黒坂真に突っ込む(2019年11月9日分)

■黒坂ツイートにコメント

黒坂真
 林潤議員。昔々の日本共産党は大真面目に暴力革命で日本社会を変える、と信じていました。

 「日本共産党は暴力革命なんか考えていない、そんなことを考えてないから野党共闘している」という林・岡山市議(共産党)への黒坂の因縁つけです。
 「昔々*1」てのは、もちろん「戦前の大森銀行ギャング事件*2(1932年)」だの「徳田球一書記長時代の火焔瓶闘争(1955年(昭和30年)のいわゆる六全協*3で徳田路線が公式に否定され、宮本顕治*4が実権を掌握する以前、つまり昭和20年代)」だのですからねえ。
 「60年以上も昔の話やないか」で終わる話です。
 そんなことを言うのなら「創価学会公明党は昔は国立戒壇を主張してました(しかし今は勿論否定)」「戦前は侵略戦争の実施に協力したのが今の自民党の前身政党(政友会や民政党)です(しかし安倍ですら公然と戦前美化は困難)」「昔の天皇は外国侵略の実行者でした(明治天皇の日清・日露戦争昭和天皇日中戦争、太平洋戦争)」つうことにもなるわけです。
 でそんな昔の話で「今の」創価学会公明党自民党天皇一家を批判したら正気を疑われるでしょうよ(ただし自民党について言えば「戦前美化右翼の日本会議とズブズブ」など、戦前をまともに反省してるとはとても思えないという問題がありますが)。

黒坂真
 吉岡正史さん。引用記事を読みました。日本兵士が妊娠した*5慰安婦の腹を軍刀で切った、という話がありますが、信憑性に欠けます。軍刀をそんな事で使ったら刀が錆びてしまいます。
終戦記記念日にあらためて言いたい!「慰安婦はデマ」こそデマだ! 日本軍関与、強制連行…歴史修正主義者たちはこの証拠を見よ|LITERA/リテラ

 いつもながら黒坂には「はあ?」ですね。そりゃ人を斬った後、血糊もふかずにそのままにしておけば、刀はさびるでしょうが、普通、さびないように血糊をふくに決まってるわけです。そもそも血糊を拭いてもさびるような刀だったら実戦で使えないでしょうよ。黒坂にとって軍刀とは「実戦では使えないただのお飾り*6」なのか。例の「南京攻略戦・百人斬り話」でもわかるように軍刀とはそこまでお粗末な代物ではありません。

黒坂真
 日本共産党は、被災地の有権者に支援物資を寄附してきました。被災地では、有権者が大変な困難に直面しているから公職選挙法は適用されるべきでなく、超法規的措置が必要論でしょう。有事の際に自衛隊が超法規的に行動せざるを得ない場面があり得ますが、日本共産党はこれに賛成すべきです。

 おいおいですね。日本共産党は「本来は違法だが超法規的措置として許される」なんて主張はそもそもしてません。「そもそも公選法の違反行為に当たらない」というのが共産党の主張です。
 また仮に「何らかの超法規的措置」を認めることがあったとして、それは当然に「自衛隊超法規的措置」を認めることにはならないわけです。
 ここで俺が想定してる超法規的措置とは「終戦直後の闇米購入」「日本赤軍ダッカ*7日航機ハイジャック事件での福田*8内閣の身代金支払い及び赤軍メンバー釈放」ですが。

黒坂真
 日本共産党と左翼知識人は、「主戦場」という映画は上映されるべきと宣伝しています。この映画の製作者は、一部の出演者に大学院生としての研究だと言って動画を撮影しました。商業映画にするという話はなかった。他人を騙して映画に出演させてはならない。これが日本共産党員と左翼人にはわからない。

 そもそも「主戦場」の監督は「だましてないなどいない、言いがかりだ」と反論しており黒坂の言う「左翼知識人*9」も共産党も「だましなどない」と言う認識で上映を支持してるのであって、黒坂の主張は監督及び「上映支持派」へのデマ中傷でしかありません。
 黒坂の方こそ「だました」などという証拠を出したらどうなのか。
 なお、滑稽なのは黒坂らウヨは「商業映画にするとは聞いてなかった」といっても「映画での自分たちの主張が歪曲された」などとはいってないことでしょう。

*1:とはいえ「今現在」とはさすがの黒坂でも言えないわけですが

*2:警視庁特高課が送り込んだいわゆる「スパイ松村」の命令による犯行(特高謀略)とは言え「ロシア革命の成功体験」が犯行に影響したことも事実でしょう。

*3:日本共産党第6回全国協議会の略称

*4:書記長、委員長、議長を歴任

*5:終戦記記念日にあらためて言いたい!「慰安婦はデマ」こそデマだ! 日本軍関与、強制連行…歴史修正主義者たちはこの証拠を見よ|LITERA/リテラ本文を読めば分かりますが、お腹を切り裂かれたというのは「妊娠しているようにお腹の膨れた女性」です。実際には妊娠ではなく病気で腹水がたまっていたようです。黒坂のツイート「妊娠した慰安婦」からは黒坂が元記事をきちんと読まずに適当に斜め読みしているであろう事がうかがえます。

*6:百人斬り否定派にはそうした強弁をする人間がいますが勿論事実に反します。

*7:バングラデシュの首都

*8:大蔵省主計局長から政界入り。岸内閣農林相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*9:誰のことか知りませんが。なお、何も「主戦場」上映を支持してるのは左翼だけではありません。まあ、黒坂のようなウヨにとってはリベラル保守も左翼なのでしょうが。

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年11/9分:荒木和博の巻)

