「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう(2019年5/25分:黒坂真の巻)

黒坂真
‏ 雇用のヨーコさん。日本共産党はジェンダ―平等、を主張していますが、性産業を法で禁止し全廃せよ、という主張をしていません。なぜですか。ジェンダー平等を唱えるなら、性産業の禁止を言うべき。

 黒坂の言ってる意味がさっぱり分かりません。こうした主張をするには「女性がサービス提供に従事する性産業(ソープランドファッションヘルス、イメージクラブなど)は全て女性差別であり、女性の人権侵害である、廃止するしかない」「そうした女性は好きでやってるわけではなく皆いやいややってる」つう立場*1でないとおかしいでしょう。当然そういう立場なら「慰安婦制度」を全面正当化することなどできなくなります。
 しかし黒坂は慰安婦制度を正当化している。わけがわかりません。大体「ジェンダー平等を唱えるなら、性産業の禁止を言うべき」というなら政権与党・自民党公明党はどうなのか。「ジェンダー平等=性差別の否定(なお、共産党がここで「男女平等」といわないのはLGBTの問題を考慮してるからです)」なら自民党公明党だって当然「少なくとも建前では主張」しています。つうか「各論(個別具体的な問題)ならともかく」ジェンダー平等を総論として否定している政党はまともな政党ではどこにもない。なぜ黒坂は自民党公明党に対し

 自民党公明党はジェンダ―平等*2を主張していますが、性産業を法で禁止し全廃せよ、という主張をしていません。なぜですか。ジェンダー平等を唱えるなら、性産業の禁止を言うべき。

といわないのか。
 黒坂には「性産業全廃を主張する人間が、なぜ慰安婦制度を正当化するのか」と聞きたいところですが、まあ聞くに堪えない詭弁が始まるんでしょうね。
 それとも「まさかとは思います」が「性産業に従事している女性は差別されているが、そうした差別はなくすことが出来ない*3。だから共産党のいうジェンダー平等(性差別廃止)なんか絵空事だ。女性差別LGBT差別があって何が悪い」つう無茶苦茶な居直りが黒坂のいいたいことか。もしそうだとするならば、自民や公明どころか「産経新聞」ですらこんな馬鹿なことはいわないでしょう。「性産業に従事している女性は差別されている」のなら「性産業廃止」であれ、「性産業は廃止しないが、現状を改革」であれ差別は撤廃されるべきです。
 いずれにせよ黒坂には「何だ、こいつ?」「どういう脳みそをしてるんだ?」感が否定できません。
 まあ、黒坂の場合、単に共産党に因縁がつけたいだけで「性産業についてまともな議論を展開したい」わけではおそらくないでしょう。
 なお、この件について私見を言えば「ジェンダー平等=性産業全廃」では必ずしもない*4し、そうした立場に立ったところで「法律で禁止すればいい」つう単純な話でもないわけです(小生が人並みにスケベで性産業を利用したことが過去にあることはお断りしておきますがそういう「個人的事情」からこう言ってるわけではないつもりです)。一応お断りしておけば「売春は売春防止法で禁止されている」し、性産業は建前では売春ではない。
 そういう状況下で、「性産業を全廃する」にはそれなりの戦略が必要ですし、まずは「性産業全廃」より「性労働者の権利擁護」の方が現実的じゃないか。「性労働に泣く泣くついている女性労働者を減らす」「性労働者の厳しい労働条件を改善する*5」なんて方が現実的じゃないか。実際、性労働の現場がどうなのか知りませんが、「性労働者が労組を結成する」「それを既存労組や左派政党などが支援する」なんてこともあってしかるべきでしょう。

黒坂真リツイート
 雇用のヨーコさん。台湾でアジア初の同性婚法が施行されてよかった、という呟きですが、日本共産党は台湾が中国とは異なる国として実際には存続している事を認めていますか。(ボーガス注:日本共産党田中角栄内閣「日中共同声明」、福田赳夫内閣「日中平和友好条約」の立場「一つの中国(台湾は中国の一部で国ではない。だから日本は国交を台湾とは結ばない)」支持のはずですが)路線転換しましたか。

雇用のヨーコ
‏・メキシコでジェンダー平等義務化が可決。
・豪州・NZで高校生が気候スト。
・台湾でアジア初同性婚法施行。
 すごいなあ…。世界は大きく動いている。
 一方、うちの国。首相は漢字を読み間違えたわけではありません*6という弁解を首相官邸公式(ボーガス注:ツイート)が流し、やれ大相撲観戦だ、やれゴルフだと。ああ。

 黒坂らしい因縁で吹き出しました。
 「アンチ中国として、台湾・蔡英文政権の悪口は言いたくない。でも同性婚合法化なんかウヨとして評価したくない。そして、反共右翼として日本共産党に何か悪口が言いたい」という黒坂の出した結論がこれの訳です(苦笑)。
 「で、クロちゃんはさ、蔡英文政権の決定した同性婚合法化については『日本も台湾を見習って同性婚を合法化すべきだ』『同性婚合法化なんておかしい、蔡英文は間違ってる』『蔡英文の台湾ではあの決定は正しいが日本ではまだ時期尚早だ』とか何か評価はないの?。あ、そうか、ウヨとして同性婚合法化なんか評価したくないけど、アンチ中国として民進党蔡英文政権の悪口は言いたくないんだよね。その気持ちはわかるわー、デタラメすぎて支持しないけど」「つうかあんた、一応学者の看板持ってるのに、こんなバカなこと言ってて恥ずかしくねえの?」ですよね。

*1:こうした認識の是非はひとまずおきます。

*2:まあ自民や公明の場合ジェンダー平等ではなく「男女平等」と表現してるかもしれませんが、それは黒坂の珍論を批判するにおいては本質的問題ではありません。

*3:黒坂が「なぜなくすことが出来ないと考えてるのか」その理由が何かはともかく。

*4:少なくともそれが国民の共通認識とは言えません。

*5:実際、それを徹底していくと結局「やはり廃止するしかない」つうことになるかもしれませんが。

*6:「漢字の読み間違い」については例えば実は過激な反天皇主義者だったり(笑) | inti-solのブログ - 楽天ブログをご覧下さい。inti-solさんが言うようにアレは「読み間違い」でしょうが安倍政権は「政府決定」として「批判派の空耳、聞き間違い」「『いません(批判派の指摘)』ではなく、『やみません』と正しく読みました」として居直ることに決めたようです。「安倍が非を認めたら首相辞任に直結するレベルの大不祥事・統計不正やモリカケ」ならまだしもこの程度のことで居直りますか?。「読み間違い」批判派も「読み間違いを認めてわびろ」「今後は原稿にルビぐらい振れ」位のことはいっていても「首相辞任」なんか求めてないでしょうに。

今日の朝鮮・韓国ニュース(2019年5月25日分)

高校無償化法から除外しないことを求める/千葉県弁護士会が会長声明 | 朝鮮新報

 韓国学校やインターナショナルスクールに通う生徒は、「高等学校等就学支援金に関する法律」(「高校無償化法」)により高校授業料相当額分の就学支援を受けることができる。しかし、朝鮮学校に通う生徒は、高校無償化法による就学支援を受けることができない。
 このような取り扱いは、許されざる差別である。
 現在、就学支援金を申請した各種学校で就学支援金の支給を受けていないのは朝鮮学校のみである。
 朝鮮学校の卒業生はほぼすべての大学で大学受験資格*1を認められており、その教育機関としての役割は他の高等学校と変わるところはない。
 国連人種差別撤廃委員会(統括所見、2018年8月30日)、国連子どもの権利委員会(総括所見、2019年2月1日)も勧告している。
 差別を正当化し子どもに不利益を課すことは許されない。

 当然の声明でしょう。コメント抜きでひとまず紹介しておきます。


北朝鮮、本当に食糧難?生産量落ちても、米値下がりの謎:朝日新聞デジタル
 「国連が食糧難と判断している」以上、食糧難ではあるのでしょう。にもかかわらず「米価が下がる理由」についての「朝日の評価」は有料記事なのでわかりません(俺は有料記事には登録していません)。


北朝鮮初のウイスキー? 「ジョニ黒」そっくり高級路線:朝日新聞デジタル

 北朝鮮旅行を専門とする中国の「ヤング・パイオニア・ツアーズ」社がSNSに、北朝鮮初となるウイスキーだとして写真を投稿した。かの有名なジョニーウォーカーとそっくりだ。
 このウイスキーは、北朝鮮の「三日浦特産品工場」が製造したもので、ブラックラベル(アルコール度数40%)、レッドラベル(42%)に区別されている点も、ジョニーウォーカーと似ている。
 売り込み文句も独特。いわく、「8種類の必須アミノ酸を含む15種のアミノ酸が含有されており、肝臓の損傷や飲み過ぎによる副作用を減じる効果がある」だ。
 平壌のデパートで今年末ごろから売り始める予定で、価格は15ドル(約1600円)ほど。旅行社によると、北朝鮮で売られている酒類のなかでも「プレミアム」級だという。工場側は「政治状況が改善されれば、海外輸出にも打って出たい」と語っているという。

 面白ニュースとして紹介しておきます。

*1:極右だと「資格を認める方がおかしい」といいかねませんが。

今日の産経ニュースほか(2019年5月25日分)(追記あり)

■野原のツイート

野原燐がリツイート
・安田登*1
 ある年齢や地位になったら「誰も止めてくれる人がいない」という状況をいかに回避するかが大切になります。そうしないと「気がついたら裸の王様、しかも周囲に誰もいない」という状況に陥ります。

