今日の中国ニュース(2022年1月15日分)

台湾クライシス 有事の可能性はどこまで高まっているのか?:時事ドットコム(2022年1月14日掲載)(時事通信外信部デスク・前中国総局特派員 北條稔)
 中国が「台湾が独立宣言しない限り侵攻しない」としている以上、侵攻の可能性は「台湾が独立宣言しない限り」ほとんどない。
 国際公約を公然と破れば国際的非難は避けられないからです。
 では「台湾が独立宣言すれば速攻で侵攻するか?」といえば「そうはならない」と俺は見ます。
 「戦争による中国軍の被害」を考えれば中国も「戦争は回避したい」。そこで「タイムリミットを設定し、宣言撤回を求める」とみます。とはいえ撤回しなければ中国にもメンツがあるので侵攻するかもしれない。いずれにせよ「台湾がどう動くか」で話は決まることであり、「台湾の動きに関係なく中国が侵攻する」と言うことはおよそ考えられない。
 しかし今回、登場人物は

戦略学者の奥山真司氏*1

という「いかにも怪しげな人物」ですからね。
 「大学教員」「シンクタンク研究員」などの肩書きがないあたり「自称学者」「なんちゃって学者」の「反中国ウヨではないか?」「中国の侵攻の危機ガー、とデマ放言ではないか?」との疑念を感じます。実際、この駄文を読んでの俺の感想は「何だ、この反中国のデマ屋は?」ですね。

◆北條記者
 22年に2期目の任期が終わる習氏は27年までの3期目に続き、少なくとも35年ごろまで最高指導者であり続けようとしているようだ。しかし、習氏にそれほど大きな業績があるわけではない。

 奥山がどうこう以前に北條氏の脳みそが狂ってます。これが時事通信の幹部だというのだから呆れます。
 まず第一に「習氏にそれほど大きな業績があるわけではない」という点で「はあ?」ですね。
 「一帯一路(2013年)」、「AIIBの設立(2014年)」、「香港国家安全維持法*2(2020年)」、「2022年北京冬季五輪の開催」などは十分「大きな業績」ではないのか。
 第二に百歩譲って「台湾統一」という業績を習氏があげたいと思ったとしてそれが何で「リスキーな軍事侵攻」なのか。まずはEUのような経済統合あたりを目指すのではないか。
 第三に「国家主席3期目に突入ではないか」は「今年で任期が切れる」のでいいとして、現時点で「35年(つまり今から13年後)ごろまで最高指導者であり続けようとしている」と言う根拠は一体何なのか。

◆奥山
 日本には「健全な中国警戒論」を語る人が少ない。

 吹き出しました。浅井基文氏なども批判していますが「中国の軍事的脅威論=不健全(当然、奥山や北條氏は不健全)」です。
 まあ、北條氏はともかく、奥山の場合はクライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』(山岡鉄秀との共訳、2020年、飛鳥新社)という本がある時点で論外ですが。山岡と付き合うような男がよくもまあ「健全な中国警戒論」なんて言えたもんです。
 それはともかく、中国にとって国際社会の批判を受けるリスクを冒してまで「台湾に軍事侵攻」するメリットはないでしょう。
 浅井基文氏なども指摘していますが「馬英九総統時代(既にこの時点で習近平氏が国家主席)」はここまで中台関係は悪くなかった。「中台関係を悪くしたのは蔡英文である」という事実を故意に無視するのは不当にもほどがある。
 香港、ウイグルチベットは全て「実効支配する国内問題」であって、実効支配してない「台湾」と同一視できる話ではない。
 中国の脅威は軍事ではなく「発展する中国の科学技術と経済」でしょう。日本政府が科学技術予算を減らし続ける中、中国の潤沢な科学予算は脅威と言っていいでしょう。しかし奥山や北條氏のような「軍事的脅威ガー」連中はそうした「発展する科学技術と経済」の脅威にはまず目を向けません。中国はむしろ「日本が軍拡の口実に我が国を使ってることは不愉快だし、日本の軍事力は勿論脅威だ。しかしその結果、日本の科学予算が減ってることは我が国にとってありがたい」と思ってるのではないか。

 中国の軍事的動向を論じるときに、感情的*3になって人種差別的な言い方までする人*4がいる。それでは多くの人に真面目に受け止めてもらえない。

 「差別的な物言いガー」つう面がないとは言いませんが、そもそも「中国の台湾侵攻ガー」などという主張自体が「真面目に受け止める必要の無い与太」でしかありません。

 中国に対抗するのであれば、ロシアを味方にした方が良い。

 吹き出しました。「ロシアとの間にも北方領土問題(日本)、ウクライナ問題(欧米)という問題」があることは奥山の脳みそから何故か完全に抜けてるようです。

 今回話を聞いた3人の専門家はいずれも米軍が介入することを前提に考えれば、「中国軍は力量不足」であり、大規模上陸作戦が起きる可能性は低いという認識だ。ただ、急速に中国軍の装備が強化されており、台湾有事を前提とした準備が日本政府には必要だと訴えている。

 つまり3人とも「頭がおかしい反中国右翼」ということですね。そんなウヨを評価する北條氏や「北條氏を幹部とする時事通信」も「頭がおかしい反中国右翼」ということです(とはいえそんな彼らですら現時点において「中国は米国に勝利できる」とは言わないわけですが)。
 中国が「台湾が独立宣言しない限り侵攻しない」としているのに何でそういう理解になるのか。勿論中国も「台湾が独立宣言しない限り侵攻しない」と言う立場でも「是非はともかく」、軍備について一定の「更新」はするでしょう。
 極端な話、台湾の軍事力が中国を大幅に上回ってしまえば*5、「台湾が独立宣言したら侵攻もあり得る」といっても台湾側が「お前の貧弱な軍事力でそんなことがやれるものならやってみろ」と居直る危険性があるからです。そうした居直りを防ぐためには「一定の更新はせざるを得ない」。しかしそれは当然ながら「侵攻がありうるというのはただのはったりではない」というアピールに過ぎず、「中国から積極的に侵攻することがあり得る」つう話ではない。

 岸田文雄政権に「将来起こるかもしれない危機*6」に警鐘を鳴らし、国民に準備を呼び掛ける覚悟はあるのだろうか。

 おいおいですね。「時事通信の北條氏」は一体国民に「どんな準備や覚悟」を呼びかける気なのか。岸田がどうこう以前に「北條氏」が考える「覚悟や準備」をまず言ってみろと言う話です。しかし「産経の阿比留や古森並に言ってることが極右的で常軌を逸しています」ね。時事通信って昔からこんなキチガイだったんでしょうか?。まあ確かに「田久保忠衛日本会議会長、国基研副理事長)」や「田崎スシローこと田﨑史郎」、「産経文化人の名越健郎や屋山太郎」は「時事通信出身」ですが。


中国、円借款「内々に解除」打診 天安門後に日本財界人に(外交文書公開): 日本経済新聞2021.12.23

 中国の李鵬*7首相が天安門事件の約5カ月後、民主化弾圧を理由に中国への第3次円借款供与を事実上凍結していた日本政府への対応策として、国際社会の目に付かないよう内々に凍結解除への話し合いを進められないかと日本の財界人に持ち掛けていた。23日公開の外交文書で分かった。
 李氏が水面下調整を打診したのは1989年11月。斎藤英四郎*8経団連会長を最高顧問とする日中経済協会訪中代表団との会談で「公表せず、作業を少しずつ始めたらどうか」と呼び掛けた。
 帰国後、(ボーガス注:日中経済協会訪中代表団は、海部内閣の)中山太郎外相に「今(ボーガス注:凍結解除に)動けば将来10倍、100倍得るものがあろう」と報告した。
 翌90年7月の先進国首脳会議(ヒューストン・サミット)で、欧米に先駆ける形で海部俊樹首相が供与方針を表明した。同年11月、凍結解除に踏み切った。

 少し古い記事ですが紹介しておきます。予想の範囲内ですね。「中国に制裁してれば良かった」云々という産経らウヨですが「日本財界は勿論そういう立場ではなかった」わけです。そして日本財界から献金を受ける自民はその要望に応えたわけです。


【産経抄】1月15日 - 産経ニュース

 海部氏*9民主党政権時代の平成22年に出した回顧録『政治とカネ*10』を読み返すと、生々しい筆致に妙味を覚える。
 極めつきは小沢氏*11に対する手厳しさである。
「物事がまとまりかけると、自分の存在価値が低くなるから、つぶす*12」「彼が、日本社会全体を傷つけている罪は海より深い*13」。
 小沢氏を中心とする民主党政権が、脱アメリカ親アジア*14を強調することに警鐘を鳴らす。

 一時「自民を離党し新進党党首に就任した海部氏(なお、幹事長が小沢氏)」もこの本が出たとき(平成22年)には「自民党に復党」してました。一時は自民を離党し、小沢氏と行動を共にしたものの、後に自民に復党した人間としては例えば二階*15元幹事長がいますが、海部氏もその口です。そんな人間が「自民復党後」に「民主党幹事長(当時)」の小沢氏に悪口したところで「今は自民に復党したから、民主党幹部の小沢氏に悪口してるだけ」ではないのか。公平な小沢批判といえるか、疑問符がつきます。
 それにしても「海部追悼の口実」で「小沢氏に悪口」とは産経の小沢嫌いも常軌を逸していますね。そんなことより「海部氏の政治家としての業績」について論じたらどうなのか。
 それにしても「対中国ODAを再開したのは首相時代の海部氏」なので「海部のせいで、中国が経済大国になった!」「海部が対中国ODA再開で日本社会全体を傷つけている罪は海より深い。海部が死んだところでその罪は消えない。我々産経は海部の犯した罪『対中国ODA再開』を、宮沢*16の犯した罪『天皇訪中』とともに今後も絶対に許さない」「岸田*17首相が海部と同じ『親中国』という過ちを犯すことは辞めてほしい」などと海部氏に悪口するかと思いきや意外です。「小沢訪中団を許さない!」だそうです。
 産経は、海部氏について「対中国ODA再開で悪いのは海部ではない。当時の幹事長・小沢と『小沢の親分である竹下*18元首相や金丸*19元副総理』だ。小沢たちに『中国へのODAを再開しろ』と言われて政権基盤の弱かった海部は渋々従った」とでもかばう気なのか?。
 まあ、小沢氏らの日頃の言動からしてそういう働きかけがあったとしてもおかしくないでしょうが、だからといって「海部は悪くない」というのは無理がありすぎです。

