前」になっていたのではないか。
Q
裏金をなくすために必要なことは何でしょうか?
A
私個人は「事実上の賄賂」となっている企業、団体献金を完全禁止すべき(共産の主張と同様)と思っていますが、少なくとも政治パーティ券販売への規制はもっと強めるべきだと思っています。
現在、一般的な企業、団体献金と比べパーティー券規制は緩い。裏金作りの舞台となったのもパーティー券販売です。
少なくともパーティー券は企業・団体献金と違い、建前は「単に金を出して政治家を支援すること」が目的ではない。
建前では、『パーティーに参加し政治家の講演を聞いたり、政治家と対話したりすることで、その政治家に対する認識を深めること』が目的の訳です。その建前を考えれば、企業・団体献金を容認する立場であっても、「企業、団体のパーティー券購入」は罰則付きで禁止すべきです。企業、団体の構成員(社長や重役など)ならともかく、企業、団体それ自体が「政治家の講演を聞いたり、政治家と対話したりすることで、その政治家に対する認識を深めること」はありえないからです。
同様の理由で「パーティー会場の定員を大幅に超えるパーティー券販売」「そもそもパーティー開催実態すらない架空パーティー」など「パーティー券販売を隠れ蓑にした、ただの政治献金」については「個人献金」であっても罰則付きで禁止すべきです。
繰り返しますが、政治パーティーは、建前では、『パーティーに参加し政治家の話を聞いたり、政治家と対話したりすることで、その政治家に対する認識を深めること』が目的の訳です。定員を大幅に超えるパーティー券販売ではパーティーに参加できない大量の人間が当然出るし、架空パーティーに至っては論外です。
なお、高市氏については
赤旗高市氏の不起訴不当/上脇教授、検察審に申し立て2025.9.20
高市早苗前経済安保担当相の自民党支部が受け取ったパーティー券代金22万円を政治資金収支報告書に記載せず、購入者側の収支報告書に無断で「修正」をしたなどとして刑事告発されながら、奈良地検が不起訴としたことは不当だとして18日、告発した上脇博之神戸学院大学教授は検察審査会に申し立てました。
高市首相らに告発状「上限超え寄付」の規正法違反容疑 神戸学院大の上脇博之教授 - 産経ニュース2025.12.4
高市早苗首相が代表を務める自民党支部が昨年、企業から政治資金規正法が定める年間上限額を超える寄付を受けていたとして、神戸学院大の上脇博之教授は4日、高市氏らに対する同法違反容疑の告発状を奈良地検に送付した。
ということで彼女自身も「疑惑の当事者」であることを指摘しておきます。
◆排外主義に抗する:移民受け入れの論点(髙橋万里)
(内容紹介)
参政党の躍進を受けて「排外主義に迎合する一方」で「安い外国人労働力を活用したい」と言う財界要望への対応から「外国人技能実習制度の導入」「安倍政権下での入管法改定」などで「移民(外国人労働力導入)拡大方針」をとる自民党政府を「移民拡大の是非はともかくそうした方策をとるのなら、多文化共生に向けた政策をするべき」であって「排外主義への迎合」と「移民拡大」を同時並行で進めている政府に対し「事態をかえって混迷させている」と批判している。
また今後「さらなる移民拡大をすべきかどうか」はともかく、既に「外国人技能実習制度の導入」「安倍政権下での入管法改定」などで受け入れた外国人(現時点でも相当の数いる)については「母国に帰れ」というわけにもいかないので
1)外国人労働者の労働条件改善
2)日本人とコミュニケーションが取れるようにするための「日本語教育」及び、そうした「日本語教育」が「単なる同化政策」に堕しないための、母語(民族語)教育の実施
など「多文化共生に向けた政策をするべき」としている。
赤旗不法滞在者ゼロプラン/日弁連会長が反対声明(2025.7.24)が報じるように、各方面からの批判がある、差別的な外国人認識に基づく、いわゆる「不法滞在者ゼロプラン」は白紙撤回すべきとしている。
なお、「犯罪増加(そのような事実は統計上ない)」などの明らかな外国人誹謗デマも高橋論文では批判されている。
高橋論文も批判するように
【1】「安倍政権下での2018年12月の入管法改定(明らかに移民増加にシフト)を、その後も安倍政権を支持し続けること(安倍の退陣は2018年12月の入管法改定から、約1年9ヶ月後の2020年9月だが、退陣理由は少なくとも「入管法改定への批判」ではない)で事実上容認した日本人多数派」が排外主義を支持する事
【2】排外主義を支持する人間が安倍政権の流れをくむと自称する高市政権(高市氏は安倍政権下で総務相や自民党政調会長を歴任)を支持すること
は「認知の歪みが酷い」と言うべきでしょう。
◆ 財界本位の自民党政治を衝く・結党から企業献金への執着まで(下):経団連の〝通信簿〟政治を左右する「政策評価」と政治献金(小松公生*5)
(内容紹介)
新刊紹介:「前衛」2025年10月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した(上)の続き。経団連の「政党通信簿」による政策買収が批判されている。
参考
赤旗主張/経団連の政党評価/財界は政治と政策買収やめよ2018.10.17
日本経済団体連合会(経団連)が、今年の政党の「政策評価」を発表しました。政党の“通信簿”ともいうべき「政策評価」を示して、会員の企業や業界団体に呼びかけて自民党やその政治資金団体・国民政治協会へ献金をあっせんするのは、事実上の政党・政策買収です。
◆日本学術会議「法人化」法のもとで問われる課題(改正充*6)
◆ルポ『日本学術会議「法人化」法案反対運動を振り返り、記録する』(朝岡晶子)
(内容紹介)
学術会議改悪法を批判した上で、法の建前は少なくとも「学術会議の御用機関化」ではないのであり、「御用機関化(政府に迎合的な会員の任命や、学術会議役員の選任)」を許さない、今後の監視活動の重要性が指摘されている。
◆プラザ合意から40年:問われる国際経済(増田正人*7)
(内容紹介)
プラザ合意(1985年)の内容的な是非はともかく、プラザ合意参加国(日米英独仏)限定とは言え、1985年当時は米国が「協調経済外交」の立場だったことを指摘。「協調経済外交」を放棄し、「米国第一主義」を掲げ、相互関税を一方的に押しつけるトランプ政権が批判されている。
但し、2025年の「協調経済外交」は1985年と違い「グローバルサウスに目配りした物である必要」があると指摘されている。
◆トランプ政権による課税合意のちゃぶ台返しを許さない:内外世論と結んだ日本共産党の国会論戦(丸井龍平)
(内容紹介)
OECDの国際課税合意からの離脱を表明したトランプ政権が批判されているが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考
GAFAの働きかけも影響? トランプ氏離脱で漂流する国際課税 | 毎日新聞2025.2.3
トランプ米大統領が、米国を含む約140カ国・地域で合意した国際課税の枠組みから離脱しようとしている。法人税率の世界的な引き下げ競争やIT大手企業などによる税逃れに歯止めをかけるための歴史的な合意の行方は見通せなくなった。
トランプ氏は大統領に就任した1月20日に公表した覚書で、経済協力開発機構(OECD)主導で議論し、2021年10月に合意した国際課税のルールから事実上離脱する方針を表明した。
覚書の念頭にあるのは、法人税の最低税率を15%にするという国際課税ルールだ。
一定規模以上の多国籍企業を対象に、税負担が15%になるまで各国・地域で課税できるようにする制度で、低い法人税率で企業誘致*8するメリットを乏しくさせる狙いがある。各国が国内法の整備を進めてきた。
最低税率ルール「米企業に適用されず」財務長官表明 G7も「理解」 [トランプ再来]:朝日新聞2025.6.27