【調査会NEWS3115】(R01.11.8)調査会の今後の活動について: 荒木和博BLOG

 北朝鮮が正常化*1され、交渉に値する政権ができ、拉致被害者救出が実現すれば日朝の国交は自然と正常化されるだろう。
 現状の金正恩政権には圧力を強めること以外に拉致問題を進展させる方法はありえない。

 むしろ話は逆であり「国交正常化することによって日朝間に信頼関係が生じる→そのことによって拉致問題が解決し、北朝鮮民主化や経済発展にもつながる」と見るべきでしょう。
 まあ荒木の場合『北朝鮮民主化しなければ拉致は解決しない→拉致が解決しなければ国交正常化すべきでない』というへりくつで日朝国交正常化を妨害してるだけですが。

*1:「正常化」とは要するに「北朝鮮現体制の崩壊」のこと。

今日の産経ニュース(2019年11月9日分)

京都市長選、福山氏が出馬表明へ 共産支援 - 産経ニュース
 問題は旧民進党系(国民民主や立憲民主)がどう動くのかですね。連中には正直余り期待していませんので、現職に相乗りで醜態をさらしたとしても何ら驚きません。


山本太郎氏の軍師は「反緊縮」の立命館大・松尾氏 野党にじわり侵食 - 産経ニュース
 軍師と言えるほどの密接な関係なんですかね?。単に山本氏が「松尾氏*1に私淑してるだけ」なら軍師とまでは言えないでしょう(そして私淑にすぎない場合なら当然ながら、彼の政策が本当に松尾主張を正確に理解した上で立案されてるのかにも疑問符がつきます)。
 ググってもその辺りのことはよく分かりません。いずれにせよ、当初、「ただのタレント議員」と軽く思われていたのとは違い、山本氏も「政治家としての今後」を彼なりに真面目に考えてはいるのでしょう。こうした彼の動きについてどう評価すべきかは、今のところ評価できるだけの知識がないので特にコメントはしません。いずれにせよこんな記事を書いてしまう、つまり山本「れいわ新選組」を無視できない産経が、山本れいわを警戒していることは明白でしょう。


【昭和天皇の87年】号泣した東条英機 宿命の真珠湾へ、日本軍機が飛び立った - 産経ニュース

 歴代内閣の和平努力にもかかわらず、日米開戦は避けられなかった。

 過去に何度も指摘したことですがハルノートを受け入れれば戦争は避けられました。

3選したルーズベルト*2は、いつの時点で戦争を決意したのか

 ルーズベルトは「最悪の場合、反発した日本の攻撃による戦争もやむなし(米国の国益や米中関係を考えれば安易な妥協は出来ない)」位は思ったかもしれませんが、「戦前日本を免罪しようとする」産経の与太とは違い「自分から積極的に戦争をする気はなかった」でしょうね。
 もしそうなら真珠湾攻撃の時点で日本が返り討ちに遭っていたでしょう。
 「戦争もやむなし、しかし日本は負ける戦争はさすがにしないだろう」という判断があったとみるべきでしょう。だから油断がうまれ、真珠湾攻撃で大被害を受ける。

 日独伊ソの4国が連携を強めることはアメリカにとって脅威だった。しかし、独ソ開戦でその脅威は解消した。日本に譲歩する必要はなくなったのだ。

 「譲歩の必要性がなくなった」とは「日本の対米開戦の可能性が低くなった」と言う話であり、「戦争を決意した」と言う話ではありません。
 一方「独ソ開戦」によって日本が不利になったにもかかわらず、「米国許すまじ」と言う反米主義から、昭和天皇相手に「ドイツは速攻でソ連を降伏させるだろう。ドイツにとってソ連など恐れるに足りず」だの「日独伊三国同盟、日ソ中立条約で独ソ両国にパイプを持つ日本が独ソを和平させればいい。そうすれば日独伊ソ4国同盟が復活する」だの「独ソ戦が日米開戦の障害にならない」かのように無茶苦茶なことをいって、「対米開戦」を主張したのが当時の軍部です。そして「ハルノート」によほど憤慨したのか、そうした軍部の甘言を受け入れて開戦決定したのが昭和天皇や東条内閣です。
 その後の歴史を知る人間からすれば「アホか」としか言いようがないですね。開戦当時ですら「速攻でソ連降伏」だの「日本の仲介で独ソ和平」だの「本当にそんなことが可能なのか?」「可能ならそれが実現した後で対米開戦すればええヤン」つう疑問がわかずにはいられない話です。しかも実際にはどちらもありえなかったわけです。ソ連はドイツ相手に降伏も和平もせずにドイツを降伏させ、そして連合国側に回ってしまったわけです。

 本連載で再三言及したように、大元帥である昭和天皇が決してのぞまなかった戦火を強引に広げたのは軍部の革新派*3であり、それをあおったのは大手新聞メディアである。国家社会主義*4的な理想に燃える彼らは、現実的な視点から和平に努めた保守派重臣*5昭和天皇の側近たち*6を圧迫し、日本の国策を歪めた。

 「昭和天皇重臣は戦争を望まなかった」と言うのは明らかにウソですね。彼らは対米戦争は希望しなかったのですが「中国侵略戦争」には「弱国・中国など怖くない」「既成事実をつくれば英米も日本の行動を容認するだろう」「利権が手に入る」と何の躊躇もありませんでした。
 しかし中国侵略戦争は「蒋介石政権を支持する英米」との対立を深め、結局対米戦争をもたらすことになります。

 昭和6年の満州事変にはじまる日本の軍事行動をみるとき、少なくとも蒋介石政権の中国に対しては、自衛の範囲を大きく超えたものだったことを認めなければなるまい。

 ならばハルノートを受け入れて中国から撤退すればいいだろう、満州事変前の状況に戻せばいいだろう、つう話です。産経がハルノートに反発する理由は何なのか?