*1:著書に、『地政学アメリカの世界戦略地図』(2004年、五月書房)、『“悪の論理”で世界は動く!:日本属国化を狙う中国、捨てる米国』(2010年、フォレスト出版)、翻訳にエドワード・ルトワック自滅する中国』(2013年、芙蓉書房出版)、『中国4.0:暴発する中華帝国』(2016年、文春新書)、『戦争にチャンスを与えよ』(2017年、文春新書)、『ラストエンペラー習近平』(2021年、文春新書)、クライブ・ハミルトン『目に見えぬ侵略:中国のオーストラリア支配計画』(山岡鉄秀との共訳、2020年、飛鳥新社)、『見えない手:中国共産党は世界をどう作り変えるか』(2020年、飛鳥新社)、ダンビサ・モヨ 『すべての富を中国が独り占めする』(2013年、ビジネス社)、ロバート・D・カプラン『南シナ海が“中国海”になる日:中国海洋覇権の野望』(2016年、講談社+α文庫)

*2:一応、お断りしておきますが、俺がああした「言論抑圧を支持する」と言う意味ではなく「香港の反中国政府運動を押さえ込むことは重要な業績」という中国の長年の立場からすれば「大きな業績に当たるだろう」という意味です。

*3:「感情的」と表現するあたり奥山は語るに落ちています。どうみても「感情的なのではなくがちの差別主義者」でしょうに。

*4:といいながら「櫻井よしこ(国基研理事長)、田久保忠衛日本会議会長、国基研副理事長)などの具体的な人物名」や「人種差別的な言い方の具体例」が出せない時点で奥山は語るに落ちています。要するに本気で桜井などウヨを批判する気などないのでしょう。大体、山岡鉄秀と付き合いがある人間がよくも言ったもんです。

*5:現実問題そう言うことはないでしょうが。

*6:台湾有事のことか?

*7:電力工業大臣、副首相(国家教育委員会主任兼務)、首相、全人代委員長など歴任

*8:元・新日鉄社長

*9:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相を経て首相。首相退任後、一時、自民を離党し新進党党首を務めたが、後に自民に復党

*10:新潮新書

*11:中曽根内閣自治相・国家公安委員長自民党幹事長(海部総裁時代)、新生党代表幹事、新進党幹事長(海部党首時代)、新進党党首、自由党党首、民主党幹事長など歴任

*12:海部氏がまとめようとした話を「その、まとめ方では小沢氏の考えに合わない(小沢氏の考える国益自民党の利益、小沢氏個人の私的利益にあわない)」つうことはありえても「まとまること自体が自分の価値を下げるから潰す」なんてことは小沢氏もしないでしょう。

*13:その言葉に一番該当するのは、小沢氏よりも「モリカケ、桜の腐敗政治家」安倍でしょう。

*14:いわゆる小沢訪中団 - Wikipediaのことか?

*15:小渕、森内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相自民党総務会長、幹事長(第二次安倍総裁時代)などを歴任

*16:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相等を経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相

*17:第一次安倍、福田内閣沖縄・北方等担当相、第二次、第三次安倍内閣外相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)などを経て首相

*18:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相

*19:田中内閣建設相、三木内閣国土庁長官福田内閣防衛庁長官自民党国対委員長(大平総裁時代)、総務会長、幹事長(中曽根総裁時代)、中曽根内閣副総理、自民党副総裁(宮沢総裁時代)など歴任

珍右翼・黒坂真に突っ込む(2022年1月15日分)

◆黒坂のツイート

黒坂真
 不破哲三「私の戦後60年」(新潮社刊行、p215)によれば、昭和63年3月に橋本敦参議院議員横田めぐみさんの件を国会で取り上げた事になっています。これは不破さんの宣伝にすぎません。横田さんの拉致が明らかになってきたのは平成9年1月下旬ですから。

 小生も「私の戦後60年」の初版を持ってるので確認しましたが、最初読んだときはうかつにも気づきませんでしたが確かにそう書かれています(その後、増刷の際に、訂正された可能性がありますが)。そしてこれは「いつもの黒坂のデマ」とは違い、確かに黒坂の言うように「事実誤認」だろうと思います(1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)参照)。新潮社の校正はなかったのか、不破氏が執筆に当たり、党職員に校正をさせなかったのかと疑問に思いますが、まあ、黒坂が必死に印象操作するような「故意のデマ」ではなく事実誤認でしょう。そんなデマを故意に飛ばす必要性はどこにもありませんので(むしろ「故意のデマ」常習なのは「南京事件否定論」「河野談話否定論」などの黒坂らウヨの方です)。
 黒坂以外こんなことで不破氏を非難しない*1のは1)「ただの勘違い」で説明がつく話だし、2)橋本氏が「李恩恵問題」「3件のアベック失踪」を質問し、宇野外相、梶山国家公安委員長に「北朝鮮拉致疑惑」を認めさせた功績という「不破氏の話の本筋」には何ら影響しないからです。
 なお、

1997年6月5日/参議院法務委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)
◆橋本敦君
 いわゆる日本人拉致事件の問題でありますが、私はもう十年も前にこの問題について予算委員会で質問をさせていただきました。当時の国家公安委員長、今の梶山官房長官は、昭和五十三年以来一連のアベック行方不明事件、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます、解明が大変困難ではあっても、事態の重大性にかんがみて、今後とも真相究明に全力を尽くしますとおっしゃっていただきました。自来、長い年月がたちました。との問題について家族の人たちは、拉致された子供たちのことも気にしながら、声を上げずに辛抱してまいりました。しかし、今日になってもその音さたが、政府の責任で解明されるという方向に進まない、そういう気持ちの中で苦慮しておられましたが、たまたまその中で、御存じのように横田めぐみさんの事件が新たに問題になって、これが明らかになってまいりました。そこで、北朝鮮に拉致された人々の家族が三月二十五日に家族会を結成されまして、新聞、テレビでも大きく報道されたところであります。
 この横田めぐみさんの情報が入りまして、いち早くお父さんに御連絡したのは私の部屋からでございましたけれども、「文芸春秋」でお父さんはそのときのことをおっしゃって、娘が姿を消して二十年、「初めて耳にした娘の消息に、私の身体はショックと驚きで震えました。」と、「議員会館のある永田町に向かう途中、次第に「娘は生きていた」という喜びが湧き上がってきました。」、そして、「一刻も早くめぐみを救出できるなら自分の命さえ惜しいとは思いません。代われるものなら代わってやりたいと思うのは、子を持つ親なら誰でも同じではないでしょうか。」と、こうおっしゃっていますが、まさに家族の皆さんはそうだと思います。
 警察庁に伺います。これまで北朝鮮の拉致と見られる、認定された事件の件数と人数はどうなっておりますか。
◆説明員(米村敏朗君*2
 お答えいたします。
 私どもの方でこれまで北朝鮮による拉致の疑いのある事件と判断しておりますのは七件、十人でございます。なお、これ以外に未遂であったと思われるものが一件、二人であると判断しております。
◆橋本敦君
 昨日も池田*3外務大臣は外務委員会で、省庁間の連携を密にしていかないといけないので、各省の協議を密にして早急に相談を進めていきたいと答弁なさったことが報道されました。
(中略)
 そこで、この問題で最後に法務大臣にお願いしたいんですが、池田外務大臣も御答弁がありましたが、各関係省庁の連絡ということになりますと、人権を預かる法務大臣も大事なその中のお一人でございます。法務大臣として、警察庁あるいは外務大臣、あるいは国家公安委員長、あるいは官房長官等とこの問題について御協議をぜひ進めていただきまして、適切な対策なり方法なりを見出していただきますように、連絡体制の強化、対策本部でも結構でございますが、一段の努力をぜひ法務大臣に私はお願いして、この件の質問は終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
国務大臣(松浦功君*4
 委員御指摘のとおり、大変重要な問題でございます。関係機関と十分に連絡をとって、いかなる方法が最も効果的であるかということについて前向きに検討を進めていく必要があるんではないかと思っております。最大限の努力をお約束申し上げます。
◆橋本敦君
 ありがとうございます。ぜひお願いしたいと思います。

ということで、横田めぐみさん拉致疑惑が浮上してからの橋本議員の質問(1988年の李恩恵質問とは、別の1997年の質問)では彼女について触れています。
 不破氏はおそらく「1989年の質問(宇野*5外相、梶山*6国家公安委員長に「北朝鮮拉致疑惑」を認めさせた、ただし、安明進証言以前のためめぐみさんには触れず)」「1997年の質問(橋本内閣に『1988年の梶山国家公安委員長答弁』は今どうなってるのかと問いただす。安明進証言以前のためめぐみさんに触れる)」をごちゃ混ぜにしてしまったのではないか。
 黒坂も「早い段階での橋本質問を評価する」のではなく、不破氏のただの勘違いに因縁とは呆れたバカです。
 なお、不破氏は著書において「1988年の橋本質問」で触れた失踪として他に「3件のアベック失踪事件(新潟の蓮池夫妻、福井の地村夫妻、鹿児島の市川修一氏と増元るみ子氏)」を取り上げています。これらは勘違いである「めぐみさん」云々と違い全て、「1988年の橋本質問」で触れられており、北朝鮮も小泉訪朝時に拉致を認めています。また、不破著書では触れられていませんが「1988年の橋本質問」では「李恩恵疑惑(田口八重子氏と推定される)」「富山のアベック拉致未遂」も取り上げられています。

*1:ウヨですらこんな非難をするのは黒坂ぐらいではないか。

*2:警視庁公安部長、警察庁警備局長、警視総監など歴任

*3:宇野内閣総務庁長官、海部内閣防衛庁長官、橋本内閣外相、自民党政調会長(小渕総裁時代)、総務会長(森総裁時代)など歴任

*4:自治事務次官。橋本内閣で法相

*5:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相

*6:竹下内閣自治相・国家公安委員長、宇野内閣通産相、海部内閣法相、自民党幹事長(宮沢総裁時代)、橋本内閣官房長官など歴任

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2022年1/15日分:荒木和博の巻)

