黒坂真に突っ込む(2019年11月12日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真
 中国共産党は軍事力の弱い国にすぐ侵攻しますからね。新中国は成立まもなくチベット侵攻。例外はモンゴルですが、これはソ連の軍事力を背景にしていたからです。

 おいおいですね。「蒋介石時代」から領土扱いしていたチベットへの侵攻は「侵略」とはいいがたいでしょう。おそらく蒋介石政権であっても「侵攻」したでしょうし、その場合はウヨの黒坂は侵攻を黙認したでしょう。
 しかも「例外はモンゴル」て(苦笑)。「(中国の隣国である)ブータンやネパールは?。いつ中国がブータンやネパールに侵攻したの?。それともブータンやネパールって軍事強国なの?」と聞きたくなります。まあ黒坂だと顔色もかえずに「言い忘れただけです」「それらの国はインドの軍事力が背景にあるからです」「揚げ足取りはやめて下さい」で終わりでしょうが。そもそも中越戦争(1979年)以降「侵攻」なんかないでしょうに。

今日の産経&しんぶん赤旗ニュースほか(2019年11月11,12日分)

公明党、大嘗祭参加へ 社民欠席「政教分離違反」 - 産経ニュース
 予想の範囲内ですが公明党も随分と落ちぶれたもんです。創立者牧口常三郎氏の神札拒否を未だに創価学会公明党の母体)が自画自賛してることとの整合性はどうなってるんでしょうか?。「神札と大嘗祭は違う」と強弁するのか。


NHK世論調査 内閣支持47% 不支持35% | NHKニュース
 ブクマも付けましたがいつもながらげんなりしますね。
 マスコミ(特にテレビ)がろくに安倍批判しないとか、最近では即位パレードで祝賀ムード煽ってたとかありますが、「一時よりは下がった」とはいえ、大臣二人が公選法違反疑惑で辞めてこれとはげんなりしますね(「桜を見る会」については疑惑発覚はまだ最近ですので、この調査では影響が出てなくても不思議ではないのでなんとも言えません)。
 しかも評価する政策の一位がNHK調査を信じれば「外交」だそうです。どこが評価できるのか。一番評価できないでしょうよ。
 一時、安倍が騒いでいた「北方領土の返還」はどこに行ったのか。韓国に「毅然とした態度」とやらをとればそれだけで評価するのか。それただの韓国差別でしょうよ。
 いずれにせよ地道に批判を続けていくほかないのでしょう。なお自民信者は「不正追及」を揚げ足取りだと強弁*1しますがとんでもない話です。不正を容認すればそれは社会を腐敗させます。政治限定でも腐敗は問題ですが、「政治限定にとどまる保証」はどこにもないわけです。
 企業不祥事などに各方面に腐敗が波及しないと考える方がおかしい。


「桜を見る会」私物化疑惑/野党が追及チーム 結束して真相解明
「桜を見る会」私物化疑惑/首相の職責にかかわる重大事案 徹底追及していく/小池書記局長が記者会見
 「また安倍の不正か」と全く腹立たしい話です。しかしテレビワイドショーも「韓国の法相ガー」などと騒ぐよりもこうしたことをもっと騒いだらどうなのか。


桜を見る会には功労者招待 菅長官、本会議で説明 - 産経ニュース
 もちろん何の功労なのか、まともに説明できないのだから全く話になりません。「自民党への献金額という功労か?」と言いたくなります。


「桜を見る会」後援会員招待 二階幹事長「選挙区への配慮は当然」 - 産経ニュース
 「選挙区民に配慮して何が悪い」とは感覚が完全に狂っていますね。はっきり言ってこの人は幹事長の器じゃないでしょう。まあ今の自民党のレベルははっきり言って酷すぎますね。


立民・枝野代表「首相は『桜疑惑解散』に打って出る」 - 産経ニュース
 さすがにそんな恥ずかしい解散は安倍ですらやらないのではないか。まあ、それ以前に解散がどうのこうのいう前にまずは安倍を追及しろという話ですが。
 「解散への早期対応」云々を口実に野党各党へ立民への候補一本化をごり押ししようというふざけた話ではないのか。


菅長官「桜を見る会」招待客の選定基準見直しに言及「検討が必要」 - 産経ニュース
 当然ながら見直すというなら「なぜ見直すのか」「何をどう見直すのか」と言う問題ですが、その点をまともに説明することはおそらく無理でしょうね。


桜を見る会 公明・山口氏「野党も政権時は主催」 - 産経ニュース
 やれやれですね。単に「野党の疑うような不正なお手盛りなどしていない、きちんとした選定基準がある」と言えば済むことで「野党モー」だそうです。呆れて二の句が継げません。事実上「まともな選定基準がない、お手盛りだ」と自白してるのも同然です。創価学会を信じてると、ここまで人格が破壊されるんでしょうか?


石破氏、広がらない党内支持…政権を批判 改憲では持論に固執(1/2ページ) - 産経ニュース
 石破*2が安倍にとって脅威でないならただ無視してればいい話です。こうした石破ネガキャン記事を産経が書くこと自体、「麻生派(麻生*3副総理・財務相)」「岸田派(岸田*4政調会長)」「二階*5派(二階幹事長)」「細田派(安倍の出身派閥)」による安倍支援で「与党内を議員数で支配してる」とはいえ「議員数に劣る石破」がいつ「党員からの支持」で「橋本*6元首相氏総裁選で勝利した小泉氏*7」のように安倍を倒すか分からないとおびえてることの表れでしょう。

「4項目の『たたき台』と、平成24年に党議決定している党草案はどういう関係に立つのか」。
 10月11日に党本部で開かれた憲法改正推進本部会合で石破氏は本部長の細田博之*8元幹事長に詰め寄った。
 草案は、9条2項を削除して「国防軍」を創設するなど従来の自民党の主張を色濃く反映したものだ。党幹部は「草案を実現するに越したことはないが、野党*9公明党の理解は得られない」と本音を明かす。

 石破が自民党草案(9条2項削除)にこだわる改憲右派*10なのか、はたまた産経が「邪推(?)」するように公明党や野党の反発を助長し安倍政権の足を引っ張ることを狙ってるのか、単に「どういう整理をしているか分からないと議論しづらい」「もし草案が事実上廃止されたのならはっきりそう言うべきだ」と言う話に過ぎないのかはともかく、「一般論としては」石破の主張「どういう整理をしているのか」は正論です。
 それが分からないと議論もしづらい。
 たたき台で「草案は事実上廃止された」とか、たたき台後も「草案は生きている。一見たたき台と草案が矛盾するように見えるがこのように解釈すれば矛盾しない」とかいろいろ答えようはあるでしょう。ところが「(下手な答え方をすると公明党や野党、そして場合によっては極右ではない自民党支持層すら反発する恐れがあるから)答えたくないから答えない」「石破はそんな質問はするな」「安倍首相の足を引っ張るな」と言うのだから全く不誠実です。
 それで何が「自由な改憲論議改憲に消極的な野党各党に対する産経や安倍の非難がましい物言い)」なのか。
 石破の思惑が何かに関係なく、安倍自民や産経が「自由な改憲論議などする気がないこと」は皮肉にも石破の言動に対する産経や安倍自民の態度でよく分かります。
 まともな人間ならこんな不誠実な連中の改憲議論になど「改憲派ですら」つきあいたくはないでしょう。

*1:まあ連中も自分たちの主張が強弁だとは自覚してるでしょう。「小沢幹事長(当時)の西松疑惑」など「自民党以外の政治家の疑惑」については悪口していたのが自民支持層ですからね。

*2:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*3:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)を経て首相。現在、第二~四次安倍内閣副総理・財務相

*4:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長

*5:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相自民党総務会長(第二次安倍総裁時代)を経て幹事長

*6:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革等担当相。

*7:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*8:小泉内閣官房長官自民党幹事長(麻生総裁時代)、総務会長(第二次安倍総裁時代)など歴任

*9:前原ら改憲派のいる国民民主党のことか?