 まあ、そう言う事態を避けるために必要な「大事なこと」の一つは「年齢や地位が下の者が、フランクに物が言えるような腰の低さ」でしょうねえ。そして「下の者」がいったことを頭ごなしに否定せず「筋の通ったこと」なら「君のいうとおりだと思う、俺の考えは撤回する」と従うし、「筋の通らないこと」でも「善意の誤解に基づく発言」なら「バカいうな」と切って捨てるのではなく「なぜそうしたことをすべきでないのか」を理路整然と説明することでしょう(「言うは易く行うは難し」ですが)。
 ただ安田氏はともかく、野原がよくもまあこんなリツイートが出来るもんです。
 「脱北者を10万人受け入れれば北朝鮮は崩壊する」「安倍晋三氏のおかげでウイグル政治犯が釈放された」などとデタラメな発言をした上、俺に「何が根拠なの?」と問いただされてもまともに反論も出来ず、逆ギレして詭弁で居直るしかなかった野原は「気がついたら裸の王様、しかも周囲に誰もいない」の典型でしょう。
 まあ「ブログ記事にコメントが多ければ多いほどいい」つう話でもないし、俺のブログ記事のコメントも大して多くはない(まあ俺のような無名人のブログ記事のコメントなんてそんなもんでしょう)。とはいえそれにしても野原ブログnoharra’s diaryでのコメントの少なさは「気がついたら裸の王様、しかも周囲に誰もいない」という野原の「人徳のなさの傍証」ではないかと俺は思っています。
 

野原燐
 慰安婦問題をどう認識するかの対立を、「右派対左派*2」と理解するのは誤りです。「日本対韓国*3」の対立でもありません。
 アジア太平洋戦争における日本の戦争責任の問題を受け入れられない心情の人が「歴史修正に走った」、そういう愚かな人をもてはやす勢力が大きくなっているだけです。

 びっくりですね。こうした慰安婦問題認識は俺も同じですが、なぜこういう認識の野原が「慰安婦の犯罪性を否定する、歴史修正主義者・三浦小太郎」と平気で交際できるのか。そして「何で自称・河野談話支持者のあんたが、河野談話否定派の三浦と交際なんかするの?。なんで三浦批判しないの?。おかしいと思わないの?」と俺に質問されてなぜ「三浦批判する義務があるのか!」と逆ギレするのか、という話です。
 野原については「人としての良識や誠実性が著しく欠落している」と評価せざるを得ません。野原と付き合うような人間は「奴の同類(つまり不誠実な人間のクズ)」か「奴の正体に気づかず、奴を誠実な人間と勘違いしている馬鹿」かどっちかでしょう。いずれにせよ野原は全くろくでもない。


枝野氏「陛下に失礼」 日米首脳の相撲升席観戦 - 産経ニュース
 産経記事が事実なら、いろんな意味で「枝野ってバカ?」ですね。俺が枝野・立民を支持する気にならないのはこういう所です。
 「戦前かよ」「米長かよ」「天皇の政治利用はよせ」ですね。枝野こそが「米長並みに天皇に失礼」です。


枝野氏「解散になれば望ましい」 - 産経ニュース
 産経記事が事実なら、いろんな意味で「枝野*4ってバカ?」ですね。俺が枝野・立民を支持する気にならないのはこういう所です。
 まず第一に現状において本気で「野党の政権奪取」がありうると思ってるのか。野党支持の俺ですら「安倍退陣に追い込めれば御の字」ですね。こんなことは言いたくはないですが、「安倍退陣」すら世論調査での政党支持率を考えるに、残念ながら可能かどうかは微妙でしょう。
 第二に「政権を取りたいから解散は願ったり叶ったり」とは何という言い草なのか。完全な党利党略じゃないですか。まあ、「安倍への牽制」のつもりかもしれませんが、物には言い様があるでしょう。「大義なき解散はおかしい」発言はどこへ行ったのか(まあ安倍以外の過去の解散だって、内閣不信任案が可決された場合以外はろくな大義などはないですが)。
 まあ、「解散したいなら受けて立つ、与党に有利とは限らない」レベルの発言を「産経が故意にゆがめた報道をしている可能性」はゼロではないですが。


【昭和天皇の87年】大命降下を拝辞した近衛文麿 陸軍の横やりに組閣人事は難航した - 産経ニュース

 軍部を押さえられる「相当な人物」となると簡単には見つからない。一部に枢密院副議長の平沼騏一郎*5を推す声もあったが、西園寺*6はそれを拒み、人選は難航した。

 極右嫌いの西園寺としては「右翼団体・国本社のメンバー」「天皇機関説事件の黒幕の一人の疑いが濃厚」という平沼などとても受け入れられる選択肢ではなかったわけです。とはいえ、その平沼も後に首相に就任しますが。
 そこには「日本の右傾化」という面と同時に「どうしても首相になりたかった平沼が表面的であるにせよ、右翼性をできる限り封印したこと」がありますね。

 広田*7はやはり、器ではなかったようだ。内閣発足後も陸軍に押され、「パンドラの箱」を開けてしまうのである。

 おそらく「パンドラの箱」とは第一次山本*8内閣で一度廃止された*9のに、広田内閣で復活し、その後、陸軍の倒閣に悪用され、広田が戦後、死刑となったとされる理由*10の一つ「軍部大臣現役武官制」のことでしょう(追記:予想通り【昭和天皇の87年】禍根を残したナチスドイツとの提携 破滅の戦争への扉が開かれた - 産経ニュースでは「軍部大臣現役武官制の復活」が批判的に取り上げられています)。まあ、ただ日本が太平洋戦争に突き進んでいった最大の理由は「中国の完全植民地化を諦めなかったこと(このために蒋介石政権を支援する米国が対日制裁を発動)」であり、「太平洋戦争の回避」という意味では「軍部大臣現役武官制」などは「小さな問題」ですが。「陸軍の悪用」を考えれば、この制度が復活して良かったとは思いませんが、この制度がなくても日本は対米戦争におそらく突入したでしょう。


「 昭和天皇の御心を正しく受けとめるとともに皇室を政治利用してはならないと自戒する 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト
 よしこはいってること本当に無茶苦茶ですね。
 「昭和天皇がよしこのいうようなこと(岸の安保改定支持)を本当に考えていたのかどうか」も疑問ですが、「昭和天皇の考えがどうこう」いうよし子の考え自体が政治利用以外の何物でもないわけです。そして昭和天皇の立場上「岸を支持する、支持しない」などと表明すべきでもない。
 まあよしこらウヨには「昭和天皇の考えは我々ウヨに近いから、利用する。我々ウヨに近くない前天皇(例えば訪中*11)や現天皇は無視する」つう無茶苦茶な考えしかないでしょうが。
 ただしそんなよしこらウヨでもいわゆる富田メモは自分らに都合が悪いので「昭和天皇本人の自筆じゃない」「富田氏*12の事実誤認があるかもしれない」として平然と無視するわけです。

 雑誌「Hanada」6月号が「直筆御製発見 昭和天皇の大御心」と題して「世界日報」編集局長、藤橋進氏の論文を掲載した。
 昭和天皇は政治家についてただひとり、岸信介*13元首相について詠まれ、3首残された。
「國の為務たる君(は)秋またで 世をさりにけりいふべ(ぐれ)さびしく」
「その上にきみのいひたることばこそおもひふかけれのこしてきえしは」
「その上に深き思ひをこめていひしことばのこしてきみきえにけり(さりゆきぬ)」
 この部分の欄外には「言葉は聲なき聲のことなり」と書かれている。昭和35年の安保改定でデモ隊が国会を取り囲んだとき、岸首相は「デモの参加者は限られている。(中略)私は『声なき声』に耳を傾けなければならないと思う」と語ったことを当然思い出す。「岸首相の孤独な戦いへの深い同情を詠まれた」と、藤橋氏は解説したが、同感である。
 作家の半藤一利*14昭和天皇が岸首相を評価していたのかと「複雑な気持ち」「日米の集団的自衛権を定めた安保改定に賛成の気持ちを持っておられたのだろうか」「心から驚いている」と朝日新聞にコメントした。

 「岸に批判的なリベラル保守*15」で「しかし昭和天皇を含む皇室崇拝者」の半藤氏からすればショックなのでしょうね。半藤氏が昭和天皇への見方を今後「今より厳しいもの」に変えるのか気になるところです。
 「沖縄戦の悲劇」「沖縄メッセージ」などを理由に「昭和天皇に否定的、批判的な」小生からすれば、「真相はこれだけでは不明なのだろうが、昭和天皇が仮に岸に好意を抱いていたとしても不思議ではない」「なぜなら彼はどう見ても平和主義者ではないし、日米同盟という自民党の方向自体は支持していたからだ」と思うだけで「昭和天皇への否定的な考えはほとんど変わりません」が。
 しかし、前天皇や現天皇はどうなんですかね。少なくともこうした和歌をためらいなく残す*16ほどの、右翼性はないような気がしますが。
 それにしてもこうした情報を公開した側(宮内庁?)の思いは「岸の正当化(そして安倍の正当化?)」なんでしょうが、むしろ「昭和天皇ってそんな人間だったのか」と昭和天皇に対する批判意識が強まるだけでしょう。ただし「前天皇や現天皇」は少なくとも表向きはそうした右翼性を示してないので、「昭和天皇への批判」が天皇制への批判には必ずしも直結しないでしょうが。


【産経抄】5月25日 - 産経ニュース

・23日付小紙朝刊「単刀直言」欄で、平成29年に民進党を離党し、今年3月に自民党入りした鷲尾英一郎衆院議員が語った
・「国会で『安保法制反対』のプラカードを掲げさせられたことは、嫌で嫌で仕方がありませんでした*17」。
 27年に国会で審議された日米同盟を強化する安全保障関連法案について、対案提出を主張した鷲尾氏*18は、民進党執行部が憲法違反と断じて共産党と歩調を合わせたことに愕然(がくぜん)としたのだという。
・安保関連法に賛成することを「踏み絵」にした希望の党に、民進党議員らが大挙して加わった
立憲民主党など野党5党は先月、性懲りもなく安保関連法廃止法案を参院に提出した。