「『北朝鮮に行かないか』と誘われたことがありますねん」【調査会NEWS3552】(R4.1.16): 荒木和博BLOG特定失踪者問題調査会常任顧問・岡田和典)

 先ほど、地域の「阪神大震災慰霊の集い」に出席し戻ってきました。私が住む神戸市灘区は、JRが最後まで通じなかった程の大きな被害のあった所です。
 式に参列しておりましたら、「岡田さん、私40年ほど前ご近所さんから『北朝鮮に行かないか』と誘われたことがありますねん」と話しかけられました。私が住む所から道一本挟んだ隣町の世話役の方です。

 仮にそれが事実*1だとして、かつそれが「単なる観光旅行のお誘い」ではなく「拉致未遂」だとしてもそんなことが「拉致被害者帰国」と何の関係があるのか。全く馬鹿馬鹿しい。


鉄道模型レイアウトの話(R4.1.16): 荒木和博BLOG
 4分30秒の動画です。タイトルと説明文で分かるように、荒木が土日にやる鉄道趣味話(今回は鉄道模型ジオラマ)であって、拉致問題は全く関係ない。しかも「鉄道模型ジオラマが好きだ。ただし、いい加減な性格ので金も時間もかけずに手抜きで作っている」「こだわればいくらでも金と時間がかかるが、こだわらなければ実はそんなに時間と金はかからない(まあ、ほとんどの趣味はそうでしょうが)」というだけの「内容に乏しい話」です。「鉄道模型ジオラマ」に興味の無い俺には「全く無価値な話」ですが果たしてジオラマファンにとっても面白い内容といえるのかどうか。


1月18日にトークライブをやります【調査会NEWS3551】(R4.1.14) : 荒木和博BLOG
 「1/18のトークライブ」について荒木が報告したら突っ込む予定です。「過去のトークライブと同様」拉致解決と関係ない馬鹿話しかしないでしょうが。
 それにしても

 しばらくやっていなかった事務所でのトークライブですが、予定されていた出張が(ボーガス注:コロナのために?)延期になったため来週18日火曜日正午から行います。

というのがデタラメすぎます。「いついつやります」と言って、最低でも1週間前くらいから、参加を呼びかけるべき所「暇になったから急遽やります」で、「4日前」にいきなり広報。しかも「平日の昼間」というのだから「参加者を増やす気」は明らかにありません。
 おそらく参加者は「いつも固定メンバー(荒木のウヨ仲間)」なのでしょう。


「捜査調査に支障をきたすおそれがありますので答弁は差し控えさせていただきます」(R4.1.15): 荒木和博BLOG
 荒木には、佐藤勝巳(当時、救う会会長)が多額の使途不明金を出したあげく、「救う会の資金を何に使ったのか?」という「救う会内部のアンチ佐藤派」の質問に

脱北者からの情報収集に使った。今後の情報収拾に支障をきたすおそれがありますので詳しい説明は差し控えさせていただきます。不正な私的流用などしていないので信じてほしい。

と居直ったあげく、「まともな説明になってない」と非難され、「会長を解任されたこと(この時、佐藤の取り巻きと見なされた荒木も救う会事務局長を事実上、解任)」を今、どう思うか聞きたくなりますが、それはさておき。
 6分50秒の動画です。呆れて二の句が継げません。
 というのも、この動画は荒木が「特定失踪者を北朝鮮拉致と認めない」警察に悪口してるだけだからです。そんなことが拉致の解決と何の関係があるのか。そもそも国内で40人も発見されており、そのほとんどが「自発的失踪」で「犯罪者被害の場合も北朝鮮と全く関係ない(例:足立区女性教師殺人事件 - Wikipedia)」特定失踪者のどこが北朝鮮拉致なのか。
 「曽我ひとみさん(政府認定拉致ではなかった)」の存在など「荒木ら救う会のデタラメな特定失踪者認定」を正当化できる話ではない。
 警察の方も荒木が「山本美保さんDNA鑑定捏造」などという非常識なデマ(荒木『山本美保さん失踪事件の謎を追う:拉致問題の闇』(2012年、草思社))で山梨県警を誹謗したあげく「県警の鑑定捏造は、警察庁の命令だと思う」と警察庁まで誹謗したことで荒木については内心では「憎悪や敵意」といった「負の感情しかない」でしょう。
 まともな警察批判ならともかく警察をデマ中傷して恥じないというのだから、荒木のバカさには心底呆れます。
 正直、家族会に見捨てられれば、荒木はいつ警察によって「山梨県警への誹謗」を理由に「名誉毀損業務妨害」で逮捕されてもおかしくないでしょう。
 そんなデマ屋の荒木と付き合い続け、拉致を風化させる「横田早紀江ら家族会」のバカさにも呆れますが。
 家族会が本気で拉致を解決したいならまずは荒木(特定失踪者問題調査会代表、予備役ブルーリボンの会代表、元救う会事務局長)、島田(救う会副会長)、西岡(救う会会長)ら救う会人脈と縁切りし、蓮池透氏と和解すべきです。おそらく「メンツにこだわる家族会」はそれができないのでしょうが。
 しかし荒木みたいなクズが「党本部職員」だったのだから民社党が消滅するのも当然と言うべきでしょう。

*1:「特定失踪者などと言うデマを垂れ流すデマ屋」が岡田なので、この話、最初から「岡田のデマの可能性」もあります。そもそもなんで「阪神大震災慰霊の集い」でそんな話をする必要があるのか。

新刊紹介:「歴史評論」2022年2月号

 小生が何とか紹介できるもののみ紹介していきます。正直、俺にとって内容が十分には理解できず、いい加減な紹介しか出来ない部分が多いですが。
◆特集『いま、「ワシントン体制」を考える』
【前振り】
 「ワシントン体制」とは何かというと

◆1922年のワシントン会議でのワシントン海軍軍縮条約 - Wikipedia
締結から1936年の条約失効(日本が脱退した)までの期間、あるいはワシントン海軍軍縮条約と同様の軍縮条約であるロンドン海軍軍縮条約が失効(日本が脱退)した1938年までの期間

を示す言葉です。
 ワシントン海軍軍縮条約の参加国は「英米日仏伊」で、ロンドン海軍軍縮条約の参加国は「英米日」でした。つまりワシントン体制とは「英米日の協調体制」を意味しており、その終了は「英米日の対立激化」を意味していました。その結果、日本は1941年に英米相手の戦争に突入するわけです。
 なお、ワシントン会議では四か国条約(米英日仏)が締結され日英同盟が失効しました。また九か国条約(アメリカ、イギリス、オランダ、イタリア、フランス、ベルギー、ポルトガル、日本、中華民国)が結ばれ、中国が日本の侵略を「九か国条約違反」として非難する根拠の一つになります。
 また、ロンドン海軍軍縮条約を巡っては

ロンドン海軍軍縮会議 - Wikipedia
 海軍内部では条約に賛成する「条約派加藤友三郎、第2次山本内閣、加藤高明、第1次若槻、濱口内閣海相を務めた財部彪、連合艦隊司令長官軍令部長を務めた谷口尚真など)」とこれに反対する「艦隊派軍令部総長を務めた伏見宮博恭王、海軍軍令部長を務めた加藤寛治など)」という対立構造が生まれた。
 艦隊派同様に条約締結に反対する野党・立憲政友会犬養毅*1鳩山一郎*2らや、伊東巳代治*3や金子堅太郎*4などの枢密顧問官は、大日本帝国憲法第11条の「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」(統帥大権)を盾に、政府が統帥権事項である兵力量(軍政権)を天皇(=統帥部)の承諾無しに決めたのは憲法違反だとする、いわゆる「統帥権干犯問題」を提起した。
 濱口内閣は与党・民政党衆議院の多数を占めていたことを背景に、条約批准にこぎつけることができたが、この時に野党・立憲政友会が与党攻撃のために統帥権を持ちだしたことにより、統帥権独立を口実とした「軍部の暴走」や右翼テロが助長された。

として対立が発生、それは結果として「日本の右傾化」を助長することになります。
【前振り終わり】

軍縮下における海軍と地域社会:海軍志願兵募集活動を中心として(木村美幸*5
(内容紹介)
 ワシントン海軍軍縮条約締結(1922年)によって「海軍軍人が大幅に削減される」というイメージが広まり、海軍志願兵が減ったため、海軍は「そのようなことはない」という宣伝活動に努めたが目立った成果は得られなかった(なお、1920年のいわゆる「戦後恐慌」は1927年の昭和金融恐慌*6、1929年の昭和恐慌と比較すると、被害は小規模にとどまり、1922年時点においては、もはや海軍志願兵を増やす効果を持たなかった)。
 1927年以降、海軍志願兵が増加するが、それは「宣伝の成果」というよりも1927年の昭和金融恐慌、1929年の昭和恐慌の影響(安定した職業としての軍人志願)と見なすべきである。