*10:そうであるのなら、その点では石破は支持できませんが、とはいえ安倍は「嫌韓国極右」「モリカケの腐敗政治家」ですからねえ。石破の改憲右派性を批判的に見ても安倍よりはマシでしょう。そもそも安倍にしても「9条2項削除」を言わないのは「現実的に無理だから」であって可能なら安倍も「そうしたい」でしょうし。

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年11/12分:荒木和博の巻)

今日の香港、明日の韓国【調査会NEWS3117】(R01.11.11): 荒木和博BLOG
 タイトルだけで「はあ?」ですね。これが「今日の香港、明日の台湾」ならまだわかる(まあ「今日の香港」は「明日の台湾」ではないでしょうが。中国は台湾侵攻なんか考えてないでしょう)。
 何が「明日の韓国」なのか。
 香港情勢は韓国とは何ら関係ありません。
 あるいは「韓国でも反政府デモが盛り上がり、警察との激突が激しくなるかも?」と言った話か。まあ、それもないでしょうね。

 私は統一するとすれば北の体制が倒れてなし崩し的に南が吸収するしかない*1と思ってきたのですが、最近前号に書いたように「敗戦革命」というのもあるかも知れないと思うようになりました。
 つまり韓国経済を破綻させ、国民を分断*2し、日米との関係を破壊*3して北朝鮮主導の統一国家にするということなのではないか。これは日本の敗戦による革命と共産化をめざした、当時のコミンテルンの方針を現代版にしたようなものとも言えます。

 荒木の馬鹿さには呆れて二の句が継げませんね。
 第一に「敗戦革命」なんてもんを文政権は目指してないし、そもそもそんなことは「目指したところで実行できることでもない」。
 第二に「日本の敗戦による革命と共産化*4をめざした、当時のコミンテルンの方針」なんてもんは存在しない。ソ連に「日本に対米開戦をけしかける能力」なんかあるわけがないし、「ハルノートを飲めば開戦は回避できた」のだから「ソ連陰謀論」などばかばかしい限りです(そもそも敗戦革命が起こる保証もない*5し、その場合にその革命の担い手が共産党になる保証もないですし)。
 荒木はウヨ方面で蔓延してるデマ「対米開戦は近衛首相のブレーンだった尾崎秀実に、開戦を煽られた近衛が起こした」「尾崎の目的は敗戦革命だった」という与太*6を主張しているのか。
 もしかして大森勝久氏がそうしたデマを放言してる元ネタは荒木なのか。
 あるいは「ハルノートソ連の謀略」と言うデマを荒木は主張しているのか。
 この「尾崎デマ」「ハルノートデマ」に以下の通り簡単に突っ込んでおきます。
 まず尾崎デマへの突っ込み。
1)尾崎は近衛*7ブレーン(昭和研究会メンバー)とは言え、近衛ブレーンの中枢と言えるような存在ではありません。尾崎と近衛にはほとんど面識はありませんでした。そして昭和研究会も「尾崎のブレーン集団」とはいえ、その提言によって政府が動くというほど、絶大な力を持っていたわけでもありません。
2)尾崎のスパイ行為はいわゆる「情報スパイ(機密情報を入手しソ連に伝える)」であり、政策誘導などはされていません。理由は簡単です。
 「学者やジャーナリスト、評論家、作家などの一般的活動*8」と偽装することが容易な情報スパイと違い、政策誘導なんてもんは下手にやればスパイであることがばれるきっかけになるし、成功の可能性も情報スパイに比べそんなには高くないからです。
3)そもそも開戦時の首相は近衛ではなく東条英機*9です。
4)対米開戦は政府内でそれなりの議論がされて決定しています。近衛など一個人が勝手に開戦したなんて話ではない。まあ、あえて単純化すれば「敗戦を恐れて開戦に躊躇する昭和天皇」を「開戦派(典型的には陸軍)」が「中国からの完全撤退など飲めるのですか!」「対米開戦には勝算がある!。我々にはドイツがついてる!」などと説得して戦争に持っていたという話です。
 「自分から積極的に戦争を希望したわけではない」「説得されて戦争に突っ込んだ」とはいえ、昭和天皇はただ軍部に言われるがまま戦争を承認したわけではありません。この辺りは山田朗氏の

・『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版
・『遅すぎた聖断:昭和天皇の戦争指導と戦争責任』(纐纈厚氏*10との共著、1991年、昭和出版
・『徹底検証・昭和天皇「独白録」』(粟屋憲太郎*11藤原彰*12、吉田裕氏*13との共著、1991年、大月書店)
・『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社
・『昭和天皇の軍事思想と戦略』(2002年、校倉書房
・『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店
・『日本の戦争III:天皇と戦争責任』(2019年、新日本出版社

などが詳しいと思いますが。
5)対米開戦に最も積極的だったのは、「近衛ではなく」、「中国から絶対に撤退できない」とする陸軍でした。
 対米開戦時の首相が東条だったのもそれが理由です。東条内閣成立時においては昭和天皇も側近たち(木戸幸一*14内大臣など)も敗戦の可能性が高い対米戦争には消極的でした。
 そこで、「対米開戦積極派」の陸軍を押さえ込むためには「首相は陸軍出身の方が良いのではないか」、そして陸軍大臣時の振る舞いから「東条は天皇への尊崇の念が厚いから、戦争を回避しろと天皇が命じれば必ずその通りに動くだろう」として東条が首相に選ばれたわけです(そして東条は彼なりに戦争回避に動きましたが結局は開戦したわけです)。
 もちろん東条陸軍大臣(後に首相)ら陸軍幹部が「尾崎に煽られてた」などと見なすのは馬鹿げています。
 次にハルノートデマへの批判。
1)ハルノート原案*15の作成者である財務省特別補佐官ハリー・ホワイトにせよ、ハルノートを日本に提示したハル国務長官にせよソ連スパイなどという事実はありません(産経らウヨは彼らをソ連スパイの疑いがあると誹謗しますが)。
2)そもそもハルノートの重要部分である「日本軍の中国からの撤退」はソ連云々ではなく蒋介石が希望したもんです。
3)蒋介石政権崩壊を望まない米国がハルノートにおいて「日本軍の中国からの撤退(当然、汪兆銘政権など傀儡政権の存在も認めない)」を要望することはむしろ自然です。
4)そして「繰り返しますが」ハルノートを飲むことは日本にとって「とてつもなく苛酷で対米戦争史か選択肢がなかったか」といえばそんなことはないでしょう。
 どっちにしろ拉致問題を論じるにおいて「日本の敗戦はコミンテルン謀略」などという与太を飛ばす必要はどこにもない。
 まあ、それはともかく、むしろ「ソ連にとって結果的に都合が良かった」のは「日本の対米開戦」より「ドイツとイタリアの連合国相手の開戦」じゃないか。ドイツは西ドイツと東ドイツに分かれて、東にはソ連が介入しました。ドイツが東欧侵略して、政治情勢が混乱したどさくさにソ連は政治介入し、東欧を自らの勢力圏にすることに成功しました。イタリアにおいても王制が廃止され、イタリア共産党がそれなりの政治力を保有しました。
 もちろんこれは結果論に過ぎません。ソ連はドイツに勝利するまでに相当の犠牲を払っていますし、ソ連敗北の可能性も充分あったでしょう。
 したがって結果論を元に「ヒトラーやムソリーニはソ連にはめられて開戦した」といったら正気を疑われるでしょう。「対米開戦」ソ連陰謀論もその程度のデマです。

 統一は韓国の大多数の国民が望まない

 そんなことはないでしょう。ただし「今の北朝鮮の経済状態」では統一したら韓国経済が沈没しかねません。「韓国より経済力がある西ドイツ」「北朝鮮より経済状態がマシと思われる東ドイツ」の東西ドイツ統一ですら統一の経済負担は相当のもんだったと思います。
 そこで「沈没しないように、統一前に北朝鮮経済を底上げしておこう」というのが太陽政策の目的の一つです。勿論他にも「経済の相互依存関係が生じれば南北ともお互い戦争には動きにくくなる」「経済交流が北朝鮮への情報流入中産階級の誕生をうみ、北朝鮮の漸進的民主化につながるかもしれない」などといったもくろみもあるでしょうが。
 「北朝鮮を経済的に締め上げてぶっ潰す、その結果、大量の難民が生じようが、統一後の韓国経済が沈没しようが知ったことではない」という「北朝鮮打倒論」に立たない限り、太陽政策は実に合理的な主張です。太陽政策は決して単純な「同胞愛」ではないし、ましてや北朝鮮シンパではない。太陽政策はもっとシビアなもんです。

 これを放置しておけば「明後日の日本」にならないとも限りません。

 何が「あさっての日本」なのか、さっぱりわかりません。誰(安倍政権?、ポスト安倍の自民政権?、ポスト安倍の立民首班政権?)が何をして「あさっての日本」になるのか。そもそも「放置も何も」韓国の対北朝鮮外交に日本が何を出来るというのか。

 日本が主体的に北朝鮮の体制を崩壊に追い込めれば、それは中国共産党支配にも打撃になるはず

 おいおいですね。なんで拉致の解決を目的としてる「はず」の組織のメルマガが「中国打倒論」なんか放言するのか?