 まあ正確には「前原、細野ら保守系の旧民進党議員が参加した」ですが(菅元首相、辻元氏などは排除され、立憲民主党を結党しました)。そのうち細野にいたっては「元民主党幹事長(海江田代表時代)、政調会長岡田代表時代)、元民進党代表代行(蓮舫代表時代)」でありながら、「将来の自民入党を前提」に二階派入りする始末です。。
 そういう連中の存在が「旧民進党(特に希望の後継政党である国民民主党)なんか信用できない」と思われて「安倍を利してること」は産経のいう通りです。
 「社会党に比べて民主党は情けない」と腹立たしくなります。
 まさか「希望の党に参加した連中は共同提案者から排除する」つうわけにもいかないでしょうが、「野党5党」のうち少なくとも「希望の後継政党・国民民主」には「どこまで本気なのか」という疑念を感じざるを得ない。
 しかし、それは当然ながら産経が強弁するような「安保関連法が正しい」とか、ましてや「安倍自民が正しい」ということを意味しません。
 なお、「安保関連法」を正当化する産経ですが、未だに正式発動はされてないことはお断りしておきます。


【主張】インド総選挙 対中連携さらに強めたい - 産経ニュース
新刊紹介:「経済」6月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した、『印パ、カシミールで軍事衝突』(豊田栄光)で赤旗・国際部記者の豊田氏は

・総選挙でのインド人民党勝利が予想されてる*19が、これで印パ対立が激化する恐れがあることが怖い
・モディ首相誕生後、インド国内ではヒンズーとイスラムの対立が激化しているがそれが更にエスカレートする恐れがあることが怖い

として「インドのヒンズーナショナリズム」への懸念を語り「モディ政権が印パ対立エスカレートやイスラム差別的政策を強行しないか、日本や欧米諸国など国際社会の監視も必要だ」としていました。
 しかし豊田氏のような危惧は産経にはかけらもないわけです。大体「中国封じ込め」て、「最大野党・国民会議派がモディに比べて中国に好意的」なんて事実も、「モディが産経並みに反中国」なんて事実もなく選挙結果とインドの対中国政策に関係などどう見てもないのに(関係があるのは豊田氏も触れるように「領土紛争があるパキスタン」とかイスラム諸国*20とかの関係です)。
 なお、こうした豊田氏のような危惧は

インドの闇を象徴する世界一の彫像―日本メディアに問われるもの(六辻彰二) - 個人 - Yahoo!ニュース
ヒンドゥーナショナリズムの高まりと並行して、インドでは少数派に対するヘイトクライムが頻発している。モディ政権誕生以前の2013年に9件だったヘイトクライムは、モディ政権誕生後に増加し始め、2017年には過去最高の74件を記録した。
・さらに問題なのは、インド政府がこれらを半ば野放しにしていることだ。
 モディ首相には、グジャラート州知事だった2002年にヒンドゥー教徒の暴動で1000人以上が死亡する事件が発生した際、十分な対策をとらなかったとして、アメリカ政府から入国ビザの発給を停止された経緯がある(首相になって初めて解除された)。
 これに関して、モディ首相は未だに「何も悪いことはしていない」と主張しているが、モディ政権を支える与党BJPからは、より直接的にムスリム排除を訴える声さえ出始めている。
 2月、BJP議員ヴィナイ・カティヤ氏はヒンドゥー教徒ムスリムの衝突に関連して、「なぜムスリムがインドにいるんだ?」、「ムスリムはこの国にいるべきじゃない」と発言。ヒューマン・ライツ・ウォッチは「少数派を襲撃から守るつもりがない」とインド政府を糾弾している。
・人権問題に限っても、北朝鮮や中国に関するネット記事は数多いが、程度の差はあれ、それ以外の国は放置されがちだ。「それがニーズに合っている」といえばそれまでだが、「気に入らない国*21の人権問題」だけ注目し、「日本との関係が大事な国*22」のそれを顧みないことは、少なくとも普遍的価値として人権を尊重していることにならない*23

ということで他にもあります。
 「独裁がいい」とはもちろん言いません。しかしこれが「民主主義の怖さ」です。民主主義は「インド民衆(もちろん少数派のイスラム国民は違いますが、インドの多数派はヒンズーです)がモディのヒンズー過激主義を黙認してる」ように「民衆が愚かであるならば」、決していい成果を生みません。

 安倍首相がただちにモディ氏に電話を入れ、祝意を表明したのは適切だった。

 「モディ政権継続」について祝意を表明したのは安倍だけでないですし、社交辞令として表明しないわけにもいきません(もちろん逆に野党・国民会議派が勝利したら野党相手に社交辞令として祝意を表明するわけですが)。しかし安倍や産経に「豊田氏のようなヒンズーナショナリズムへの危惧」がないのならば呆れざるを得ません(たぶんないのでしょうが)


【モディ印政権2期目へ】行き渡らぬ「成長の果実」(1/2ページ) - 産経ニュース

 「モディに裏切られた」
 インド中部マハラシュトラ州で3月28日、農業のダンラジ・ナバテさん(55)が自殺した。農機具購入のため借りた20万ルピー(約31万円)が返済できず苦慮していた。遺書につづられていたのは政権への恨みとも取れる文言だ。
 ナバテさんは前回2014年総選挙でモディ首相や与党インド人民党(BJP)を熱心に支援した。農村所得の底上げや、政府が農作物を農家から買い取る際の「最低保証価格」引き上げなどの公約にひかれたためだ。しかし、それらの多くは未達成。「彼は月ほどの援助をくれると約束したが石ころももらえなかった。発展の恩恵は農村にはまったくない」と、妻のチャヤさん(45)は話す。
 原料費や設備投資費が高騰する一方、農作物は供給過剰状態にあり価格は下落する。13億の人口の6割に当たる農業従事者の困窮は深刻だ。全国で毎年1万人以上の農業関係者が自殺しているとみられ、農家が特に多いマハラシュトラ州は15~18年に約1万2千人が自ら命を絶った。
 発展の恩恵が得られていないのは農村だけではない。
 「モディは何もしてくれなかった」。
 首都ニューデリーの無職、ジャティン・クマールさん(24)はつぶやいた。昨年、インド最難関の大学の1つ、デリー大学を卒業したが職が見つかっていない。
 インドで労働力の中核となる生産年齢(15~64歳)人口は年間1千万人を超える勢いで増加する。経済成長の一方で雇用創出が追いついていないのが現状だ。昨年、インド国有鉄道が募集した6万3千の求人には1900万人が応募した。
 民間調査によると、2月時点の失業率は7・2%だが、モディ政権はここ数年失業率を公表していない。実態は不明で、「意図的に悪い数字を隠蔽している」と批判が集まる。
 第1期モディ政権は年間2千万人の雇用創出を目指していた。しかし、実現できたのは半分以下にとどまる。クマールさんは「経済が成長しているなら、企業の求人も増えるはずだ。このままでは大学を出ても餓死してしまう」と話した。
 毎年7%前後の経済成長を遂げながら、成長の果実が行き渡っていないインド。経済格差は拡大し、上位1%の富裕層が社会の富の約半分を所有しているとされる。「総選挙ではこうした内政面の諸課題は、(ボーガス注:パキスタンとの領土紛争による)ナショナリズムの高揚とそれを利用したBJPの選挙戦術でかき消された」と、印シンクタンクブルッキングス研究所インドセンター」のサフリ・アリ研究員は分析する。

 ということで選挙で大勝し、過半数議席をおさえたとは言え、モディ政権も順風満帆ではなさそうです。野党・国民会議派の力不足がモディを利してるという要素が大きいのでしょう。あるいは産経記事も指摘するように最近のパキスタンとの「カシミール問題での対立」によるヒンズーナショナリズムの激化がモディを利したのではないか。

【追記】

【巨象の未来 インド・モディ政権2期目へ】下 過激化するヒンズー教徒 宗教分断どう食い止める(1/3ページ) - 産経ニュース
 2014年の前回総選挙で勝利し、与党となったインド人民党(BJP)はヒンズー至上主義を掲げ、モディ政権は食肉処理を目的とした家畜市場での牛の売買を禁止する法令を出した。BJPはヒンズー至上団体、民族義勇団(RSS)を支持母体とし、モディ首相も以前は、RSSの運動家だ。ヒンズー色の強い政策を取るのは予想されたことだが、過激な信者を拡大させるといういびつな結果も招いている。
 牛の飼育者らが標的となった事件では14年以降、少なくとも44人が殺害された。こうした事件は以前から起きているものの、近年、明らかに増加している。国連人権理事会も今年3月、「不平等が深刻で、少数派、特にイスラム教徒への迫害が増えている」と報告し、インド国内でわき上がる排他的な動きに懸念を表明した。
 モディ氏はBJP幹部とともに事件に懸念を表明するが、野党、国民会議派からは「保守層は重大な支持基盤であり、政権与党はヒンズー至上主義を黙認している」(同党関係者)との批判の声が上がる。
 宗教による分断はこうした事件に限らない。北部ウッタルプラデシュ州では公式観光ガイドブックからインドの象徴ともいえる世界遺産「タージマハル」が消えた。イスラム王朝時代に建設されており、「反ヒンズー的」という判断が働いたものとみられる。

 こうしたモディと支持者の危険性(排外主義的ヒンズーナショナリズム)は本当になんとかならないもんでしょうか。

*1:1956年生まれ。下掛宝生流ワキ方能楽師能楽師としての活動とは別に、『論語』を学ぶ寺子屋「遊学塾」を主宰し、東京をはじめ全国で出張寺子屋も行っている。著書『ワキから見る能世界』(2006年、NHK生活人新書)、『身体能力を高める「和の所作」』(2010年、ちくま文庫)、『異界を旅する能:ワキという存在』(2011年、ちくま文庫)、『日本人の身体』(2014年、ちくま新書)、『能:650年続いた仕掛けとは』(2017年、新潮新書)、『身体感覚で「論語」を読みなおす。:古代中国の文字から』(2018年、新潮文庫)、『能に学ぶ「和」の呼吸法』(2018年、祥伝社黄金文庫)、『体と心がラクになる「和」のウォーキング』(2019年、祥伝社黄金文庫)など。(ウィキペディア「安田登」参照)

*2:まあ「右派の定義」にもよりますが、例えば自民党総裁河野洋平氏は慰安婦戦争犯罪と認識しているわけです。

*3:そもそも元慰安婦(性犯罪被害者)は「台湾、フィリピン、インドネシア」など、韓国以外にもいますからね(一番数が多いのが韓国、北朝鮮といった朝鮮半島ではありますが)。