【参考:1920年の戦後恐慌】

山本唯三郎 - Wikipedia
 1873~1927年。第一次世界大戦時の大戦景気で成功した「船成金」の一人。朝鮮半島で大規模な虎狩りを催して「虎大尽」とあだ名されるなど、莫大な財産を豪快に使ったエピソードで知られるが、1920年の戦後恐慌で財産のほとんどを失った。
 1914年に第一次世界大戦が勃発すると、船舶需要の急増を見越して船舶輸送業を強化。購入あるいは傭船した20隻以上の船を欧州航路などに投入し、巨万の富を築いた。山本は大戦景気で成功した典型的な船成金であり、最盛期の資産は約4千万円と噂された。
 1920年に戦後恐慌の波が直撃し、船舶需要が激減する中で、経営は行き詰った。「池上御殿」と言われた4万7000坪の自宅を手放したのをはじめ、山本はほとんどの財産を失い、わびしい生活を送ったという。1927年(昭和2年)、胃痙攣のために自宅で急死(54歳没)。
◆エピソード
 内田信也*7(内田汽船)、山下亀三郎(山下汽船)など船成金は他にもあったが、山本の豪遊ぶりは突出しており、「捨てるようにカネを使った」という。もっとも、『瀬戸内の経済人』を記した赤井克己は、「百円札に火をつけた」とされる件も含め、「船成金神話」がすべて山本の行動とされている嫌いがある、と述べている。
◆虎大尽
 1917年(大正6年)に朝鮮半島で大規模な虎狩りを行ったことが有名である。
 虎狩り終了後、まず京城の朝鮮ホテルで、山縣伊三郎*8朝鮮総督府政務総監らを招き、虎などの獲物の試食会を行い、更に東京に到着後、帝国ホテルに清浦奎吾*9枢密院議長、寺内内閣の田健治郎*10逓信大臣、仲小路廉*11農商務大臣、渋沢栄一大倉財閥創設者・大倉喜八郎ら200余名を招き、大々的な虎肉試食会を行った。しかし肝心の虎肉はトマトケチャップでマリネにして提供されたが、試食に耐えられるものではなかったという。
 山本はこの虎狩りで世間から虎大尽と呼ばれるようになった。
 山本は朝鮮虎(アムールトラ)2頭の標本(剥製)を皇太子(後の昭和天皇)と同志社に寄付した。
◆佐竹本三十六歌仙絵巻の購入
 1917年(大正6年)、旧秋田藩主・佐竹侯爵家が手放した鎌倉時代の絵巻物『佐竹本三十六歌仙絵巻』を購入した。しかし、第一次世界大戦後の不況を受け、早くも1919年(大正8年)には売りに出されることになった。しかしあまりの高額(総額37万6000円)のために一括しての買い手がつかず、三十六歌仙一人一人が切り売りされることになった。
◆母校・同志社への寄付
 同志社大学の設立に際して、設立委員の一人となり、5000円の寄付をした(村井貞之助の1万円に次いで2位)。
 また、新図書館建設費用として8万円を寄付した(当初は6万円を寄付したが、工事費が不足したため更に追加で2万円を寄付した)。
岡山市立図書館の寄付
 1916年(大正5年)に設立が認可された岡山市立岡山図書館(現在の岡山市立中央図書館)は、山本が図書館建設資金の寄付を申し出たことから生まれた施設である。山本はその工費・施設費1万8000円を寄付した。


アメリカとワシントン体制(高光佳絵*12
(内容紹介)
 アメリカが「多国間協調体制」である「四か国条約」「九か国条約」「ワシントン海軍軍縮条約」に参加しながらも「国際連盟には参加しなかった理由」が論じられる。
 その理由は
1)「四か国条約」「九か国条約」「ワシントン海軍軍縮条約」「国際連盟」について「国際協調主義」の立場から「全て参加すべきだ」とする立場(以下、Aグループと呼ぶ)がある一方で
2)「トランプ的な米国第一主義」の立場から「米国の主権が不当に制限される」として連盟参加に反対する一方で、「四か国条約」「九か国条約」「ワシントン海軍軍縮条約」を「日本の軍事大国化、中国侵略の脅威を排除し、米国の国益に資するもの」と見なし、これらへの参加は支持する立場(以下、Bグループと呼ぶ)があったからである。
 「連盟加盟に賛成」のAグループと「反対」のBグループの政治力は拮抗していたが故に連盟への参加は実現しなかった。一方で「国際協調主義(Aグループ)」、「日本封じ込め(Bグループ)」と「賛成理由は違う」ものの、Aグループ、Bグループとも「四か国条約」「九か国条約」「ワシントン海軍軍縮条約」には賛成したため、米国はこれらには参加した。


◆中国とワシントン体制(小池求*13
(内容紹介)
 中国の希望が全て叶ったわけではないものの、ワシントン会議において、中国が目標としていた

◆「中英友好の阻害要件」である日英同盟の失効(四か国条約締結による)
◆「日本の中国に対する特殊権益」を認めた石井・ランシング協定 - Wikipediaの破棄(九か国条約締結による)
山東懸案解決に関する条約 - Wikipediaによる『日本の山東省利権』の中国への返還

が実現した。
 これは中国にとって「大きな外交的勝利」といえる。ただし、九ヵ国条約は「中国へのさらなる侵略」を否定すると言う意味では、中国にとって利益であったが「現状容認(例えば、関税自主権の否定や治外法権といった不平等条約)にとどまる」と言う意味では不利益であった。その後、中国は「九ヵ国条約」参加国と個別に「不平等条約」の是正を交渉することとなる。
 また、ワシントン会議に参加したドイツが九ヵ国条約に結局参加しなかったことについて、
1)「中国の反対だけが理由ではない」ものの、中国がドイツの参加に反対したことが不参加理由として大きかったこと
2)中国が反対理由として「九ヵ国条約は、中国に利権を持つ国が対象であり、山東省利権を失ったドイツは参加資格がない」と主張したことが指摘されている。
 2)からは中国が「現状維持にとどまる」と言う点で九ヵ国条約を手放しで評価していたわけではないことがうかがえる。


◆ワシントン体制と植民地問題:経済開発とソビエトロシア、極東共和国を中心に(浅野豊美*14
(内容紹介)
 ワシントン会議に招かれた中国政府は「いわゆる北京政府 - Wikipedia」であり孫文の広東政府ではなかった。
 そんな孫文ソ連側は政治的に接近。「孫文ヨッフェ共同宣言」(1923年)を経て1924年に第一次国共合作が成立した。
 こうしたソ連の「侵略被害国」に対する政治的働きかけは中国にとどまるものではなく、「北朝鮮金日成」「ベトナムホーチミン」をあげることができる。
 なお、一方でソ連が「欧米列強や日本」をいたずらに敵視していたわけではなく「ある種の現実主義だったこと」に注意が必要である。
1)日本の反対などで挫折したがソ連は「極東共和国(建前上は独立国だがソ連の影響が強く後にソ連に吸収される)」をワシントン会議に出席させることを目指していたこと
極東共和国を通じて、ソ連と「欧米列強、日本との関係改善」を目指していたとみられる。
2)日本と極東共和国との外交交渉である大連会議(1921年)や長春会議(1922年)
がそうした「現実主義の例」としてあげることができる。

参考

大連会議 - Wikipedia
 1921年8月26日から1922年4月16日にかけて、大連で開催された日本と極東共和国(実質はソビエト連邦)との国交協議。1917年の十月革命によるボリシェヴィキ政権樹立によって関係が途絶していた日本とロシア(=ソビエト連邦)の間の初めての本格的な外交交渉となった。
 極東共和国は、日本軍の早期シベリア撤退とソビエト連邦を含めた国交樹立を目指したが、日本側は国交樹立には否定的で極東共和国とも通商関係に留め、更にシベリアからの撤兵には尼港事件の全面解決を必要とする立場を示した。
 尼港事件の全面解決を軍撤退の前提条件とする日本側と日本軍撤退を尼港事件に関する協議及び通商協議開始の前提条件とする極東共和国側との溝は埋まらず、1922年4月15日に日本側は交渉打ち切りを表明し、翌日会議は決裂した。

長春会議 - Wikipedia
 1922年9月4日から25日にかけて、長春*15で開催された日本と極東共和国(実質はソビエト連邦)との国交協議。
 日本がソビエト政権との交渉に入ったのは1921年8月から1922年4月まで行われた大連会議である(ただし、表向きはソビエト連邦が設置した緩衝国である極東共和国との通商交渉という形を取った)。だが、尼港事件に対する謝罪と賠償を求める日本側と北樺太をはじめとする日本軍占領地域からの撤退期日の明記を求める極東共和国側との溝は大きく、会議は失敗に終わった。ただし、決裂直後の4月24日に極東共和国ヤンソン外相から高橋内閣の内田康哉*16外相に交渉再開を求める書簡を送り、内田も5月13日に同様の希望を伝えた。また、ジェノバ会議でソビエト連邦と西欧諸国が経済協力について一定の合意をみたことも日本に交渉再開を迫る一因となった(ソビエト代表としてナリマン・ナリマノフらがジェノバ会議に参加した)。
 9月に入り、長春で新たな交渉が持たれ、日本側から北樺太からの日本軍の撤退は尼港事件の全面解決後に改めて協議することが提案された。これに対して極東共和国側からは極東共和国の外交合意はソビエト連邦憲法の批准手続が無ければ無効である(裏を返せばソビエト連邦を日本が承認しない限りは合意は無効である)という見解が出され、更に尼港事件の解決如何を問わずに北樺太からの撤退期日を示すように求められた。このため、話し合いは折り合いがつかず、1ヶ月も持たずに交渉は決裂に終わった。更に日本軍が一方的に北樺太以外の全域から撤退したことを受けて10月には極東共和国ソビエト連邦への統合が行われた。
 大連・長春両会談における日本側の立場は一貫して、ソビエト連邦の国家承認先送りを図るとともに、外交交渉によって極東共和国ソビエト政権から完全に切り離して同国から独自に極東ロシア地域の経済活動の自由と漁業利権などの経済権益の保障を確保することにあった。だが、ソ連側からすればロシア本土から日本軍が撤退し、西欧諸国との外交交渉が軌道に乗り始めた現状で日本との関係改善を急ぐ必要はなくなりつつあった。このため、日本側はその外交戦略の見直しを迫られ、交渉は振り出しに戻ることになった。

日ソ基本条約 - Wikipedia
 1925年(大正14年)1月20日に日本とソビエト連邦の間で締結された国交回復のための二国間条約。長春会議決裂と日本軍撤兵にともなって、ソ連は極東地区における緩衝国として維持していた極東共和国を廃止して併合し、1923年(大正12年)より日ソ国交正常化のための直接交渉に入る。1925年(大正14年)1月20日に至って北京で日ソ基本条約が締結された。
◆条約調印に至る日本側の背景
 冷却した日ソ関係が日本経済に大きな不利益を発生させていた。例えば、敦賀港・舞鶴港を通して沿海州と貿易を行っていた関西財界は輸送網を遮断されてしまい、オホーツク海で漁業を行っていた漁師らは、ソ連の沿岸住民らの妨害にさらされた。世論にはソ連との修好回復を望む声があらわれたので、日本も国交正常化に前向きとなっていった。