ベッセント米財務長官は26日、世界共通の最低法人税率を設ける国際課税の枠組みから、米企業を除外することで主要7カ国(G7)が合意したと明らかにした。トランプ米政権はかねて、国際課税に反発する姿勢を示していた。日本はあくまで最低税率の実現をめざす構えだが、米国も巻き込んだ枠組みを維持できるかは見通せない。
経済協力開発機構(OECD)が中心になって進めてきた最低法人税率について、ベッセント氏はX(旧ツイッター)に「米国企業には適用されない」と投稿。「米国の利益を守るG7諸国の共通理解を発表することになった」ともつづった。
◆下請事業者の価格交渉・価格転嫁の実態と改正下請法(宮津友多)
(内容紹介)
2026年1月から施行される改正下請法(改正を契機に「中小受託取引適正化法(取適法)」に名称変更)について論じられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
特集「動き出した学習指導要領改訂で問われていること(上)」
◆学習指導要領の改訂は授業をどう変えるのか(本田伊克*9)
(内容紹介)
2030年度に施行予定の「改訂学習指導要領(現在は改訂準備作業中)」について、現時点での文科省の「改訂準備作業(中教審への諮問など)」が批判的に論じられていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考
学習指導要領の改定を諮問、「情報モラル」高める教育の検討求める…学校の裁量拡大も議論へ : 読売新聞2024.12.25
阿部文部科学相は25日、小中高校のカリキュラムの基準となる学習指導要領の改定を中央教育審議会に諮問した。改定は10年ぶりとなる。
中教審は2年かけて審議し、2026年度に答申する予定。新指導要領に基づく授業は30年度以降に小中高校で順次始まる見通しだ。
諮問では、生成AI(人工知能)などのデジタル技術が発展する一方、デジタル化の負の側面が顕在化していることを指摘。中教審では、自分と似た意見や情報にばかり触れる「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といった現象を踏まえ、情報教育をどう充実させるかを検討する。
文科省は、学校の裁量拡大も課題に位置付けた。教員が創意工夫して授業を行えるよう、時間割や授業時間などの教育課程の編成を柔軟にする。小中学校の1コマあたりの授業時間を5分ずつ短縮するなどし、生じた「余白」の時間を活用して個々の児童生徒に合った教育をしやすくする。
また、総授業時間数については「現在以上に増やさない」ことを前提とした。教える内容が過剰となっているとの指摘を踏まえ、教科書の内容や分量のあり方について意見を求める。
学習指導要領のポータルサイト開設、文科省方針 AIも活用しやすく - 日本経済新聞2025.11.12
文部科学省は12日、学習指導要領の改訂を議論する中央教育審議会の特別部会で、指導要領やその解説、授業で活用できる副教材などに一元的にアクセスできるポータルサイトを作る方針を示した。教員が必要な情報を見つけやすいようにして、授業準備の効率化や指導の質向上につなげる。
教育内容の基準を定める指導要領と解説は学校種ごとに作られ、紙の冊子とPDFで提供されている。ただ教員側からは情報が分散しており、参照しにくいという声が出ていた。
ポータルサイトは2027年度中に開設し、次期指導要領の実施が始まる30年度に向けて改善を進める。学校種や教科を横断してキーワード検索できるようにするなどし、利便性の向上をはかる。人工知能(AI)に読み込ませやすいデータ形式にして、授業の計画策定にAIを活用できるようにする。サイトは保護者も閲覧できる。
「ギフテッド」支援は理数教科 次期指導要領、文科省案(共同通信) - Yahoo!ニュース2025.11.13
次期学習指導要領に関する中教審作業部会が13日開かれ、文部科学省は、特定の分野で突出した才能を持つ「ギフテッド」と呼ばれる児童生徒について、個別の学習指導計画を作成できるようにする特例制度の主な対象を算数・数学や理科にするとの案を示した。
ギフテッドの子どもは発達の特性から学習や生活上で困難を抱えることもあり、特例制度の適用が困難さの軽減につながるかどうかなどを考慮する。総合的な学習の時間や各教科の時間を利用し、高校で授業を受けたり、空き教室で大学のオンライン授業を受講したりするといった対応を検討している。
今後、特例制度の対象などについてガイドラインを作成する。
話が脱線しますがギフテッドについては以下を紹介しておきます。
単純に「頭が良くて素晴らしい」と喜べる話ではないことが分かります。
第43回 「ギフテッドは“恵まれた才能”なのか?」(令和5年8月)|西宮市ホームページ2023.12.8
ギフテッドとは「才能に恵まれた優秀な子」なのでしょうか?。実はそれは誤った理解です。
ギフテッド児のうち「数学の天才」のような才能を顕著に発揮するケースは稀です。また何事も優秀なわけではなく、1つか2つの分野で才能を示すことがありますが、その他の分野は平均かそれ以下のことが多いようです。得意不得意のアンバランスさがあり、「総合的には成績は良くない」ケースも多いのです。「ギフテッド=天才」ではないということです。
また、ギフテッド児が発達障害や精神疾患を併せ持つことが多いことも報告されています。優れた才能と障害の双方があることは、「2重に特別な状況(twice-exceptional: 2E)とも呼ばれています。
IQ120以上のずば抜けた知力を持つ一方、“問題児扱い”されることも…「ギフテッド児」が直面する困難とは(with online) - Yahoo!ニュース2025.9.26
ギフテッドの特徴は「IQが120〜130以上で、先天的に著しく高い能力がふたつ以上あること」とされています。WISC(ウィスク)と呼ばれる知能検査が客観的な指標のひとつに用いられます。
しかし医学的な診断名ではありません。世界共通の診断基準等はなく、教育的・社会的概念です。
ギフテッドをもつ子どもたちは、ずば抜けた知的能力のほか旺盛な好奇心、驚異的な記憶力、想像力など、特定の学問やジャンルで高い能力を発揮します。なかには秀でたリーダーシップを発揮する子もいます。
一方で興味のないことにはまったく関心を示しません。神経質で感情の起伏が激しく、学校や家庭で「扱いづらい子」と問題児扱いされる*10こともあります。社会性が低い点も共通の特徴で、集団のなかで孤立しがちです。
またギフテッドにはASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など発達障害のもつ症状との重なりも目立ちます。ギフテッドと発達障害の要素をあわせもつ場合、「二重に特別な人間=Twice Exceptional」を意味する2Eと呼ばれます。
シリーズ「戦後80年」
◆『侍従長・百武三郎*11日記』から見る昭和天皇の戦争(山田朗*12)
(内容紹介)
百武日記からは、「本庄繁*13、畑俊六*14など陸軍軍人が務める慣例となっていた*15侍従武官長」に対し、百武や彼の前任侍従長である鈴木貫太郎、彼の後任侍従長である藤田尚徳*16(いずれも海軍出身)が自らの立場を単なる侍従長ではなく、「陸軍とは異なる軍事情報を海軍として伝える海軍代表者*17」「海軍版侍従武官長」と位置づけていること、昭和天皇側も「陸軍とは違う情報ルート」として評価していることが窺える。
また「杉山メモ(杉山*18参謀総長の上奏内容を記録)」など陸軍、海軍の記録ほどではないが、百武日記からも昭和天皇が「受動的な存在」ではなく「主体的な存在(大元帥、つまり軍最高司令官)」として軍事的な決定をしていることが窺える。
参考
(日米開戦80年)昭和天皇、開戦「覚悟」の秋 侍従長日記に記述、内大臣「ご先行お引きとめ」=訂正・おわびあり:朝日新聞(北野隆一*19)2021.12.5