*4:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相民主党幹事長(海江田、岡田代表時代)、民進党代表代行(前原代表時代)を経て立憲民主党代表

*5:検事総長大審院長、第二次山本内閣司法相、枢密院副議長、議長、首相、第二次近衛内閣内務相などを歴任。戦後、終身刑判決を受け服役中、獄死。後に靖国に合祀。

*6:第二次伊藤、第二次松方内閣外相(文相兼務)、第三次伊藤内閣文相、首相、元老など歴任

*7:斎藤、岡田、第一次近衛内閣外相、首相を歴任。戦後、死刑判決。後に靖国に合祀。

*8:第二次山県、第四次伊藤、第一次桂内閣海軍大臣などを経て首相

*9:ただし廃止されても陸軍、海軍大臣が「軍人経験の全くない人間」となることは結局ありませんでした。「現役を引退した元軍人」が任命されたわけです。

*10:他にも「首相時代に日独防共協定を締結したこと」「第一次近衛内閣外相時代に『蒋介石を相手にせず』声明に賛成したこと」などもありますが。

*11:よしこらウヨが「憲法に反する天皇の政治利用だ」と叫んで訪中に反対していたことは有名な話です。しかし「米長の例の件について、よしこらが米長を批判しないこと」一つ考えても訪中反対理由「天皇の政治利用は良くない」は口から出任せですが(まあ他にも反対理由としては「天安門事件云々」も当然ありますが)。

*12:警察庁警備局長、警視副総監、宮内庁長官など歴任

*13:戦前、満州国総務庁次長、商工次官、東条内閣商工相を歴任。戦後、自民党幹事長(鳩山総裁時代)、石橋内閣外相を経て首相

*14:週刊文春編集長、月刊文春編集長など歴任。文春OBだが「月刊諸君」などの極右路線には否定的なリベラル保守として知られる。著書『聖断:天皇鈴木貫太郎』(1988年、文春文庫→2006年、PHP文庫)、『戦士の遺書:太平洋戦争に散った勇者たちの叫び』(1997年、文春文庫)、『漱石俳句を愉しむ』(1997年、PHP新書)、『一茶俳句と遊ぶ』(1999年、PHP新書)、『日本海軍の興亡』(1999年、PHP文庫)、『手紙のなかの日本人』(2000年、文春新書)、『永井荷風の昭和』(2000年、文春文庫)、『幕末辰五郎伝』(2001年、ちくま文庫)、『レイテ沖海戦』(2001年、PHP文庫)、『ノモンハンの夏』(2001年、文春文庫)、『ソ連満洲に侵攻した夏』(2002年、文春文庫)、『“真珠湾”の日』(2003年、文春文庫)、『清張さんと司馬さん』(2005年、文春文庫)、『遠い島 ガダルカナル』(2005年、PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(2006年、文春文庫)、『昭和史残日録 戦後篇』(2007年、ちくま文庫)、『大相撲人間おもしろ画鑑』(2008年、小学館文庫)、『日本国憲法の二〇〇日』(2008年、文春文庫)、『それからの海舟』(2008年、ちくま文庫)、『荷風さんの戦後』、『山県有朋』(以上、2009年、ちくま文庫)、『昭和史:1926~1945』、『昭和史戦後篇』(以上、2009年、平凡社ライブラリー)、『15歳の東京大空襲』(2010年、ちくまプリマー新書)、『日本史はこんなに面白い』(2010年、文春文庫)、『名言で楽しむ日本史』(2010年、平凡社ライブラリー)、『墨子よみがえる』(2011年、平凡社新書) 、『漱石俳句探偵帖』(2011年、文春文庫)、『幕末史』(2012年、新潮文庫)、『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』(2012年、文春新書)、『あの戦争と日本人』(2013年、文春文庫)、『安吾さんの太平洋戦争』(2013年、PHP文庫)、『隅田川の向う側:私の昭和史』(2013年、ちくま文庫)、『若い読者のための日本近代史:私が読んできた本』(2014年、PHP文庫)、『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2014年、文春文庫)、『「昭和天皇実録」にみる開戦と終戦』(2015年、岩波ブックレット)、『日露戦争史1、2』(2016年、平凡社ライブラリー)、『歴史に「何を」学ぶのか』(2017年、ちくまプリマー新書)、『其角と楽しむ江戸俳句』(2017年、平凡社ライブラリー)、『歴史と戦争』(2018年、幻冬舎新書)、『なぜ必敗の戦争を始めたのか:陸軍エリート将校反省会議』(編著、2019年、文春新書)、『B面昭和史:1926-1945』(2019年、平凡社ライブラリー)など

*15:半藤氏も花田もどちらも「週刊文春元編集長」なのですがかたやリベラル保守(半藤氏)、かたや非常識極右(花田)と偉い違いです。

*16:とはいえその昭和天皇ですら「この和歌を岸政権当時に公開する」ほどの蛮勇はなかったわけですが。個人的にはこうした和歌が岸に伝えられたのかが気になるところです。

*17:「なら離党しろ」て話です。

*18:野田内閣で農水大臣政務官

*19:豊田論文時点では選挙結果は不明です。

*20:まあパキスタンイスラム国ですが。

*21:北朝鮮や中国のこと

*22:インドのこと

*23:まあ、そういう意味で「チベットの人権問題だけ」わーわー言う連中ってのはインチキ極まりない。そんなんは1)ただのチベットキチガイ(例:I濱Y子やMukke)、2)ただの反中国右翼(例:産経や国基研)のどっちか、あるいは両方でしょう。

今日の産経ニュース(2019年5月24日分)(松本清張「女囚」のネタバレがあります)(追記あり)

外務、防衛両省がHPで「旭日旗」説明 韓国のレッテル貼りに対抗? - 産経ニュース
 「旭日旗は戦前の日本海軍の旗です」「だから私たち韓国民は旭日旗についていい感情が持てません」「他の国はともかく、せめて韓国に海上自衛隊が来るときは旭日旗は外してほしい」というのはレッテル張りではないでしょう。「戦前日本の侵略」の被害国として当然の感情でしょう。
 東欧国民が「旧ソ連国旗」に、ユダヤ人がハーケンクロイツに好感情を持てないのと同じです。
 そこで「ハーケンクロイツはナチが発明したわけじゃない」「旧ソ連国旗が東欧侵略したわけじゃない。ソ連国旗の『鎌とトンカチ(農業と工業の重視)』の理念自体に悪はない」とかいってなんか意味があるのか。ここでの産経や安倍政権の居直りも同じです。
 いい加減「韓国の要望に応えたらどうなのか」。俺からいわせれば「旭日旗の廃止と新しい海上自衛隊旗の制定」を求めないだけ「随分日本に気を遣ってる」と思いますが。


寝屋川中1殺害 死刑確定に「ほっとした」 女児の遺族 - 産経ニュース
 気持ちは分からないではないのですが、「遺族が死刑を公然と喜ぶ」のも「それをマスコミが垂れ流す」のも「何だかなあ」と思います。


神戸連続児童殺傷「弱者に優しい時代に」土師守さん手記全文 - 産経ニュース
 一犯罪被害者遺族に過ぎない人間がここまでご大層に扱われるのには違和感を感じますね。
 「法律専門家でも人格者でも何でもない『一犯罪被害者に過ぎない彼の発言』に高尚な内容を期待しても仕方がない」「もっと酷い暴言はく遺族もいる」とはいえ内容も俺的には「なんだかなあ」ですね。

 今年も、加害男性からの手紙は届いていません。
 加害男性が、自らが犯した残忍な犯罪に向き合い、真実を導き出す必要があると思いますが、その手段として私たちに手紙を書くという行為は重要な意味を持つことだと私は考えています。

 何だかなあ、ですね。土師がそう考えることは彼の勝手ですが加害男性に押しつけることが出来る話ではないでしょう。
 「手紙を書いて遺族に送れば反省してる、送らなければ反省してない」つう単純な話でもない。
 まあ、送ることによって「遺族の気持ちが少しでも和らぐ」のであればその方が望ましい。とはいえ「送れば和らぐのか」つうと遺族も様々です。
 「反省が足りない」と逆ギレする遺族もいるかもしれない。そういう意味では「真に反省してるが故に遺族の反応が怖くて送れない」ということもありうるわけで勝手に「送らないから反省がない」と決めつけるのもいかがなものか。特に土師がこういうことを言えば言うほど普通の人間なら送りづらくなります。
 まあ、「被害者遺族じゃないから俺はこういうことが言える」つう面は否定しません。しかし、「加害男性が社会復帰し、特に犯罪などの問題行為も犯してないらしい」程度でも俺としては「それなりの反省じゃないか」と思いますね。少なくともこんな感情論はメディアが無批判に垂れ流すべきものではないでしょう。