アメリカに対しては、自衛のために立ち上がったとはっきり言える。
アメリカにとって日本は、遅かれ早かれ叩き潰さなければならない存在だったのだ。

 アメリカがハルノートで挑発して日本を罠にはめたという「ウヨがいつもする言い訳」です。「受け入れれば開戦しないで済んだろ」で終わる話です。
 しかもここまでアメリカに悪口しながら今現在、日米安保を支持するのはどういうことなのかという話です。

 真珠湾には米太平洋艦隊の主力が在泊している。これを開戦劈頭(へきとう)の奇襲攻撃でやっつけてしまえと考えたのは、日米開戦に反対だった連合艦隊司令長官山本五十六*7その人だ。失敗すれば虎の子の空母の大半を失う。海軍上層部の多くは危険すぎると反対したが、山本は自説を押し通した。正攻法の艦隊決戦では、万に一つも勝てないと考えたからだ。

 つまり真珠湾攻撃は完全に博打だったわけです。しかしその博打をしない限り、米国相手には勝てない国力が日本でした。しかもその博打をして一時的に勝利しても結果的には日本は負けました。

 30日には高松宮宣仁親王が参内し、《敗戦の恐れある戦争の取り止めにつき提案》を受ける(昭和天皇実録29巻124頁)。だが、立憲君主として、政府と統帥部の決定を覆すことはできなかった*8

 しかし「ハルノートを受け入れることは出来ない」と決意した昭和天皇はその進言を無視しました。いずれにせよ開戦前から多くの人間が敗戦を危惧したのに日本は開戦に突き進んだわけです。

参考

高松宮宣仁親王ウィキペディア参照)
・1941年11月30日、高松宮大正天皇の三男)は兄・昭和天皇のもとを訪ね、対米開戦について意見を交わした。その際、統帥部の予測として「五分五分の引き分け、良くて六分四分の辛勝」と伝えた上で、敗戦を懸念する昭和天皇に対し、開戦を中止するよう訴えた。だが昭和天皇は、高松宮の意見を支持しなかった。昭和天皇独白録では「政府・統帥部の意見を無視した場合、クーデターが発生する危険性があった*9」と釈明している。
・開戦後も高松宮は和平を唱え、東条内閣の総辞職を度々主張した。更に高松宮側近の細川護貞*10(『細川日記』)によれば、信任する高木惣吉*11海軍少将や神重徳*12海軍大佐などと協力して、戦争を推し進める東條の暗殺さえ一時は真剣に考えていたという。
高松宮サイパンが陥落した1944年(昭和19年)夏ごろには、「(サイパン陥落で)絶対国防圏が破られた以上、如何にしてより良く負けるかを模索すべきだ」「一億玉砕など事実上不可能。新聞などは玉砕精神ばかり論じていて間違っている」と主張していた。このような言説を内大臣木戸幸一*13は嫌っており、側近の木戸を通じ、昭和天皇高松宮に対する印象も悪化していった。

 まあ、何というか、高松宮は非常に個性の強い「ある意味面白い人」ではあるようですね。「紀元節反対」で知られる三笠宮大正天皇の四男)も非常に個性の強い「ある意味面白い人」ですが。


【昭和天皇の87年】突きつけられた「ハルノート」 日本は立ち上がるしかなかった - 産経ニュース
 タイトルだけで結論丸わかりですね。
 「太平洋戦争開戦は日本は悪くない、全て米国が悪い。ハルノートで米国が挑発*14した」と言う完全な居直りです。
 本文でも産経ははっきりと

東京裁判で判事を務めたパール*15は、判決文にこう書いている。
 「現代の歴史家でさえも、つぎのように考えることができたのである。すなわち今次戦争についていえば、真珠湾攻撃の直前に米国国務省が日本政府に送ったものとおなじような通牒(ハルノート)を受取った場合、モナコ王国やルクセンブルク大公国*16でさえも合衆国にたいして戈(ほこ)をとって起ちあがったであろう…」
・日本は、自存自衛のために、戦わざるをえなかったのだ

と書いています。
 過去のこの連載で「日独伊三国同盟を結んで対米関係を悪化させたのは良くなかった」「仏印進駐で対米関係を(以下略)」と主張して、第二次近衛内閣の近衛*17首相や東条*18陸軍大臣、松岡*19外相らを産経が批判していたのは一体何だったのか。結局「対米開戦を正当化する」のでは過去のそうした産経の批判には全く意味がありません。
 正直「国力の差」を考えればハルノートを受け入れて中国(満州国含む)や仏印から撤退し「満州国誕生前の状態に戻す」べきだったでしょう。あるいは日本はハルノートを勝手に「交渉の余地なし、最後通牒」と決めつけて、ハルノート提示後、すぐに戦争に動きましたが、最低限「変更の可能性がないのか」交渉すべきだったでしょう。
 アメリカ側はハルノートについて「最後通牒であり一言一句も変更する気はない。日本がこのまま受け入れるか、受け入れないかだ」なんてことは一言も言ってないため「いわゆるたたき台(変更の可能性がある)」の可能性があったからです(まあ、「国力の差」を考えれば「変更の余地なし」と米国に言われた場合もハルノートを受け入れるべきだったでしょうが)。 


【主張】「壁」崩壊から30年 民主主義守る決意固めよ - 産経ニュース

 中国という共産党独裁国家が自己主張を強め、自由貿易体制に便乗して歪(いびつ)な肥大化を遂げた。

 吹き出しました。「便乗」て中国が欧米諸国と貿易すること何がどう「便乗」なのか。
 産経の言う「いびつな肥大化」とは何なのか。「いびつでない肥大化」というのがあるのか。