◆歴史の眼『多田富雄*17新作能「望恨歌」の上演運動について』(保立道久*18
(内容紹介)
 保立氏のブログ記事紹介で代替。また、保立道久編『能楽の源流を東アジアに問う:多田富雄「望恨歌」から世阿弥以前へ』(2021年、風響社)という著書もあるとのこと。
日本と韓国の神話と民俗 20200125保立道久|保立道久の研究雑記|note
『能楽の源流を東アジアに問う――多田富雄「望恨歌」から世阿弥以前へ』(風響社、12月25日、国立能楽堂での「望恨歌」上演の時までに刊行の予定、そこに書きました。|保立道久の研究雑記|note
「望恨歌」の物語るもの 百済歌謡「井邑詞」と能「井筒」 20211225国立能楽堂 保立道久|保立道久の研究雑記|note


◆歴史の眼『歴史認識で焦点化する軍艦島:産業遺産情報センターの展示を巡って』(新海智広)
(内容紹介)
 日本政府の「強制連行否定の詭弁」について新海論文では具体的な批判(例えば日本人炭鉱労働者が「差別はなかった」と証言しても、それは「虚偽発言」や「差別を差別と認識していなかっただけ」の可能性があるので、安易に信用できないなど)がされていますが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。

参考

「日本の軍艦島の歴史歪曲は、侵略戦争を認めることができないため」 : 政治•社会 : hankyoreh japan
 日本政府はなぜ(ボーガス注:違法、不当な朝鮮人強制連行という)軍艦島の真実を恐れるのか。第2次世界大戦時の強制動員被害者を支援する日本の市民団体「長崎の中国人強制連行裁判を支援する会」事務局長の新海智広さんは、「日本政府が約束を履行しない根本的な原因は、過去の『不法な』植民地支配やアジア諸国への侵略を認めることができないため」だと述べた。
 新海さんは日本の平和運動家であり、韓国や中国を行き来しながら第2次世界大戦強制動員被害者を支援してきた。民族問題研究所など韓国の平和団体とも緊密な交流を続けている。
◆インタビュアー
 産業遺産情報センターで強制動員の真実はどのように隠蔽されたのか。
◆新海氏
 朝鮮半島出身者が労働者だったという事実は認めるが、強制労働や差別はなかったというふうに歪曲している。

きょうの潮流 2021年7月29日(木)2021.7.29
 軍艦島をはじめとする世界文化遺産をめぐっても、日本政府はユネスコから「強い遺憾」を突きつけられています。朝鮮半島から徴用され、過酷な労働を強いられた人々についての説明が不十分だとして
▼負の側面も伝えると国際社会に約束しながら、光の部分だけを強調する。そんな口先だけの首相に未来へ引き継ぐ遺産を語る資格はありません。

社説:産業遺産で「遺憾」決議 負の面認め誠実な対応を | 毎日新聞2021.8.7
 世界文化遺産を巡る日本政府の対応に、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の委員会が「強い遺憾」を表明する決議を採択した。
 6年前に登録された「明治日本の産業革命遺産」だ。軍艦島として知られる長崎県端島(はしま)炭坑で戦時中に働かされた朝鮮半島出身の元徴用工に関する説明が、不十分だと批判された。
 日本政府は登録の際、「自らの意思に反して連れてこられ、厳しい環境下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいたこと」を説明すると約束していた。登録に難色を示した韓国政府の理解を得るためだった。
 遺産は、8県に散在する23の炭鉱や造船所、製鉄所などで構成される。全体像を紹介する産業遺産情報センターが昨年、東京都内に開設された。
 だが元徴用工に関しては、センターの資料室で関係法令や当時の行政文書を紹介する程度にとどまっている。
 今年6月にセンターを視察したユネスコの専門家は「強制的に働かされた人はいないと読める内容だ」と報告書で指摘した。
 ユネスコの委員会はこれまでも韓国との対話を促してきた。3回目となる今回の決議は、専門家の報告書に基づいて日本に対応を求めた。
 歴史に対して誠実であろうとするならば、負の側面も直視するのは当然だ。

軍艦島に続きまた…日本「朝鮮人強制労働」の佐渡鉱山の世界文化遺産登録を推進 | Joongang Ilbo | 中央日報2021.12.28
 日本の文化庁は28日、新潟県佐渡鉱山をユネスコ世界文化遺産への登録を目標とする国内候補に選定したと発表した。
 問題は太平洋戦争が本格化してからここが銅と鉄、亜鉛など戦争物資を生産する鉱山に変貌したことだ。当時日帝は不足した労働力を埋めるために朝鮮人労働者を佐渡鉱山に大挙動員した。記録によると佐渡鉱山で強制労働をした朝鮮人は1000人を超え、彼らは給料もまともにもらえなかった。
 日本は2015年に「明治日本の産業革命遺産」をユネスコ世界文化遺産に登録し当時の朝鮮人労働者の犠牲を意図的に隠蔽、縮小しユネスコの指摘を受けた状態だ。
 この遺産には朝鮮人5万7900人が強制動員された「軍艦島」(羽島炭鉱)、長崎造船所など7つの施設が含まれている。日本はユネスコ登録当時に強制労働犠牲者を賛える展示館などを別に作ると約束し、昨年東京に産業遺産情報センターを開館した。
 だがここでも韓国人に対する差別はなかったという証言動画など強制徴用の現実を歪曲する内容が展示されている。ここを視察したユネスコは7月に、日本が世界文化遺産に登録された時に約束した「犠牲者を賛えるための後続措置」をまともに履行していないという内容の決定文を採択したが、日本はまだ特別な措置を取らずにいる。

林外務大臣会見記録(令和4年1月7日(金曜日))
世界文化遺産(「佐渡の金山」の国内推薦候補選定)
新潟日報 横山記者】
 佐渡の金山が、先日、文化審議会から世界遺産の国内推薦候補に選ばれたことについてお伺いします。戦時中に、佐渡の金山で朝鮮人労働者が強制労働させられたとして、韓国政府から反発する声が上がっています。日本政府として、どのように対応されるのでしょうか。また、佐渡の金山での、戦時中の朝鮮人労働者の実態について、日本政府としてはどのように認識されているでしょうか。
【林外務大臣
 今、お尋ねのあった件については、文化審議会のほうで、いろいろと検討が進んでいる状況というふうに仄聞しておりますが、政府全体として、その後どうしていくのかということについては、今、検討中だというふうに承知をしております。


◆書評:黒川伊織*19『戦争・革命の東アジアと日本のコミュニスト:1920~1970年』(2020年、有志舎)(評者:福家崇洋*20
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

黒川伊織『戦争・革命の東アジアと日本のコミュニスト 1920-1970年』有志舎,2020年を読んで(川端望*21
 日本の共産主義運動と日本共産党の歴史を,中国,朝鮮半島,日本のコミュニスト社会運動家独立運動家の交流を軸として描いた研究だ。著者によれば新たな史実の発掘に努めたのではなく,すでに明らかな事実を統合して歴史の新たな語りを提示したということであるが,こちらの不勉強ゆえに初めて知ることも多かった。
 本書は,共産党のある組織論上の論点をめぐって展開されている。コミンテルン時代から1950年半ばまで,在外コミュニストは居住国の共産党に加入するという「一国一党の原則」がとられており,したがって在日朝鮮人や在日中国人が多数日本共産党に加入していたこと,逆に日本人が日本以外の共産党に加入していたことだ。この原則は米ソの平和共存論への転換,第三世界台頭の中での内政不干渉原則の浮上を背景に解消され,日本共産党は日本人のみによって構成される政党となり,議会進出を中心に合法活動による政権獲得をめざす路線に転換していく。
 これまで,コミンテルン日本共産党への指導と援助,あるいはその名の下での支配介入のことはまあまあ常識程度に知ってはいたが,朝鮮人や中国人のの日本共産党への加入のことは,本当に形式的にしか知らなかった。『日本共産党の60年』で,戦後直後の中央委員会の構成に金天海という名前を見つけ,はてこれは誰だろうと思ったことが最初だったと思う。その後,コミンテルン時代から1950年半ばまで,在外コミュニストは居住国の共産党に加入するという「一国一党の原則」により,在日朝鮮人が多数日本共産党に加入していたこと,府中刑務所から志賀義雄,徳田球一金天海を含む政治犯が釈放されたときに出迎えに来ていたのがほとんど在日朝鮮人であったことを知り,宮崎学『不逞者*22』で金の足跡を多少たどることができた。
 大韓民国臨時政府と日本の共産主義運動の人的交流などは,これまで全く知らないことだった。これらは,今この瞬間を含む後の時代になって見れば,「光」とされることも「影」とも,果ては「闇」とされることもあるだろう。しかし,記録されるべきであり,書き落としてはならないことであると思う。その意味で,本書は大変貴重なものだと思う。