 新しい「令和」の時代は、犯罪被害者を含め弱者に優しい、そして暮らしやすい時代になってほしいと願っています。

 繰り返しますが「被害者遺族じゃないから俺はこういうことが言える(人格者では全くないので被害者遺族になったら恨み辛みから発狂して土師や岡村のように狭量な態度になるかもしれない)」つう面は否定しません。しかし、土師のこの言葉には俺は「犯罪加害者やその家族は弱者じゃないの?」「こんなことを言ってもあなたは怒るかもしれないがあなたの子どもを殺した加害男性やその家族は弱者じゃないの?」「あんたら犯罪被害者遺族だけが弱者なの?」「あんた、マスコミにちやほやされて、少し思い上がってねえか?」と思いますね。
 土師の目指す社会は明らかに「犯罪加害者家族」という弱者に冷たい社会でしょうし、そんな土師が「犯罪加害者家族」以外の弱者に対しても優しい人間とはとても思えません。土師の言ってることは「犯罪被害者家族という弱者の俺に優しくしろ」つう手前勝手な話に過ぎないでしょう。
 まあ小生は「土師に限らず」あすの会岡村勲や「横田奥さんら拉致被害者家族会」もそうですが「思いあがってる被害者」にはむしろ共感や同情より「思い上がってんじゃねえよ、何様のつもりだ。被害者なら何でも許されると思ってるのか」「あんたの考えが100パー正しいと思ってるのか」つう不快感を感じますね。ただそういう「俺のような人間」は「日本では少ないらしく」下手に公言すると「ボーガスは被害者に冷たい」「加害者に甘い」「それでも人間か*1」などと周囲の非難をあびますので「小心者でへたれ」の小生もそういうことは「リアル社会」では、ほとんど公言はしませんが、ここでは簡単に私見を書いておきます。
 たぶんこういうことを言うと、この「元あすの会」メンバーの厳罰論者・土師は「加害者に甘い」と逆ギレするのでしょうが、「加害者に適切な処罰を与えると言うこと*2」は「加害者を社会から抹殺すること(あすの会の目的?)」とは違います。「死刑判決や無期判決*3以外」は「土師の子どもが殺された事件」も含めて、少なくとも「刑務所で罪を償った上で、社会に復帰すること」が建前の訳です。
 TBSでドラマ化もされたマンガ「家裁の人」で主人公・桑田判事が

meguのコーヒータイム
 第3巻「イチジク」、審判に悩む同僚判事との対話。
 「厳しい罰を与えれば問題のある少年が自分たちの前から消えると思う事自体完全な誤解です。」
 「どんなに長い処分を与えても、少年は社会に戻ってくるんです。誰かの隣に住むんですよ。」
 第4巻「ホオノキ」、少年犯罪の審判に対する新聞の厳しい批判の論調。
 「長い間暴走族の少年らに苦しめられたあげくに二カ月の重傷を負わされた市民がいるのである。その少年をまた町に戻すという事は裁判所は私たち市民に、この先ずっと脅えて暮らせというのであろうか」という問いに、判事のつぶやきは。
 「町が育てなければ、誰が少年たちを育てるんですか?」

家栽の人 - つれづれマンガ日記 改
 作中では数々の名台詞が飛び出すわけだが、個人的に一際記憶に残るシーンは第3巻「イチジク」に収録される以下のシーンだろう。
「どんなに長い処分を与えても、少年は社会に戻ってくるんです。誰かの隣に住むんですよ。その時、その少年が、笑って暮らしている可能性を探すのが、裁判官の仕事じゃないんですか。」

家栽の人 | もんちゃんのブログ
「どんなに長い処分を与えても少年は社会に戻ってくるんです。誰かの隣に住むんですよ。その時、その少年が笑って暮らせる可能性を探すのが裁判官の仕事じゃないですか*4

家栽の人 | 見たまま、感じたまま、思ったまま - 楽天ブログ
「どんなに長い処分を与えても、少年は社会に戻ってくるんです。誰かの隣に住むんですよ。そのときに彼が笑って暮らせる可能性を探すのが私たち裁判官の仕事じゃないでしょうか?*5
「街が少年達を育てないで誰が育てるんですか?」

と言っていますがそういう話です(まあお察しがつくでしょうが小生は「家栽の人」ファンです。まあ、あのマンガ&ドラマはややきれい事に流れがちな気がしないでもありませんが、一方で「きれい事(理想論)を忘れたら」それは悪しき現状追認でしかありません)。
 ましてや、「別人格の家族」が加害者のために社会から抹殺されていい訳がない。例えば、宮崎勤事件によって自殺に追い込まれたという宮崎の父親や、婚約が破談になったという宮崎の姉は「弱者に冷たい日本社会の被害者」ではないのか。宮崎の家族(両親や姉)は彼があんなことをしてるとは思いもしませんでした。「土師の子どもを殺した加害男性」の家族(両親など)だってまさかあんな事件が起こるとは思わなかったでしょう。我々だって「家族がどこで何をしてるか」なんか知りません(さすがに犯罪はしてないでしょうが)。「犯罪者だから家族でも見捨てる*6」つうわけにもいきませんが当然のように社会から「家族としての責任」なんか負わされても困るわけです。
 まあ、こういうことをいう土師のような人間は「加害=故意犯」「故意犯は自業自得*7」「家族にも責任がある」と思ってるのでしょうが過失犯だってある。自動車事故のような過失犯は、池袋の高齢者男性のように「いつ自分や自分の家族が加害者になるか分からない」わけです。
 まあそういうことを「土師や岡村のような犯罪被害者遺族」に求めても酷でしょうが、「土師や岡村らあすの会」が「犯罪加害者家族の生活支援」に目配りできるような冷静さや人情があれば「あすの会」も会員減少で消滅するようなこともなかったんじゃないですかね(実際には彼らは厳罰論を主張するだけのタカ派に過ぎなかったわけですが)。そして「被害者遺族よりは冷静であるべき」マスコミも少しは「犯罪加害者家族」の問題に目を向けてほしいもんです。下で紹介する現代ビジネス(講談社)、朝日新聞毎日新聞日経新聞西日本新聞ニューズウィーク日本版、雑誌『クロワッサン』(マガジンハウス)の記事のように「最近はマスコミでも少しずつそうした問題が取り上げられてる」のは幸いですが、被害者遺族の声に比べればまだまだ紹介が足りませんね。
 まあ、小生は決して「人権にセンシティブな人間ではない(むしろ恥ずかしながら鈍感)」です。その点、「麗しい誤解」をされたくない*8のでお断りしておきますが、この程度のことは人として心にとめておきたいとは思います。つうか「ややきれい事ですが」日本人皆がこうした「犯罪加害者家族の問題」に目を向けるべきでしょう。


【参考:犯罪加害者家族の支援について】
息子が人を殺しました…千件以上の「加害者家族」支援から見えたこと(阿部 恭子) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
(ひと)阿部恭子さん 加害者家族を支援するNPO理事長:朝日新聞デジタル
犯罪加害者家族支援センター:きょう発足 人権侵害対策に力を 開設に尽力、NPO代表・阿部恭子さん /山形 | 毎日新聞
ストーリー:加害者家族を支えて10年(その1) 顔上げられるように | 毎日新聞
一筋の光になるなら NPO代表阿部恭子さん: 日本経済新聞
「息子が人を殺しました」加害者家族の過酷な現実 ネットで中傷、村八分… 支援団体は全国で2つのみ|【西日本新聞ニュース】
『息子が人を殺しました』著者、阿部恭子さんインタビュー「マイノリティな立場の人々をサポートしたい。」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
婚約破棄、辞職、借金、自殺......知られざる加害者家族の苦悩 | カルチャー | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト印南敦史

 まあこのほかにも記事はいろいろあるとは思いますが。
 現代ビジネス記事の筆者・阿部氏は特定非営利活動法人WorldOpenHeartという犯罪加害者家族支援団体の代表で、『加害者家族支援の理論と実践』(編著、2015年、現代人文社)、『性犯罪加害者家族のケアと人権』(編著、2017年、現代人文社)、『息子が人を殺しました:加害者家族の真実』(2017年、幻冬舎新書)、『加害者家族の子どもたちの現状と支援』(編著、2019年、現代人文社)、『家族という呪い:加害者と暮らし続けるということ』(2019年、幻冬舎新書)という著書があります。朝日記事、日経記事、クロワッサン記事が阿部氏へのインタビュー、ニューズウイークの印南記事が『息子が人を殺しました』の書評です。
 毎日新聞西日本新聞の記事でも阿部氏については触れられています。
 幻冬舎も「百田のデマ本など出さず」こういうまともな本だけ出してれば問題ないのですがね。「アベマテレビの番組で安倍に媚びへつらった」という「幻冬舎社長の見城」はどうみても「人間のクズ」ですが編集者にはまともな人間もいるのでしょう。

「息子が人を殺しました」加害者家族の過酷な現実 ネットで中傷、村八分… 支援団体は全国で2つのみ|【西日本新聞ニュース】
 熊本大法学部の岡田行雄*9教授(刑法学)は、「罪を犯していない家族に制裁が加えられ、普通に生活できなくなる社会はおかしい」と指摘。家族が精神的、経済的に困窮すれば、加害者は更生の大きな支え手を失うとして「再犯防止の観点からも加害者家族の支援は非常に重要だ」と話す。

 岡田教授には全く同感で「ガッテン、ガッテン」ですね。まあ加害者だって「刑事処罰と民事賠償責任」ならともかくそれ以上の「社会的抹殺」など必要ないし、少なくとも有罪判決が下るまでは「推定無罪」ですし、「レアケース」とはいえ免田事件のような再審無罪なんて場合もありますが。

【追記】
1)後で気づきましたが、今日の産経ニュースほか(1/7分)(追記・修正あり) - bogus-simotukareのブログで既に阿部さんを紹介していました。
2)「犯罪加害者の家族」についての記事として佐川一政のドキュメンタリー映画が公開される(彼の弟さんも、大変な迷惑をしたようだ(やっぱり))(追記あり) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)を紹介しておきます。
3)今思い出したのですが、松本清張の作品で「女囚(旧題:尊属)」というのがあります。
 どんな作品かというとこんな作品です。

https://kanucha.net/wp-book/2006/07/02/post-0/
 松本清張の真骨頂はなんといってもその短編にあります。短い文章の中に人間の心理を描ききるという技倆は並々のものではありません。
 ここでも女囚刑務所にいる父親を殺したある女性にスポットがあてられます。彼女の父親は大変な大酒飲みで全ての金をつぎこんでしまい、その結果家族は貧窮にあえいでいます。
 そうしたある日、朝から夫婦喧嘩を見ていた娘が、母がこれでは殺されると思い、なたを振り下ろして父を殺してしまうのです。
 15年の刑期*10をもう少しで終える時になって、ある女囚刑務所の所長になった男は、あまりにこの女性の健気な様子にうたれ、事情を調べ始めます。女囚刑務所の所長になった男は、あまりにこの女性の健気な様子にうたれ、事情を調べ始めます。
 そこへあらわれる彼女の妹たち二人は大変に幸せそうな様子にみえます。着ているものも以前だったらかんがえられもしないようなものを身につけられるまでになったのです。
 姉である女囚は自分がけっして悪いことをしたとは思っていないということを所長につげます。
 このあたりは森鴎外の『高瀬舟』をふと連想させるところです。しかし結末は鴎外の作品とは全く違うものとなりました。
 この作品には松本清張の現代を見抜く鋭い目が宿っています。短編には光るものが本当にたくさんあります。
一読を勧めたいです。