 米国と中国の対決構図は「新冷戦」と称される。

 個人的には「新冷戦」と言う表現は不適切だと思います。
 第一に米ソ対立と違い、米中対立はイデオロギー対立ではない。第二に、第一とも関係しますが、米ソは別の経済体制で「ほとんど交流もなかった」が、米中は「密接な経済交流」をしています。
 ソ連、東欧が崩壊しても米国経済にたいした影響はありませんでしたが、中国経済が崩壊したら米国へのダメージは深刻でしょう(これは米国経済が崩壊した場合の中国経済も同じですが)。
 したがって米ソ冷戦においては「体制打倒」と言う話もあり得ましたが、米中対立においてはそんなことはありえません。米中対立とは基本的に「1980年代の日米貿易摩擦」と大して変わらない話でしょう。

 日本は現実を直視し、自由と民主主義、法の支配を守り抜く決意を改めて固めるべきだ。

 産経の言う「自由と民主主義、法の支配」とは単に中国への悪口雑言ですから話になりません。
 だからこそ、国内においては「安倍のモリカケ」のような「法の支配」に反することを容認するし、国外においても「カンボジアやトルコの独裁的政治」「サウジの王制」などといった中国以外の独裁的政治については「中国同様に憎悪しているロシアや北朝鮮など」一部を除きろくに批判もしません。

 世界はこの理念を共有し、一つになるのではないか。「壁」崩壊当時の世界では、こんな期待感や楽観論が支配的だった。ソ連に牛耳られた東欧諸国や東ドイツ国民の、自由と民主主義への渇望こそが、独裁と抑圧の「壁」を突き崩したからにほかならない。

 そんな期待はせいぜい「共産党一党独裁体制が崩壊した旧ソ連・東欧だけ」でしょう。
 しかも、その期待も「旧ソ連・東欧圏の中には民主化が進展したところもあります」が、わかりやすい例では「プーチンロシアの誕生」によって「旧ソ連・東欧の共産党一党独裁崩壊」は「共産主義経済体制の崩壊」を意味しても、必ずしも「民主化を意味しなかったこと」が露呈されたわけです。

 中国が経済的に成長すれば民主化するという欧米や日本の見立ては間違いだった。

 もちろんそんな見立てを欧米も日本もしていません。あくまでも金儲けの見地から中国と付き合ったわけです。「皇太子による反体制派暗殺疑惑」が発覚しても石油利権目当てに現在、欧米や日本がサウジと付き合ってるのと話は同じです。
 欧米が過去及び現在において、経済的利益や反共などを理由に「スペイン・フランコ独裁」「韓国朴チョンヒ独裁」「フィリピン・マルコス独裁」「カンボジア・フンセン独裁」「エジプト・シシ独裁」など数々の独裁的政権を事実上容認してきたのに今更何を言ってるのかという話です。
 日本にいたっては過去において「地下資源目当て」にアパルトヘイト南アと平然と付き合い「日本は差別に加担するのか」と国際的に非難された過去すらあります。

 南シナ海に一方的に九段線を引いた。

 いわゆる「九段線」の主張は「蒋介石中華民国時代からの主張」で「蒋介石政権以降の台湾歴代政権」も「九段線」を主張しています。何も中国だけが主張しているわけではない。また南シナ海領土紛争で中国と対立するフィリピンやベトナムも「AIIBや一帯一路には参加」しています。産経が言うほど東南アジア諸国と中国は対立しているわけではない。

 台湾には武力統一の圧力をかけ続ける。

 「台湾が独立宣言すれば武力統一もあり得る(裏返せば宣言しないで現状維持にとどまれば武力統一はしない)」と言う話なので「独立宣言がしたい人間を除けば」台湾にとってそれほどの脅威ではありません。

 巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、小国を借金漬けにして勢力圏を拡大する。

 おいおいですね。一帯一路の「個別計画」において「返済不能なほどに債務をいたずらに増加させていないか」という評価は必要でしょうが、「すべての計画が債務をいたずらに増大させている」とはいえないでしょう。
 また債務増加は「貸す側(中国)にも責任があるが借りる側にも責任がある」。そして「中国ではない日本や欧米の資金貸与なら債務面で問題がないのか」といえばそんなこともありません。

 自由と民主主義、法の支配といった価値観を全く認めない軍事・経済大国が、民主主義の国・地域を併呑(へいどん)しようとしている危機を片時も忘れるべきでない。

 侵略ではなく「保護国ソ連にとって旧東欧)」「目下の同盟国(米国にとっての英仏独日など)」も含む「併呑=相手国を自分の目下として扱う(産経にとってAIIBや一帯一路など?)」と言う曖昧な表現を使ってることに注意しましょう。
 つうか併呑云々という話で問題になるのは、「自由と民主主義、法の支配といった価値観を全く認めない」云々ではなく「その併呑とやらが相手の自主性を重んじてるのか」つうことでしょうよ(まあ重んじてたら「併呑」というネガティブイメージの言葉を使うべきではないでしょうが)。
 そういう意味では「民主主義国・米国」が「日本を併呑している現状(例:沖縄基地問題)」は到底容認できる代物ではないでしょう。
 あるいは「カシミール自治権を奪う」という「インドでのカシミール併呑の現状」もインドが民主主義国だろうと到底容認できる代物ではないでしょう。

 東欧諸国は「一帯一路」に協力的だ。

 東欧諸国に限らず、基本的に産経ほど一帯一路を敵視してる国はどこにもないでしょうよ。

 中国やロシアのような体制下で暮らしたいと思う日本人は皆無に違いない。この当たり前の感覚を政策や行動に反映させることである。

 意味が分からないですね。何も独裁的な体制は中露限定ではない。他にもカンボジア、トルコ、サウジアラビア、エジプト、いろいろあるわけです。
 で、そんな独裁的体制で暮らしたい日本人は確かに少ないのでしょう*20が、それが何だというのか。
 だからといって「中露やカンボジア、トルコ、サウジ、エジプトなど独裁的国家とは付き合いません」つうわけにも現実問題行かないでしょう。
 そもそも、産経が敵視する独裁的政権とはほとんど「中国、北朝鮮、ロシア」の三国に限定されていますし、敵視の理由も本音では「民主主義」云々ではなく「反共(中国や北朝鮮の場合)」や「領土問題(中国との尖閣や、ロシアとの北方領土)」でしょう。

