新刊紹介:「経済」2022年11月号(追記あり:トラス英国首相が辞意表明ほか)

【最初に追記】
 いまさら中国と対外援助ではりあって勝負になるわけないだろう(日本政府はまだしも、日本のマスコミがそんな見解をたれ流してどうする) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)でこの拙記事をご紹介頂きました。いつもありがとうございます。
 なお、id:Bill_McCrearyさんは

いまさら中国と対外援助ではりあって勝負になるわけないだろう(日本政府はまだしも、日本のマスコミがそんな見解をたれ流してどうする) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 日本は、日本ができる範囲でアフリカの援助をしていけばよいのです。

とコメントしていますが、経済論文での佐々木優氏(順天堂大学講師)の立場もそれとほぼ同じです。
 佐々木氏は

 中国に勝とうなどと『できるか分からないこと』を考えるより、日本のできる範囲で『アフリカの発展に貢献し、アフリカに感謝され』また『日本の国益になる』アフリカ支援がどうできるかを考えればいい。それこそが「急がば回れ」で、むしろ『中国に勝つ(と言うと語弊があるなら、中国の支援とは違う日本の支援の魅力のアピール)』ことにもつながるのではないか。
 どっちにしろ『金額面」では明らかに中国に勝つことはもはや無理。

と言う趣旨の主張をしています。
 例えるなら、何も「高級中華>町中華」でも「高倉健吉永小百合のようなビッグスター>脇役」でもない。
 町中華には町中華の魅力があるし、脇役だって「時代劇の悪徳商人といえば田口計」等、「脇役としての評価」を確立させればそれには意義がある。
 「暴れん坊将軍松平健)」「水戸黄門東野英治郎など)」「桃太郎侍高橋英樹)」等にしても田口のような悪役がいて成り立ってるのであり、スター俳優や主役しかいなかったらドラマが成り立たない。
 映画「仁義なき戦い」にしても、主役の敵方である「山森組組長(金子信雄)」が酷いから主役である「広能組組長(菅原文太)」のかっこよさが引き立つわけです。
 「中国との勝ち負けとか余計なこと考えるな、日本は自分にできることをしろ」つう話です。「中国との勝ち負けとか余計なこと考える」のは「脇役の才能はあってもスターは務まらない人間」が高倉健吉永小百合を目指すくらい馬鹿げている。
 田口計が時代劇において「高橋英樹桃太郎侍)や松平健暴れん坊将軍の徳田新之介こと徳川吉宗)」を目指すくらい馬鹿げている。
 もはや日本は「俺こそが世界の大国だ」と中国相手に偉そうにスター面できる国ではないでしょう。そんなことをしていたら「脇役(それなりに評価されるアフリカ支援)」すら務まるかどうか。
 まあ、当初は主役(『愛染かつら』など)だった田中絹代だって晩年は脇役(『前略おふくろ様』など)にシフトチェンジしてますしね。
 それにしても拙記事で紹介した佐々木氏も批判していますが、いまさら中国と対外援助ではりあって勝負になるわけないだろう(日本政府はまだしも、日本のマスコミがそんな見解をたれ流してどうする) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)も批判するように「不特定多数を相手にしたマスコミ記事」で堂々と「日本のアフリカ支援は中国との対決が大きな目的」と公言するとはどういう神経をしてるんでしょうか?(そもそも岸田政権自体がそういう反中国の態度なので呆れますが)
 まあ、本音ではそういう面はあるのでしょうが、大抵の人間は「身内しかいない場所」ならともかく「不特定多数相手」にそんな「アフリカ諸国や中国に失礼なこと」はいくら本音でも言いません。
 世の中には「社交辞令」というものがあるでしょうに。アフリカ諸国や中国から「我々を敵視してるor舐めてる」と不愉快に思われても仕方がない行為です(実際「敵視or舐めてる」なのでしょうが)。
 仮に「日本のアフリカ支援は中国との対決が大きな目的」と言う場合でも「勿論、主目的はアフリカの経済発展です」「中国云々はサブの目的です」「アフリカの発展なんかどうでもいい、中国の影響力を排除できればいいなんて少しも思ってない」(アフリカ相手)、「日中友好を否定しているわけではない」(中国相手)等と「沢山言い訳をつけた上でそういうことは言う」でしょうが、読売、産経、日経の記事は明らかにそうではない。「右翼新聞でしかない読売、産経(特に常軌を逸した反中国の産経)」はともかく「経済新聞が建前の日経」は「それでいいのか」と本当に絶句します。
【追記終わり】


「経済」11月号を俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
◆随想『過疎山村の変貌』(森井淳吉*1
(内容紹介)
 「高知県の焼死事件」を題材に深刻な「高知県の過疎化」が論じられています。
 勿論「地方創生で過疎化を克服」も方策の一つでしょうが、それが「少なくともすぐには実現しない」以上、

この拙記事でのid:Bill_McCrearyさんコメント
 火事なども、危険な時はすぐ消防に無線連絡が行くような体制を整える必要もなるのではないか。

という「過疎の現実」を前提とした対処療法も「当面の方策」でしょう。

参考

過疎地域 県の平均上回る人口減少など過疎化が一層深刻に|NHK 高知県のニュース2022.7.19
 高知県は、おととしの国勢調査の結果をもとに集計した集落ごとの人口や世帯数を公表し、過疎地域では、県内の平均を上回る率で人口減少や高齢化が進んでいる実態が明らかになりました。
 高齢化率は、県全体で35.5%と全国の平均をおよそ7ポイント上回り、全国で2番目に高くなっていますが、過疎地域では県全体をさらに10ポイント近く上回る45.2%となり、高齢化が一層進んでいます。

https://twitter.com/shiomiplaza/status/1532111610705514496
塩見記念青少年プラザ
図書室探検127『過疎山村の変貌』森井淳吉著
 2021年2月に仁淀川町*2で起きた独居高齢者が孤独焼死したことに驚いた筆者とその友人達の書簡集。
 筆者の山村への愛情が伝わってくる。
 過疎山村再生の手段はあるのか、その内、高知県消滅か!