【読書】『女囚』著:松本清張 : びょうびょうほえる〜西村俊彦のblog
『女囚』
松本清張
発表 「新潮」昭和39年8月号「尊属」を(ボーガス注:単行本)『岸田劉生晩景』*11収録の際改題
 「法務事務官、馬場英吉は、ある県のある刑務所長に赴任した。」
 以前に女囚だけの刑務所で所長を務めていた馬場は今度もまた女囚だけの刑務所に移る。
 赴任の挨拶の際に見渡した服役者の中に、彼は熱心に自分の話を聞く女性を見つけ、興味を持ち始める。
 管理部長から彼女の事を聞き出す馬場。
 彼女の犯罪は父親殺し、情状酌量の余地の十分にある状況に思えた馬場は、どうしても彼女と直接話をしてみたくなる。
 「父を殺した事は全く後悔していない。私は母と妹を救ったのだ。」
 そう語る彼女の前に、馬場は刑罰について深く考える。
 ある日、面会にやってきた彼女の妹二人。
 姉に感謝の念を抱いているはずの彼女達の顔には、どことなく陰りがある。そして妹たちは語り始める…。
 森鴎外の『高瀬舟』を連想させつつ、そこからさらに一段踏み込んだ作品。
・収録書籍・
『憎悪の依頼』/松本清張著/昭和57年 新潮社(新潮文庫)

 で、小生この短編を読んだことがありまして、この話の続きです。姉は「妹たちも経済的に恵まれてるようだし、世間はあのまま私たち家族が父の暴力を受ければ良かったと言うんですか。私は父を殺したことを後悔してない」と所長に言う。
 この所長は真面目な善人でそれに「殺人は悪だ」とは言い返せず沈黙してしまうわけです。
 それどころか、「彼女を15年もムショに入れる必要があったのか」「出所したら幸せな生活を送ってほしい」「今度、妹が慰問に来たら、出所後の面倒を見るよう私からも頼んでみるか」「今、私は森鴎外高瀬舟』の同心のような気持ちだ」とすら思う訳です。
 で、その後、妹たちに会う。
 そこで妹たちから「姉を傷つけるからそんなこと言えないが、実は姉を恨んでる」「父親は酒の飲み過ぎがたたって殺される頃はかなり体を害していた。姉が殺さなくてもそのうち肝臓がんかなんかで死んだんじゃないか*12」「殴る蹴ると言っても母も私たちもなんとか我慢できるレベルだった。『ぶっ殺してやる』などと怒鳴ることはあっても、父も私たちを殺す気はなかったと思う。姉の行為は過剰反応だ*13」「今私たちは金持ちのいわゆる二号をしている。だから経済的には一応裕福だが、もちろんまともな結婚がしたい」「世間は冷たい。『あんなろくでなしの父親なら殺されても仕方がない。一般的な殺人と同一視できない』『お姉さんとあなた方は別人格だ』と口では言う。でも私たちと結婚してくれる男性はいない。世間はどんな事情があっても私たちのような人殺しの家族には冷たい。正直、姉の事件が、私たちが結婚できないことに影響してないとは考えられない。」「姉が出所してきたらどうやって扱ったらいいのか、今から悩んでる」と所長に語るわけです。でこれまた真面目な性格の所長は「お姉さんに対してそんなことはいうもんじゃないですよ」などとはいえず沈黙してしまう。
 当初、言うはずだった「出所後の世話を見てほしい」もとても言い出せなくなる。
 まあ、このあたり清張はやはり「鋭いな」と思います。まあこの話も落ちはある意味平凡です。途中から予想はつく。しかし、「なら我々凡人にこういう小説がかけるか」というとそこは「わかりやすく面白く書くスキル」はひとまず置くとしても「コロンブスの卵(言われると気づくが言われるまではなかなか気づけない)」ですよね。

 
【参考:高瀬舟について】

森鴎外「高瀬舟」を読んだ | 月のひかり★の部屋 - 楽天ブログ
 罪人の名は喜助と言う三十歳ぐらいの男。
 護送を命じられて一緒に舟に乗り込んだのは同心羽田庄兵衛であった。
 庄兵衛は弟殺しの喜助の様子を見ていると、不思議であった。
 如何にも神妙におとなしく月を仰ぎながら黙って口笛でも吹いて、鼻歌でも歌い出しそうな様子であったから。
「お前が今度、島へ送られるのは人をあやめたからという事だ。ついでにそのわけを聞かせてくれぬか」と。
「かしこまりました」と言って、喜助が小声で話し出した。
「私は小さい時に二親が時疫で亡くなりまして、弟と私は二人一緒にいて、助け合って働きました。その中に弟が病気で働かれなくなって、私一人に稼がせてはすまない、すまないと申しておりました。
 或る日、いつものように帰ってみますと、弟は布団の上に突っ伏して、周りは血だらけなのでございます。
 私はびっくりして訳を聞きますと、弟は真っ青な顔の、両方の頬から顎にかけて血に染まったのを挙げて、私を見ましたが、物を言うことが出来ませぬ。
 息を出す度に、ひゅうひゅうという音がいたすだけでした。
 ようよう物が言えるようになって「すまない。どうせなおりそうにない病気だから、早く死んで少しでも兄きに楽がさせたいと思ったのだが、喉笛を切っても、簡単には死ねない。この刃を旨く抜いてくれたら、己は死ねるだろうと思っている。どうぞ、手を貸して抜いてくれ」と言って、弟は私の顔をじっと見詰めています。
 『待っていてくれ、お医者を呼んで来るから』と私は申しましたが、弟は怨めしそうな目つきをして『医者が何になる、ああ苦しい、早く抜いてくれ、頼む』と言うのでございます。
 こんな時は不思議なもので、目が物を言います。
 弟の目は次第に険しくなって来て、とうとう敵の顔でも睨むような、憎々しい目になってしまいます。
 私は『仕方が無い、抜いてやるぞ』と申しました。
 すると、弟の目が変わって晴れやかに、さも嬉しそうになりました。
 私は剃刀の柄をしっかり握って、ずっと引きました。
 私は剃刀をそばに置いて、目を半分あいたまま、死んでいる弟の顔を見詰めていたのでございます」
 庄兵衛はこの話を聞いて、これがはたして、弟殺しというものだろうかという疑いが起こってきて、聞いてしまっても、その疑いを解くことが出来なかった。
 弟を苦から救ってやろうと思って命を絶った。それが罪だろうか。
 庄兵衛はいろいろに考えてみた末に、自分より上のものの判断に任すほかないという念が生じた。
 庄兵衛はお奉行様の判断を、その儘、自分の判断にしようと思ったのである。そうは思っても、まだどこやらに腑に落ちぬものが残っているので、何だかお奉行様に聞いてみたくてならなかった。

*1:まあ、Mukkeが俺に対して行った「ボーガスはチベットに冷たい」「中国シンパか」「それでも人間か」も要するにそういう話です。俺としては「思いあがってる被害者」ダライラマ一味に「中国に酷い目に遭わされた被害者です、と言えば、南京事件否定論櫻井よしこと付き合うことが許されると思ってるのか!。オウム麻原から一億円もらっても、公式に謝罪しないで、すっとぼけていいと思ってるのか!。ダライラマ一味はふざけんな!」といっただけで中国擁護などしてないのですが「ダライ狂信者・Mukke」にとっては「中国擁護」に見えたようです。なお、「日本社会にとって中国ビジネスって大事だよね、中国と敵対関係になんかなれないよね」という俺の発言も別に中国擁護ではなくただの「事実の指摘」にすぎません。

*2:それを否定する人間はどこにも居ません。「厳罰に懐疑的、否定的」は「適切に処罰しないこと」とは違います。

*3:まあ無期も仮出所の可能性がわずかながらですがありますが。

*4:表現が上の記事と微妙に違いますが。

*5:表現が上の記事と微妙に違いますが。

*6:まあ、あまりにも酷いとそういうこともありうるでしょうが。

*7:まあ「犯罪を擁護はしませんが」、故意犯だって「恵まれない環境が引き起こす犯罪(恵まれた環境なら犯罪に走らなかったかもしれない:例えば永山則夫)」「被害者の側に大きな非がある場合(例えば尊属殺重罰規定違憲判決が出た例の事件)」という面もあるので単純に当事者(犯罪加害者)の自業自得とは言えませんが。大体「ミステリドラマで平凡な人間が殺人を犯してる(例:松本清張)」のに「自分や家族は絶対に故意犯にはならない」と思える神経が俺には謎です。俺は「過失犯はともかく、多分、故意犯にはならない」と思いますが「何があろうと絶対にならない」と思える自信はありません。

*8:とはいえ例の「Mukke(長期休養中)」に「チベット差別者呼ばわりされるほど人権感覚が酷い」とは思ってませんが。むしろ「Mukkeの師匠」にあたるらしいI濱Y子(早稲田大学教授)の方が俺より人権感覚に欠けると思います。

*9:著書『再非行少年を見捨てるな:試験観察からの再生を目指して』(共著、2011年、現代人文社)、『少年司法における科学主義』(2012年、日本評論社)、『非行少年のためにつながろう!:少年事件における連携を考える』(2017年、現代人文社)