これまで百武については政治に関与せず、侍従長として「天皇の身の回りの世話役」に徹したとする見方が強かった。日記に天皇をめぐる政治や軍事に関する記述が多く残されていたことに、歴史研究者からは驚きの声も出ている。
戦前や戦中の昭和天皇の動向に詳しい茶谷誠一(ちゃだに・せいいち)*20志學館大教授(日本近現代史)は「昭和天皇の姿勢が開戦に向けて傾斜しつつあることに側近から懸念が示されたとの詳しい記述は、昭和天皇実録を含む従来の史料にはなかった。日本の指導者がどのような過程で開戦に至ったかを天皇側近の目から記した重要な記録だ」と話している。
(日米開戦80年)迫る戦争、苦悩にじむ天皇=訂正・おわびあり:朝日新聞(北野隆一)2021.12.5
天皇は1942年9月ごろまでは開戦に慎重な姿勢を示し続けたとされるが、1942年10月13日、百武は日記にこう記した。
《宮相*21本日拝謁(中略)切迫の時機に対し已(すで)に(ボーガス注:対米戦争の)覚悟あらせらるゝが如(ごと)き御様子に拝せらると。先頃来木戸内府*22も時々御先行を御引止め申上ぐる旨語れることあり。先頃来案外に明朗の龍顔*23を拝し稍不思議に思ふ》
松平恒雄*24宮内大臣や木戸幸一*25内大臣ら天皇に会った側近から、陛下がすでに(ボーガス注:対米戦争の)覚悟を決め、気持ちが先行している様子だと聞いた。百武から見ても、先ごろから陛下の表情が明るいので不思議に思った、との内容だ。
木戸の日記にも同じ13日、天皇が「万一開戦となる場合、宣戦の詔勅を発することとなるだろう」と開戦に触れた発言が記されている。天皇は「開戦を決意する場合、戦争終結の手段を初めから研究しておく必要がある」とも語ったと木戸は書いている。
この時期の天皇の言動について、山田朗(あきら)・明治大教授(日本近現代史、軍事史)は著書「昭和天皇の戦争*26」で「戦争という選択肢が天皇のなかで次第に有力なものになってきたことを示している」と解説*27する。
これに対し、その4日前の10月9日。
《博恭(ひろやす)王殿下参内(さんだい)(中略)稍紅潮御昂奮(こうふん)あらせらるゝ様拝す》
海軍軍令部総長を務めた皇族の伏見宮博恭(ふしみのみや・ひろやす)王*28と対面した後、天皇が顔を紅潮させて興奮した様子だったと百武は記す。議論の内容は翌10日、木戸が天皇から聞いた話として記された。
《昨日伏見宮殿下は対米主戦論を主張せられ之れなくば陸軍に反乱起らんとまで申されたる由(中略)又(ま)た人民は皆開戦を希望すとも申されたりと》
伏見宮が「米国と戦争しなければ陸軍に反乱が起きる」「人民は開戦を希望している」などと主戦論をぶったという。「昭和天皇実録」によると天皇は「一戦は避けがたいかもしれないが、今はその時機ではなく、なお外交交渉を尽くすべきだ」と反論。伏見宮は主張を取り消したという。
日米首脳会談の提案に対してハル国務長官は10月2日、実質上の拒否を回答。行き詰まった近衛*29内閣は10月16日に総辞職し、軍人の東条英機*30が18日に首相となった。
さらに11月20日。
《内府(木戸)曰(いわ)く上辺の決意行過ぎの如く見ゆ》
百武は、天皇が開戦に傾く様子を木戸が懸念したとみられる「陛下の決意が行き過ぎのように見える」との発言を記した。これにつながる二つの出来事が、直前の15日の大本営政府連絡会議であった。
一つは図上で作戦を説明する「兵棋(へいぎ)演習」。真珠湾攻撃を含む作戦計画が天皇に提示されたという。
もう一つが「戦争終末促進に関する腹案」の決定だ。開戦にあたり、戦争をどう終わらせるか研究しておくべきだと考える天皇を説得し、決断を促すため軍部がつくったとみられる。
事態は開戦へと向かっていく。
日米交渉は11月26日、ハルが日本に対し、中国やインドシナからの撤兵や三国同盟破棄を迫る「ハル・ノート」を示し、事実上決裂した。
28日、天皇は東郷茂徳*31外相からハル・ノートについて報告を受けた。百武は「米国はついに開戦せざるを得ないと決心したか」と記した。
百武三郎の日記をどうみるか。識者に聞いた。
茶谷誠一(ちゃだに・せいいち)志學館大教授(日本近現代史)は「この時期は(ボーガス注:山県有朋*32(1922年死去)、西園寺公望*33(1940年死去、最後の元老)など)明治からの経緯を知り大局的な見地から助言する元老のような存在がいなくなり、天皇は一人で判断しなければならなくなっていた」と分析。「早期開戦論を抑え、外交を尽くすべきだと説く有力な後ろだてを欠くなか、天皇が軍部の説得を日々聞くうちに次第に開戦容認に傾く様子を、側近(百武)が危ぶむ言葉が記されているのが興味深い」と語った。
加藤陽子*34東京大教授(日本近現代史)は天皇が皇族の伏見宮博恭王と対面した際の記述に注目する。「海軍の作戦・指揮のトップである軍令部総長を長年務めた伏見宮は天皇より年上で、日露戦争での実戦経験を恃(たの)む皇族。『開戦しないと陸軍に反乱が起きる』とまで述べて迫ったことは、天皇が開戦を決意する一つの大きな要因を形成したのではないか」と話している。
回避論から一転、開戦に傾斜した昭和天皇 歴史学者が受けたショック:朝日新聞(北野隆一)2024.12.7
静岡県立大教授の森山優(あつし)*35(62)は、日本歴史学会発行の「日本歴史」誌編集部から依頼され、同誌2023年8月号に「『百武三郎日記』に見る昭和天皇の対米開戦決意」との一文を寄せた。
百武の日記を精査した森山が実感したのは、天皇が1941年10月中旬以降、これまでの資料で想定されたよりも、開戦に前のめりだったということだ。1941年10月13日の日記によると、天皇と会った宮内大臣の松平恒雄が「すでに(ボーガス注:対米戦争の)覚悟あらせられるご様子」と述べ、天皇の政務を補佐する内大臣の木戸幸一も「ときどきご先行をお引き止め申し上ぐる」と語っていた。
(以下は有料記事です)
「戦争はしてはいかぬと思ひながら」…昭和天皇が側近に漏らしていた太平洋戦争開戦に同意した理由 ヒトラーに対して同情的な発言をしたことも | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)(北野隆一、2025.9.14)から一部引用
太平洋戦争開戦後の1942年6月5〜7日、中部太平洋の制海権を争ったミッドウェー海戦で、日本は主力空母四隻*36と熟練航空兵多数を失う大敗を喫した。6月8日に天皇に会った木戸は日記に「天顔*37を拝するに神色*38自若として御挙措平日と少しも異ならせ給わず」として、天皇の表情や挙動が平然とした様子をつづった。
しかし百武は同日の日記で「平静に拝せるも御血色御宜しからず」と書き、(ボーガス注:平静を装っていても、さすがにミッドウェー海戦の大敗で衝撃を受けた)天皇の顔色の微妙な変化を感じ取っていた。
天皇は苦悩するとしばしば独りごちた。百武は1942年9月16日、「大声、何か推論あらせらる。『ソロモン』作戦の失敗に因するか」として、(ボーガス注:「ソロモン諸島の戦い」での)攻撃失敗の報告を受けて大声で独り言を口にする天皇の様子を記している。
(ボーガス注:海軍軍人出身の)百武は天皇の身の回りの世話だけでなく、政治・軍事情報、とくに海外の情報を天皇に伝える役割をも果たしていた。
開戦後の百武日記には「短波放送は宣伝戦にして之を一々御覧あるは有害無益なるに付、従来通り侍従長より撰択の上聖聴に達することに奏上[天皇に伝達]済」(1942年1月30日)とあり、外国の短波放送を聞き取った内容については、侍従長が内容を選択して天皇に伝える役割であることが書かれている。