 金天海については、最近は樋口雄一*23『金天海:在日朝鮮人社会運動家の生涯』(2014年、社会評論社)などで以前よりは知られるようになってきたとは思います。

シリーズ・結党100年の中国共産党と日本(2): 言葉で日中をつないだ中国知識人の留学体験 | nippon.com(黒川伊織)
 1959年に中国・商務印書館から刊行された『日漢辞典』は、中華人民共和国初の日本語―中国語辞典として、日中国交回復までに中国国内だけで50万部以上も売れた。日本や香港でも刊行されたこの辞典の編纂にあたったのは、日本留学経験をもつ北京外貿易学院・北京大学の中国人日本語教師たちであり、非常に高い日本語の素養を身につけた人びとだった。
 編纂の中心人物が、北京外貿易学院の日本語教師・陳濤(1900-1989)である。奉天で生まれた彼は1920年に日本に留学し、26年に帰国するまで同時代の日本の社会主義運動と中国の革命運動の懸け橋となった。陳の日本留学体験と帰国後の数奇な人生から、20世紀の日本と中国の知られざるつながりをたどってみよう。
 1925年は、陳の革命家としての人生を決定づける一年となった。春には、日本国内の国民党支部を統一して中国国民党駐日総支部を組織するとともに、中華留日学生総会の主席にも就任して、政治運動と留学生運動の両方を担うこととなった。この時期の陳にとって一生忘れられない経験となったのが、多摩川の河原でのピクニックである。1925年春のある土曜日の午後、高津正道ら日本人社会主義者朝鮮人留学生、そして陳ら中国人留学生が集い、「ブルジョア階級打倒」を「叫んだ」というこのピクニックは、長く陳の記憶に留まり続けた。
 大連での陳は、1908年に創刊された日本人経営の中国語新聞『泰東日報』に職を得た。副社長兼編集長の飯河道雄が退職すると、後任編集長として政治面を担当して、同紙を事実上「共産党の宣伝道具」として部数を順調に拡大させ、これまでの赤字を解消させた。『泰東日報』を拠点に大連での党組織設立を目指した陳は、31年2月に大連の日本領事館警察に逮捕され、3年間を裁判闘争に費やした。
 35年、冀東(きとう)防共自治政府(※1)の小学校教科書の印刷・発行権を得た飯河は、東方印書館の経営に乗り出した。福島県出身の飯河は、1906年東京高等師範学校を卒業して外国人教師として清に渡り、13年まで河南省で理科・数学・美術を教えた。その後満洲に移って、中国人向けの中等教育機関である南満中学堂・旅順二中で教鞭をとったのち、『泰東日報』に移ったようだ。教育者としての経験から教科書編纂に乗り出した飯河は旧知の陳に協力を求め、華北での中国共産党の活動の便宜を図ろうとした陳もこの機会を利用した。日本の傀儡(かいらい)政権下で中国共産党員の陳が担った教科書編纂事業は、共産党の地下活動の隠れみのにもなったのだ。
 冀東防共自治政府中華民国臨時政府に合流すると、陳らの教科書編纂事業も中華民国臨時政府のもとで行われることになり、陳は北平(北京)に移った。北平では、陳達民の変名で中華民国臨時政府教育部編審会副編纂に就任し、下中弥三郎*24が経営する新民印書館での教科書編纂事業に加わっている。下中が日本内地で経営していた平凡社は、1930年代前半に『大百科事典』全28巻の刊行で大成功を収めたものの、続く出版事業が失敗して35年には破産に追い込まれていた。
 1910年代には教師として働き、教職員の運動を組織化した経験をもつ下中は、安定した収入が見込める教科書出版に目をつけて新民印書館を設立したのだ。満洲事変以降国家社会主義に転じた下中は、排日教科書の駆逐による排日思想の根絶を目指してもいた。中国共産党員でありながら官吏として傀儡政権が掲げる「新民主義」教育に従事した陳は、北京大学への法学院設置を要求するなど、中国の高等教育の発展にも尽力した。
 42年、共産党員であることが密告されて国民党に逮捕された陳は、44年まで北平監獄で過ごすことになったが、獄中で『日華辞典』の草稿を著している。この草稿は失われたが、のちの『日漢辞典』への取り組みはすでに始まっていたのだ。
 1944年10月の釈放後は北平で地下活動に復帰し、日本の敗戦後に解放区へと脱出した陳は、48年に華北人民政府に参加し、49年の建国後は商業部外貿易部長を経て高級商業幹部学校委員に就任した。ただし、陳の党生活は紆余曲折を経た。50年6月に党籍が回復されるも、52年に始まった三反運動(※2)華北人民政府時代の活動を問題視されて党籍を剥奪されたのだ。
 54年に北京外貿易学院が開校すると同校での日本語教育にあたり、56年からは『日漢辞典』の編纂に献身した。41年に再婚した妻の張京先は日本人の母を持ち、38年に奈良女子高等師範学校を卒業している。彼女も北京外貿易学院で日本語を教え、のち北京大学に転じて長く日本語教育を担った。
 66年に文化大革命が始まると、日本留学経験のある中国知識人のほとんどが紅衛兵による激しい批判にさらされる。「紅衛兵は日本の憲兵よりたちが悪い」と語ったという陳は、73歳で下放先の河南省から北京への帰還を果たし、1982年に党籍も回復された。
 81年、55年ぶりの訪日を果たした陳が誰よりも再会を望んだのは、下中弥三郎高津正道だった*251921年4月24日の日本共産党暫定中央執行委員会の成立(事実上の日本共産党の創立)に立ち会い、共産党を離れた後も左派の立場を守り、戦後は日本社会党代議士として日中・日ソ国交回復国民会議にも関わった高津は、30年代に平凡社の『大百科事典』の編纂で糊口をしのぐ日々を送ったこともあって、下中とは縁が深かった。さらに高津の長女は平凡社に勤務し、長女の夫は日中貿易に携わってもいた。
 2021年、日本共産党中国共産党はともに創立100年を迎える。日本共産党の公式見解では共産党創立記念日は1922年7月15日とされているが、(ボーガス注:1921年4月24日の日本共産党暫定中央執行委員会の成立(事実上の日本共産党の創立)共産党創立と見なすべきであり)これは1932年に獄中で裁判闘争を闘う中で戦後初期の日本共産党書記長となる徳田球一が創り出した党創立記念「神話」でしかない。日本共産党は、高津のような社会党左派の立場をとる人びとにとっても思想的原点なのであり、紆余曲折を経た日中共産党の100年間には、両共産党の公式見解に局限されないさまざまな人びとが、互いに縁を結んだのであった。
(※1) 編集部注:1935年から39年まで、中国河北省に存在した政府。
(※2) 編集部注:官僚主義汚職・浪費の「三害」に反対する国民運動

 高津正道(1893~1974年)はシリーズ・結党100年の中国共産党と日本(2): 言葉で日中をつないだ中国知識人の留学体験 | nippon.com第一次共産党 (日本) - Wikipedia高津正道 - Wikipediaに書かれていますが、「1922年に結成された日本共産党(いわゆる第1次日本共産党)創立メンバー」の一人だが、その後、共産党を離れて、戦後は社会党左派の代議士として活動した人物です。いわゆる第一次共産党創立メンバーでは戦後は社会党左派(いわゆる労農派)として活動した人物としては、第一次共産党 (日本) - Wikipediaによれば、他に浅沼稲次郎(戦後、社会党書記長、委員長を歴任)、荒畑寒村山川均(戦後、社会主義協会代表)がいます。
 また、第一次共産党 (日本) - Wikipediaによれば第一次共産党創立メンバーで右翼転向したメンツとしては

赤松克麿 - Wikipedia
 1894~1955年。1922年(大正11年)には日本共産党(第一次共産党)に加わって中央委員に就任するも、検挙され獄中転向。それ以降は寧ろ社民右派の立ち位置を取る様になり、1926年(大正15年)に社会民衆党社民党)の結党に参加し、中央委員となった。1931年に勃発した満州事変を契機に社民右派から国家社会主義へ転向し、日本国家社会党に参加。また、陸軍統制派のクーデター計画である三月事件や十月事件にも関与。戦後は公職追放となるが、追放解除後の1953年(昭和28年)に日本産業協力連盟を設立、理事長として労務管理に携わる。
近藤栄蔵 - Wikipedia
 1883~1965年。1931年に勃発した満州事変を契機に国家社会主義へ転向し、大日本国家社会党に参加。第二次世界大戦後は公職追放を経て政治活動を完全に止め、1946年には全国戦災者同盟を、1953年には社会福祉法人「春陽会」をそれぞれ設立。亡くなるまで理事長を務めるなど、もっぱら社会福祉事業で活動した。
鍋山貞親 - Wikipedia
 1901~1979年。1933年、獄中で佐野学 - Wikipediaとともに転向声明「共同被告同志に告ぐる書」を出し右翼転向。1946年には塩路一郎(日産自動車労組委員長、自動車総連会長、同盟副会長など歴任)や宇佐美忠信(全繊同盟会長、同盟会長、連合副会長、日本会議代表委員など歴任)など、右派労働運動家が出入りする世界民主研究所を設立、その代表理事として反共運動を指導。1950年に結成された民主社会主義連盟では佐野と共に発起人、評議員に名を連ね、民社党、同盟のブレーンとしても活動した。

などがいます。
 是非はともかく、黒川氏が言うように「共産党」の「公式見解」において「浅沼や高津のようなメンツ(戦後は社会党に所属)」や「佐野や鍋山のようなメンツ(完全な極右)」が「第一次共産党創立メンバーであること」が「あまり語られないこと」は事実でしょう。
 第一次共産党メンバーについて言えば「社会党左派に転じた高津ら」「右翼転向した佐野ら」よりも「死ぬまで共産党員だった徳田球一や渡辺政之輔」の方が、日本共産党においては明らかに語られるわけです(徳田の場合、武装闘争路線への批判から極めて否定的な語られ方ですが)。

【参考:黒川伊織氏】

◆著書『帝国に抗する社会運動:第一次日本共産党の思想と運動』(2014年、有志舎)のアマゾン書評
朱徳
 第1次日本共産党の思想と、その後の広がりを示した初めての本格的研究書である。これまでは徳田球一の裁判証言に引きずられて、初期の不十分な運動であり、解党につながったという常識が広がっていたが、この本でこうした見方は一掃され、コミンテルンとの緊密な関係のもと、合法党建設を目指し、雑誌『改造』という合法的な大衆雑誌で一気に思想を広めた大変な運動であったことが明らかになった。当然にも32テーゼ以降の講座派対労農派から逆に前史をでっち上げるという、俗流化した、これまでの党史観に対する痛撃になっている。党史研究は現在の所、黒川伊織が群を抜いた研究成果をあげており、余人を寄せ付けていない。