*10:この小説の設定では尊属殺重罰規定違憲判決はまだ出ていません。

*11:新潮文庫でも『岸田劉生晩景』という本が出ていますが、これには「女囚」は収録されていません。「女囚」は新潮文庫では『憎悪の依頼』に収録されています。なお、『岸田劉生晩景』は画家・岸田劉生をネタにした小説でミステリではありません。『テレビドラマや映画になったミステリの有名作品』だけでも『点と線』(1958年)、『ゼロの焦点』(1959年)、『砂の器』、『わるいやつら』(以上、1961年)、『球形の荒野』(1962年)、『けものみち』(1964年)、『黒革の手帳』(1980年)などと清張作品の数は膨大ですが、それ以外に『日本の黒い霧』(1960年)、『昭和史発掘』(1965~1972年)のようなノンフィクション、『或る「小倉日記」伝』(1952年)、『岸田劉生晩景』のような非ミステリ小説まで含めればその数は更に膨大になります(この点は『清張と同じ人気ミステリ作家』でも、ミステリ以外の作品がない乱歩や横溝との違いです)。清張(1909年12月生まれ、1992年8月死去、享年82歳)の小説家としての本格スタートが1953年(44歳)の直木賞受賞(『或る「小倉日記」伝』)で、ミステリ作家としての本格的スタートが1958年(49歳)の『点と線』発表で、作家としては遅咲きであることを考えれば、その作品の量はまさに怪物ですね。『神々の乱心』を週刊文春に連載中に死去し、これが「未完の遺作」になっています(ウィキペディア松本清張」参照)。なお『岸田劉生晩景』の内容については劉生7:松本清張『岸田劉生晩景』:yama's note:SSブログを紹介しておきます。

*12:というのはもちろん事実かどうかは疑問で「姉への恨みから出てくる都合のいい考え」であることくらいは、清張が描く刑務所長もバカではないので当然気づいています。なお、こうした言葉で分かるように妹たちが姉を恨む理由は決して「父親への愛」ではありません。妹たちも「父には憎悪の思いしか、今もない」「早く死んでほしいといつも思っていた」と明言しています。

*13:というのはもちろん事実かどうかは疑問で「姉への恨みから出てくる都合のいい考え」であることくらいは、清張が描く刑務所長もバカではないので当然気づいています。

「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう(2019年5/23分:黒坂真の巻)

黒坂真
‏ 日本共産党員ら左翼の皆さん*1は、憲法9条を生かした平和外交を、とよく主張しますがこれは中身がない。

 もちろん中身はありますね。
 「戦争で問題を解決しようとすると日本も相手国も甚大な人的、経済的被害が出るし、それで問題が解決するとは限らない。むしろお互いに恨みを募らせる結果になるだろう(例:戦前の日中戦争、太平洋戦争)。だから戦争ではなく外交で問題を解決しよう」つう話です。
 そもそも安倍ですら公然と「憲法の平和主義など無価値」「戦争で問題を解決して何が悪い」とは言っていません。
 少なくとも建前では安倍ですら「専守防衛」を否定しないわけです。
 そして米国ですらイランや北朝鮮相手にいきなり戦争を始めたりはしないわけです。
 あるいは「あえて言えば平和主義的な考えからEU(最初はECですが)はスタートした」わけです。「第一次大戦、第二次大戦のような独仏戦争など二度と起こしてはならない」という考えからEUはスタートした。「憲法九条の平和主義とイコールではもちろんない」ものの、黒坂が言うほど「世の中は戦争容認論で動いてる」訳では全くありません。

黒坂真
‏ 中国共産党の世界観では、明朝に朝貢していた沖縄は本来、中国領です。鄭和という宦官が率いた艦隊が寄港した地域はすべからく中国領、という話もあります。

 以前も黒坂はこんなデマ飛ばしていましたが、失笑するほかないですね。鄭和の寄港場所はウィキペディア鄭和」によれば「インド」「インドネシア」「スリランカ」「タイ」「ベトナム」「モルジブ」などですがこれらのどこが中国領なのか。いつ中国がこれらの国を中国領だと言ったのか。
 そもそも「朝貢」とは「植民地(宗主国の領土)と宗主国」ではない。あえていえば「親分・子分の関係」のようなもんです。
 あえて言えば「ワルシャワ条約機構リーダーのソ連と東欧諸国」「NATOリーダーの米国と西欧諸国」のような関係です。もちろん「東欧諸国はソ連の領土ではない」し「西欧諸国も米国の領土ではない」。
 なお、「形式的」ではありますが足利義満日明貿易は「朝貢形式」で行われていたので、黒坂の理屈なら「義満のせいで」沖縄どころか、日本全てが中国領になります。

*1:何も「憲法9条を生かした平和外交」と主張するのは左翼だけでなく河野洋平氏のようなハト派の保守もいますのでのっけからデマですね。

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2019年5/23分:巣くう会集会報告の巻)

http://www.sukuukai.jp/mailnews/item_6949.html

原口一博*1(国民民主党国対委員長拉致議連副会長、衆議院議員
 拉致問題はわが国だけの問題じゃないんです。全世界の問題であり、そして人権の問題です。

 きれい事に過ぎませんね。世界各国にとって拉致問題は「所詮他人事」です。


http://www.sukuukai.jp/mailnews/item_6967.html

増元照明(増元るみ子さん弟)
 私は2年前に、すべての国会議員にブルーリボンバッジを付けてくださいと申し上げました。自民党でも半分もいらっしゃらないんじゃないですか。
 立憲民主党の村上先生、党首が付けておられない党でどうされるんですか。
 原口先生の党は何人くらい付けていらっしゃいますか。竹内先生、公明党は一部の方々が付けていらっしゃいます。

 馬鹿馬鹿しい。そんなことに何の意味があるのか。

 最後にこの言葉を皆さんと共に考えてみたいんですが、「正道を踏み、国を以て斃るるの精神なくば、外国交際は全かるべからず。彼の強大に畏縮し、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、終に彼の制を受くるに至らん」。
 これは明治の元勲、西郷隆盛先生の言葉です。

 何が言いたいのかもっとわかりやすい言葉で言ったらどうなのか。まあ西郷はともかく、増元は「北朝鮮に軽侮されて悔しい」レベルのくだらない話でしょうが。

寺越昭男(寺越昭二さん長男)
 私は、実力行使という選択肢もちょっと使ってもらいたいと思っています。迷っている時に、核・ミサイル施設を撃つぞというような。

 非常識極まりないですね。

浜本七郎(浜本<地村>富貴恵さん兄、家族会副会長)
 金正恩が男であれば、無条件対話と言っているのですから会談に応じるのが当たり前だと私は思います。男であれば、です。

 「へえ、女であれば対話に応じなくていいんですか?」「女でもモリカケの安倍なんぞよりメルケル・ドイツ首相やメイ・英国首相の方がずっとましだと思いますけど?」と突っ込みたくなりますね。今時男尊女卑丸出しの珍発言が聴けるとは思いもしませんでした。
 しかし無条件対話なんて浜本は支持する気が本当にあるんですかね。
 そして本当に支持するのならば小泉訪朝で「たった5人しかかえってこなかった」と小泉氏を浜本ら家族会が罵倒したこととの整合性はどうなってるのか。
 「無条件対話支持」なら「北朝鮮拉致被害者を帰さなくてもひとまず対話には意味があったとして安倍訪朝を支持」つうことになるわけですが。
 まさか浜本は「拉致被害者を全員帰せという要求することは無条件対話に反しない」とでもいうのか。
 はたまた「小泉訪朝の頃と今と違うから、安倍訪朝で一人も帰ってこなくても問題ない」と強弁するのか。およそ浜本の脳みそが理解できません。

*1:鳩山、菅内閣総務相

今日の産経ニュース(2019年5月23日分)(追記あり)

シリアのイドリブ県で戦闘が激化するなか、政府軍が再び化学兵器攻撃か?(青山弘之) - 個人 - Yahoo!ニュース
 「何だかなあ(無力感)」ですね。というのは「アサド政権の毒ガス使用疑惑」の指摘は今回が初めてではないからです。
 過去においては「アサド側が使用した(反アサド派)」「いや使用してない。もし使用した者が居るなら我々以外だ(アサド)」で水掛け論となり、お互い「言っただけで終わり」、そしてしばらくするとまた「アサド政権の毒ガス使用疑惑が浮上」というパターンが何度も続いてますのでねえ。


【正論】人材育成に偉人教育の活用を 日本財団会長・笹川陽平 - 産経ニュース

 戦後の教育の場で、偉人の伝記などが教材として活用されるケースは驚くほど減った。戦後の占領政策連合国軍総司令部(GHQ)が、戦前の教育すべてを否定する教育政策を強引に推し進めた結果である。

 やれやれですね。GHQが偉人教育を否定したなんて事実はどこにもないでしょうよ。
 「征韓論西郷隆盛」「安重根に暗殺された元韓国統監・伊藤博文」「真珠湾攻撃山本五十六」のような下手に取り上げると外交問題になりかねない人物ならともかく「夏目漱石」だの「湯川秀樹」だの取り上げることに何の問題もないわけですから。さすが右翼フィクサー・笹川某(競艇利権の所有者)の息子だけのことはあると言うべきでしょうか。


小嶺容疑者写真、別人配信 時事通信がミス、フジテレビも使用 - 産経ニュース
 そもそも写真を出す必要があるのかどうかが問題でしょう。


【単刀直言】「共産党と組めるか」鷲尾英一郎衆院議員 野党を見限った理由(1/2ページ) - 産経ニュース
 確かに鷲尾*1が反共右翼なのは事実でしょうが、こんなことは自民入りを正当化できる理由には全くなりません。
 「非共産、非自民」の立場をとればいいだけですから。反共でも前原*2なんぞは今のところ自民入りしないわけですから。
 そして「共産党を含む共闘」と関係なく、つまり「立民や国民民主党が現在、公然と共産を敵視していたとしても」鷲尾は自民に入党したでしょう。「寄らば大樹の陰」という党利党略での自民入党でしかないからです。
 大体、共産党との共闘は「遅くとも岡田代表時代からの話」であってそれに文句があるならそのときに鷲尾は離党すればいい話です。
 大体、共産党との共闘内容は「脱原発」「安保法廃止」などであって別に共産色が強いわけでもない。それに対し「原発や安保法は必要だと民主党所属当時から思ってた」とはふざけるにもほどがあります。仮にも政治家がよくもそんな恥知らずなことが言えたもんです。
 「自民党に入ったのは選挙に勝つためだ。選挙が一番大事だ*3」とはさすがに公然とはいえず、政策云々で強弁するに当たり、単に「鷲尾の支持層(反共ウヨが多い?)」に受けがいいと鷲尾が思う話「共産云々」を鷲尾がしただけです。
 「都合が悪くなれば自民入り*4」する鷲尾や細野*5のような野郎の自民党批判などインチキだという話です。そもそも産経相手にこんなことを言っても鷲尾に共感してくれる人間は自民党支持層ですらどれほどいるか。多くの自民支持層は「共産党云々に関係なくお前は自民に入党したろう?」「共産との共闘に文句があるなら岡田*6代表時代にとっとと離党しろよ」などと鷲尾なんぞ見下してるでしょう。
 一方言うまでもなく野党支持層は鷲尾なんぞ評価しません。