*1:立命館大学経済学部教授。著書『セイ法則体系』(1996年、九州大学出版会)、『「はだかの王様」の経済学』(2008年、東洋経済新報社)、『対話でわかる 痛快明解 経済学史』(2009年、日経BP社)、『新しい左翼入門』(2012年、講談社現代新書)、『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』(2014年、PHP新書)、『この経済政策が民主主義を救う:安倍政権に勝てる対案』(2016年、大月書店)、『これからのマルクス経済学入門』(共著、2016年、筑摩選書)、『自由のジレンマを解く』(2016年、PHP新書)、『左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議』(2019年、青灯社)など

*2:海軍次官ニューヨーク州知事などを経て大統領

*3:「統制派」と言わない辺りが産経らしい。「革新」と言うと今では「左翼」を意味するのでそういう言葉をできる限り使いたいのでしょう。なお、昭和戦前期において「革新派」とは岸信介(商工省)、東条英機(陸軍)、松岡洋右(外務省)ら「伝統的な英米協調主義を否定する右翼(親ドイツが多い)」を意味しました。

*4:いちいち「国家社会主義」と書かずにいられないのが産経らしい(まあ国家社会主義的立場の人間もいたので全くのウソとは言えませんが)。「ファシズム国家社会主義)と言うドイツの思想にはまったドイツかぶれの奴ら(東条陸軍大臣や松岡外相?)が悪い、昭和天皇は悪くない」と言ういつものみっともない言い訳です。

*5:元老・西園寺公望のことか?

*6:木戸幸一内大臣のことか?

*7:海軍航空本部長、海軍次官連合艦隊司令長官など歴任

*8:そんなことはありません。昭和天皇高松宮の進言を受け入れて開戦決定の撤回をすることには法律上、何の問題もありません。

*9:勿論そんな危険性はありません。戦争責任追及を逃れたいがための言い訳でしかありません。

*10:第二次近衛内閣で首相補佐官熊本県知事、日本新党代表、首相を務めた細川護熙氏の父親

*11:海軍省官房調査課長、海軍省教育局長など歴任

*12:海軍省教育局第1課長、第10航空艦隊参謀長など歴任

*13:第一次近衛内閣文相、厚生相、平沼内閣内務相、内大臣を歴任。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放。

*14:実際には米国には挑発の意図などなかったでしょう。そんな意図があれば真珠湾攻撃の時点で日本を返り討ちに出来たはずです。「日本が米国相手に戦争なんか出来るはずがない」と言う油断が真珠湾攻撃での大ダメージとなったわけです。まあ真珠湾攻撃で返り討ちにしてくれれば「その後の日本人の犠牲が少なくて済んだ」のでむしろありがたかったんですけどね。

*15:現在ではパルが「日本が支援した」チャンドラ・ボースの支持者であり、露骨に日本寄りだったこと(公正中立とは言えないこと)が判明しています。

*16:そもそもモナコルクセンブルクは中国侵略や仏印進駐などする意思も能力もないでしょうから無茶苦茶なたとえです。

*17:貴族院議長、首相を歴任。戦後、戦犯指定を苦にして自殺

*18:関東憲兵隊司令官、関東軍参謀長、陸軍次官、第二次、第三次近衛内閣陸軍大臣、首相など歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀。

*19:満鉄総裁、第二次近衛内閣外相を歴任。戦後、戦犯裁判中に病死。後に靖国に合祀

*20:安倍の独裁的政治を日本人多数が容認してるのを見ると正直そう言えるか疑問に思いますが。「自分が経済的に豊かに暮らせさえすれば民主主義などどうでもいい」が大多数の日本人かもしれません。

今日の産経ニュースほか(2019年11月8日分)

東京新聞:元稲沢市議無期 理欠く中国の「法治」:社説・コラム(TOKYO Web)

 中国での覚醒剤事件で死刑を含む厳刑を求刑された元愛知県稲沢市議に無期懲役が言い渡された。不当な判決であり、重大な人権侵害や公判の不透明性など、理を欠く中国法治の問題が露呈した。
 広州市中級人民法院(地裁)は八日、麻薬密輸罪で元稲沢市議の桜木琢磨被告(76)に無期懲役を言い渡した。
 公判での検察の有罪立証は不十分であり、不当な判決である。弁護人によると、中国の裁判でも「疑わしきは被告人の利益に」との原則があるという。そうであるなら、裁判所は無罪判決を出すべきだった。

 「そこまで言い切るか?」ですね。まあ小生は裁判内容の詳細を知りませんのでコメントは控えますが「日本マスコミに蔓延する反中国しぐさ」を考えると「東京新聞には中国に対する偏見がありはしないか?」と言う疑念は感じます。
 なお、ここまで中国司法に悪口しながら安倍政権や外務省に「無罪と思われる被告人の釈放に向けて全力で動け」と言わないのは何なんでしょうか?。「中国に悪口は言えても」そんなに安倍や外務省が怖いのか?。もしそうなら東京新聞も哀れで無様な新聞です。