*1:普通に考えてそれしかないでしょう。

*2:文氏が分断するまでもなく金大中盧武鉉政権時からウヨ連中(今の自由韓国党など)は太陽政策には否定的でした。まあ荒木だと金氏、盧氏についても「敗戦革命を目指してた」と言いかねませんが。

*3:日本との関係はともかく、米国との関係のどこを文政権が破壊しようとしてるのか?。トランプ政権の「とにかくジーソミアを続けろ、ホワイト国除外のことなど関係なく続けろ」などという対応は「当然の対応」では全くありません。ヒラリー政権なら「まずホワイト国除外をやめさせる」などまともな対応をしたのではないかと思うと「トランプ政権誕生」が実に残念です。

*4:ちなみに「敗戦革命」の恐れを危惧し、早期降伏を要求したのが有名な近衛上奏文です。しかし1)当時の昭和天皇が国体(天皇制)護持に固執したこと、2)(本気かどうかはともかく)近衛が東条英機ら陸軍統制派(対米強硬派、降伏反対派、徹底抗戦派)を「敗戦革命を目指す隠れ共産党の疑いがある」と事実に反する誹謗をしたことから、昭和天皇はこの上奏を無視しました。

*5:実際に起きませんでした。

*6:とはいえこうした与太で「現実逃避したくなるほど」対米開戦は後世の我々の目から見れば無謀でした。

*7:貴族院議長、首相など歴任。戦後、戦犯指定を苦にして自殺

*8:そもそも尾崎自体、ソ連にスカウトされる以前は「朝日新聞元記者」という本物のジャーナリスト、評論家だったわけです。尾崎の情報収集能力の高さを評価したソ連にスパイとしてスカウトされたわけです。

*9:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀。

*10:著書『日本海軍の終戦工作』(1996年、中公新書)、『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年、新日本出版社)、『「日本は支那をみくびりたり」:日中戦争とは何だったのか』(2009年、同時代社)、『日本はなぜ戦争をやめられなかったのか』(2013年、社会評論社)、『日本降伏:迷走する戦争指導の果てに』(2013年、日本評論社)など

*11:著書『東京裁判への道』(2013年、講談社学術文庫

*12:著書『昭和天皇十五年戦争』(2003年、青木書店)、『天皇の軍隊と日中戦争』(2006年、大月書店)、『餓死した英霊たち』(2018年、ちくま学芸文庫)、『中国戦線従軍記』(2019年、岩波現代文庫)など

*13:著書『昭和天皇終戦史』(1992年、岩波新書)、『日本の軍隊』(2002年、岩波新書)、『日本人の戦争観』(2005年、岩波現代文庫)、『アジア・太平洋戦争』(2007年、岩波新書)、『日本軍兵士』(2017年、中公新書) など

*14:第一次近衛内閣文相、厚生相、平沼内閣内務相、内大臣など歴任。戦後終身刑判決を受けるが後に仮釈放

*15:ホワイト案とハルノートには若干の違いがあります

今日の朝鮮・韓国ニュース(2019年11月11日分)

【第632回】日韓関係改善の道 « 今週の直言 « 公益財団法人 国家基本問題研究所
 もちろん浅井基文氏(外交評論家、元外務官僚、東大、日大、明治学院大などの教授を歴任)、志位和夫氏(日本共産党委員長)、和田春樹氏(東大名誉教授)などまともな人間ならば「日韓関係改善の道」の第一歩は「ホワイト国除外、フッ化水素水輸出規制などの無法な嫌韓行為をまずやめること」というでしょう。安倍*1政権がやめないなら「石破*2、石原*3、岸田*4政権などポスト安倍の自民政権」であれ、「枝野*5、岡田*6、前原*7政権など政権交代による野党政権」であれ、まず安倍を下野させるしかありません。
 それだけで改善はしませんが「無法な嫌がらせ」など続けていて改善するわけがないでしょう。ただし西岡、国基研らがそういうまともな主張をしないことは言うまでもありません。「全て韓国が悪い」「韓国が態度を改めれば全てが解決する」「打倒文政権」などと無茶苦茶を言い出すわけです。


横田早紀江さん 拉致県民集会出席見合わせ、16日新潟市で開催 「今後も支援を」

 16日開催の「忘れるな拉致 県民集会」に、めぐみさんの母早紀江さん(83)が出席を見合わせることになった。
 一方、会場では早紀江さんの約10分間にわたるメッセージを映像で流す。
 県民集会は新潟日報社新潟県新潟市の主催。早紀江さんは、滋さんの看病や高齢の兄の世話、さらに自身の疲労などから最近は遠出を避け、全国各地で招かれる講演会などを辞退するようになっている。
 「参りたいのはやまやまですが、夫の看病をはじめもろもろが重なり、私の体も無理が利かなくなっており、今回は映像での参加になります。(後略)」と話している。

 「そんなに体調が悪いのか」「もう83だからな」と言うのが正直な感想ですね。ただし「この人」が家族会や巣くう会とともに田中均氏や蓮池透氏に対してした無礼を考えれば同情は何一つしません。もはや「孫に会うために訪朝」もできないのでしょう。それどころか、「仮に孫が訪日した」としても「自分からは会えない体調(孫から自宅や病院に会いに行くしかない)の可能性すらあります」が「自業自得」です。
 家族会や巣くう会も「横田拓也(横田夫妻の息子、めぐみ氏の弟)」を「家族会事務局長」として取り込んだ以上、もはや滋・早紀江夫婦の利用価値は昔ほどはないわけです。


ステラ株が反落、対韓輸出管理の影響で営業益9割減-フッ化水素減少 - Bloomberg
ステラケミファ、純利益58%減 フッ化水素輸出管理で :日本経済新聞
フッ化水素世界最大手ステラケミファ、営業利益が10分の1に-Chosun online 朝鮮日報

ステラ株が反落、対韓輸出管理の影響で営業益9割減-フッ化水素減少 - Bloomberg
 ステラケミファ株が5営業日ぶりに大幅反落。韓国向け輸出管理強化の影響を受け、8日に発表した7-9月期(第2四半期)の営業利益は前年同期比88%減の1億4800万円だった。
 株価は一時前週末比6.6%安の2980円まで下げ、下落率の大きさは8月7日(10%)以来となった。

ステラケミファ、純利益58%減 フッ化水素輸出管理で :日本経済新聞
 フッ素化合物大手のステラケミファが8日発表した2019年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比58%減の6億3000万円だった。主力の半導体向けフッ化水素は日本政府による韓国への輸出管理強化で、韓国の半導体メーカー向け販売量が落ちた。

フッ化水素世界最大手ステラケミファ、営業利益が10分の1に-Chosun online 朝鮮日報
・高純度フッ化水素の世界市場でシェア70%を占める日本企業、ステラケミファは7-9月期の営業利益が前年同期の10分の1にまで激減した。日本政府が韓国へのフッ化水素輸出を規制したことで、業績が悪化するというブーメラン効果を生んだ格好だ。
・例年ステラケミファはフッ化水素生産量の60%をサムスン電子、SKハイニックスに輸出してきた。しかし、日本政府が韓国に対し、部品、素材の輸出を規制し始めた7月以降は韓国にフッ化水素を輸出できずにいる。
サムスン電子、SKハイニックスなどは現在、日本企業が台湾など現地企業と合弁で設立した業者を通じ、代替フッ化水素を輸入している。また、ソウルブレインなど韓国のフッ化水素メーカーも高純度フッ化水素の生産、供給を急いでいる。

 まあ「韓国での売り上げが減れば(現時点では日本からの輸出はほとんど禁輸と同じなのでほとんど全くのゼロ*8)、それを上回る売り上げが他にない限り減収する」「しかしそんなことがすぐに可能とも思えない」ので予想の範囲内の話ですが、これについて「フッ化水素水輸出規制(現時点ではほとんど禁輸に等しい)」を強行した安倍や安倍支持者(産経や日本会議など)はどう釈明する気でしょうか。
 「韓国を懲らしめるためにお前の会社の利益が激減しても我慢しろ(国による財政支援なんかしない!)」「韓国市場に偏重、傾斜したお前が悪い」などと居直る気なのか。大体韓国は「安倍に屈しない」と言う態度なのだから全然懲らしめになってない。
 正直、この日本企業「ステラケミファ(フッ化水素水メーカー)」は国賠訴訟を起こしてもいいとすら思います(もちろんメーカーはステラケミファだけではないので他の日本企業も同様の「被害」ではないか)。まあ安倍相手に国賠訴訟など起こすと逆ギレした安倍が何やらかすかわかったもんではないし、今の最高裁では「安倍に媚びて不当判決(例:吉見義明氏や菅元首相の不当敗訴)」の恐れが否定できないので積極的には訴訟をお薦めはしませんが。
 それにしても、恐れ入るのは、現時点では「ステラケミファ」でググってもヒットするのは日経のステラケミファ、純利益58%減 フッ化水素輸出管理で :日本経済新聞だけだということですね。
 いや普段なら「ステラケミファ」なんて中小企業の経営報道なんか「日経だけでも不自然ではない」でしょう。
 しかし「安倍のフッ化水素水輸出規制」後は話は違います。安倍のせいでこうなったわけですから。
 なぜ日経以外の「朝日、読売、毎日、産経」はろくに報じないのか。そして報じてる日経にしても「輸出規制のために減収したとみられます」という「ただの事実報道」です。
 「そういう被害を生んでまで輸出規制することが是なのか」「是とする場合でも、日本政府がフッ化水素水メーカーを経営支援すべきではないか」といった「評価報道」はない。
 「お前らそんなに安倍が怖いのか?」と心底呆れます。しかしこうなると「こんな被害を生んでまで輸出規制していいのですか?」「日本政府として経営支援する気はないのですか?」などと共産党辺りに国会で追及してほしいですね。