村岡マサヒロ on Twitter: "「過疎の現実」 #高知漫画 https://t.co/pkN4WVhy7r" / Twitter

村岡マサヒロ*3
 こういう悲しい出来事が起こらないよう、我々は考えていかねばなりません
消えていた炎~限界の山里で~(1)「家がない」「熱もなかった」 | 高知新聞
 誰も気付かないうちに家1軒が全焼し、救助も来ないまま1人が亡くなった。過疎の山里に深い衝撃を走らせた〝孤独焼死〟。その背景を取材した。

「消えていた炎〜限界の山里で」 地方紙ルポの鋭さ
 この家の主、87歳の男性が焼け跡から見つかった。火災が起きたのは、前日の夜と思われたが、詳しいことはわからない。消防も救急も来なかった。誰もこの火災に気付かなかったのだ。集落の住人は6人。住む家は集落内で離れ離れに点在している。もちろん、全員が高齢者だった。
 この出来事を高知新聞は連載の第1回で「孤独焼死」と名付けている。

嘆きながらも前へ(高知新聞/2021.3.16) : 薪情報(木の駅ひだか/高知県日高村)
 高知県仁淀川町別枝で発生した火災は衝撃的だった。
 民家一軒が夜間に全焼。
 誰も気付けないまま独居の高齢者が亡くなり、焼け跡は翌朝に発見された。
 過疎が進み、家が点在する集落。
 高く燃え上がったであろう炎は、人知れず消えていた。
~~~~~~~~~~~~
 高知新聞に掲載された限界集落での悲痛な事件。

2021年4月6日 過疎高齢化 届かぬ人の目 | 新聞協会報・地域を伝える(旧・記者駆ける)|刊行物|日本新聞協会
 そこにあるはずの民家がない。山あいにある高知県仁淀川町別枝。別枝の都地区に住む女性は2月10日午前、隣の中村地区の通い慣れた林道を車で走っていた際、道路沿いに住む一人暮らしの男性(当時87)の家が焼け落ちていることに気付いた。既に火や煙はない。消防や警察、近所の人も気付かなかった。現場からは1人の焼死体が見つかった。
 佐川支局の楠瀬健太記者は警察から連絡を受け現場に向かった。家から約250メートル先まで住んでいる人はいない。
「過疎高齢化地域を象徴する出来事が起きた。現状をありのまま伝えよう」。
 周辺住民らに話を聞き、「孤独焼死」の背景を探った。3月3日付から4回連載。
 中村地区の住民は亡くなった男性を含め6人。
「人がおらんき、どうしようもないわね」「24時間巡回するわけにはいかんしね」。
 別枝の住民からは諦めの声も聞こえる。
 別枝の孤独焼死を受け、浜田省司*4知事は3月2日の県議会で「地域の見守りや支え合いの仕組み作り」に言及した。県は今年、10年ぶりに小規模集落の実態調査を実施する。

過疎山村の再生議論〝孤独焼死〟受けシンポジウム 高知市 | 高知新聞2022.5.30
 昨年2月に吾川郡仁淀川町で起きた独居高齢者が“孤独焼死”した火災を踏まえ、中山間地域が抱える課題と解決策を探るシンポジウムが28日、高知市の県立高知城歴史博物館で開かれ、約70人が山村の荒廃を食い止める手だてについて考えた。
 昨年2月9日夜から同10日未明ごろ、同町別枝で木造平屋の民家1棟が全焼。住人の80代男性が死亡したが、過疎高齢化で近隣に民家がなかったこともあり、10日朝まで誰も火災に気付かなかった。

 このシンポには研究者、専門家として森井氏が登壇したようですが、「どんな人間が参加した」のか気になるところです。本来「都市部の人間」も参加すべきでしょうが、「過疎地の人間ばかりが参加した」のなら「何ともかんとも」です。


世界と日本
◆英・トラス*5政権の誕生と政局(宮前忠夫*6
(内容紹介)
 【1】ジョンソン*7の辞任が政策批判による辞任と言うよりは「醜聞辞任(コロナ禍での飲酒パーティー問題など)であること(ジョンソンの政策についての評価は未だに保守党支持層では高いとされる)」、【2】トラスが「ジョンソン後継をアピールし」、ジョンソンの支援も受けていた*8ことから「政策的に大きな変更はない」と評価されていますがひとまずは「様子見」でしょう。 

【追記その1】
英財務相が辞任、政権に打撃 後任にハント氏 - 産経ニュース
 今日の産経ニュースほか(2022年10/13、14分) - bogus-simotukareのブログでも指摘しましたが看板政策の「減税」を世論の批判で、事実上撤回したあげく、財務相更迭に追い込まれたトラスです。「看板政策への批判」なので個人的醜聞に過ぎなかったジョンソンよりもトラスにとっても保守党にとっても「痛い打撃」でしょう。

英、大型減税策をほぼ撤回 トラス首相に辞任圧力 - 産経ニュース
 政権の目玉だった経済政策を就任1カ月余りで撤回した失態により、辞任圧力が強まっている。
 与党・保守党内ではトラス氏の辞任を求める声が相次いでいる。
 英紙タイムズなどによると、保守党党首の選出手続きを管理する「1922年委員会」にトラス氏への信任投票の実施を求める書簡が寄せられており、ブレイディ委員長が近くトラス氏に辞任を促す可能性がある。党規定では来年9月まで信任投票を実施できないが、トラス氏が辞任を拒否すれば規定のルールが変更されるシナリオも予想されるという。
 キャメロン政権で財務相を務めたオズボーン氏は英メディアに「トラス氏はクリスマスまでに首相でなくなる可能性がある」と予測した。ただ、早期に党首を変えれば党の支持率がさらに低迷する恐れがあり、保守党議員の多くは信任投票の実施などについて慎重に判断するとみられる。

ブレーバーマン英内相、国家安全保障違反で解任-政権存続に不安 - Bloomberg
 失策続きで政権崩壊を防ごうと苦闘している首相にとって、この展開は大打撃だ。首相側近らは、首相追い落としを図ろうと閣僚の辞任が相次ぐ可能性を懸念している。
 事情に詳しい関係者によると、辞任する恐れがある閣僚として、モルトハウス教育相とバデノック国際貿易相が挙がっている。モルトハウス氏は18日の電話で、首相の経済政策を完全に撤回したハント新財務相の計画について議論した際、首相の不手際をこき下ろしていたという。