1943年3月18日には「短波の『ヒツトラー』神経疲労放送に付言上せるに、其責任の重大に鑑み事実なるやも知れずと同情的御言葉あり」とある。ドイツのアドルフ・ヒトラーが(ボーガス注:戦況が悪いことで)神経疲労であるとの短波情報を伝えたところ、(ボーガス注:戦況が悪いことで、ヒトラーと同様に精神的ストレスを抱えていた)天皇がヒトラーに対して同情的な発言をしたことも記されている。
山田朗は『増補・昭和天皇の戦争*39』で「陸軍が慣例として侍従武官長を握っていた関係で、昭和戦前期の侍従長は、海軍上層部とのパイプ役、国際・軍事情報や海軍戦略に関するアドバイザーという、いわば第二侍従武官長*40としての役割も期待されていたと考えられる」(296頁)と分析*41した。
これに対し、吉田裕*42一橋大学名誉教授は「侍従長はやはり天皇の身の回りの世話が基本だったのであって、軍事的役割は副次的・部分的なものではないか」と言う。
朝日新聞において北野記者が「百武日記」についての記事を多数書き、それが北野氏の著書『側近が見た昭和天皇』(2025年、幻冬舎新書)に結実したことが窺えます。
◆ 治安維持法下の青春を生きた母の記憶によせて(原田完*43)
(内容紹介)
今日のしんぶん赤旗ニュース(2025年9/4〜9/6日分)(副題:「戦前女性共産党員への特高の性加害」ほか) - bogus-simotukareのブログでも紹介しましたが、ネット上の記事紹介で代替。
きょうの潮流 2025年9月6日(土)
戦前、絶対的天皇制下の日本。女性に選挙権がなかった時代に、性差別に沈黙することなく生き抜いた女性たち。日本共産党の党員になり戦争をしない平和な社会を求め、貧困をなくしたいと治安維持法による迫害や投獄にも屈せずに
▼先月16日放送のTBS報道特集が伝えたのは、そんな女性党員たちの姿とこれを敵視する当時の特高警察(特別高等警察)による容赦のない拷問の実態でした。
山田寿子(としこ)さん。1930年、神奈川県で特高に「検挙」されました。戦後に筆圧強めに書いた手記には、「冷酷で女にとって屈辱的な拷問」を「大の男5~6人」から受けたと。性的拷問が詳細に書かれていました
下半身にたばこの火 治安維持法下、知られざる女性への性的拷問 | 毎日新聞2025.4.22
「裸にされ、下半身にたばこを押しつけられて……。どれだけひどい辱めだったのか」。
元京都府議*44の原田完さん(74)=京都市中京区=は自身が高校生のころを思い出す。ある日、母の山田寿子(としこ)さん(1998年に87歳で死去)が、自宅を訪ねてきた作家*45につらい過去を淡々と語っている姿を見た。初めて知る衝撃的な事実。原田さんは、母が亡くなるまで詳しく尋ねることができなかった。
暴走した悪法「治安維持法」制定100年「屈辱的な拷問受けた」弾圧された女性たち【報道特集】 | TBS NEWS DIG(2025.8.20)から一部引用
特高警察による拷問は、性的暴力にまで及んでいた。
山田寿子さんの手記
「冷酷で、女にとって屈辱的な拷問を私は(ボーガス注:神奈川県警)戸部署*46で受けました。大の男5~6人で、私の衣服を全部ぬがせ全裸にして、後ろ手錠で倒し拷問を始めたのです」
「獣のような彼らは私の陰部をタバコの火で焼いたのです」
私と日本共産党(1) 京都府会議員団長・原田完 | JCP京都: 日本共産党 京都府委員会*47
母*48は戦前、治安維持法で4回検挙され、筆舌に尽くせぬ辱めや拷問を受け7年の実刑で市谷刑務所から栃木刑務所へ送られた経験がありました。
母は19歳で関東金属労働組合本部の活動に参加し、3・15*49、4・16*50と続いた弾圧を経て、1930年春に共産党の入党を勧められ即座に入党を決意しました。(ボーガス注:小林多喜二の虐殺(1933年)などを考えれば)当時の絶対主義的天皇制のもとでは、死も覚悟した入党であり、「自分も階級戦士の一員として革命運動の戦列に加わる事が出来たのだ」と「生涯忘れえないことであろうと感激にひたり体が喜びに震える思い」であったとしていました。
治安維持法で人格の否定、肉体的、精神的苦痛、孤立化、不安と仲間への思いと自身の否定、その中でも党への信頼を持ち続けた。この母の思いを少しでも受け継ぎたいと思っています。
◆長良川河口堰運用30年の実態と川の再生(粕谷志郎*51)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
長良川河口堰を考えよう!完成から30年、観察会やシンポジウム [三重県]:朝日新聞2025.6.5
全国的な反対運動を押し切り、国が1995年に完成させた長良川河口堰(三重県桑名市)をめぐり、市民グループ「よみがえれ長良川実行委員会」が、河口堰の運用見直しを求め、活動を続けている。6月1日には現地で自然観察会を開き、30年前にゲートが下ろされた7月6日、岐阜市でシンポジウムを開く。
1日の観察会は約30人が参加。建設段階から反対運動にかかわる同実行委共同代表の粕谷志郎・岐阜大名誉教授(76)が、「流れを遮られ、堰の下流にはヘドロがたまった。隣の揖斐川の砂地と対照的だ」などと説明した。
(社説)長良川堰30年 試験開放の議論を前へ:朝日新聞2025.7.5
環境への影響をめぐり全国的な反対運動が広がった事業だが、水利用は進んでいない。いっそ試験開放して周辺環境の回復を図れないか。現地で始まった議論を具体的に前へ進めるときだ。
「清流を守れ」。
東京・銀座ではデモが行われ、与党を含めた国会議員の建設中止署名も集まった。
しかしいったん動き出した巨大事業は止まらなかった。
現在、地元では愛知県知事が委嘱した専門家の検討会が試験開放の議論を続ける。
河川環境は河口堰で分断してしまったが、電動のゲートを上げれば、淡水と塩水が混じり合う汽水域を取り戻すことができる。ほぼ消滅したヨシ原を一部でも復活させれば、魚や虫、鳥のすみかとなる。
河口堰で確保する毎秒22.5トンのうち、使っているのは水道用の16%だけ。それくらいなら別の川で取れる、という。試験開放は韓国などで先例があり、夢ではない。
◆論点「地球温暖化と異常気象の関係は「印象」ではなく「科学的事実」」(中村秀生)
(内容紹介)
地球温暖化否定論に対する批判がされていますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
◆暮らしの焦点「迫る「入れ歯」危機と打開の道:歯科技工士の厳しい労働実態」(治田直也*52)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。小生も無知なので今回初めて知りましたが、下記の通り「歯科技工士の厳しい労働実態」については今回の前衛記事以前にも「朝日、読売、東京新聞」、「TBSラジオ(『森本毅郎スタンバイ』のコーナー『現場にアタック』)」等のマスコミで報道されています。
あなたも「入れ歯難民」になる恐れ つくり手の歯科技工士が不足する見通し 高齢化に後継者不足…その理由は:東京新聞デジタル2025.4.25
超高齢化社会が進んでいるのに、入れ歯が作れなくなるかもしれない。
全国の開業医などで構成する全国保険医団体連合会(保団連)は24日、全国の歯科技工所のうち84%で後継者がいないとのアンケート結果を公表した。歯科技工士の高齢化も顕著で、27.5%が「5年後はやめていると思う」と回答。会見した保団連の歯科担当役員は「このままでは近い将来、必ず『入れ歯難民』が発生する」として、技工士の待遇改善などを訴えた。
入れ歯がピンチ 作り手は「時給600円」で苦境、後継ぎ不足も心配:朝日新聞2025.8.27
急速に進む高齢化の中、「入れ歯が欲しくても手に入らない」という日が来るかも知れない。作り手の歯科技工士は不足し、「時給600円程度」と苦境を訴える声がある。取材を進めると、背景にはゆがんだ業界の仕組みがあった。
「本当にやりがいもあって良い仕事だと思う。でも、人間としてまともな生活ができるくらいの余裕はほしい」