*1:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*2:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長、幹事長、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*3:小泉内閣国交相自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相、第三次安倍内閣経済財政担当相など歴任

*4:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相を経て自民党政調会長

*5:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*6:鳩山、菅内閣外相、民主党幹事長(菅代表時代)、野田内閣副総理・行革相、民主党代表代行(海江田代表時代)、代表など歴任

*7:鳩山内閣国交相菅内閣外相、野田内閣国家戦略担当相、民主党政調会長(野田代表時代)、民進党代表など歴任

*8:中国や台湾、東南アジアの工場辺りでつくってそこから韓国に輸出して売れば話は別でしょうが。

黒坂真に突っ込む(2019年11月11日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真リツイート
‏ 吉岡正史さん。日本共産党員は、インターネットで自分たちを批判する人を皆、ネトウヨと呼ぶのですね。

 勿論吉岡氏はそんなことを言ってはいません。
 そもそも吉岡氏は

青木理氏、安倍首相の国会でのヤジに「あえて言えばネトウヨ的。非常に低劣」 : スポーツ報知
 10日放送のTBS系「サンデーモーニング」(日曜・前8時)で安倍晋三首相が8日の参院予算委員会立憲民主党の杉尾秀哉参院議員の質問時に「共産党」とヤジを飛ばしたことを報じた。
 こうした発言にジャーナリストの青木理*1は、行政府の長である首相が「最低限の礼節を尽くして真摯に説明するのは、政治思想の右とか左とかではなくて、近代民主主義の基本的な所作なわけです」とした上で「共産党」とのヤジに「(ボーガス注:共産党という言葉を)批判の言葉と捉える(ボーガス注:安倍首相の)発想は、あえて言えばネトウヨ的。非常に低劣っていうか。そういう言葉を批判の言葉だと思っている首相が国会で(ボーガス注:言葉を)発している、(中略)(ボーガス注:日本の政治や社会が)壊れていく気配じゃないかと僕ら敏感に感じなくちゃいけないと思います」とコメントしていた。

という青木氏の安倍批判発言を紹介した上で「青木氏の安倍首相批判に同感だ」とツイートしたのですがそれをどう理解すれば「日本共産党員は、インターネットで自分たちを批判する人を皆、ネトウヨと呼ぶのですね」になるのか。青木氏は党員ではない。安倍のヤジも「インターネットでの批判」ではない。
 そもそも「サンデーモーニングを信じれば」安倍が「共産党」という野次を飛ばしたという「立民の杉尾氏」の何が「共産党」なのか。
 いやそれ以前に杉尾氏が共産党議員だとしても「共産党」というのは何らまともなヤジではない。「野次を飛ばすことの是非」はひとまず置くとしても「ヤジだが、批判自体はそれなりに道理がある」といえるようなヤジでは全くない。
 安倍が低レベルな反共主義者、青木氏風に言えば「安倍首相はネトウヨと同レベルで、非常に低劣」、黒坂のツイートをパロれば「安倍首相は、自分たちを批判する人を皆、共産党と呼ぶのですね。」というだけの話です。
 まあそれはともかくこうした安倍批判をする、青木氏、TBSサンデーモーニング、報知新聞は「それなりにまともなメディア」といえるでしょう。正直、「読売系列でスポーツ新聞の報知」にこの記事とは意外です。
 しかしいつもながら安倍も本当に最低の男ですね。これが首相で、長期政権とか本当に屈辱に耐えません。まともな人間なら安倍は到底支持できる人間ではない。
 そして黒坂もいつもながら非常識ですね。まともな人間はここまで低レベルな安倍のヤジはさすがにかばおうとは思わないでしょう。

黒坂真リツイート
 日本共産党本部の皆さん。日本共産党は被災地なら、政治家が有権者にメロンを支援物資として寄附しても公職選挙法違反ではない、という見解ではないのですか。

 「菅原前経産相、河井前法相をかばう安倍政権」への志位共産党委員長の批判ツイート「国会で菅原、河井の公選法違反疑惑*2を徹底追及するつもりだ(俺の要約)」への黒坂の「反論のつもりらしい」リツイートです。
 ばかばかしい。いくら「菅原のメロン、カニ贈答」や「河井妻の現金入り封筒ばらまき」を正当化したいからと言って非常識の極みですね。安倍や産経、あるいは荒木和博や島田洋一櫻井よしこですらこんなことは言わないんじゃないか。どこの世界に被災地にメロンなんか持っていく人間がいるのか。
 つうか、こんな因縁付けで「菅原や河井の疑惑」をごまかせると本気で黒坂が思ってるなら呆れたバカです。
 とはいえさすがの黒坂も「菅原氏がメロンやカニを選挙民に贈答しようが、河井妻が現金入り封筒を地元県議にばらまこうが公選法違反じゃない」だの「そもそもそんな事実はない。週刊文春などマスコミのデマ報道だ」だの言う度胸はなぜかないようです。

黒坂真リツイート
 香西かつ介さん。自民党の政治家にも、街頭演説をする権利はある。街頭演説を野次で妨害する人間はテロリストかもしれない*3のですから、排除は当然です。日本共産党も「街角トーク」で「不破さんはなぜ豪邸に住んでいるんだ!」と怒鳴りちらす人間が出たら排除するでしょう。これは言論抑圧ですか。
■香西かつ介(共産党ジャイアン):日本共産党品川地区委員長・衆院予定候補 (東京3区)
 (ボーガス注:安倍政権支持者はアンチ中国の右翼が多いが、皮肉にも)#安倍政権 と #中国共産党 ってモノ言えない国をつくるってところで類似してるんじゃないか。
参院選2019:「安倍辞めろ」「増税反対」 首相演説中、ヤジ排除 専門家「過剰警備」/北海道警「対応適正」 - 毎日新聞
 安倍晋三首相が札幌市中央区で15日に参院選応援のため街頭演説した際、「安倍辞めろ」などとヤジを飛ばした男女数人が、演説現場から北海道警に排除された。周囲の支持者とのトラブルはなく、安倍首相の演説が中断されることはなかった。道警警備部は「トラブルを未然防止するためで対応は適正」と説明するが、専門家は「過剰警備と感じる」と話している。

 「共産党ガー」でごまかせない話、共産党以外(たとえば上の毎日新聞記事や野党各党)も安倍批判してる話でこれです。いつもながら黒坂には呆れます。

*1:著書『日本の公安警察』(2000年、講談社現代新書)、『北朝鮮に潜入せよ』(2006年、講談社現代新書)、『ルポ 拉致と人々:救う会公安警察朝鮮総連』(2011年、岩波書店)、『絞首刑』(2012年、講談社文庫)、『トラオ:徳田虎雄・不随の病院王』(2013年、小学館文庫)、『抵抗の拠点から:朝日新聞慰安婦報道」の核心』(2014年、講談社)、『日本会議の正体』(2016年、平凡社新書)、『安倍三代』(2019年、朝日文庫)など

*2:しかし「ある程度、菅原や河井、あるいは彼らをかばう安倍の批判をしている」新聞や週刊誌はともかく「菅原、河井批判」から逃げ続けるテレビワイドショーの腰抜けぶりにはいつもながら呆れます。俺も「見てても不愉快になるだけ」なのでスポーツ中継を除いてほとんどテレビを見なくなりました。

*3:「野次を飛ばせばテロリスト扱い」とは、そんな馬鹿な話は北海道警や安倍ですら主張していません。と言うかマジレスすれば、むしろテロリストは野次なんか飛ばさないでしょうね。目立たないように暗殺ターゲットに近づくには、ヤジなんか邪魔にしかならないからです。

今日の中国ニュース(2019年11月11日分)

リベラル21 少数民族にとって中国革命とは何だったか(5)
 今日の中国ニュース(2019年11月7日分) - bogus-simotukareのブログで紹介したリベラル21 少数民族にとって中国革命とは何だったか(4)の続きです。ちなみに「まだ続く」そうです。いつ終わるんでしょうか。正直こんなに長くなるなら自ブログで書いてほしいですね。
 そしてチベット問題がどうでもいいとまでは言いませんが「中国の国内問題」がどう「私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてネット上に市民のメディア、リベラル21を創った」と関係するんでしょうか?