 解任と言っても「辞任を申し出た内務相を更迭」「内務相の辞任申し出は実際には『トラスと道連れになることを恐れた逃亡的性格が強い』(問題行為だが辞任するほどの過失ではない、トラス政権の支持率低迷がなければ辞任を申し出なかったのでは?、との指摘も強い)」のでトラスにとって解任は「望んでしたこと」ではない。
 ジョンソンが首相辞任に追い込まれたのも「スナク財務相(当時)ら有力閣僚の辞任」ですし、トラスも頭が痛いでしょう。

英内相が辞任、政権にまた打撃 トラス首相への批判示唆: 日本経済新聞
 トラス氏は大規模減税策による市場の混乱の引責として、14日にクワーテング財務相を更迭したばかり。短期間での相次ぐ重要閣僚の交代は、求心力が下がっているトラス政権にさらなる打撃となる。トラス氏は後任にシャップス前運輸相を起用した。

英トラス政権、支持率1桁台 ブレーバーマン内相は辞任と報道 - 産経ニュース
 英世論調査大手ユーガブは18日、トラス政権の支持率が7%と1桁台に落ち込み*9、不支持が77%に達したとの調査結果を発表した。政権支持率調査を始めた2011年以降で最悪の水準という。与党内でも55%がトラス首相の辞任を望むと回答。トラス氏への逆風は強まり、続投に悲観的な見方が広がっている。
 一方、英BBC放送は19日、ブレーバーマン内相が辞任したと報じた。

ということで早くも政権危機に直面です。「岸田の政権危機(現在、政権誕生から約1年)」を上回るハイスピードの政権危機(現在、政権誕生から約1ヶ月:日本だと『女性醜聞辞任の宇野首相』並みのハイスピードの政権危機であり、その異常性が鮮明)にはびっくり仰天です。こうなると「決選投票でトラスに敗れたスナク元財務相」が新首相になるのか?。場合によっては「労働党への政権交代」もあるのか?。一部には「安倍復権(日本)」「ベルルスコーニ復権(イタリア)」のような「ジョンソン復権説」もあるようですがそれはさすがに勘弁して欲しい。
【追記その2】
トラス英首相が辞任表明、経済混乱で引責 就任2カ月弱: 日本経済新聞
トラス英首相が辞任を表明 - 産経ニュース

英トラス首相辞任表明/就任44日
 物価やエネルギー価格の高騰で国民生活が危機に直面するなか、トラス氏の政策は「富裕層優遇」と大きな批判を浴びました。英通貨ポンドと英国債価格が急落した結果、今月中旬には財務相を更迭し、政策の大半を撤回しました。さらに19日、不祥事が理由で辞任した内相が、書簡で首相批判を展開。保守党内からもトラス氏の退陣を求める声が上がっていました。
 保守党は後任を決める党首選の準備に入ります。候補者には、(ボーガス注:決選投票でトラス氏と戦った)スナク元財務相のほか、ジョンソン前首相の名も報じられています。
 労組や、貧困とたたかう市民団体、労働党の左派議員が共闘する組織「もうたくさんだ」はツイッターで、保守党政権の緊縮政策のもとで多くの国民が貧困に陥ったとして「壊してしまった社会を元に戻すか、下野すべきだ」と強調しました。

 ついにトラスが辞意を表明したそうです。辞意表明まで約1ヶ月の短命総理でした。日本の宇野首相を思い起こさせます。
 さすがに経済編集部や宮前氏もこれは予想してなかったでしょう。
 それにしても安倍が辞めずに居直った日本と比べ「ずっとまとも」ではあります。
【追記その3】
スナク元財務相、英首相就任へ 初のアジア系 ジョンソン氏ら撤退:朝日新聞デジタル
イギリス初、非白人の首相誕生へ…インド系のスナク氏、与党党首選で無投票当選 金融界出身の富豪:東京新聞 TOKYO Web
 「前首相」ジョンソンが不出馬を表明し、「トラスと決選投票を争った」スナク氏に代わる有力候補が他に出そうにない時点で予想の範囲内ですがスナク氏が保守党党首に就任しました。勿論、早晩、トラスが辞任し、彼が新首相に就任します。
【追記終わり】


◆過渡期を迎えたTICAD(佐々木優*10
(内容紹介)
 日本が「旗振り役」を務めたTICAD*11が「中国の一帯一路」に押されて存在感を失ってる(佐々木氏の表現では『過渡期を迎えた』)との指摘がされています。
 但し

アフリカ支援で「外貨枠10兆円を」 仏主導で国際会議: 日本経済新聞2021.5.19
 国際会議はフランスが主導した。
 フランスをはじめとする欧米諸国は、支援を主導してアフリカへの影響を強めたいとの思惑もある。ワクチン外交やインフラ建設支援などでアフリカでの存在感を増す中国を意識している。
 国際会議に先立つ17日、フランスは500億ドル以上の対外債務を抱えるとされるスーダンに対し、仏として50億ドルの債務免除をすると発表した。

ということで「エジプト、南アなどが植民地だった英国」「アルジェリアなどが植民地だったフランス」等、欧米も「アフリカの旧植民地」を中心にかなりアフリカ支援をしてるそうなので「中国のアフリカ支援」が仮になくても日本のアフリカ支援がどれほど現地に評価されてるかは疑問符がつくようですが。
 さて

TICADで中国に対抗: 日本経済新聞2022.8.29
 チュニジアの首都チュニスで27、28両日に開催したアフリカ開発会議TICAD)は日本が中国へ対抗する舞台となった。資金力にものをいわせて援助攻勢をかける中国に対し、日本は人材教育や財政状況に目配りする「持続可能な成長*12」を強調した。
 岸田文雄首相が表明した支援額は3年間で官民あわせて300億ドル。中国が2021年の中国・アフリカ協力フォーラムで示した400億ドルを下回った。首相が金額の規模よりも重点を置いて訴えたのは「人への投資」と「成長の質」*13だった。
 首相は27日の開会式では「債務健全化の改革を進め、強靱で持続可能なアフリカを支援する」とも説明した。名指しはしなかったが、中国が借金のカタに途上国から重要インフラの使用権を得る「債務のわな」と呼ばれる問題が念頭にある。
 首相の発言は中国への債務を縮小させるよう促す思惑があった。
 今回のTICADへ参加した首脳級は20人で、前回2019年の42人から半減した。
新型コロナ感染で首相が対面参加できなかった影響のほか、日本よりも中国との関係を重視した国があった可能性がある。