◆書評:岩島史*26『つくられる〈農村女性〉:戦後日本の農村女性政策とエンパワーメントの物語』(2020年、有志舎)(評者:倉敷伸子*27
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
 なお、副題の「エンパワーメント」ですが「パワー=力」。「エンパワー=力をつける」。「エンパワーメント=力をつけること、能力開花」ですね。「エン」を頭につけることで「ホニャララする」と「名詞が動詞」になり、「メント」を後ろにつけることで「ホニャララすること」と「動詞が名詞」になる。
 「エンリッチメント=リッチにすること」「エンカレッジメント=勇気づけること」とかいろいろあります。

https://policy.doshisha.ac.jp/faculty/iwashima/info.html
 近年、過疎化・高齢化がさけばれる農山村において、明るい話題といえば農産物直売所や女性起業によるスモールビジネスの成功、そして「農業女子」です。これまで伝統的な家族制度の犠牲者と考えられてきた農村の女性が、起業や農業での成功によってスポットライトを浴びることは、戦後日本における「女性解放」のモデルの一つともされてきました。「女性解放」というと古い言葉のようですが、「女性の活躍」やエンパワーメントと言い換えれば、農村に限らず現在の日本社会における重要課題のひとつですし、グローバルな持続可能な開発においても必ずとりあげられる課題です。
 しかし、女性の活躍やエンパワーメントをゴールに設定し、成功例をとりあげたり課題の解決をはかるだけで本当に良いのか、「女性の活躍をめざす」こと自体を問い直す必要があるのではないか、と考えたことがこの研究を始めたきっかけです。もともとはグローバルな開発問題への関心から研究をスタートさせましたが、このような問いを明らかにするために、戦後日本の農村女性政策の歴史的経験を分析することにしました。特に、1950年〜60年代に農林省(当時)が主管していた生活改善普及事業や文部省(当時)が主管していた社会教育・婦人教育を分析対象に、農村女性をエンパワーメントしようとする諸政策が、ある特定の人々を政策対象として設定することで結果的に〈農村女性〉なる集団をつくりだしていくこと、その過程で政策側が想定しない農村女性の生き方・あり方、経験は、存在しないもののようにされていくことを研究してきました。このような「女性の活躍・エンパワーメント」の物語のなかでは、過去の評価だけでなく現在や将来の解釈も単線的なストーリーに限定されてしまいます。このような農村女性政策の批判的検討をもとに、現状の延長線上とは異なるところにオルタナティブな未来を構想することは農業・農村にとってのみならず、現在の社会全体にとっても重要なことだと考えています。

*1:第1次大隈内閣文相、第2次山本、加藤高明内閣逓信相などを経て首相

*2:戦前、田中内閣書記官長、犬飼、斎藤内閣文相を歴任。戦後、日本自由党総裁、日本民主党総裁、首相、自民党総裁を歴任

*3:第二次伊藤内閣書記官長、第三次伊藤内閣農商務相など歴任

*4:第三次伊藤内閣農商務相、第四次伊藤内閣司法相など歴任

*5:福井工業高等専門学校助教

*6:東京渡辺銀行鈴木商店の経営破綻などが起こった。詳しくは昭和金融恐慌 - Wikipedia参照

*7:1880~1971年。後に政界進出。戦前、岡田内閣鉄道相、東条内閣農商相を、戦後、吉田内閣農林相を歴任

*8:1858~1927年。第一次西園寺内閣で逓信

*9:1850~1942年。第二次松方、第二次山県、第一次桂内閣司法相、枢密院議長、首相など歴任

*10:1855~1930年。寺内内閣逓信相、台湾総督、第二次山本内閣農商務相など歴任

*11:1866~1924年。第三次桂、寺内内閣で農商務相

*12:千葉大学准教授。著書『アメリカと戦間期の東アジア』(2008年、青弓社

*13:亜細亜大学専任講師。著書『20世紀初頭の清朝とドイツ』(2015年、勁草書房

*14:早稲田大学教授。著書『帝国日本の植民地法制』(2008年、名古屋大学出版会)

*15:現在、吉林省省都

*16:第二次西園寺、原、高橋、加藤友三郎、斎藤内閣で外相。通算外相在職期間7年5か月は、現在に至るまで最長である(内田康哉 - Wikipedia参照)。

*17:1934~2010年。東京大学名誉教授。エッセイストとして知られ、『免疫の意味論』(1993年、青土社)で大佛次郎賞、『独酌余滴』(1999年、朝日新聞社→2006年、朝日文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞、『寡黙なる巨人』(2007年、集英社→2010年、集英社文庫)で小林秀雄賞を受賞。また新作能の作者として知られ、脳死の人を主題にした『無明の井』、朝鮮半島から強制連行された人を主題とした『望恨歌』、アインシュタイン相対性理論を主題とした『一石仙人』、広島の被爆を主題とした『原爆忌』といった作品がある(多田富雄 - Wikipedia参照)。

*18:東京大学名誉教授。著書『中世の愛と従属』(1986年、平凡社)、『平安王朝』(1996年、岩波新書)、 『物語の中世』(1998年、東京大学出版会→2013年、講談社学術文庫)、『中世の女の一生』(1999年、洋泉社)、『日本の歴史〈3〉平安時代』(1999年、岩波ジュニア新書)、『黄金国家:東アジアと平安日本』(2004年、青木書店)、『歴史学をみつめ直す:封建制概念の放棄』(2004年、校倉書房)、『義経の登場』(2004年、NHKブックス)、『かぐや姫と王権神話』(2010年、洋泉社新書y)、『歴史のなかの大地動乱:奈良・平安の地震天皇』(2012年、岩波新書)、『中世の国土高権と天皇武家』(2015年、校倉書房)など。個人サイト保立道久の研究雑記|note

*19:神戸大学協力研究員、大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)特別研究員。著書『帝国に抗する社会運動:第一次日本共産党の思想と運動』(2014年、有志舎)

*20:京都大学准教授。著書『戦間期日本の社会思想』(2010年、人文書院)、『日本ファシズム論争:大戦前夜の思想家たち』(2012年、河出ブックス)、『満川亀太郎』(2016年、ミネルヴァ書房日本評伝選)など

*21:東北大学教授。著書『東アジア鉄鋼業の構造とダイナミズム』(2005年、ミネルヴァ書房)など

*22:1999年、幻冬舎アウトロー文庫

*23:著書『戦時下朝鮮の農民生活誌:1939~1945』(1998年、社会評論社)、『日本の朝鮮・韓国人』(2002年、同成社)、『日本の植民地支配と朝鮮農民』(2010年、同成社)、『植民地支配下の朝鮮農民』(2020年、社会評論社)など

*24:1878~1961年。平凡社創業者。世界平和アピール七人委員会創立メンバー(下中弥三郎 - Wikipedia参照)

*25:ただし、下中は1961年に、高津は1974年に死去しているため、1981年の訪日では当然会えません。

*26:同志社大学助教

*27:四国学院大学教授

新刊紹介:「経済」2022年2月号

「経済」2月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
◆随想『財界のジョブ型雇用推進に思うこと』(金田豊
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。なおポイントは「財界の」という枕詞でしょう。
 「ジョブ型雇用」という概念の是非はともかく、少なくとも「財界」においてはそれは「さらなる労働力の低賃金化」を志向するとんでもない代物でしかありません。
赤旗
「限定正社員」って何だ?!/解雇しやすく低賃金/政府・規制改革会議の答申
経団連 相次ぐ構造改革提言


世界と日本
◆ドイツ新政権の発足(宮前忠夫*1
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」2021年12月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した『ドイツの総選挙』(宮前忠夫)の続きです。
 キリスト教民主同盟が下野し、社民党緑の党自民党の三党連立内閣が成立しました。
 内閣の主要メンバーは以下の通りです。

オーラフ・ショルツ内閣 - Wikipedia
◆首相
 オーラフ・ショルツ*2社民党党首
◆副首相(経済・気候保護担当相兼務)
 ロベルト・ハーベック「緑の党」共同代表
◆外相
 アンナレーナ・ベアボック「緑の党」共同代表
財務相
 クリスティアン・リントナー「自民党」党首

参考

独ショルツ新政権発足/3党連立 閣僚の半数が女性
 FDPのリントナー党首は財務相に就任。23年からの財政均衡を目指しており、SPD、緑の党が選挙中に掲げた社会的公正の実現に向けた分配政策や積極的な気候対策投資に「待った」をかける存在となり得るとの指摘もあります。連立協定では、SPDと緑の党が主張してきた富裕層への増税が盛り込まれておらず、FDPの主張が通った形です。


◆インド:歴史的な農民運動の勝利(西浦敏夫)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

モディ印首相、異例の謝罪 農民反発で改正法撤廃:時事ドットコム2021年11月27日
 インドのモディ首相が、「肝煎り」だった農作物の売買自由化につながる改正農業関連法について、撤廃する意向を表明し、異例の謝罪に追い込まれた。改正法に反対する農民のデモが長期化し、混乱を招いていた。2022年には農業が盛んな主要州の議会選が予定されており、影響を懸念し方針を転換したとみられている。
 モディ氏は今月19日、国民向けのテレビ演説で、昨年9月に施行された改正法の撤廃を表明。「私たちの努力に、農民を納得させられないような何らかの不備があったに違いない。国民に謝罪する」と述べた。
 モディ氏は2014年の首相就任後、高い支持率を背景に新自由主義的な経済政策を進めてきた。
 2019年の総選挙では与党インド人民党(BJP)を圧勝に導くなど国民の評価を得てきた。
 しかし、改正農業関連法をめぐっては、昨年11月ごろから、取引自由化に伴う大企業の買いたたきを懸念し、北部パンジャブ州の農民を中心とするデモが断続的に続いている。今年1月には首都ニューデリーで警官隊との大規模な衝突に発展。
 農業が盛んなパンジャブ州、人口2億人超の最大州ウッタルプラデシュ州では2022年に州議会選が実施予定。ともにBJPの苦戦が伝えられている。
 モディ政権は、1日当たり最大40万人超の新規感染者を出した今年3~5月の新型コロナウイルス感染「第2波」の対応をめぐり支持率が急落。ロイター通信は5月中旬、調査会社CVOTERの調査結果として、モディ氏の就任後初めて、政権に「不満」とする回答が「満足」を上回ったと報じた。改正法撤廃は、混乱でこれ以上支持を失いたくない政権の苦渋の決断と言えそうだ。


◆中国、「共同富裕」を提唱(平井潤一)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

共同富裕とは 中国、成長の裏で格差拡大: 日本経済新聞2021年9月3日
◆共同富裕
 貧富の格差を縮小して社会全体が豊かになるという中国共産党政権が掲げるスローガン。1953年に建国の父、毛沢東氏が提唱した。
 1978年から改革開放に着手した鄧小平氏が唱えた「先に豊かになれる者から豊かになりなさい」という先富論と対比されがちだが、鄧氏も共同富裕を最終目標に据えていた。

「共同富裕」を急ぐ習近平政権|日本総研
 「豊かになれるものを先に富ませる」という鄧小平氏先富論の後段には「豊かになったものが遅れたものを助ける」という文言が含まれる。共同富裕は、所得格差などの急速な経済発展によって生じた歪みを是正することで、社会の安定性と経済発展の持続性、ひいては、共産党に対する信認を高める試みといえよう。

中間層の拡大へ、分配強化打ち出す 習氏の「共同富裕」演説を公表:朝日新聞デジタル2021年10月17日
 中国共産党の理論誌「求是」は16日付の最新号で、共に豊かになる社会を目指す「共同富裕」に関する習近平(シーチンピン)国家主席の演説を掲載した。「共同富裕は社会主義の本質的要求であり、中国式現代化の特徴だ」としたうえで、中間所得層の拡大や税制改革に取り組むとしている。
 習氏は「共同富裕」の実現を目標に掲げるが、具体策が明らかになるのは初めて。「高すぎる所得を合理的に調整する」とし、所得税制度の改善を掲げた。累進課税強化が念頭にあるとみられる。中国では導入されていない固定資産税について「立法化に向けた改革を積極的に進める」とし、試験導入する考えを打ち出した。消費税の適用範囲拡大も触れたほか、「第3次配分」と位置づける寄付制度の充実へ公益慈善事業の税優遇も図るとした。

News Up 「共同富裕」って何なの?習近平政権のねらいは? | 中国 | NHKニュース2021.11.9

 「共同富裕」って何なの?