 いわゆるチベット叛乱は、農牧民のレベルでは、民族の自決とか高度の自治を要求するものではなかった。初めは「民主改革」への抵抗である。

 つまりは阿部は「中国政府は酷い」と言いたいのでしょうが俺なんか

 つまりインドで亡命生活60年の人と中国政府のもとで働いたその兄弟とでは、明らかに兄弟のほうがチベットの人たちの役に立っている(ほかに学校のことなど) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が紹介する小島正憲氏の見解は正しいんじゃん

つまり「もし私がダライ・ラマならば、亡命しなかった。」は正しかったんじゃん。「展望もないまま『民主改革への反発』から暴動やらかした」んじゃん。

と思いますね。たぶん俺のような主張を聞いたら阿部らダライ支持者は烈火のごとく怒るのでしょうが。

 チベット仏教第二の高僧第十世パンチェン・ラマは、文化大革命が終わって10年後の1987年春、全国人民代表大会チベット自治区常務委員会で、1959年までの中共軍によるチベット叛乱鎮圧について告発した。以下はその抜粋である。

 「抜粋」とやらは紹介を省略します。
 ここで阿部はもちろん「ダライと行動を共にしなかった、そしてチベット自治区の要職に就いたパンチェン」ですら中国批判した、それほど中国政府は酷いと言いたいのでしょうが、俺なんか別の感想を持ちますね。
1)「1986年以前」「1988年以降(特にパンチェンが死去した1989年以降)」はともかく少なくとも1987年頃は「大物のパンチェンだから言えた」と言う面が大きいがこの程度の不満が言えた
 まあパンチェンは1989年に病死していますし、彼のこうした不満がどれほどその後のチベット政策に反映された(あるいは反映されなかった)のかは俺は無知なので知りませんが。
2)結局パンチェンはダライと行動を共にしなかった
 これはパンチェンだけでなく有名人ではプンワンもそうですが。勿論それは彼らが中国統治に何の不満もなかったとか、裏切り者で中国に媚びていたとかいう話ではない。武装蜂起とか亡命とかしても事態が悪化するだけだという現実主義だからそうしなかったわけです。

 布施や参拝を禁止し、僧侶に労働と還俗、結婚を強制した。釈尊は労働を禁じているから、中共の「坊主も大衆同様労働せよ」という政策は、結婚同様破戒の強制である。布施がなくなれば僧侶は餓える。しかも還俗は家族が扶養家族を抱え込むことを意味する。当時チベット人社会は一家に一人、あるいは二人の男子が出家していたから、集落社会は混乱した。

 まあ中国のやり方も乱暴で正当化は出来ないでしょうが、それにしても「当時、チベット人社会は(平均で)一家に一人、あるいは二人の男子が出家していた」というのが事実なら、まともな社会とは到底言えないでしょう。チベットが近代化できなかったのも当然と言うべきでしょう。「やり方はともかく」、こうしたチベットの状況には何らかの改革は不可避だったでしょう。

 『七万言書』によると、中共の工作者はこちらに村の娘や尼僧を並べ、あちらに僧侶を並べて相手を選ばせた。僧侶と尼僧を同居させ、性的堕落状態をつくるという「革命的」方法もとったという。ほとんど家畜同然の扱いである。

 まあ、中国政府のやり方が強引なことを認めた上の話ですが、日本においても海外においても宗教者の妻帯はもはや珍しくないですからねえ(未だに妻帯禁止の宗教も勿論あるが)。
 「そこまでして僧侶の独身にこだわって意味があるのか?」「つうか貧乏で食えないから、ガキをどんどん僧院に送り込んだあげく独身を強制して必要以上に人口が増えないようにしてるだけと違うのか?」とは思います。

 1958年6月毛沢東は青海の叛乱を聞き、「反動分子を粉砕するチャンスだ」といい、青海省党書記はこれに追従して、「奴らの親玉を捕まえれば任務は半分完成だ。そいつらを銃殺すれば100%完成だ」といった(後述)。

 で反乱分子がまともな裁判もされずにむやみやたらに殺された、「疑わしきは罰する」で「無実の者まで殺された」という話を始める阿部ですが「中国の態度に問題があること」を認めた上での話ですが、プンワンやパンチェンはこの種の反乱に「勝ち目がない」と否定的だったわけです。反乱することが政治戦術として正しかったのかは疑問符がつくでしょう。

 青海省副省長だったタシ・ワンチュクはこれを見て、(ボーガス注:反乱軍の捕虜に対する中国軍の)あつかいのひどさに驚き怒った。のちにプンワン(中共ラサ工作委員、拙稿前回参照)に会ったとき、中共*1の捕虜の残酷な扱いを話して涙を流した。タシ・ワンチュクは長征途上の紅軍がカムを通過した時紅軍に加わった「老紅軍」で、のちに第一野戦軍とともに青海に来て、そこで省幹部になった人物である。

 以前今日の中国ニュース(2019年11月7日分) - bogus-simotukareのブログで紹介したリベラル21 少数民族にとって中国革命とは何だったか(4)を読めば分かりますが、ワンチュクもプンワンも「当時の遅れたチベットの状況」に不満を抱き改革を志し、しかしチベット中央政府が改革に乗り気でないことから「もはや外部勢力の力を借りるしかない」「外部勢力の中では一番中国共産党がまともそうだ」と中国共産党チベット解放を支援した人物です。
 「チベット解放初期」は中国共産党側も「あまり無茶は出来ない」と謙虚でそれなりにプンワンらの信頼も得ていたところ、解放後、チベットでの政権基盤が確立すると「増長した」と言うべきなのか、こうしたプンワンらを嘆かせる事態に残念ながらなったわけです。


香港への武装警察投入は近い 太田文雄(元防衛庁情報本部長) « 国基研ろんだん 国基研ろんだん « 公益財団法人 国家基本問題研究所

 「新しい日中関係を考える研究者の会」という学者集団がある。7月に東大で行われた「米中対立」セミナーに参加したところ、静岡県立大学の諏訪一幸教授が、今後の日中キーワードは「協働」だと結んだ。
 7月から同会の代表幹事となった高原明生*2東大教授は「中国の『一帯一路』と西側が主導する『自由で開かれたインド太平洋構想』とは共存できる」と言っていたが、自由で開かれた香港が専制的な武力介入によって抑圧されるのを目の当たりにしても、同じ発言ができるのだろうか。

 国基研など反中国ウヨがこんなことをいったところで「経済的に深いつながりがある」日中間に対立などという選択肢はあり得ません。


新潟米輸出 県、中国向けPRを本格化 :日本経済新聞
介護用品、炊きたてコシヒカリ…中国輸入博で日本製PR:朝日新聞デジタル

新潟米輸出 県、中国向けPRを本格化 :日本経済新聞
 新潟県は中国向けに県産食材のPRを強化する。日本貿易振興機構JETRO)と連携し、北京で県産米の魅力を伝えるイベントを開くほか、現地のレストラン関係者を招き、県内の酒造会社などを巡るツアーを実施。県産米は中国の輸入規制が解除されて11月末で1年がたつ。県はコメ以外の品目の規制解除も見据え、輸出増に向けた布石にしたい考えだ。
 15日に北京の日本料理店「北京なだ万」で、新潟米を売り込むレセプションを開く。中国政府関係者や県産米の輸出事業者など50人を招き、新潟米のチャーハンやおにぎり、デザートをふるまう。29日~12月1日には上海のレストラン関係者を招き、新発田市の酒造会社や燕市の銅器などを見学する。
 中国政府はコメを除き、県産食材の輸入を停止している。県は米菓や日本酒、農産品など幅広い品目の規制解除を求めている。県の担当者は「中国の人に新潟の食文化や食に関わる産業を深く知ってもらえれば」と期待している。

介護用品、炊きたてコシヒカリ…中国輸入博で日本製PR:朝日新聞デジタル
 中国は今後、急激に高齢化が進む見通しだ。パナソニックは今回、利用者の歩行データを分析できる歩行補助器や、生体データをもとに健康のアドバイスをするミラーなど、介護や健康維持関連の展示をした。(ボーガス注:パナソニック)中国・北東アジア社の本間哲朗社長はこの日の説明会で「日本は世界で最も早く高齢化した。その経験と技術を生かし、課題解決の力になりたい」と訴えた。
 電気自動車(EV)大国となった中国は、水素燃料電池車(FCV)にも積極的になった。トヨタ自動車はFCV「ミライ」の新型を展示。燃料電池の部品を供給した現地メーカーのFCVバスの試乗会もした。
 東日本大震災後続いていた輸入規制が2018年11月に解禁された新潟米。炊きたてのコシヒカリを目当てにバイヤーが大勢集まっていた。輸入業者によると、日本米の価格は中国米の2~10倍と高いが、富裕層に人気だ。福建省のバイヤーは「安心安全を掲げる日本の農産物への信頼は高い」と話す。

 産経、日本会議などウヨ連中がどんなに中国を敵視しようともこうした「中国ビジネス」を希望する「日本財界のニーズ」がある以上、安倍に中国敵視という選択肢はないわけです。