現行憲法は「占領基本法」だと再確認を 髙池勝彦(弁護士) « 国基研ろんだん 国基研ろんだん « 公益財団法人 国家基本問題研究所

 私は本欄でも何度か主張してきたやうに、安倍さんの加憲案*1に反対であるが、某自民党有力議員のやうに、憲法改正の動きに水を差すために反対してゐるのではない。

 いろいろな意味で吹き出しました。
 第一に「俺の加憲案反対は安倍さんのためにする善意のものだが、某議員の反対は妨害行為だ」と決めつける根拠は何なのか。安倍からすれば「俺に反対してることには変わりねえだろ」でしょう。
 第二に「某議員」が石破*2をさす事は「一定の予備知識(石破が加憲論を批判してる、安倍シンパ右翼が異常なまでに石破を嫌ってるなど)があれば」明白ですが名前ぐらい出したらどうなのか。予備知識のない人間には「某議員って誰?」ですし、予備知識のある人間は「石破なんか名前も出したくないとは安倍信者は実にキチガイだな」と呆れるだけです。

 最近安倍さんは、自分の案に固執するつもりはなく、対案があつたらどんどん出してほしいと言つてをられることに敬意を表するものである。
 そこで、野党が憲法の全面改正を主張したらどうかと思ふ。

 何で改正の必要性はないとしている野党がそんなことをしなければいけないのか。

 やゝ古いが、10月10日付産経新聞の「正論」欄に掲載された、村田晃嗣*3同志社大学教授の「21世紀の『闘技場』生き抜くには」の一節に私は大きな違和感を抱いた。
 日韓関係について述べるにあたつて、村田教授は、韓国は日韓基本条約締結時、軍事政権下にあつたから「不本意な条約を強いられたと信ずる韓国人は少なくない。占領下で米国に不本意憲法を押し付けられたという、日本の一部の議論と似ていよう」と述べてゐる。

 別に村田は「そうした韓国の主張に賛同する」とはしていないわけですが、それはともかく。この村田の「GHQ統治下での憲法制定なんか無効とかいっても仕方がないし、その理屈なら朴チョンヒ独裁下の日韓条約不平等条約と言われても文句言えないと思うけどウヨ的にそれでいいの?」と言う批判に「それとこれとは違う!」「『GHQ統治下での憲法制定なんか無効』と『朴チョンヒ独裁下での日韓条約は有効』は矛盾しない」と憤激する高池です。
 ちなみにご存じの方もいるでしょうが「GHQ統治下での憲法制定なんか無効、つうなら武力で脅して結ばせた韓国併合条約も無効なんじゃねえの?」つう批判もありますね。まあこれについてもウヨ連中は「『GHQ統治下での憲法制定なんか無効』と『韓国併合条約は有効』は矛盾しない」と反論(?)しますが。

 明治憲法は、当時としては極めて進歩的な憲法であり、美濃部達吉教授や、宮沢俊義教授も(ボーガス注:敗戦直後は)改正の必要がないといつてゐた*4くらゐである。私も明治憲法と現行憲法とを比較しても大局的にはそれほど大きな違ひはないと考へてゐるが、現行憲法の9条や前文については別だ。
 9条が軍隊の保持を認めてゐるかだうかといふことであれば、私は認めてゐるとの解釈を取る。しかし改正するとなれば第2項を削除するのが筋であり、安倍首相の加憲案には異論がある。
 首相の加憲案は、第2項をそのままに、自衛隊憲法上、単に「自衛隊」と明記するといふことのやうだが、それは逆に、自衛隊が現行憲法上、軍隊ではないと認めることにもなりかねない。
 これでは、憲法上認められた自衛隊の行動について、憲法違反かどうかといふ議論を延々と繰り返すことになる。
 また、私は、現行憲法の前文は削除すべきであると考へてゐる。

 「はあ?」ですね。
 「天皇主権の明治憲法と、国民主権の現行憲法天皇は政治権限のない象徴)」「国家神道明治憲法と、政教分離の現行憲法」「知事任命制の明治憲法と知事公選制の現行憲法」「違憲立法審査権のない明治憲法と、ある現行憲法」のどこが「9条や前文を除けば、大局的にはそれほど大きな違ひはない」のか。


【正論】共産主義を批判する欧州の動き 評論家、拓殖大学大学院客員教授・江崎道朗 - 産経ニュース
 仮にそんな動きが欧州にあるとしても、それは江崎のようなトンデモウヨの「コミンテルン陰謀論」などの反共与太を正当化する物ではないので、ここでの江崎の駄文はくだらない限りです。そもそも「ソ連の犯罪」を批判するような人間は江崎のような反共ウヨを除けば「戦前日本の戦争犯罪」だって批判するわけです。


日韓首脳対話 無断で撮影 韓国が周到に準備、不意打ち(1/2ページ) - 産経ニュース
 まあ、くだらない言いがかりですね。「無断で撮影」と言うなら隠し撮りでもしたというのか。
 しかしそんなことは産経は書いていませんし、

 複数の日韓外交筋は、撮影した人物を「韓国の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安全保障室長」と証言する

と言うのではどう考えても隠し撮りではないでしょう。隠し撮りなら証言のしようがないでしょうから。かつ「国家安全保障室長」とは閣僚級の人物であり「事務方ならともかく」そんな人間が隠し撮りをするというのも変な話です。
 つまりは
1)韓国側が会談風景を撮影して、公開したいと依頼したことを、安倍側が深い考えもなくOK
2)しかし公開された写真を見て「韓国にへつらうのか!」と憤激した産経などウヨ支持層に慌てて無茶苦茶な言い訳をしている
と言うだけの話でしょう。まさかこんなことで「確かに日本政府が撮影を了解したという証拠を残したいのでこの同意書にサインして下さい」などと「日本は嘘つきだから証拠を残したい」なんて無礼なことを韓国側もしないでしょうから水掛け論の訳です。まあ、韓国側も安倍が「産経などウヨ支持層相手限定」とはいえ、「撮影に同意したこと」を後日否定するほど、馬鹿でくずだと思ってなかったでしょうし。
 それにしても「特に合意には至らなかった」「社交辞令的な会談」と言い訳しながらも安倍側が会談それ自体を「会談するべきでなかった、申し訳ない」などとはウヨ支持層に言わない辺りが興味深い。