大阪府内で歯科技工所を営む男性技工士(51)は、ため息をついた。
スタッフと3人で毎日、10時間近く細かい作業を続けるが、保険による総入れ歯を作って受け取る収入は2万円あまり。生活はぎりぎりだ。6月末の銀行の預金残高は13万円足らずで、妻は「時給に換算すると600円くらい」という。
これまで診療報酬の値上げもあったが、「ほとんど焼け石に水」(兵庫県の歯科技工士の男性)状態だ。
(以下は有料記事です)
【東京新聞紙面連動企画】高齢化社会が進む中、入れ歯作りがピンチ! | TBSラジオ2025.9.15(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』のコーナー『現場にアタック』(近堂かおり氏))
毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日は「歯科技工士苦境・入れ歯作り危機」という記事に注目しました。
高齢化社会が進んでおり、歯科治療の需要は増加しているのですが、その一方で、入れ歯や差し歯、かぶせ物などを作る歯科技工士さんの高齢化が進んでいます。
そのような状況を受けて、全国の開業医などで構成する、全国保険医団体連合会(保団連)が、全国の歯科技工所を対象としたアンケート調査を、2016年に続き実施し、その結果を記者会見を開いて公表した、という記事なのですが、どのようなアンケート結果だったのか。保団連事務局の治田直也さんに聞きました。
治田直也さん
『一週間の労働時間が70時間超、過労死ラインというところになると思いますけれども、そういう方が4割。で、一週間の休日が一日という方が45%、ほとんど取れないという方も合わせて、8割近くの技工士さんが週休1日以下ということになって、一方、一年間の可処分所得が300万円以下という方が39%で、500万円以下を合わせると約65%という結果になりました。で、そういう過酷な実態を受けて、後継者がいないという歯科技工所が84%ということで、まさに高齢化、そして技術が途絶えるという危機にあると感じました。』
歯科技工所によっては何百人も技工士を抱える大規模なところもありますが、今回の回答の技工所の65.4%が、技工士の人数は一人という、小さな技工所。一人で、休みも取れないまま、寝ないで技工物を作っている、と分かったのです。
しかも、84%の技工所が後継者はおらず、年齢的にも、5年後には辞めていると思うと答えた人は27.5%。仕事は好きだけど、体力的にもう無理という声が非常に多かった。
アンケートを集計した治田さんは、このアンケート結果を受けて、今後は、技工物の値上げと、それに伴う国の予算の増額を訴えて動いていく、ということでした。
なり手不足と高齢化、歯科技工士不足で今後「入れ歯難民」の発生も…製作期間もますます長期化 : 読売新聞2025.10.17
入れ歯や歯の詰め物を作る歯科技工士の不足が千葉県内で深刻化している。
歯科技工士の不足は千葉県議会でも問題視された。
歯科医師免許を持つ鷲見隆仁県議(自民党)は県議会9月定例会で、「県内で歯科技工士不足が深刻な状態にある」と指摘。千葉県の山口敏弘・保健医療担当部長は「人口あたりの就業者数が全国平均を大幅に下回る厳しい状況」との認識を示した。
歯科技工士不足の深刻化は「入れ歯難民」を生みかねない。
千葉県歯科医師会(千葉市美浜区)の元会長・砂川稔さん(69)は歯科技工士に認められている業務の幅が狭いことを問題視している。歯科技工士は直接、患者の口腔内を触ることが認められておらず、砂川さんは「患者と直接触れあう機会が少なく、医療に関わっているという実感を持ちにくい状況にあるのではないか」と指摘する。
また、技工料の公定価格の低さが低賃金につながっているとし、国に引き上げを求めている。
砂川さんは「歯科技工士を増やすには、若者にとって『なりたい職業』にすることが重要。国には公定価格を上げると同時に、臨床に関わる業務の幅を広げ、歯科技工士が医療人としてのやりがいを持てるようにしてほしい」と訴えている。
◆ジェンダー覚書 “The personal is political”「マノスフィア:国連ウィメンの警鐘」(藤田文*53)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
話題ドラマ「アドレセンス」とマノスフィア 男らしさを求める背景は:朝日新聞2025.5.2
国際的にヒットしているNetflixのドラマシリーズ「アドレセンス」。イギリスで暮らす13歳の少年が殺人容疑に問われ、その真相に迫っていく4話で構成された物語で、「マノスフィア」というキーワードをはじめ、様々な形で議論を巻き起こしています。作品とその社会背景について、ネットカルチャーや映像文化に詳しい評論家の藤田直哉さん*54に聞きました。
◆記者
「アドレセンス」が注目された理由や背景について、どう考えますか。
◆藤田
13歳のジェイミーという少年が、同級生の女の子を殺害した疑いで逮捕される物語ですが、背景には、インターネットなどの言説があります。舞台となるイギリスでは実際、内務省が過激なミソジニー(女性嫌悪)を過激主義として取り扱うと発表されました。
そういった言説が日本でもアメリカでもイギリスでも広がっていて、ジェイミーはおそらくその思想に影響を受けた一人。フェミニズムへの攻撃や、女性に共感すべきではない、格上に振る舞わないとすぐ格下に見られるなど、女性蔑視的な視点がある。男とはこういうものであり、女とはこういうものである、というある種のステレオタイプな考えを共有するコミュニティーの影響を受けたのでしょう。
◆記者
マノスフィアは、トランプ大統領の再選にも影響を与えた、とも指摘されています。近年、それがさらに強まっているのでしょうか?
◆藤田
非常に強まっていると思います。トランプ氏の再選につながるなど、アメリカで主流派的になりかけている。日本でも、弱者男性論のインフルエンサーのような人がいて、そうした思想がネット上でバズっています。
(以下は有料記事です)
英国で「有害な男らしさ」議論活発に…社会現象になったNetflix「アドレセンス」が描くマノスフィアとは? : 読売新聞(ケンブリッジ大講師・代田七瀬)2025.5.20
(ボーガス注:マノスフィアをテーマにした)イギリスを舞台にしたドラマ「アドレセンス」は今年(2025年)3月にNetflixで配信が始まると、たちまち世界中で話題となり、各国で視聴ランキング1位に浮上。キア・スターマー*55英首相が製作者と懇談し、全英の中学校で無料視聴できるようになるなど「社会現象」となった。
「インセル(不本意な禁欲の略語)」、「ミソジニー(女性蔑視)」、「トキシック・マスキュリニティ(有害な男らしさ)」、そしてそれらの総称である「マノスフィア」が、(ボーガス注:ドラマ『アドレセンス』が描く)「アドレセンス(思春期)」の若者たちの複雑で繊細な感情によって浮き彫りにされた。
マノスフィアとは、「man(男)」と「sphere(領域)」を合わせた造語で、主にインターネット上で「男らしさ」にこだわる考え方に用いられ、フェミニズムや女性に対する偏見の強い「男性至上主義」を指す。
(ボーガス注:ドラマ『アドレセンス』が描く)物語は13歳の少年ジェイミーが、クラスメートの少女を殺害した容疑で逮捕されるシーンから始まる。
ジェイミーはマノスフィアをソーシャルメディアで学び、アルゴリズムによってさらに過激なものに触れ、影響されていったと想像される。「一生童貞!」などとクラスメートからいじめられていたことも描かれる。
女性の臨床心理士ブライアニーとジェイミーとの対話シーンを中心とする第3話は、特に思春期らしい悩みの背後にマノスフィアを想起させられた。「モテ」「性的なこと」などに話題が及ぶと、ジェイミーは感情が抑えられず怒りを爆発させる。