*1:阿部は「中国人民解放軍(正式名称)」とは絶対にいいたくないのでしょうねえ。

*2:著書『開発主義の時代へ 1972-2014』(共著、2014年、岩波新書)など

新刊紹介:「前衛」12月号

 「前衛」12月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。「興味のある内容」のうち「俺なりになんとか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■対談「沖縄が問う憲法にもとづいた政治のあり方:辺野古新基地建設の根底にあるもの」(高良鉄美*1参院議員)、赤嶺政賢*2衆院議員))
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
横沢・高良新参院議員が党訪問/あたたかい声援が励みに
土砂投入3%のみ/辺野古 政府強行も進まず
辺野古 官製談合疑惑/日曜版スクープ 資材単価 入札前に示す


■「減らない年金」はどうすれば実現できるか:マクロ経済スライド廃止の展望を考える(垣内亮*3
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
マクロ経済スライド 年金削り、格差広げる/廃止し「減らない年金」を
低すぎる年金 底上げこそ/マクロ経済スライド廃止迫る/参院財金委 小池書記局長 質問
年金7兆円減 首相認める/マクロ経済スライド廃止が最大焦点に
年金を7兆円削減するマクロ経済スライドを廃止し、貧しい年金の底上げを/NHK「日曜討論」 小池書記局長が主張
年金7兆円削減 政府 公式に認める/「マクロ経済スライド」 志位委員長の質問主意書に
基礎年金6万3千円確保言うが/首相の反論は“架空の数字”
安倍首相が粗雑な反論/「マクロ経済スライド廃止で40年代に積立金枯渇」
公明新聞 繰り返す「デマ」攻撃/年金問題 破たんした主張
基礎年金 30年で3割減/マクロ経済スライドで年間7兆円/政府が「財政検証」 低年金者ほど打撃


■虚偽と隠ぺいの日米貿易協定(鈴木宣弘*4
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/日米貿易協定合意/異常な一方的譲歩 承認許すな
主張/日米貿易協定署名/承認の阻止へ力を合わせよう
主張/日米貿易協定審議/“売国”的協定の承認許されぬ
牛肉輸入制限が無力化/日米貿易協定 穀田議員に政府認める/衆院外務委
日米貿易協定案は一方的譲歩 詳しい試算も出さず論外/志位委員長会見 承認阻止を訴え
農業と経済に大打撃/日米貿易協定認めない/衆院審議入り 笠井氏追及


■関電腐敗の構図を問う(金子豊弘)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
原発マネー還流 元助役関連会社、稲田氏に献金/関電側 パー券50万円購入
主張/原発マネー還流/「闇」の解明は政府の責任だ
国政調査権で参考人招致を 問われる首相の責任/関電「原発マネー」還流疑惑 小池氏訴え
主張/「原発マネー」疑惑/「再稼働利権」の核心に迫れ
真相究明意思ない答弁/野党ヒアリング 関電疑惑に経産省


■トランプ政権の経済政策とアメリカ経済の行方:なぜ今、最低賃金の大幅引き上げが必要なのか(萩原伸次郎*5
最低賃金引き上げで日本経済の好循環をつくる(斎藤寛生)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/最低賃金の目安/大幅アップ・地域格差の解消を


シリーズ「メディアと民主主義を問う」
■「嫌韓」の歴史的起源を探る:なぜ、日本のメディアの韓国報道は歪むのか 韓国報道を歪ませる「眼鏡」の系譜(加藤直樹*6
(内容紹介)
 加藤氏曰く、
「我々、日本人は関東大震災での朝鮮人虐殺、久保田妄言(吉田内閣)、高杉妄言(佐藤内閣)、藤尾*7妄言(中曽根内閣)、石原都知事三国人発言といった過去の日本の韓国・朝鮮差別言動をどれほど批判し精算してきたのか」
征韓論者、つまり韓国侵略主義者である西郷隆盛をただただ明治維新の英雄として大河ドラマで取り上げるような態度の裏には韓国差別があるのではないのか」
「脱亜論の侵略主義者・福沢諭吉が一万円札というのも非常に問題ではないか」 
「安倍政権や右翼支持層(日本会議、国基研、産経など)の嫌韓国極右ぶりを批判した上での話だが、彼ら極右に限らず、一部のリベラル派、左派を除き、多くの日本人が韓国、そしてアジアへの差別意識を持ち続けてきたことが今、ワイドショーの嫌韓国報道として表面化してるだけではないのか」とのことです。確かにその通りかもしれません。

参考

“メディアは事実を伝えるのが仕事だ”と主張する人に伝えておきたい政府・メディア共同で犯した隠蔽事件 - 誰かの妄想・はてなブログ版
『三十六年間は搾取をしたわけではない。善意でやったわけである。
 [中略]
 日本は朝鮮にたいする三十六年間の統治にかんしてあやまれ」という声もあるが、あやまれというのはどうか。交渉は双方の尊厳を傷つけないようにやらねばならない。国民感情としてもあやまるわけにはいかないだろう。
 日本は朝鮮を支配したというが、わが国はいいことをしようとした。山には木が一本もないということだが、これは朝鮮が日本から離れてしまったからだ。もう二十年日本とつきあっていたらこんなことにはならなかったろう。われわれの努力は敗戦でだめになってしまったが、もう二十年朝鮮をもっていたらこんなことにはならなかったかも知れない。台湾の場合は成功した例だが。
 日本は朝鮮に工場や家屋、山林などをみなおいてきた。創氏改名もよかった。朝鮮人を同化し、日本人と同じく扱うためにとられた措置であって、搾取とか圧迫とかいうものでない。』
(『アカハタ』一九六五年一月二十一日号)
 上記は1965年1月7日、第七次日韓会談の記者会見で日本側首席代表・高杉晋一*8が述べた内容をアカハタが報じたものです。
 植民地支配を否定し恩恵だと主張する内容で、これが植民地支配を受けた側を如何に侮辱する発言であるか、容易に理解できると思いますが(いや、今の日本人には無理かな)、驚くべきは、これが15年目に突入した日韓国交正常化交渉の大詰めで出た発言だということです。
 この翌月には日韓基本条約案が仮調印されるわけで、ほとんど調整が終わっている状況で、相手側を著しく侮辱する発言を交渉の最高責任者がやったわけですから、この夜郎自大な感覚もさることながら、何よりも外交センスの無さに呆れ果てます。
・ここで現実的だったのは韓国側代表です。このような侮辱発言が公になったら、せっかくまとまりかけていた交渉が少なくとも数年は遅れると正しく認識した金東祚*9首席代表の方から牛場信彦*10副代表に、この問題発言をオフレコにするように助言し、日本側もそれを受け入れ、オフレコにするように記者らに要請することになりました。
 それをアカハタがすっぱ抜いたわけです。(1月10日報道)
 そして、東亜日報でも報道され(1月17日)、懸念された通り、この高杉発言は日韓で大問題となりました。これに対して、韓国外務部は「共産党のでっち上げ」だとして高杉代表を擁護し、高杉側も会見で発言の事実を否定し、事実を隠蔽しました。
 1965年2月15日には椎名*11外相も、事実を否定する国会発言を行いましたが、他のメディアは沈黙したままでした。もちろん、記者会見の場にいた他のメディアの記者らは、アカハタ報道が事実であることも、日韓両政府が嘘をついて事実を隠蔽していることも知っていましたが、それを報道しなかったわけです。
 「エコノミスト」1965年2月9日号には高杉代表が「あれは共産系の作為的報道としか思えません」と虚言を述べています。
 アカハタ報道が事実であったことは1993年に発表された金東祚の『韓日の和解:日韓交渉14年の記録』*12で確認されました。
 しかし当時、他のメディアはそれを黙殺しました。日韓両政府と日本メディアが連携して事実を隠蔽したわけです。

 朴チョンヒ側の態度をどう評価するにせよ、この時、「日本の経済支援ほしさ」に高杉暴言を朴政権がろくに非難しなかったことは明らかに「韓国は日本に逆らえない弱国だ」という非常に不適切な認識を助長したことでしょう。しかし昔はともかく今の「経済大国」韓国には「日本のカネほしさ」にへいこらする必要はどこにもありません。その点は中国などもそうでしょう。ドラマ「大地の子」では新日鉄の支援で中国に最新の製鉄所が出来ます。文革直後の中国は「日本の経済支援」を熱望していたわけですが、今や中国もそんな時代では全くないわけです(なお、昔の中国、韓国に当たる「日本にへいこらしてる貧乏国」はあえていえばミャンマーベトナムなどといった東南アジアの国でしょう)。
 一方「産経などウヨ」は「高杉暴言を朴政権がもみ消したとき」の「韓国は格下の国」という思い上がりを引きずってるのだからそれは軋轢がおこって当たり前です。