 アフリカは「最後のフロンティア」と呼ばれる成長市場だ。国連加盟国の4分の1を占める一大勢力でもあり、どれだけ味方につけられるかは国際世論を形成する外交力につながる。
 TICADを巡る日中のつばぜり合いは米欧を中心とする民主主義国と中国、ロシアなどの権威主義国の対立を反映したものにほかならない。

などという「中国との対決論」は「日本企業にとっての中国市場の重要性」「アフリカ支援の金額において日本がもはや中国に勝てない実態」などを考えれば現実性に乏しい「反中国派の願望」と言っていいのではないか。なお「債務の罠(中国の支援への批判:一方で日本はその点に配慮と主張)」「人道支援、教育支援(日本の支援についての自画自賛:一方で中国はインフラ支援、箱物支援が多いと批判)」というのも「日本のアフリカ支援の実態」と言うより「日本政府のプロパガンダ」にすぎないでしょう。
 筆者・佐々木氏はTICADについて「あるべきアフリカ支援」よりも「中国との縄張り争い」的な扱いが多い日本マスコミ(上記の日経記事、特に『俺が赤字強調した部分』がもろにそれ)について「アフリカは日本や中国の縄張りではない」「アフリカが主役であるべき話で何で中国との縄張り争い的な話をするのか」「アフリカに失礼だ」「すべき話は『日本がアフリカのために、どんなアフリカ支援をすべきか』ではないのか」と批判しています。
 なお、話が脱線しますが

この1年で中国と国交関係のある国の数が180ヶ国に--人民網日本語版--人民日報2019.12.24
 2016年にはガンビアサントメ・プリンシペ民主共和国、2017年にはパナマ、2018年にはドミニカとブルキナファソエルサルバドル、そして2019年にはソロモン諸島キリバスといった具合に、過去数年間で8ヶ国が相次いで中国と国交を樹立または回復し、「一つの中国」という共通認識は国際的に一段と確固たるものになった。

とアフリカ(赤字の国が全てアフリカ)で「台湾との断交」が相次いでいる「いわゆる断交ドミノ」も勿論「中国のアフリカ進出の影響」でしょう。

【参考:TICADについての日本マスコミ報道(『中国との縄張り争い』的な扱いが多い:赤字強調は俺がしました)】

アフリカ開発会議(TICAD)は読売新聞でどのように報道されたのか - GNV
◆中国が報道の中心に
 「中国」という存在がTICADに関する報道で大きく注目されるようになった。「中国」はTICAD IV(ボーガス注:2008年、福田内閣時代)から記事の内容に登場しはじめ、TICAD VI(ボーガス注:2016年、第三次安倍内閣時代)にはその割合が8倍以上に跳ね上がり、アフリカの社会課題などに関する報道量を大きく上回った。「中国」はTICAD VI(ボーガス注:2016年、第三次安倍内閣時代)で最も注目されたテーマとなった。この背景には、急増していた中国企業によるアフリカ進出及び2000年*14に立ち上げられた中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)などがある。中国に関しては、日本政府も報道機関も日本の経済戦略や安全保障上の課題との関係性を意識していると考えられる。
 つまり、「アフリカ側の開発」をテーマにしているより、「日本にとってのアフリカの存在」が報道では重要視されている。このような報道の傾向はTICADの主催者となっている日本政府の優先順位も日本企業の利害関係も反映しており、「自国中心主義」が目立つ。
 日本の利害関係、日本の観点からアフリカを見ることも必要かもしれないが、それが対アフリカ報道の中心となってしまうと、アフリカが抱えている開発問題を理解することができない。TICADが「アフリカの開発をテーマにしている国際会議」とされている以上、報道機関もアフリカ開発に関する報道を考えなおす必要があるのではないだろうか。

【主張】アフリカ開発会議 中国傾斜への警戒共有を - 産経ニュース2019.8.28
 「中国・アフリカ協力フォーラム」は最初から資源獲得を含むビジネスを強く意識したものだ。巨大経済圏構想「一帯一路」に基づくインフラ投資で、アフリカで急速に影響力を拡大させた。
 大きな問題は、中国がインフラ建設に際して多額の資金を流し込む「借金漬け外交」である。中国の支援で鉄道や道路、港湾施設などの建設に乗り出し、過剰債務に陥る国々がアフリカでも次々と出て問題化している。
 TICADでは、これら中国主導の開発への警戒感をアフリカ諸国と共有したい。中国による「債務の罠」の実態を見れば、質の高いインフラ投資が何であるか、(ボーガス注:それは中国ではなく日本の投資だと)おのずと(ボーガス注:支援を受けるアフリカ諸国にも)明らかになろう。

【主張】TICAD8 中露の浸透看過できない - 産経ニュース2022.8.23
 「最後の成長フロンティア」であるアフリカを舞台に、中国やロシアは(ボーガス注:返済が滞り、債務の罠などの弊害を生む?)無謀な融資を行い、(ボーガス注:ロシアのワグネル社など民間軍事会社で?)治安を請け負うなどで影響力を強めている。
 強権統治を蔓延させる両国の手法*15は看過できない。米国などと連携し、対抗せねばならない。
 北部チュニジアで27~28日開催される第8回アフリカ開発会議(TICAD8)は日本が主導し、アフリカ諸国の首脳が参加する貴重な外交のツールである。日本の存在感を明確に示すべきだ。

 「TICADの建前上の目的はそういうこと(中露、特に中国の影響力をアフリカから排除)じゃなくてアフリカの経済発展だろ」「書き出しからそれかよ」「日本もミャンマー軍事独裁政権を安倍国葬に招くなど全然独裁国家に厳しくないのに何や、この中国への物言いは」といつもながら「反中国」産経には呆れます。

「アフリカ開発の現場からーTICAD8を前に」(4) 遠藤貢・東京大学大学院教授 | 日本記者クラブ JapanNationalPressClub (JNPC)2022.8.25
竹内幸史(朝日新聞出身)