【産経抄】5月23日 - 産経ニュース

 首相官邸のホームページの英語版では、安倍晋三首相の名前は、「Shinzo Abe」となっている。中国の習近平国家主席や韓国の文在寅大統領の表記のように、日本語の語順通り「姓+名」にできないのか。
 ▼なるほど、河野太郎外相の指摘はもっともである。柴山昌彦文科相とタッグを組んで、来年の東京五輪パラリンピックを機に、これまでの慣習を見直す腹づもりらしい。ローマ字にするとなぜ日本人の姓と名が入れ替わるのか。深く考えず、ボーッと生きてきた。チコちゃんに叱られそうだ。
 ▼英語教育史が専門の江利川春雄*7・和歌山大教授によると、幕末の開国時は日本式の「姓+名」が主流だった。明治中期に入り政府の欧化政策の下、知識人や政治家の間で欧米式の「名+姓」の表記が広まっていく。
 ▼英語が敵国語とされた先の戦争中でさえ、見直されることはなかった。昭和19年に刊行された準国定の中学の英語の教科書*8では、山本五十六は、Isoroku Yamamotoとなっている。敗戦後、ほぼすべての国民が英語を学ぶようになり、「国民の常識」となった。
 ▼実は19年前、文化庁の国語審議会は表記を日本式にするよう答申している。民族固有の言語や文化を尊重しようとする、当時の世界の風潮が背景にあった。答申がきっかけとなり、英語教科書の多くは「姓+名」の順番に変更した。
 ▼それでも、世の中に浸透しているとはとてもいえない。小欄も突然外国人に自己紹介する機会が訪れたら、名字を先に口にする自信はない。江利川さんに言わせれば、姓と名の転倒は、西洋に対する「精神の自己植民地化の遺物*9」である。日本人はいつになったら、その呪縛から逃れられるのか。

 長くなりますが全文引用しました。

・幕末の開国時は日本式の「姓+名」が主流だった。
・実は19年前、文化庁の国語審議会は表記を日本式にするよう答申している(ボーガス注:にもかかわらず文化庁すら今までそうしてこなかったというのも興味深い話です)。
・英語教科書の多くは「姓+名」の順番に変更した。

というのは無知で知りませんでしたが、それはさておき。
 「それ、本多勝一*10が確か、かなり昔(40年以上前)から言うとるがな(残念ながらググっても、それについて、いい記事がヒットしないのですが)」「本多さんが言うと無視して、河野や柴山が言うと絶賛とはお前らわかりやすいな、産経」ですね。
 ちなみに氏名か名氏、それが問題だ | inti-solのブログ - 楽天ブログでinti-sol氏も

・私自身は、外国語の中でも日本人の氏名は氏名の順にすべしという主張を、本多勝一の著作で知ったのですが、これは本多氏だけの主張ではなく、かなり広範囲に主張されているようで、国語審議会も、姓名をローマ字表記する際にも氏名の順にすることが望ましいという答申を2000年に出しています。
 当然のことだと私は思います。どう考えたって、日本語で話すときに「名氏」で名乗る人なんかいないんだから、「氏名」の順こそが日本の文化なのです。
・選択的夫婦別姓制反対派のように、私はそれをすべての日本人に押しつける気はまったくありませんけれど、少なくとも私自身は、もう長いこと自分の名前は、英語でもスペイン語でも「氏名」の順で名乗っています。

と書かれています(追記:その後、inti-sol氏はこの「日本人名の英語表記」の件についてこれは正しいし、私もそうしている | inti-solのブログ - 楽天ブログを書いています)。
 なお、

▼英語が敵国語とされた先の戦争中でさえ、見直されることはなかった。昭和19年に刊行された準国定の中学の英語の教科書では、山本五十六は、Isoroku Yamamotoとなっている。

については、「太平洋戦争開戦後、敗戦1年前」の昭和19年でも「準国定の中学の英語の教科書」というのが俺的に驚きですね。完全な英語追放など「英語教育の必要性の観点」から現実としてとても出来なかったわけです。

【参考】

東京新聞:ローマ字表記「姓・名」順で 文科相要請へ:政治(TOKYO Web)
 柴山昌彦文部科学相は21日の記者会見で、日本人の氏名をローマ字で表記する際、国内外で一般的とされる「名・姓」の順番ではなく、日本語表記と同様に「姓・名」の順にするよう政府機関や都道府県などに要請する考えを明らかにした。文化庁が近く通知する。
 菅義偉官房長官は会見で「これまでの慣例など考慮すべき要素が多々ある」と、慎重な対応が必要との認識を示した。
 文化庁の国語審議会は2000年に「言語や文化の多様性を意識し、生かしていくべきだ。ローマ字表記においても姓・名の順が望ましい」との答申を出した。文化庁は当時、政府機関や都道府県、国公私立大、新聞放送出版業界に対応を要請した。
 柴山氏は趣旨が共有されていないとした上で「改めて周知を図る」と強調した。文科省のホームページでも名・姓の順で表記された部分があり、今後は姓・名の順に変更する。
 河野太郎外相も会見で、日本人名のローマ字表記を名・姓の順から姓・名の順に変更するよう海外の報道機関に要請する考えを表明。中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席や韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領を姓・名の順に記している報道機関が多いとし「安倍晋三首相もABE・SHINZO*11と表記してもらうのが望ましい」と述べた。
 河野氏は3月、日本人名に関し、外務省の英語表記を姓・名順に変更する検討を表明した。

 まあ「目立ちたがり屋の河野らしい」ですが、「元号強要のように強要しない限り」悪いことではない気はします。

【追記】

ヘボン式の表記か訓令式にするかなど、問題はいろいろですね。

というコメントを頂きましたが、まあ人によってはその通りですね。
 例えば本多「勝一」氏などは訓令式だと「katuiti」、ヘボン式だと「katsuichi」に確かなります
 他にも「福島」香織→「hukusima(訓令式)」「fukushima(ヘボン式)」などと表記が変わります。もちろん訓令式ヘボン式で表記が全く変わらない場合もありますが(というか多分その方が多い)。
 なお、俺の記憶では確か本多氏は

ヘボンの様な外国人はともかく『サシスセソのうち、シだけshi』『タチツテトのうち、チだけchi、ツだけtsu』『ハヒフヘホのうちフだけfu』と書く意味が日本人にはない。
・むしろ『sプラス母音(サシスセソ)』『tプラス母音(タチツテト)』『hプラス母音(ハヒフヘホ)』と全て同じ書き方の訓令式の方が覚えやすい。

として「訓令式」支持です。

*1:野田内閣で農水大臣政務官

*2:鳩山内閣国交相菅内閣外相、野田内閣国家戦略担当相、民主党政調会長(野田代表時代)、民進党代表など歴任

*3:一方で自民党にとってもそれなりの選挙地盤がある鷲尾の入党は都合がいいわけです。

*4:細野の場合はまだ「自民入党含みの二階派入り」ですが。

*5:野田内閣環境相民主党幹事長(海江田代表時代)、政調会長岡田代表時代)、民進党代表代行(蓮舫代表時代)など歴任

*6:鳩山、菅内閣外相、民主党幹事長(菅代表時代)、野田内閣副総理・行革相、民主党代表代行(海江田代表時代)、民主党代表を歴任

*7:著書『近代日本の英語科教育史』(2006年、東信堂)、『日本人は英語をどう学んできたか:英語教育の社会文化史』(2008年、研究社)、『英語教育のポリティクス:競争から協同へ』(2009年、三友社出版)、『受験英語と日本人』(2011年、研究社)、『英語教科書は〈戦争〉をどう教えてきたか』(2015年、研究社)、『英語と日本軍:知られざる外国語教育史』(2016年、NHKブックス) など

*8:むしろ昭和19年でも「準国定の中学の英語の教科書」というのが俺的に驚きですね。完全な英語追放など「英語教育の必要性の観点」から現実としてとても出来なかったわけです。

*9:本多氏も全く同じ事を言っていたかと思います。つうか記憶が定かではないのですが、本多エッセイで「英語学者の江利川氏も私・本多と同意見だ」という形で江利川氏が紹介されていたかもしれません。

*10:著書『中学生からの作文技術』(朝日選書)、『新・アメリカ合州国』(朝日文芸文庫)、『アイヌ民族』、『アメリカ合州国』、『アラビア遊牧民』、『植村直己の冒険』、『NHK受信料拒否の論理』、『カナダ=エスキモー』、『きたぐにの動物たち』、『釧路湿原:日本環境の現在』、『検証・カンボジア大虐殺』、『50歳から再開した山歩き』、『子供たちの復讐』、『殺される側の論理』、『殺す側の論理』、『事実とは何か』、『実戦・日本語の作文技術』、『しゃがむ姿勢はカッコ悪いか?』、『憧憬のヒマラヤ』、『職業としてのジャーナリスト』、『先住民族アイヌの現在』、『戦場の村』、『そして我が祖国・日本』、『中国の旅』、『天皇の軍隊』、『南京への道』、『日本環境報告』、『新版・日本語の作文技術』、『ニューギニア高地人』、『冒険と日本人』、『北海道探検記』、『滅びゆくジャーナリズム』、『マスコミかジャーナリズムか』、『マゼランが来た』、『新版 山を考える』、『リーダーは何をしていたか』、『ルポルタージュの方法』(以上、朝日文庫)、『本多勝一戦争論』、『本多勝一の日本論:ロシア、アメリカとの関係を問う』(以上、新日本出版社)など

*11:これはヘボン式ですね。訓令式だと「sinzo」になります。