検証 三つのタブーと「しんぶん赤旗」/「歴史タブー」 徴用工問題で違い鮮明
 今回問題になった日韓基本条約・請求権協定の交渉過程でも、日本政府が1910年の韓国併合条約が不法・無効だったことも認めないものだったにもかかわらず、大手紙は「韓国に譲歩に譲歩を重ねてきた」と非難さえしていました。1965年1月、日韓会談首席代表になった高杉晋一氏が「日本があと20年朝鮮をもっていたらよかった。植民地にしたというが、日本は(ボーガス注:韓国近代化という)いいことをやった」などと植民地支配を正当化する重大発言を行ったとき、大手新聞はオフレコ扱いにし、一切報じませんでした。報じたのは日本の新聞では「赤旗」だけ。逆に10日もあとに、「高杉発言は無根」(「読売」)などという釈明だけを報じたのでした。

 それにしても「日本のおかげで韓国と台湾は近代化したのだ」と居直りながら「中国共産党のおかげでチベットが近代化したこと」については「ダライ亡命政府の抗議運動がある。近代化したことを手放しで評価できない」と平気で言える日本ウヨにはいつもながら呆れます。

いま振りかえる 植民地支配 歴史と実態(3)/戦後、日本政府がとった態度は
・2015年、韓国の建国大学で講演した日本共産党志位和夫委員長は、戦後の日本政府の態度を示す二つの文書を示しました。「割譲地に関する経済的財政的事項の処理に関する陳述」(49年)と「対日平和条約の経済的意義について」(50年)という文書です。いずれもサンフランシスコ講和条約にむけた準備対策として作成された「極秘」文書でした。
 二つの文書には、ほぼ同じ表現であからさまな植民地支配美化論が展開されていました。
・こうした認識は、今日なお日本政府が持ち出す日韓基本条約と請求権協定(1965年)の交渉にも引き継がれました。この交渉は、14年もの異例の長期間にわたりましたが、その要因の一つが日本政府代表団による「妄言」でした。
 1953年には、交渉の日本側代表だった久保田貫一郎*13が「朝鮮36年間の統治は、いい面もあった」「はげ山が緑の山に変わった。鉄道が敷かれた。港が築かれた。米田が非常にふえた」「カイロ宣言は、戦争中の興奮状態において連合国が書いたもの」などと妄言を連発。(ボーガス注:李承晩政権が反発したために)交渉は長期にわたって中断しました。
 65年1月には、首席代表・高杉晋一が就任当日、「日本は朝鮮を支配したというけれども、わが国はいいことをしようとしたのだ」「敗戦でダメになったが、もう20年朝鮮をもっていたら、こんなこと(はげ山)にはならなかった」「創氏改名もよかった」などと発言。「久保田発言」に匹敵する妄言でした。
 このときは、交渉への影響を恐れた外務省がオフレコ扱いを要請。「アカハタ」(現「しんぶん赤旗」)と韓国の東亜日報が暴露したものの、一般紙は沈黙し、その後政府が「事実無根」と否定したことのみを報じたのでした。当時の新聞は、暴言を吐く日本政府を批判するどころか、韓国に対して「弱腰」だと非難さえしていたのです。
 90年代に入り、元「慰安婦」が証言し、謝罪と賠償を求めるなど、日本国内外の世論と運動が盛り上がる中で、日本政府も前向きの変化をみせるようになります。
 93年には河野洋平*14官房長官が「慰安婦」問題に関する談話を発表し、日本軍の関与と強制性を認め、「心からのお詫(わ)びと反省」を表明しました。95年には、村山富市首相が戦後50年談話で、日本が「国策を誤り」「植民地支配と侵略」によって多大な損害と苦痛を与えたことを認め、「痛切な反省」と「心からのお詫び」を表明しました。
 日韓両国間でも、98年に金大中(キム・デジュン)韓国大統領と小渕恵三*15首相の間で「日韓パートナーシップ宣言」に署名。「日本の韓国に対する植民地支配への反省」という表現が初めて盛り込まれました。
 こうした前向きの流れを逆転させたのが、歴史を逆流させる勢力の中心で政治家としての歩みをすすめてきた安倍晋三*16首相だったのです。「村山談話」の核心である「植民地支配と侵略」には言及せず、「慰安婦」問題の強制性を否定する閣議決定を行い、戦後70年談話(2015年)で朝鮮植民地化をすすめた日露戦争を賛美したのでした。

いま振りかえる 植民地支配 歴史と実態 番外編/日本メディアはどう伝えてきたか
 日韓関係の深刻な悪化が続く中、メディアの異様な報道が目立ちます。TVをつければワイドショーが嫌韓反韓をあおる、週刊誌を開けば「韓国なんて要らない」「ソウルは3日で占領できる」などという物騒な活字が目を奪う…。こんな無残な姿を見るにつけ、メディアのあり方が問われます。戦前、戦後を通じて、朝鮮植民地支配にどう対応してきたか、検証します。
・1945年8月、日本はポツダム宣言を受諾し、植民地朝鮮を解放しました。しかし、日本政府はその直後から、過去の非を認めず、朝鮮支配は正しかった、日本はいいこともしたという態度を打ち出しました。戦後一貫した日本政府の基本的立場です。これが端的に表れたのが、1950~60年代にかけての日韓国交正常化交渉における、いわゆる「久保田発言」「高杉発言」でした。
 「日本は朝鮮に鉄道、港湾、農地を造った」「多い年で二〇〇〇万円も持ち出していた」。
 1953年10月、日韓会談が長期にわたり中断する原因となった第三次会談の日本側首席代表、久保田貫一郎の発言です。韓国側の激しい反発にあい、会談決裂、中断したのは当然です。ところが、日本のメディアは久保田発言を批判するどころか、「ささたる言辞」「韓国の不条理な威嚇には屈しない」「朝鮮統治には功罪両面がある」などと発言を擁護しました。当時の新聞論調について研究者は「全新聞が韓国に非があるという認識であった」と分析しています。
 「日本は朝鮮を支配したというけれども、わが国はいいことをしようとした」「それは搾取とか圧迫とかいったものではない」。
 交渉最終盤の1965年1月、第七次会談首席代表の高杉晋一による妄言は、交渉決着への影響を懸念した日韓両政府によってオフレコ扱いとされ、日本の商業メディアは取材しながら黙殺しました。


■徴用工問題をめぐる問題点の整理と解決の展望について(川上詩朗*17
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。徴用工問題についてはむしろ韓国側の主張にこそ道理があり、それを否定する安倍政権や日本マスコミこそが間違ってるとする川上氏です。これについては興味深い本が出版された(買うことに決めた) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が紹介されている川上氏の著書『徴用工裁判と日韓請求権協定:韓国大法院判決を読み解く』(共著、2019年、現代人文社)が詳しいかと思います。
参考
元徴用工問題 本質は人権侵害/日本の弁護士有志が声明
シリーズ 日韓関係を考える/徴用工問題 協議開始を/弁護士 川上詩朗さん
生放送!とことん共産党/「徴用工」問題の核心を考える/小池氏「植民地支配の反省を」 川上氏「人権問題として解決」
日韓法律家「共同宣言」/徴用工 迅速に被害者救済を


■産業界・財界の欲望が教育に持ち込まれる:Society5.0は何をもたらすのか(児美川孝一郎*18
(内容紹介)
 「Society5.0」(小生も不勉強でよく分かりませんが)による「IT教育推進論」について「財界の要求に応えようとする近視眼的な物ではないのか?」と警鐘を鳴らしています。もちろん、筆者もIT教育自体を全否定しているわけではありませんが。


■復旧・復興へ、さらに政治の力を:北海道胆振東部地震から1年(畠山和也)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

一部損壊に支援必要/紙議員 北海道地震で要求
復興後押し検討せよ/北海道地震で紙議員
主張/北海道地震1年/住まい再建への支援を強めよ
北海道地震と台風被害/新たな酪農家支援策/農水省説明 紙、畠山両氏が要請


■論点:長野県佐久市「高度230メートル」の波紋(大野智久)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
米軍 低空飛行許すな/長野・佐久 市民が対話集会
米軍機、高度二百数十メートル飛行/長野・佐久 日米合意に違反/共産党が調査


■論点:豚コレラ 新たな犠牲を生じさせない政策を(森島倫夫)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

豚コレラ 新対策必要/紙議員が質問主意書
被害農家支援迅速に/共産党4県委 豚コレラで政府交渉
豚コレラ 関係者要望に向き合わず/紙議員質問に政府答弁書
豚コレラ「ワクチン早く」/党埼玉県議団が現地調査/小鹿野町など
豚コレラ 農家支援の拡充を/党国会議員団、農水相申し入れ