 日本政府の主導で第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が8月末、チュニジアで開催された。現代アフリカ政治を専門とする遠藤貢教授は、1993年の最初のTICADからフォローしている「生き字引」だ。シリーズ会見の最終回で、「アフリカをめぐり競合する世界と日本」について報告した。
 最も印象的だったのは、アフリカにおけるロシアの影響力拡大だ。ロシア政府は第1回アフリカサミットを2019年10月にソチで開催し、首脳級43人が出席した。日本が第7回TICADを横浜で開いた2カ月後のことだ。アフリカでは中国も「中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)」開催を続け、一帯一路によるインフラ建設などで影響力を拡大している。対照的に、ロシアは軍事協力で不気味な存在感を増している。アフリカの多くの国と軍事協定を結び、アフリカ諸国の武器輸入の約半分はロシア製というのが実情だ。ロシアの民間軍事会社ワグネルが戦闘員を派遣している国も多く、リビアではワグネルの派遣によって対岸の欧州諸国に圧力を与える効果もあるという。
 「アフリカは資源が豊富だが、ガバナンスが弱く、欧州は植民地支配の歴史を抱えている。その一方、アフリカは国連で多くの票があり、ロシアにとっては限られたコストで国益を追求できる魅力的な場所だ」と、遠藤教授は米国識者の見方を紹介しながら指摘した。ウクライナ侵攻をめぐる国連の対ロシア非難決議で、アフリカ諸国から多くの反対票や棄権票が生じるのも、こんな背景がある。
 日本も30年近く前にTICADを始めた背景には、冷戦構造の終焉、日本の政府開発援助(ODA)の拡大傾向に加え、国連常任理事国への思惑もあり、「アフリカ票」を期待した面は否定できない。今、中国、ロシア、米国など主要国がアフリカでせめぎ合う中、日本の立ち位置を見つめ直す重要な時期にあることを感じた。

 なお、佐々木論文は「中国のアフリカ進出」には触れていますが、遠藤氏とは違い、「ロシアのアフリカ進出」については触れていません。
 「ロシアの進出」については

ロシアのよう兵がアフリカで活動か?現地では | NHK2022.7.11
 マリでは、今、急速に“フランス離れ”と同時に“ロシアへの接近”が起きているようだ。軍事クーデターをきっかけに、軍主導の暫定政府とフランスとの関係は悪化し、フランス政府は2022年2月から部隊の撤収を進めている。
 こうした中で、マリのロシア寄りの外交姿勢も目立っている。
 3月、国連総会で、ウクライナに侵攻したロシアを非難する決議案の採決が行われた際、日本を始め、欧米を中心に141か国が賛成した一方、35か国が棄権した。
 棄権した中の半数近くがアフリカの国々で、マリもそのひとつだ。マリのほかにも、すでに「ワグネル」が送り込まれたと伝えられる、同じく旧仏領の国で、内戦が続いてきた中央アフリカも、採決では棄権した。こうしたことから、「ワグネル」がロシアのアフリカへの影響力拡大の「先兵」のようだという批判もある。

ロシアが“友好国”を拡大? 知られざる国際戦略の実態 - NHK クローズアップ現代 全記録2022.9.28
桑子真帆キャスター:
 3月に行われた、国連総会でのロシア非難決議の結果です。アフリカだけで見ると反対、棄権、欠席が合わせて26か国と、およそ半分が非難決議に同調せず、ロシアに配慮するかのような動きを見せたのです。
 一体、アフリカで何が起きているのでしょうか。
【VTR】
 非難決議を棄権した国の一つ、西アフリカのマリ。今「ロシアとの関係を深めるべきだ」という声が高まっています。
 1960年まで、40年にわたってマリを植民地支配してきたフランス。独立後も政治や経済、文化の面で深い関わりを持ってきました。そのフランスへの不信感が決定的に強まったきっかけは、10年ほど前。イスラム過激派による治安の悪化です。
 マリ政府の求めに応じ、フランスは軍を派遣。しかし過激派を排除できず、40万人が家を追われました。
 マリでの信頼を失ったフランス。一方、そのマリに急接近したのがロシアです。2014年にクリミアを一方的に併合して以降、欧米との関係が悪化。その裏で、アフリカとの関係強化を探ってきたのです。
 2019年には、アフリカのすべての国の代表を招いた国際会議を初めて開催。経済や軍事の面で協力を約束しました。
◆2019年 ロシア・アフリカ経済フォーラムにて プーチン大統領
「アフリカ諸国のテロや過激派との戦いを、全面的に支援する」
 マリでは2020年、2021年と、軍がクーデターを起こし、政権を掌握。ロシアは、マリの軍事政権にヘリコプターなどの兵器を送り、軍事協力を進めました。
 ロシアのマリ進出で大きな役割を担ったと見られているのが、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」です。
◆フランス陸軍のパスカル・イアニ准将
「あらゆる証拠がワグネルの関与を示唆しています。この地域で、ロシアの軍事行動が始まっています。マリの政権は、権力を維持するためにワグネルを利用しているのでしょう」
◆ワグネル元隊員のマラット・ガビドゥリン氏
「(ワグネルは)実質、ロシア政府が作った、傭兵部隊です。軍とは違って、兵役に就いているわけではないので、法律や軍の規定には縛られません。派遣された場所で戦うだけの"便利な道具"なのです」
「アフリカのリーダーは、軍事クーデターで権力の座についた人たちが少なくありません。困難な問題でも手段を選ばず解決するワグネルのやり方に共感しているのです」
 軍の規律に縛られないワグネルは、目的達成のためには手段を選ばないとし、そのため強権的な政権に歓迎されるといいます。
 3月に、マリ軍が過激派の戦闘員200人余りを殺害したと発表した中部の村。ワグネル所属の傭兵が加わった作戦で、数百人の市民が殺害された疑いがあるのです。