香港抗議現場付近で学生転落死 若者ら反発強める (1/2ページ) - 産経ニュース

 学生は4日未明、新界地区の住宅街にある立体駐車場の3階から2階に転落。頭を強く打ち、8日、搬送先の病院で死亡した。
 学生がどのような状況で転落したかは不明。ただ、警官隊は当時、市民らを排除するため立体駐車場に向けて催涙弾を撃っており、「学生は催涙弾から逃れようとして転落したのでは」との見方が浮上した。
 警察は「催涙弾を撃った場所は現場から120メートル離れている」と釈明したが、警察が救急活動を妨げたとの証言もあり、「学生は警察の暴力によって死亡した」と信じる若者が多い。
 背景には、警察の過剰な制圧行為への反発があるほか、最近、若者たちの不審死が社会問題化している事情がある。
 9月下旬、新界地区の海で水死体で発見された女子専門学校生(15)のケースもその1つ。
 香港メディアによると、女性は全裸だったが、警察当局は「遺体に外傷はなく事件性はない」と判断、自殺と見てすぐに火葬された。しかし友人らは「彼女は泳ぐのが得意だった」として自殺を疑問視した。
 7日、抗議活動に参加した女性(20)は「全裸で見つかったのに事件性がないとは…。警察は信用できない」と話していた。
 香港のネットメディアによると、デモが本格化した6月以降、入水自殺や飛び降り自殺として処理される若者の遺体が増えているという。真偽は不明だが、それを信じる市民は多い。

 まあ産経記事が事実なら運動がよくない方向に向かってるようにしか見えませんね。
 決定的根拠もないのに「警察の虐待死」呼ばわりするのは明らかに適切ではない。
 「言葉を選ばずに言えば」展望のない運動を「無能で無責任な人間」が「勢いでやって、引き返せなくなった典型的パターン」のようにすら見えます。

*1:改憲の言葉を嫌う公明党への配慮」ですが、改憲であることに変わりはありません。

*2:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍内閣地方創生担当相など歴任

*3:著書『大統領の挫折:カーター政権の在韓米軍撤退政策』(1998年、有斐閣)、『米国初代国防長官フォレスタル』(1999年、中公新書)、『アメリカ外交』(2005年、講談社現代新書)、『プレイバック1980年代』(2006年、文春新書)、『レーガン』(2011年、中公新書)、『銀幕の大統領ロナルド・レーガン』(2018年、有斐閣)、『大統領とハリウッド』(2019年、中公新書)など

*4:さすがにその後、宮沢の考えは変わるわけですが。

黒井文太郎に突っ込む(2019年11月8日分)

黒井文太郎
 何か希望を期待させるタイトルの記事ですが、アサド政権を四半世紀見てきたウォッチャーとしての自分の見方では、アサド政権が強権独裁を放棄する可能性は0%。
 残念ながら、こうした平和への努力は、独裁者に自国民を殺戮する時間的余裕を与えるだけの結果に終わるでしょう。「シリア内戦 和平への一歩」というタイトルは、まあぶっちゃけ朝日新聞さんの「誤報
シリア内戦、和平へ一歩 アサド政権と反体制派が同席:朝日新聞デジタル
 内戦が続くシリアの和平に向け、新憲法を作るための憲法委員会の初会合が30日、スイスで始まった。これまで公の場で顔を合わせなかったアサド政権と反体制派の代表が一堂に会した。双方が初めて政治的に合意した枠組みで、8年間で40万人が犠牲になったとされる内戦の終結に向けたステップとなるのか、注目される。
 初会合でアサド政権と反体制派、市民社会から50人ずつの計150人の委員を前に、ペダーセン国連シリア担当特使は「皆さんがここに集まることは簡単なことではなかった」と述べ、対話姿勢に敬意を表した。
 国連安全保障理事会は15年12月、新憲法の制定や自由で公正な選挙の実施を盛り込んだ決議を全会一致で採択。今回の憲法委はこの決議に基づいている。
 安保理決議から4年近くたって実現した憲法委だが、採択当時に拮抗(きっこう)していたアサド政権と反体制派の勢力図は様変わりした。ロシアの本格的な軍事介入で息を吹き返したアサド政権軍は、16年12月に反体制派の最大拠点だった北部の要衝アレッポを奪還。その後も政権軍は攻勢を強め、反体制派を北西部イドリブ県一帯に追い詰めている。
 国連主導の和平協議は、アサド政権と反体制派の間で、アサド大統領の去就をめぐる主張の隔たりが大きく、実質的な協議に入れない状態が続いていた。だが、ロシアがアサド政権の優位を確定させたことで、事態が動き出した。
 17年1月からロシアは、同じくアサド政権を支えるイラン、反体制派の後ろ盾のトルコと独自に和平協議を開始。現場の戦闘に影響を及ぼせる3カ国は18年1月、ロシア南部ソチで「シリア国民対話会議」を開催し、憲法委の設立を共同声明に盛り込んだ。さらに国連を巻き込むことで、反体制派も憲法委に参加をせざるを得なくなった。
 ただ、8年以上にわたって争ってきたアサド政権側と反体制派側の遺恨は深い。互いの「捕虜」の交換などを通じて信頼を醸成し、実質的な協議を整えられるかが課題となる。