■暮らしの焦点「憲法国際法に反する朝鮮学校無償化除外「適法」判決」(丹羽徹*19
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。勿論主張の大筋としては、前川元文科次官や小生のような「最高裁判決は安倍の無法を黙認する不当判決」という認識と同じです。
最高裁、国の「違法性」問わず―無償化裁判、東京、大阪の上告退ける – イオWeb
「政治の下僕と化した司法の不当な決定」 – イオWeb
東京・大阪ともに原告敗訴確定/高校無償化訴訟、「除外は適法」最高裁 | 朝鮮新報


メディア時評
■テレビ:かんぽ不正販売番組延期問題(沢木啓三)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

日本郵政の圧力受け番組制作介入/石原NHK経営委員長は辞任を/視聴者団体抗議
NHK番組への圧力疑惑/議事録など提出要求/野党ヒアリング
NHK 議事録“ある”/かんぽ問題 経営委、主張翻す/野党ヒアリング


文化の話題
■美術「あいちトリエンナーレ 国際展の国際化」(武居利史)
(内容紹介)
 もちろんあいちトリエンナーレと言えば例の「補助金不支給」などの問題がありますが、このコラムにおいては「そうした記事が既に前衛に掲載されてること」もあって、主として「あいちトリエンナーレ」が「海外の芸術家が出店する国際的展覧会の草分けであること」が指摘されています。


■写真「写真展「山沢栄子*20・私の現代」」(関次男)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

生誕120年 山沢栄子 私の現代|西宮市大谷記念美術館
2019年5月25日(土)〜7月28日(日)
・山沢栄子は1899年大阪に生まれ、1920年代のアメリカで写真を学び、1930年代から半世紀以上にわたり、日本における女性写真家の草分けとして活躍しました。
・生誕120年を記念した本展では、1970-80年代に手がけたカラーとモノクロによる抽象写真シリーズを中心に、抽象表現の原点を示す1960年代の写真集、戦前の活動を伝えるポートレートや関連資料など約140点を展示し、日本写真の流れとは異なる地平で創作を続けた芸術家の歩みを辿ります。
■山沢栄子(1899-1995)
 大阪に生まれる。1918年私立女子美術学校日本画科選科を卒業。1926年渡米し、カリフォルニア・スクール・オブ・ファインアーツで油絵を学ぶ。同時にアメリカ人写真家コンスエロ・カナガの助手となり、写真技術を習得。1929年帰国、1931年大阪に写真スタジオを開設し、ポートレート写真家として活躍。戦後は企業の広告写真などを手がけたのち、抽象写真の制作を始めた。1968年神戸に移り、1970-80年代に「私の現代」と題した個展を多数開催。1955年大阪府芸術賞、1977年日本写真協会功労賞、1980年神戸市文化賞を受賞。大阪中之島美術館、東京都写真美術館川崎市市民ミュージアムなどに作品収蔵。
■本展は共同企画展として、下記会場に巡回します。
・2019年11月12日(火)〜2020年1月26日(日)
 東京都写真美術館

東京都写真美術館山沢栄子「私の現代」(2019年11/12~2020年1/26)



■映画「映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男:カメジロー不屈の生涯』:不屈の生涯を日記から読み解く」(伴毅)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』(2019)

石川)戦後沖縄、不屈の政治家の記録映画 2日から上映:朝日新聞デジタル
 戦後、占領下の沖縄で米軍と対峙(たいじ)した政治家、瀬長亀次郎(1907~2001)を描くドキュメンタリー映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯」が2日から、金沢市香林坊2丁目のシネモンドで上映される。
 不当に投獄されても、那覇市長の座から追い落とされても、米軍の圧政に抗し続けた男。その弁舌は民衆の心をわしづかみにした。沖縄で1年間の連続上映を記録した前作「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」(2017年公開)の続編にあたる本作では、残された230冊の日記を丹念に読み込み、家族との時間も大事にした人間的な側面に踏み込んだ。
 圧巻は、衆院議員として佐藤栄作首相(当時)に挑む国会論戦の場面だ。1971年12月の特別委員会。なぜ基地のない沖縄を求めるのか。沖縄人の思いの丈を全身でぶつける。首相も正面から応じる。緊迫の映像が12分。
 「立場が違っても相手を認め、論じ合う。そんな空気が当時の政治の世界にはあったんですね」と監督の佐古忠彦さん*21(55)。TBSの報道番組で、ともに働いたキャスターの筑紫哲也さんから影響を受け、沖縄取材を続けてきた。「沖縄に行くと日本がよく見える」と話していたのを覚えている、という。
 「沖縄と本土の間に溝が生まれるのは、米軍統治27年という沖縄戦後史への知識が私たちに欠けているからではないか。その歴史を知り、これからを考える材料にしていただければ」
 音楽は坂本龍一、語りは役所広司*22山根基世*23が担当する。

*1:琉球大学名誉教授。2019年7月、沖縄社会大衆党元委員長の糸数慶子参院議員(当時)の後継として参院選に立候補して当選。著書『沖縄から見た平和憲法』(1997年、未來社)

*2:共産党沖縄県委員長

*3:著書『消費税が日本をダメにする』(2012年、新日本出版社)、『「安倍増税」は日本を壊す:消費税に頼らない道はここに』(2019年、新日本出版社

*4:東京大学教授。著書『食の戦争:米国の罠に落ちる日本』(2013年、文春新書)、『牛乳が食卓から消える?:酪農危機をチャンスに変える』(2016年、筑波書房)、『亡国の漁業権開放』(2017年、筑波書房ブックレット)など

*5:横浜国立大学名誉教授。著書『アメリカ経済政策史:戦後「ケインズ連合」の興亡』(1996年、有斐閣)、『通商産業政策』(2003年、日本経済評論社)、『世界経済と企業行動:現代アメリカ経済分析序説』(2005年、大月書店)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『日本の構造「改革」とTPP』(2011年、新日本出版社)、『TPP:アメリカ発、第3の構造改革』(2013年、かもがわ出版)、『オバマの経済政策とアベノミクス』(2015年、学習の友社)、『新自由主義と金融覇権:現代アメリカ経済政策史』(2016年、大月書店)、『トランプ政権とアメリカ経済:危機に瀕する「中間層重視の経済政策」』(2017年、学習の友社)、『世界経済危機と「資本論」』(2018年、新日本出版社)など

*6:著書『九月、東京の路上で:1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(2014年、ころから)、『トリック:「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(2019年、ころから)

*7:鈴木内閣労働相、自民党政調会長(中曽根総裁時代)、中曽根内閣文相など歴任。いわゆる藤尾妄言で国内外の批判を受け中曽根首相に文相を更迭された。

*8:1892~1978年。三菱電機社長、会長、海外経済協力基金総裁など歴任

*9:駐日大使、外相など歴任

*10:駐カナダ大使、外務事務次官、駐米大使、福田内閣対外経済担当大臣など歴任

*11:内閣官房長官、池田内閣通産相、外相、佐藤内閣外相、通産相自民党副総裁(田中総裁時代)など歴任。佐藤内閣外相として日韓国交正常化を実現

*12:1993年、サイマル出版会

*13:1902~1977年。メキシコ大使、南ベトナム大使など歴任

*14:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任

*15:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相を経て首相

*16:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*17:著書『徴用工裁判と日韓請求権協定:韓国大法院判決を読み解く』(共著、2019年、現代人文社)

*18:法政大学教授。著書『新自由主義と教育改革』(2000年、ふきのとう書房)、『若者とアイデンティティ』(2006年、法政大学出版局)、『権利としてのキャリア教育』(2007年、明石書店)、『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』(2011年、日本図書センター)、『キャリア教育のウソ』(2013年、ちくまプリマー新書)、『「親活」の非ススメ』(2013年、徳間書店)、『まず教育論から変えよう:5つの論争にみる、教育語りの落とし穴』(2015年、太郎次郎社エディタス)、『夢があふれる社会に希望はあるか』(2016年、ベスト新書)、『高校教育の新しいかたち』(2019年、泉文堂)

*19:龍谷大学教授。著書『子どもと法』(編著、2016年、法律文化社

*20:1899~1995年。写真家。

*21:TBSテレビ報道局プロデューサー。元TBSアナウンサー。2016年8月21日に放送された、沖縄の米国統治に対する抵抗運動で活動した政治家・瀬長亀次郎を特集した『TBS・報道の魂スペシャル「米軍が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか?~」』ではディレクターを担当。同番組に追加取材・再編集を行い、2017年に公開された映画『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』では監督を務めた。著書『「米軍が恐れた不屈の男」瀬長亀次郎の生涯』(2018年、講談社

*22:1996年(平成8年)公開の主演映画『Shall we ダンス?』や『シャブ極道』、『眠る男』の演技が絶賛され、その年度の主演男優賞を総ざらいする。1997年(平成9年)に主演した映画『うなぎ』がカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。名実共に、日本を代表する映画俳優の一人となった。

*23:NHK初の女性アナウンス室長を務めた。現在はフリーアナウンサー