 国際社会も、ワグネルなど、傭兵がもたらす危険について警戒感を強めています。国連の傭兵に関する作業部会で座長を務める専門家は、アフリカでワグネルによる人権侵害が拡大しかねないと指摘します。
 ロシアを支持する国は、今後広がるのか。
 アフリカで、マリのほかにワグネルの関与が指摘される国は少なくとも6か国。34か国が、ロシアと軍事面で協力しています。
 そして今、その動向が注目されているのが、マリの隣国、ブルキナファソです。2022年1月、イスラム過激派に対処できない政府への不満が拡大し、クーデターで軍が政権を掌握しました。前政権に協力していた旧宗主国フランスへの反発も強まり、今後どの国と協力すべきか国民の意見は割れています。
スタジオトーク
桑子:

 ゲストは、ロシアの外交・安全保障に詳しい笹川平和財団主任研究員・畔蒜泰助(あびる・たいすけ)さんです。
 こうして見ると、アフリカの国々にとっては長く続く混乱をなんとか解消したい。そうした中でロシアが急接近しているようにも見えるわけですが、ロシアの戦略はどういうものなのでしょうか。
畔蒜さん:
 大きな転機となったのが2014年のクリミア併合ですね。クリミアの併合でロシアが西側諸国との関係を大きく悪化させる。
桑子:
 その後、2019年のロシア・アフリカ経済フォーラムというものが開かれます。
畔蒜さん:
 先ほどのVTRにもあったように、アフリカが非常に貧困・格差に苦しんでいて、なおかつそれが原因でテロが起こっている。非常に不安定な状況にあると。そこにアメリカが徐々に世界的に影響力、存在感を落としていくと。その1つのきっかけは、オバマ大統領が2013年に「アメリカは世界の警察官ではない」という発言があり、さらにトランプ大統領が登場し「自国第一主義」ということで、それまで関与していた対テロのコミットメントを徐々に引いていく。その最新の形が、バイデン大統領のアフガニスタンからの撤退だったわけです。そこにロシアがうまく入り込んでいっているということだと思います。

フランスに怒る群衆 ロシア、存在感高まる―ブルキナファソ:時事ドットコム2022.10.4
 クーデターを起こした反乱部隊は「テロとの戦いを支援してくれる(フランスとは違う)新しいパートナーと手を組む」と表明した。この新たな提携相手がマリや中央アフリカで近年、急速に影響力を拡大しているロシアとみられている。

を紹介しておきます(とはいえ、国連のロシア非難決議においては賛成するアフリカの国は多く、賛成しない場合もせいぜい棄権止まりで反対はしませんが)。

社説:アフリカ会議 質の高いインフラで発展促せ : 読売新聞オンライン2022.8.29
 返済能力を超える融資で借金漬けにする中国の投資は「債務の罠」として、アフリカでも警戒されている。
 日本の支援の特徴は、相手国の財政状況を勘案し、公正な手続きで雇用創出などによる健全な発展に協力することだ。粘り強く取り組み、アフリカ諸国に民主主義の下での成長を促し、貧困などの課題解決を図ることが肝要だ。
 各国が1票の投票権を持つ国連で、アフリカ54か国*16の影響力は大きい。安全保障理事会常任理事国入り*17を目指す日本にとって、アフリカとの関係が重要な意味を持つことを忘れてはならない。

検証:TICAD閉幕 日本、独自の支援策模索 「人に投資」 中国けん制 | 毎日新聞2022.8.29
 27、28両日開かれた第8回アフリカ開発会議(TICAD8)で、岸田文雄首相はアフリカ支援を巡り人材育成などを重視する方針を打ち出した。インフラ整備で影響力を強める中国をけん制する狙いだが、日本が存在感を高めるには息の長い取り組みが求められる。

日本の存在感アップに苦慮 「人材」アピールは「巨額資金」の中国に対抗意識? TICAD閉幕:東京新聞 TOKYO Web2022.8.29
 岸田文雄首相は27日の演説で「人材育成」をアフリカ支援の中心に据える考えを強調した。念頭にあるのは巨額投資で影響力を増す中国との「差別化」だが、日本はアフリカでの存在感の底上げに四苦八苦している。
 中国の存在感は絶大だ。特に企業進出や投資の分野では日中の差は大きい。日本貿易振興機構ジェトロ)などによると、進出企業の拠点数は中国の約5000に対し、日本は927。前回3年前のTICADから、アフリカに進出した日本企業は17社の微増にとどまった。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2020年の対アフリカへの直接投資残高は中国が約400億ドル。一方、日本は約50億ドルにすぎず、しかも2013年をピークに減少している。

アフリカ支援 岐路に立つ日本 より複雑化する国際政治の力学 独自色を打ち出せるか 専門家に聞く:東京新聞 TOKYO Web2022.9.21
 チュニジアの首都で先月開催されたアフリカ開発会議TICAD)は、多額の投資で存在感を強める中国をにらんで、「量より質」を重視する日・アフリカ協力の推進を柱に据えた「チュニス宣言」を採択した。東京大大学院の遠藤貢*18教授(現代アフリカ政治)に会議の結果を踏まえ、今後の日本のアフリカへの関与の仕方などを聞いた。(山中正義)
◆山中
 今回のTICADの評価を。
◆遠藤
 日本は今後3年間で官民合わせ300億ドル(約4兆円)のアフリカへの投資を表明したが、規模的に中国を意識したものだろう。中国が昨年、表明した400億ドルに近づけるような姿勢だ。ただ、本当に実現するかは(ボーガス注:次にTICADが開催予定の)3年後に改めて問われる。新型コロナウイルス感染による岸田文雄首相の欠席や首脳級の参加が前回の約半数になったのは残念だ。
◆山中
 日本の具体的な支援策については。
◆遠藤
 食料危機やコロナでは、中国のようにワクチンや食料といったモノの提供はできず、資金援助しかできないところは資源小国の日本といった感じだ。緊急性が高いのでモノの方がありがたいと思うが、長期を見据えた継続的な支援にならざるを得ない。日本の外交資源の限界を示している。

【参考:中国とアフリカ】