「最近のイギリスでは、何人もの女性が若い男性に殺されているからね。ドラマはイギリスのリアルな闇を映し出しているんだと思う」。
友人ジェニファーは「でもね、よかったことは、このドラマが多くの人を団結させて、意識を高めたってこと」。
このドラマを機に、イギリスでは子どもを持つ親や政治家らが、「有害な男らしさ」やSNSのあり方について、活発に議論するようになった。私はここに、イギリスの希望を見る。さて、日本はどうかな、と思う。
ネトフリが見れる環境にないので「そんなドラマがあるんか?。知らなかった」というのが正直な感想です。
当然『ネトフリの人気ドラマ』としてマスコミで話題の
・地面師たち
2024年7月から配信。積水ハウスが地面師に騙された事件を元にした、新庄耕の同名小説のドラマ化
・極悪女王
2024年9月から配信。1980年代に悪役女性レスラーグループ「極悪同盟」を率いて活躍した女性プロレスラー「ダンプ松本*56(演:ゆりやんレトリィバァ*57)」を描いた。
なども見ていません。
無知なので、「マノスフィア(反フェミニズム、男性至上主義の一種)」という言葉も今回初めて知りました。
トランプを勝たせた「マノスフィア」とは何か?五野井 郁夫(高千穂大教授) - インテリジェンス・ニッポン2024.12.26
トランプはマノスフィアを巧みに掴んだことが勝利につながったという分析も数多く出てきている。トランプが働きかけ今回票田としたマノスフィアは、訳すと「男の世界」「男性界隈」「男性文化圏」とでもいうべきものだ。その主張を分かりやすく説明するならば、世界はフェミニズムとポリティカルコレクトネス(ポリコレ)によって歪められており、自分たちはそれらの犠牲者だと信じる者たちの共同体である。このような反フェミニズム的でミソジニー(女性嫌悪)的な男性中心の世界観からなるオンライン・コミュニティや文化を指す。
日本においてもそうした「マノスフィア(反フェミのネット活動)」が「参政党の躍進」などにつながってる疑いがあり、残念ながら、決して「対岸の火事」ではないでしょう。
文化の話題
◆美術「グローバル化の中の日本:国立新美術館「時代のプリズム」展」(武居利史)
(内容紹介)
ネット上の記事紹介で代替。
激動の20年、戦争に抑圧に向き合って 「時代のプリズム」展、1989~2010年:朝日新聞2025.10.7
昭和が終わった1989年から、東日本大震災が起こる前年の2010年まで、日本でどのような美術表現が生まれ、発信されたのか。約20年間を振り返る展覧会「時代のプリズム:日本で生まれた美術表現1989―2010」が、東京・国立新美術館で開かれている。
(以下は有料記事です)
◆写真「その一枚が罪になる日:スパイ防止法と写真表現」(白鳥悳靖)
(内容紹介)
実際に写真撮影がスパイ扱いされ罪に問われた戦前の事例を指摘し、高市政権や参政党、国民民主党など右翼勢力が主張するスパイ防止法の危険性を批判している。
◆映画「『木の上の軍隊』『宝島』:敗戦時と戦後、沖縄を描く二つの映画」(伴毅)
(内容紹介)
沖縄を舞台にした映画
・木の上の軍隊
沖縄戦を描いた井上ひさしの戯曲の映画化。
・宝島
2018年下半期の直木賞を受賞した真藤順丈の同名小説の映画化。沖縄戦直後から始まった米軍統治時代から、沖縄が日本に復帰した1972年までの沖縄を舞台としている。
の紹介。ネット上の記事紹介で代替。
【参考:木の上の軍隊】
映画「木の上の軍隊」と私たちのいま |嘉手納基地爆音差止訴訟原告団【公式】
1945年、沖縄・伊江島。激しい戦闘のなかで、二人の日本兵がガジュマルの木の上に身を潜め、終戦を知らぬまま2年間生き延びた。
この実話に着想を得て、作家・井上ひさしが原案を遺し、こまつ座にて上演された舞台「木の上の軍隊」が、映画化されました。撮影はすべて沖縄で行われ、伊江島で実際に生い茂るガジュマルの木の上でも撮影が行われています。
山田裕貴が映画「木の上の軍隊」で演じる「極限状態」、リアル突き詰め虫を食べる「ウソをやるのも…」 : 読売新聞2025.6.25
戦地での恐怖や飢え。
山田裕貴さんは、戦中・戦後の沖縄で孤立した兵士2人がもがく姿を描いた映画「木の上の軍隊」(7月25日全国公開)で、新兵・ 安慶名(あげな)セイジュン役を務め、極限状態の人間を生々しく演じきった。
実話をもとにした作品の舞台は、太平洋戦争末期の沖縄県伊江島だ。アメリカ軍の侵攻を受け、壊滅的な打撃を受けた島で追い詰められたセイジュンは、上官とともに敗戦を知らぬまま、大木の上で、敵の影におびえ続ける。
空腹に苦しむセイジュンが虫を食べるシーンでは、実際に本物の虫を食べた。
頬がこけるセイジュンの役作りのため、1か月間の徹底した減量に取り組んだ。
どのくらい体重を落としたのか、気になって聞いてみると。
「わかんないっす」。
はぐらかしたのには理由があった。
「(記事の)見出しを“何kg減量”の文字で埋められるのが嫌で。それより、映画のことを書いてほしい。だから、絶対言わないようにしようって思ってて。すみません」
「木の上の軍隊」モデルの兵士、家族に語った伊江島 沖縄との縁続く:朝日新聞2025.8.11
沖縄戦の激戦地だった伊江島で、敗戦を知らず約2年間、木の上で生き延びた2人の日本兵を描いた映画「木の上の軍隊」が公開中だ。モデルになった兵士の一人は宮崎県小林市出身の山口静雄さん(1988年死去)。帰郷後、再び沖縄を訪れることはなかったが、沖縄との縁は持ち続け、命をつないだ状況を次男の輝人さん(87)らに語っていた。
【参考:宝島】
占領軍から奪う「戦果アギヤー」の誇り 映画「宝島」が描く戦後沖縄:朝日新聞2025.10.29
公開中の映画「宝島」は、戦後の沖縄が舞台。妻夫木聡さんらが演じる親なき青年たちは、米軍基地から食料品などを盗む行為を繰り返す。かつて実在したこの盗難行為は、地元の言葉で「戦果アギヤー」と呼ばれた。
原作は2019年に直木賞を受けた真藤順丈さんの同名小説。
映画の冒頭に描かれるのが、日没後の米軍基地に忍び込んで物を盗むシーンだ。
「特にベーコンは高く売れたね」。
沖縄県国頭村の漁師・山城善勝さん(81)はそう回想する。周囲から「あの映画は勝ちゃんの人生まんまだ」と言われた。米軍基地のレストランで調理の仕事をしていた10代後半のころ、退勤のたびに果物やコーヒー、卵などを車に載せて持ち出し、市場で売った。まな板ほどの大きなベーコンを1枚売ると1カ月の給料分ほどになった。
(以下は有料記事です)
【映画『宝島』】アメリカ統治下の沖縄の若者たちを描いた話題の大作。映画化に込めた思いや、撮影中の苦労話まで、大友監督に聞きました!|静岡新聞アットエス2025.10.14
終戦直後からアメリカの占領下だった時代の沖縄を若者たちの視点から描いた映画『宝島』が、9月19日から公開されています。
今回は映画『宝島』の監督である大友啓史さんに、映画に込めた思いや見どころを伺いました。聞き手は「鉄崎幹人のWASABI」パーソナリティの鉄崎幹人、SBS(静岡放送)アナウンサーの重長智子。
◆重長
終戦後のアメリカ統治下となった沖縄と、時代に抗って生きる若者たちを描いた映画です。登場するのは、アメリカ軍基地から物資を奪って困窮している人たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちです。そのリーダーで英雄的な存在だったのが、永山瑛太さん演じるオンちゃん。そのオンちゃんが突然いなくなって、残された妻夫木聡さん演じるグスク、広瀬すずさん演じるヤマコ、窪田正孝さん演じるレイは、オンちゃんの影を追いつつそれぞれ別の道を歩んでいきます。
アメリカに支配され、本土から見捨てられ、思うようにならない沖縄の現実や、やり場のない怒りと共に生きていく姿、当時の様子が生き生きと熱量を持って描かれています。
◆鉄崎
大友監督は沖縄に特別な思いがあるんですよね?