 黒井には「やれやれ」ですね。
 まず第一に「ならば黒井はシリア情勢をどう展望してるのか?」。朝日記事が指摘するように現実問題として反政府派によるアサド政権打倒など無理でしょう。
 アサド打倒が無理なら、反体制派にとって「和平合意」と言う方向性しかない。
 第二にこうした「対話」を決断したのは「朝日でも何でもなく反アサド派(反アサド派の全てではなく一部に過ぎないがそれなりに有力なグループ)」です。そういう話で「朝日ガー(黒井)」なんて馬鹿げています。

高世仁に突っ込む(2019年11月8日分)

社会の分断進む香港 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 デモの前に遺書を遺してくる人もいた。

 ばかばかしい。遺書を残したって何がどうなるわけでもない。そもそもこんなことを「赤の他人」高世相手に言うこと自体明らかな同情狙いですね。「遺書を書いたと人に宣伝する」なんて俺的にはまったく「唾棄すべき売名行為」です。そもそも本当に「遺書を書いたのかどうか」も怪しいし、仮に書いたとしてどこまで本気かも疑問です。今のところ死者など出ていませんし。警察を擁護する気はないですが、その当たりは警察もある程度配慮しているわけです。

 一人の若い女性に「これから香港はどうなると思いますか」と尋ねた。私には今後の展望が見えないなか、若者たちが今の状況をどう捉えているのか知りたかったのだ。
 その質問に、女性は言葉に詰まったように数秒沈黙した。
 「香港がどうなるか私はわかりません。考えたくもありません。でも、私たちは諦めません」。
 涙がぽろっとこぼれるのを見て、私ももらい泣きしそうになった。

 高世の質問も「何だかなあ」ですね。高世は「どうなると思いますか」ではなく「あなた方は今後どう動くつもりですか。既に当初目的『条例案の撤回』は達成したのにいつまでも実現可能性が低いと思われる行政長官公選にこだわってデモを続ける気ですか?。それで勝算が、意味があるんですか?。ひとまず撤退して再起を期してはどうですか?」とでも聞くべきでしょうね。
 しかし女性の答えも「何だかなあ」ですね。「考えたくもない」「でも諦めない」つう精神論で済む話じゃないでしょうに。
 俺だったらもらい泣き所か「予想の範囲内の回答」とはいえ「あまりにも将来のことを考えてない無責任さ」に呆れて「口あんぐり」ですね。

 敵はあまりにも強大な中国共産党。若者たちの要求を実現するのはきわめて困難だろう。しかし、展望があろうがなかろうが、命がけで闘い続けるしかない。

 「戦う」イコール「今のデモを続行する」じゃないでしょうよ。展望がないならいったん撤退すべきでしょうよ。デモをやめたからと言って一気に中国中央政府が攻勢に出ることもないでしょうに。

 聞けば、二人は10年生、日本でいうと高1で15歳と16歳だった。家族との関係はどうなのか。15歳の子は、「うちは親も黄色(デモ隊支持)で助かっているけど、この人(16歳の子)は両親が青(体制支持)なのでかわいそうです」という。

 まあこれだけでは「この人(16歳の子)は両親はデモ参加に否定的」とはいえても本当に「青(体制支持)」かどうかはわかりませんね(「積極的黄色(デモ隊支持)」でないことだけは確かですが)。
 「そんなことより勉強しろ」「怪我したらどうするんだ」「退学処分にでもなったらどうするんだ」程度かもしれない。まあそれでもこの子らにとっては「青(体制支持)と同じ」なのかもしれませんが。

 いま香港のレストランはじめ様々な店が、黄色か青色かに色分けされているという。デモに参加するような若者たちは青とレッテルを貼られた店には絶対に行かないという。
 そういえば知り合いの香港人ジャーナリストとお茶を飲もうと店を探していたら、「この店は黄色だから」と色で選んでいた。
 市民の間の分断が進んでいるようだった。

 「ようだった」と高世も書いていて断言してないとは言えこの程度で「市民の分断」とかいえるんですかね?
 単にデモ隊の一部がそういう店の分類をしてるってだけじゃないですか。その分類が正しいかどうかも分からないし。

今日の産経ニュース(2019年11月7日分)

NHK、田代まさし容疑者の出演動画削除 - 産経ニュース
 いやむしろ、「『この発言後、残念ながら田代氏は薬物使用容疑で逮捕されました』などの注記は付けるべき」なのでしょうが、「薬物をやめようと思ってる」として、テレビ出演する人間ですら「簡単にはやめられないという薬物の怖さ」を伝えるために、削除などすべきではないと思いますね。そもそも現時点では「テレビ出演時に既に薬物使用していたかどうか」もわからないわけですし。
 そしてこのNHK教育の番組だって娯楽番組(俳優としてのドラマ出演、歌手としての歌番組出演、タレントとしてのバラエティ番組出演など)ではなく「薬物の怖さを体験者・田代に語ってもらう」という真面目なドキュメンタリー(?)番組なのだから、削除などしない扱いにすることの方がむしろ番組の趣旨にかなうでしょう。
 番組出演時に田代が語ったという「薬物からの脱却に努力している」がウソになったから*1と言って削除しなくてもいいでしょう。むしろ、こういう削除をすると薬物体験者は「私は弱い人間だから、テレビ出演後、薬物の誘惑に屈して、また薬物に手を出さないとは言い切れない。だから出演はお断りします」といって出演辞退することにもなりかねません。それはNHKも望むことではないでしょうに。


新潟女児殺害「最も重い刑に」 遺族がコメント - 産経ニュース
 いつもの「死刑にしろ」つう話です。遺族の気持ちは分かりますが、マスコミが無批判にこんなもんを垂れ流すべきではない。

*1:発言当時からウソだったのか、発言時は本心だったが、発言後に薬物の誘惑に屈して結果的にウソになったのかはともかく