岸田首相の「アフリカ4兆円投資」は「中国のやりかた」と比べてスジが悪い?(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
記者
 岸田総理の300億ドル(約4兆円)投資はどう見ていますか。
小林
 FOCAC(中国・アフリカ協力フォーラム)で習近平が資金協力規模として示したのは2018年には600億ドル、2021年には400億ドルですからね。それと比べたら規模が小さい。

中国・アフリカ協力フォーラム - Wikipedia
 2000年に第1回(北京、江沢民国家主席)、2003年に第2回(エチオピア胡錦濤国家主席)、2006年に第3回(北京、胡錦濤国家主席)、2009年に第4回(エジプト、胡錦濤国家主席)、2012年に第5回(北京、胡錦濤国家主席)、2015年に第6回(南アフリカ習近平国家主席)、2018年に第7回(北京、習近平国家主席)、2021年に第8回(セネガル習近平国家主席)を開催

習近平国家主席がアフリカ各国首脳や国際組織のトップと会談--人民網日本語版--人民日報2018.9.3
 習近平国家主席は2日、中国アフリカ協力フォーラム北京サミットに出席するセネガルのサル*19大統領、スーダンのバシル*20大統領、ナミビアのガインゴブ*21大統領、赤道ギニアのオビアン*22大統領、モーリタニアのアジズ*23大統領、アンゴラのロウレンソ*24大統領、ジブチのゲレ大統領、モーリシャスのジュグノート*25首相、エチオピアのアビィ*26首相、国連のグテーレス*27事務総長と人民大会堂でそれぞれ会談した。


サムスン電子の賃金協約(洪相鉉)
(内容紹介)
 「勿論、今後の課題はある」としながらも「労組を長年敵視してきたサムスン」が「労組と協約を結んだこと」については一定の好意的評価がされています。
参考
サムスン電子労使が賃金協約締結へ 会社設立以来で初 | 聯合ニュース2022.8.8


特集「物価高騰が襲うくらし・経済」
◆問われる食料・エネルギー・円安政策(福田泰雄*28
(内容紹介)
 架空問答形式で書いてみます。
Q
 物価高騰の理由は何でしょうか?
A
 勿論「ウクライナ戦争による小麦、石油輸出の減少(ロシアとウクライナは小麦生産国、またロシアは産油国:ロシアは制裁を受け、一方、ウクライナは戦乱状態でまともに輸出ができない)」「急激な円安による輸入品価格上昇」は大きな要因ですが「途上国の経済発展(食糧需要の増大)」と言う要素も指摘したいと思います。
 なお、「輸出企業応援」を口実に安倍、菅、岸田政権は、むしろ円安を助長してきましたが、それを今後も続けて良いのかが今問われるべきでしょう。
 また「原油高」についてはこの機会に「再生可能エネルギー(太陽光、地熱、潮力、風力など)や電気自動車の推進」等による「脱石油」が論じられるべきではないでしょうか。


◆加速する値上げ、生活と営業守る緊急対策を(湯浅和己*29
(内容紹介)
 コロナ危機と物価高騰からくらしと営業を守る緊急の経済対策/―政府に対し、ただちに補正予算の検討に入ることを求める―/2022年4月15日 日本共産党国会議員団など、物価高に対する共産党の政策提言(消費税の5%への引き下げなど)の紹介。


◆急騰の天然ガス・LNG市場(萩村武)
(内容紹介)
 対ロシア経済制裁(石油、LNG)によって石油やLNGの供給量が減り、一方「高値維持」を目的にOPECなどが増産に動かないことが高値を助長しているとしている。
 中長期的な戦略としては「脱炭素」でしょうが短期的には(高値で苦しむ国民への経済支援以外は)「打つ手が難しい(値段を下げるいい手がない)」ところです。
 ロシアの制裁を解除するわけに行かず、ウクライナ戦争が短期間で終わる見通しも立たず、「ロシア以外の産油国が増産する見込みも今のところない」と値段を下げる手段が「ないない尽くし」の厳しい状況です。


◆中小企業の原材料費高騰の影響は(池田泰秋*30
(内容紹介)
 原材料費高騰に苦しむ中小企業への国の支援が主張されています。


◆食と農の危機打開へ:肥料・飼料の高騰の実態と要求(真嶋良孝*31
(内容紹介)
 円安、ウクライナ戦争等による「肥料・飼料の高騰」を中心に論じられている。なお、「福田論文」と同様に円安を助長してきた「日銀の金融政策の転換」が主張されている。


特集「地域から日本農業を考える」
【各地の動向】
 小生の無能のため上手くまとまらないので北海道のみ紹介しておきます(北海道の紹介もかなりアバウトですが)。
◆北海道『「中農」解体化傾向を示す北海道農業』(市川治*32、菅原優*33
(内容紹介)
 他地域に比べ「比較的恵まれている」とされる北海道(酪農、ジャガイモ生産など)ですら「高齢化」「規模の縮小」と言った傾向が見られ、北海道農業も決して安泰ではないことが指摘される。


◆学問の自由を考える:学術会議任命拒否、「国際卓越研究大学」、「経済安全保障」(小森田秋夫*34
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。なお「学術会議任命拒否」ほどの無法ではないとは言え「国際卓越研究大学」、「(自民党政権における)経済安全保障」は「自民党の考える国益」に「学者が奉仕すべき」という認識にあるという点(学問の自由の軽視)では「任命拒否」との共通点があるとされている。
【学術会議問題】
主張/学術会議介入2年/6人の会員任命求める声聞け2022.10.1
【国際卓越研究大学
「稼げる大学」授業料上げも/吉良氏反対 高等教育無償化に逆行/参院文科委/卓越大学法案可決2022.5.18
きょうの潮流 2022年6月17日(金)2022.6.17
【経済安保法】
主張/経済安保法案/統制強め軍事研究加速の危険2022.3.20

*1:高知短期大学名誉教授。著書『「高度成長」と農山村過疎』(1995年、文理閣)など

*2:2005年8月1日に吾川郡池川町、吾川村、高岡郡仁淀村が合併して誕生