◆大友
僕と沖縄は(ボーガス注:NHK職員時代に、沖縄を舞台とする)NHKの朝ドラ『ちゅらさん』(2001年)を手掛けて以来の長い付き合いです。
◆鉄崎
沖縄について知ってほしい、こんなドラマが沖縄の歴史にあったことを伝えたいという監督の思いを強く感じたんですよ。
◆大友
僕自身「戦果アギヤー」をちゃんと知らなかったですからね。彼らみたいに、米軍の基地に忍び込んで、食料や生活物資を盗んで、皆に分け与えてくれるような若者がいなかったら、沖縄の人たちは食べていけなかった時代なんですよね。
その事実1つを取っても、沖縄が当時、どういう状況にあったかわかると思います。その時、本土の方は高度経済成長で、イケイケの時期だったから。(ボーガス注:1958年に)東京タワーができて、大阪万博(1970年)や東京オリンピック(1964年)があり、繁栄に湧き立っていた頃に、沖縄ではこういうことがあったと思うと、今からでも遅くはないから、(ボーガス注:本土の人間は)ちゃんと知るべきだって思いますよね。
◆重長
当時の沖縄について、知れば知るほど胸が締めつけられるような気持ちにもなりました。改めて沖縄について知る機会としても、見ていただきたいなと感じました。
◆鉄崎
コザ暴動(1970年)*58のシーンはもう大迫力ですごかったです。
◆大友
アメリカ統治下の沖縄を再現するのがなかなか難しかったです。アメリカ統治下の時代の沖縄を、映画『宝島』を通して追体験し、あの時代の沖縄を知っていただきたいと思います。
*1:神戸学院大教授。政治資金オンブズマン共同代表。著書『政党国家論と憲法学』(1993年、信山社出版)、『政党助成法の憲法問題』(1999年、日本評論社)、『政党国家論と国民代表論の憲法問題』(2005年、日本評論社)、『ゼロからわかる「政治とカネ」』(2010年、日本機関誌出版センター)、『議員定数を削減していいの?:ゼロからわかる選挙のしくみ』(2011年、日本機関誌出版センター)、『財界主権国家・ニッポン:買収政治の構図に迫る』、『誰も言わない政党助成金の闇』(以上、2014年、日本機関誌出版センター)、『告発!政治とカネ』(2015年、かもがわ出版)、『追及! 安倍自民党・内閣と小池都知事の「政治とカネ」疑惑』(2016年、日本機関誌出版センター)、『日本国憲法の真価と改憲論の正体』(2017年、日本機関誌出版センター)、『ここまできた小選挙区制の弊害:アベ「独裁」政権誕生の元凶を廃止しよう!』、『内閣官房長官の裏金』(以上、2018年、日本機関誌出版センター)、『逃げる総理、壊れる行政:追及! 「桜を見る会」&「前夜祭」』(2020年、日本機関誌出版センター)、『政党助成金、まだ続けますか?:安倍自民党本部主導選挙・河井議員夫妻「1億5千万円買収事件」から』(2021年、日本機関誌出版センター)、『憲法の破壊者たち:自民・国民・維新・勝共・日本会議の改憲案を検証する』、『日本維新の会の「政治とカネ」:「身を切る改革」の正体を暴く』(以上、2022年、日本機関誌出版センター)、 『なぜ「政治とカネ」を告発し続けるのか』(2023年、日本機関誌出版センター)、『検証・政治とカネ』(2024年、岩波新書)、『自民党〝裏金〟事件、刑事告発は続く』(2024年、日本機関誌出版センター)等
*2:元大蔵次官。吉田内閣蔵相、通産相、石橋内閣蔵相、岸内閣蔵相、通産相等を経て首相
*3:元運輸次官。吉田内閣郵政相、建設相、自民党総務会長(岸総裁時代)、岸内閣蔵相、池田内閣通産相、科技庁長官等を経て首相
*4:財界人として、大日本製糖(現在のDM三井製糖)社長、日東化学工業(現在の三菱レイヨン)社長、日本金銭登録機(現在の日本NCR)社長等を歴任。政界入りし岸内閣外相、池田、佐藤内閣経企庁長官、自民党総務会長(池田総裁時代)等を歴任
*5:著書『原発にしがみつく人びとの群れ』(2012年、新日本出版社)、『カジノ狂騒曲』(共著、2014年、新日本出版社)、『政党助成金に群がる政治家たち』(2015年、新日本出版社)
*7:法政大学教授
*10:問題児扱いされ、トモエ学園に転校せざるを得なかった「窓ぎわのトットちゃん」(講談社)で描かれる黒柳徹子を思い出しました。彼女もある種の「発達障害を持つギフテッド(2E)」だったのかもしれません。ギフテッドだからこそ芸能人として大成できたのではないか。
*11:1872~1963年。佐世保鎮守府参謀長、鎮海要港部司令官、舞鶴要港部司令官、練習艦隊司令官、佐世保鎮守府司令長官等を歴任。1936年(昭和11年)から1944年(昭和19年)まで侍従長として昭和天皇に仕え、侍従長を辞職後は1946年まで枢密顧問官であった。百武は侍従長であった海軍出身の鈴木貫太郎(海軍次官、連合艦隊司令長官、海軍軍令部長等を歴任。後に首相)が二・二六事件で襲撃され重傷を負ったため選ばれた後任者。百武が侍従長在任中に記した『百武三郎日記』(2025年、岩波書店)は、2014年(平成26年)に発表された『昭和天皇実録』の編纂資料として採用され、注目されている(百武三郎 - Wikipedia参照)
*12:明治大学教授。著書『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『大元帥・昭和天皇』(1994年、新日本出版社→2020年、ちくま学芸文庫)、『軍備拡張の近代史:日本軍の膨張と崩壊』(1997年、吉川弘文館)、『歴史修正主義の克服』(2001年、高文研)、『昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房)、『護憲派のための軍事入門』(2005年、花伝社)、『世界史の中の日露戦争』(2009年、吉川弘文館)、『これだけは知っておきたい日露戦争の真実』(2010年、高文研)、『日本は過去とどう向き合ってきたか』(2013年、高文研)、『近代日本軍事力の研究』(2015年、校倉書房)、『兵士たちの戦場』(2015年、岩波書店)、『日本の戦争Ⅰ:歴史認識と戦争責任』(2017年、新日本出版社)、『日本の戦争Ⅱ:暴走の本質』(2018年、新日本出版社)、『日本の戦争III:天皇と戦争責任』(2019年、新日本出版社)、『帝銀事件と日本の秘密戦』(2020年、新日本出版社)、『増補・昭和天皇の戦争』(2023年、岩波現代文庫)、『昭和天皇の戦争認識』(2023年、新日本出版社)等
*13:満州事変当時の関東軍司令官。戦後、戦犯指定を苦にして自殺
*14:陸軍航空本部長、台湾軍司令官、陸軍教育総監、中支那派遣軍司令官、侍従武官長、阿部、米内内閣陸軍大臣、支那派遣軍総司令官等を歴任。戦後、終身刑判決となるが後に仮釈放
*15:初代の岡沢精から、最後の蓮沼蕃まで例外なく侍従武官長は陸軍軍人だが、侍従武官長を陸軍軍人が務めることは慣例に過ぎず、陸軍軍人が侍従武官長を務めるとする明確な規定があったわけではない。一方、侍従長は陸軍に対抗心を持つ海軍の働きかけで鈴木貫太郎以降は、百武三郎、藤田尚徳と海軍軍人出身が続いたが、鈴木以前は「桂太郎(陸軍出身。第3次伊藤、第1次大隈、第2次山県、第4次伊藤内閣陸軍大臣)」「珍田捨巳(外務省出身。元駐米大使)」など海軍出身以外の侍従長も存在した。
*16:海軍省人事局長、海軍次官、呉鎮守府司令長官等を歴任。著書『侍従長の回想』(1961年、講談社→1987年、中公文庫→2015年、講談社学術文庫)
*17:但し、海軍大臣や海軍軍令部長(後に軍令部総長)と「海軍出身の侍従長」の軍事情報での伝達内容が異なると「海軍は意思疎通が取れているのか?」という昭和天皇の海軍不信を招くのでその点は海軍省や海軍軍令部(後の軍令部)と十分な意思疎通がされていたとみられる
*18:陸軍航空本部長、参謀次長、陸軍教育総監、陸軍次官、林、第一次近衛内閣陸軍大臣、北支那方面軍司令官、参謀総長、小磯内閣陸軍大臣等を歴任。戦後、妻と共に自決
*19:著書『プレイバック東大紛争』(1990年、講談社)、『朝日新聞の慰安婦報道と裁判』(2020年、朝日選書)、『側近が見た昭和天皇』(2025年、幻冬舎新書)
*20:著書『昭和戦前期の宮中勢力と政治』(2009年、吉川弘文館)、『昭和天皇側近たちの戦争』(2010年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー) 、『宮中からみる日本近代史』(2012年、ちくま新書)、『牧野伸顕』(2013年、吉川弘文館人物叢書)、『象徴天皇制の成立:昭和天皇と宮中の「葛藤」』(2017年、NHKブックス)