*3:1976年生まれ。高知県吾川郡いの町出身、同在住。2000年1月、秋田書店・第37回ヤングチャンピオンコミック大賞にて奨励賞受賞。同年4月、秋田書店ヤングチャンピオン』増刊号にて「アイラブミー」で商業漫画家としてデビュー。現在、『高知新聞』夕刊に「きんこん土佐日記」(2004年4月開始)を連載中(村岡マサヒロ - Wikipedia参照)

*4:元総務官僚。福岡県財政課長、島根県総務部長、大阪府副知事などを経て高知県知事

*5:メイ内閣司法相、ジョンソン内閣女性平等相、国際貿易相、外相などを経て首相

*6:著書『あなたは何時間働きますか?:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)、『増補改訂版・企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2019年、本の泉社)など

*7:ロンドン市長、メイ内閣外相などを経て首相

*8:一方、決選投票で争った「ライバルのスナク元財務相」は「飲酒パーティー問題」を理由に大臣を抗議辞任し、「ジョンソンを首相辞任」に追い込む一因となったことから、ジョンソンやその支持者とは対立関係にあった

*9:むしろ「モリカケ桜」など不祥事まみれの安倍政権がこうした低支持率ですぐ退陣すべき所「史上最長」とは全く屈辱です。それにしても「不祥事もない」のに「政策批判(減税批判)で1ヶ月で辞任圧力」とは日本人的には意外ですね。

*10:明治大学助教を経て順天堂大学講師。佐々木 優 (Suguru SASAKI) - マイポータル - researchmapで業績の一部が分かりますが、以前から「経済」でアフリカ関係の論文を寄稿しています。過去の業績として、佐々木『「一帯一路」構想とアフリカ』(平川ほか編著『一帯一路の政治経済学:中国は新たなフロンティアを創出するか』(2019年、文眞堂)収録)など

*11:1993年に当時の細川内閣が初めて開催。その後TICAD2(1998年、小渕内閣)、TICAD3(2003年、小泉内閣)、TICAD4(2008年、福田内閣)、TICAD5(2013年、第2次安倍内閣)、TICAD6(2016年、第3次安倍内閣)、TICAD7(2019年、第4次安倍内閣)、TICAD8(2022年、岸田内閣)を開催(当初は5年間隔だが最近は3年間隔で開催)

*12:SDGsと言う奴ですね

*13:どう見ても「中国以上の金が出せないこと」についての自己正当化に過ぎないでしょう。可能なら500億ドルとか中国を越える金を出したかったでしょう。

*14:当時は江沢民国家主席

*15:中露の対アフリカ外交の是非はともかく昔からアフリカには「独裁的国家が多い(そしてそれを欧米や日本も容認)」上に日本に至っては「アパルトヘイト南アから名誉白人称号授与」なので「産経も良く言うわ、欧米や日本は無罪で全て中露が悪いのか?(呆)」ですね。

*16:「アフリカ54カ国」については「日本が西サハラを国家承認していないこと」を指摘しておきます(日本が公的な場で「アフリカ54カ国」と記す訳 <アフリカン・メドレー> (1/3) 〈アサヒカメラ〉|AERA dot. (アエラドット)参照)。なお54カ国の内訳は「アルジェリア、エジプト、リビア、モロッコスーダンチュニジアベナンブルキナファソカーボベルデコートジボワールガンビア、ガーナ、ギニアギニアビサウリベリア、マリ、モーリタニアニジェール、ナイジェリア、セネガルシエラレオネトーゴカメルーン中央アフリカ共和国コンゴ民主共和国コンゴ共和国赤道ギニアガボンサントメ・プリンシペ、チャド、アンゴラブルンジコモロジブチエリトリアエチオピアケニアマダガスカルマラウイモーリシャスモザンビークルワンダソマリアセーシェル南スーダンタンザニアウガンダボツワナレソトナミビアエスワティニ、ザンビアジンバブエ南アフリカ共和国」です(アフリカ - Wikipedia参照)

*17:俺個人は「入れる」とも「入るべき」とも思っていませんが、入りたいなら「拒否権を持つ中国」を敵に回せないでしょうに、何なんでしょうか、この記事の反中国論調は(呆)。まあこの記事に限らず、読売、産経といった右派新聞は日頃から「反中国」論調ですが。

*18:著書『崩壊国家と国際安全保障:ソマリアにみる新たな国家像の誕生』(2015年、有斐閣

*19:内務相、首相などを経て大統領

*20:1989年にクーデターによって軍事政権を成立させ、30年にわたり大統領として政権の座を維持してきたが、2019年4月に軍にクーデターを起こされ失脚

*21:首相、通産相などを経て大統領

*22:1979年、叔父であるフランシスコ・マシアス・ンゲマ大統領の独裁政権をクーデターで倒し、叔父を処刑し、軍事政権を樹立。2022年現在まで43年に上る長期政権を維持

*23:2009~2019年まで大統領

*24:国会第一副議長、国防相などを経て大統領

*25:農業相、財務相を経て首相

*26:2019年ノーベル平和賞受賞者

*27:ポルトガル首相、国連難民高等弁務官などを経て国連事務総長

*28:一橋大学名誉教授。著書『現代市場経済とインフレーション』(1992年、同文舘)、『土地の商品化と都市問題』(1993年、同文舘)、『現代日本の分配構造』(2002年、青木書店)、『コーポレート・グローバリゼーションと地域主権』(2010年、桜井書店)、『格差社会の謎』(2021年、創風社)

*29:日本共産党政策委員

*30:中小企業家同友会事務局次長

*31:著書『いまこそ、日本でも食糧主権の確立を!』(2009年、本の泉社)

*32:酪農学園大学名誉教授。著書『資源循環型酪農・畜産の展開条件』(編著、2007年、農林統計協会)

*33:東京農業大学教授

*34:東京大学名誉教授。著書『ロシアの陪審裁判』(2003年、東洋書店ユーラシア・ブックレット)、『体制転換と法:ポーランドの道の検証』(2008年、有信堂)、『日本学術会議会員の任命拒否:何が問題か』(2021年、花伝社)、『法廷から見た人と社会:ロシア・ポーランド・韓国・ベトナム』(2021年、日本評論社