*24:外務次官、駐米大使、駐英大使、宮内大臣等を歴任。旧会津藩主で京都守護職を務めた松平容保の六男。秩父宮雍仁親王妃勢津子は長女
*25:第一次近衛内閣文相、厚生相、平沼内閣内務相、内大臣を歴任した昭和天皇の側近。戦後、終身刑判決となるが後に仮釈放。明治維新の功労者「木戸孝允」の孫
*26:2017年、岩波書店。後に増補、2023年、岩波現代文庫
*27:筆者が同じ「山田氏」なので当たり前ですが、こうした「昭和天皇」評価は「前衛の山田論文」でも表明されています。
*28:横須賀鎮守府艦隊司令官、海軍大学校長、第二艦隊司令長官、佐世保鎮守府司令長官、海軍軍令部長等を歴任
*29:貴族院議長、首相を歴任。戦後、戦犯指定を苦にして自殺
*30:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、陸軍航空総監、第二、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相を歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀
*31:東條、鈴木内閣外相。戦後、禁固20年で服役中に病死。後に靖国に合祀
*32:陸軍卿、内務卿、第一次伊藤、黒田内閣内務相、首相、第二次伊藤内閣司法相、参謀総長、枢密院議長等を歴任
*33:第二次伊藤、第二次松方内閣文相、首相等を歴任
*34:著書『模索する1930年代:日米関係と陸軍中堅層』(1993年、山川出版社)、『徴兵制と近代日本:1868~1945』(1996年、吉川弘文館)、『戦争の日本近現代史』(2002年、講談社現代新書)、『戦争の論理:日露戦争から太平洋戦争まで』(2005年、勁草書房)、『満州事変から日中戦争へ』(2007年、岩波新書)、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(2016年、新潮文庫)、『とめられなかった戦争』(2017年、文春文庫)、『昭和天皇と戦争の世紀』(2018年、講談社学術文庫) 、『天皇と軍隊の近代史』(2019年、勁草書房)等
*35:著書『日米開戦の政治過程』(1998年、吉川弘文館)、『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』(2012年、新潮選書)、『日米開戦と情報戦』(2016年、講談社現代新書)
*36:空母「赤城」、「加賀」、「飛龍」、「蒼龍」が沈没。「飛龍」に乗船していた山口多聞第二航空戦隊司令官が戦死
*38:顔色のこと
*40:「第一侍従武官長」は勿論「正規の侍従武官長(陸軍出身)」のこと
*41:筆者が同じ「山田氏」なので当たり前ですが、こうした「海軍出身の侍従長(鈴木貫太郎、百武三郎、藤田尚徳)」への評価は「前衛の山田論文」でも表明されています。
*42:著書『天皇の軍隊と南京事件』(1985年、青木書店)、『昭和天皇の終戦史』(1992年、岩波新書)、『現代歴史学と戦争責任』(1997年、青木書店)、『日本の軍隊:兵士たちの近代史』(2002年、岩波新書)、『日本人の戦争観』(2005年、岩波現代文庫)、『アジア・太平洋戦争』(2007年、岩波新書)、『現代歴史学と軍事史研究』(2012年、校倉書房)、『日本軍兵士:アジア・太平洋戦争の現実』(2017年、中公新書)、『日本人の歴史認識と東京裁判』(2019年、岩波ブックレット)、『兵士たちの戦後史』(2020年、岩波現代文庫)、『続・日本軍兵士:帝国陸海軍の現実』(2025年、中公新書)等
*43:元京都府議(日本共産党)。治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟京都府本部会長
*44:お母様が「戦前からの共産党員」と言うことで想像つくでしょうが勿論共産所属
*45:誰だか知りたいところです。
*46:現在は横浜市西区を管轄。署員数300名以上の大規模警察署で、署長の階級は警視正(小規模な警察署だと署長の階級は警視(警視正の下の階級))(戸部警察署 - Wikipedia参照)
*48:山田寿子氏のこと
*49:「1928年3月15日」に行われた特高警察による共産党弾圧のこと。小林多喜二は小樽市における三・一五事件を題材に『一九二八年三月十五日』を発表する(多喜二の作家デビュー作であった)。当時、中央委員だった上田茂樹は逮捕後行方不明になっており、特高に虐殺されたとみられる。(三・一五事件 - Wikipedia参照)
*50:「1929年4月16日」に行われた特高警察による共産党弾圧のこと(四・一六事件 - Wikipedia参照)
*52:全国保険医団体連合会(保団連)事務局員
*53:日本共産党ジェンダー平等委員会事務局長(党常任幹部会委員兼務)
*54:日本映画大学准教授。著書『シン・エヴァンゲリオン論』(2021年、河出新書)、『ゲームが教える世界の論点』(2023年、集英社新書)等
*55:両親ともに労働党の熱烈な支持者で、名前のキアは労働党創設者の一人「ケア・ハーディ」から取られた。当初は、コービン前党首時代の政策の踏襲を掲げたことから、「穏健左派」と見られていた。しかし、その後、金融業界を取り込む姿勢に転換したため、「中道路線で労働党を3回の選挙勝利に導いたトニー・ブレア元首相の親ビジネス政策に回帰しようとしている」と評価された。(キア・スターマー - Wikipedia参照)
*56:1960年生まれ。1980年(昭和55年)に新人オーディションに合格し、全日本女子プロレスに入門。1983年、デビル雅美率いるヒール軍「ブラック・デビル」の一員となった。1984年(昭和59年)の年明けにリングネームを「ダンプ松本」と改名し「クレーン・ユウ」と共にヒールタッグチーム『極悪同盟』を結成。前年から人気が急上昇していた「クラッシュギャルズ」(ライオネス飛鳥と長与千種が当時結成していたコンビ名)の対抗馬として名乗りを上げ抗争を繰り広げた。「極悪レフェリー」阿部四郎と結託する形で、反則攻撃の「黙認」など、贔屓レフェリングのもとに凶器攻撃を多用する徹底的なヒールファイトを展開。「クラッシュファン」の少女たちから、憎悪を一身に浴びる存在となり、両チームのシンプルな戦いの構図が熱狂を呼び、女子プロレスは全国的なブームへと発展していき、女子プロレスを大いに盛り上げた。1988年(昭和63年)1月4日の後楽園ホール試合後に、引退を発表。引退理由について後に、『会社は相当な利益を得ていたにもかかわらず、経営者である松永一族の浪費のおかげで、ダンプを含む所属選手たちのギャランティーなど待遇改善に全く還元されないなど、会社にかなり不満があった』『私が全盛期のうちに引退すれば今後の興行収入などの売上げがガクンと落ちると思い、プロレスは好きだから辞めたくはなかったけど会社を困らせてやりたかったんで引退を決意した』等と語っている。(ダンプ松本 - Wikipedia参照)
*57:1990年生まれ。吉本興業所属のお笑い芸人。本名「吉田有里(よしだ・ゆり)」。2017年の「女芸人No.1決定戦 THE W」、「NHK上方漫才コンテスト」、2021年の「R-1グランプリ」で優勝。Netflix配信のドラマ『極悪女王』主演(ダンプ松本役)などお笑い以外でも活躍(ゆりやんレトリィバァ - Wikipedia参照)
*58:1970年9月18日夜、糸満町(現・糸満市)で酒気帯び運転かつスピード違反の米兵が沖縄人女性を轢殺する事故を起こした。この轢殺事件で12月7日の米軍軍法会議は被害者への賠償は認めたものの、加害者は証拠不十分として無罪判決を下した。沖縄人の多くがこの判決に憤り、12月16日に糸満町で抗議県民大会が開かれた。また12月13日には那覇市の住宅に米兵が押し入り拳銃を突き付けて現金を奪う強盗事件、コザ市(現在の沖縄市)の宝石店に米兵がハンマーを持って押し入り金品を奪う強盗事件、与那城村(市町村合併で現在は、うるま市)で米兵がタクシー運転手の首を絞めて現金を奪う強盗事件が3件続発し、沖縄県民の「米軍への反発」が強まっていた。12月20日、コザ市の中心街にある軍道24号線(現在の県道330号線)を横断しようとした沖縄人軍雇用員が、キャンプ桑江の米兵(酒気帯び運転)の運転する乗用車にはねられ、全治10日間ほどの軽傷を負う事故が発生した。それまで高まっていた米軍への反発が一気に爆発し暴動に発展した(コザ暴動 - Wikipedia参照)