 ひと言で言うと、格差是正のことです。

 どうして今、「共同富裕」なの?

 背景には、中国の経済成長にともなう貧富の格差拡大があります。
 中国は「豊かになれるものから先に豊かになる」という「先富論(せんぷろん)」を掲げながら市場経済化を進め、世界2位の経済大国になりました。
 しかし、国が豊かになるとともに所得の格差も拡大し、スイスの金融大手「クレディ・スイス」は、去年(20年)の時点で中国の上位1%の富裕層が中国全体の資産の30.6%を保有しているとして、富裕層に富が集中していると指摘しています。
 李克強首相も去年5月「毎月の収入が1000人民元程度(日本円で1万7000円程度)の人がまだ6億人いる」と述べるなど、中国政府も収入が低い人が依然として多い実態を認めています。
 ちなみに先月(10月)、習近平指導部は日本の固定資産税にあたる「不動産税」を一部の都市で試験的に導入することを決定。
 ただ、反発も予想されるなど、全国的な導入にはまだ課題もありそうです。


◆急騰する原油価格(萩村武)
(内容紹介)
 Q&A形式(架空問答)で書いてみます。

 なぜ、価格が高騰しているのですか?

 「コロナによる需要減少」→「価格低迷」→「産油国の減産」→「コロナの終息傾向による需要増加」→「価格高騰」と言う流れです。
 「増産すればいい」と思われるでしょうが産油国は「今の価格高止まり」を歓迎するとともに「下手に増産」して「また価格低迷」になることを懸念して増産には動いていません。
 米国のシェールオイル開発については「環境破壊を招く」「脱炭素に逆行する」という民主党内環境重視派の批判もあって、バイデン政権は消極的です。
 なお、サブの理由としては「産油大国イランに対する米国の制裁」があります。


特集「2022年の日本経済をどう見るか」
◆座談会「待ったなしの政治・経済転換」(岡田知弘*3大沢真理*4、岡崎祐司*5
(内容紹介)
 それぞれ、「岡田氏(地域経済)」「大沢氏(ジェンダー平等:コロナ禍での女性非正規の雇い止め増加など)」「岡崎氏(福祉問題:コロナ禍で重要性が改めて再認識されている生活保護など)」と自らの専門分野を中心に論じていますが、詳細な紹介は省略します。
参考
岡田氏
コロナ禍2年目 地方自治をめぐる情勢と対抗軸(上) | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社)(月刊『住民と自治』 2021年11月号 )
コロナ禍2年目 地方自治をめぐる情勢と対抗軸(下) | 論文 | 自治体問題研究所(自治体研究社)(月刊『住民と自治』 2021年12月号 )


◆回復が遅れる日本経済(工藤昌宏*6
2020年代、日本資本主義の動向と課題(友寄英隆*7
(内容紹介)
 工藤論文、友寄論文ともにコロナの影響が日本経済に深刻なダメージを与えていることを指摘。コロナの早急な終息を目指すとともに、コロナによって被害を受けた産業への国の支援が必要としている。
 その一方で「国民負担増(消費税増税など)」「賃金の伸び悩み」によって「コロナ以前から日本経済が成長していなかったこと」を指摘。
 コロナ対応とは別途「国民負担の軽減」「賃金の上昇」の方向に国の施策や企業の経営方針が動くべきだとしている。


◆コロナ禍の下での企業業績の動向と特徴(小栗崇資*8
(内容紹介)
 コロナ禍において「国内市場がもっぱらである中小企業」に比べ、「海外輸出を主とする大企業」が受けた打撃が小さかったことを指摘。
 その結果「大企業の方針に影響される自民党の施策」が中小企業に対して冷たい物になっているとの批判がされている。


◆気候危機打開と再生可能エネルギー普及促進(和田武*9
(内容紹介)
 日本政府が脱炭素に後ろ向きなことを批判。
 一方で、共産党が提案した気候危機を打開する日本共産党の2030戦略│2021総選挙政策│日本共産党の政策│日本共産党中央委員会について「今後の議論のたたき台」として評価している。

参考
赤旗
気候危機打開 日本共産党が「2030戦略」/志位委員長が発表2021.9.2
主張/COP26岸田演説/脱炭素に逆行する姿勢は重大2021.11.5


◆コロナ財政から税財政民主主義再建への道程(梅原英治*10
(内容紹介)
 新刊紹介:「経済」2021年9月号(特集:中国と日本)(副題:浅井基文ブログ記事(中国関係)をこの機会に「多数」紹介する)(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した『財政民主主義の危機と再生の課題:コロナ財政の名のもとに財政規律を破壊』(梅原英治)の続編。前回は「巨額の予備費(菅政権)」が財政民主主義の観点から批判されたが今回は岸田内閣の予算が

命・暮らし守れ 焦眉の課題で提案/志位委員長の代表質問2021.12.10
 補正予算案には過去最大の軍事費7738億円が計上され、当初予算と合わせると軍事費は初めて6兆円を超え、今回は新規に導入する多額の正面装備も含まれていると指摘。そもそも補正予算案は財政法上、大規模災害への対応など「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要になった経費の支出」について作成するものだとして、「今回のような軍事費の計上は緊急を要するものではなく、財政法と財政民主主義に反する」と批判しました。
 岸田首相は、周辺国の安全保障の厳しさを理由に「特に必要な事業に要する経費を計上している」とし、財政法の趣旨に反してはいない、と強弁しました。

として同様の観点から批判されている。
 また、「会計検査院が十分機能してないという認識」から近年、

国のばらまき監視する独立機関 設置へ超党派議連が発足:朝日新聞デジタル2021年8月13日
 政府や政党から距離を置く中立的な立場から国の財政運営について提言する「独立財政機関(IFI)」をつくろうと、超党派の国会議員連盟が発足した。バラマキに走りがちな政府・与党にタガをはめる知恵の一つとして、多くの先進国が設けているが、日本にはまだないからだ。先進国で最悪と言われる国の財政状況を改善する一手になるのだろうか。
 議連の名前は「独立財政推計機関を考える超党派議員の会」。自民党林芳正*11・元文部科学相公明党の西田実仁・参院会長、立憲民主党逢坂誠二*12代表特命補佐らが共同代表発起人となり、6月に発足した。

として主張されている「独立財政機関(IFI)」について賛意を表明。「与党(自公)、最大野党(立民)」が参加する議連も発足した以上、早急に現実化すべきとしている。


新自由主義的税・財政の克服の模索(合田寛*13
(内容紹介)
 「新自由主義的税」として「消費税増税」「所得税法人税累進課税の緩和」を批判。むしろ「消費税減税」「累進課税の強化」が求められるとしている。


◆日米同盟の現段階と九条外交(小泉親司*14
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
「台湾有事」憲法9条生かした外交戦略こそ/小池書記局長、BSフジ番組に出演2021.8.7
敵基地攻撃能力「検討」表明/緊急事態で「共同計画」/日米2プラス2 南西諸島の共同基地化も2022.1.8
主張/日米2プラス2/軍事一辺倒は解決に逆行する2022.1.8


◆移民・難民問題から見た国際政治の課題(羽場久美子*15
 Q&A形式(架空問答)で書いてみます。

 ソ連、東欧の共産党体制崩壊によって多くの移民、難民が「旧ソ連、東欧」から西欧に移動したと思いますが?

 ご指摘の通りで当初、西欧は1)資本主義体制の共産体制への優位を示す物、2)東欧の安い労働力という観点からこれを歓迎しました。
 しかし、その結果「移民が失業を招いている」という右派の攻撃を助長することになります。
 「フランスのマリーヌ・ルペンやゼムール」「ハンガリーのオルバン右派政権」などはそのわかりやすい例でしょう。
 ゼムールですが

ルペン氏、決選進出に暗雲 新たな極右候補浮上―仏大統領選:時事ドットコム2021年10月03日
 来年のフランス大統領選でマクロン大統領(43)と共に決選投票に進むとみられている、極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏(53)の支持率が下落している。代わりに支持を集めているのは、ルペン氏よりもさらに極右的と評される無所属の政治評論家エリック・ゼムール氏(63)。ルペン氏より強力なマクロン氏の対抗馬になる可能性がある。
 ルペン氏は実父ジャンマリ氏(93)が土台を築いたRNの人種差別的なイメージ払拭(ふっしょく)に努め、ソフト路線に転向する「脱悪魔化」を進めてきた。今年4月の世論調査で、一時は若者の間でマクロン氏を上回る支持率を得たものの、6月に実施された広域地方自治体「地域圏」議会選でRNは惨敗した。専門家からは「軟化戦略は逆効果だった」と指摘する声が上がった。
 反イスラムで知られるゼムール氏は保守系フィガロ政治記者などを経て、テレビのコメンテーターや作家として知名度が高い。寛容な移民受け入れ政策に反対し、9月28日にはツイッターで「40年間移民を拒否してきた日本がモデルだ」と主張した。過去には人種差別的発言で物議を醸したこともある。
 経済誌シャランジュ(電子版)が9月28日に報じた世論調査によると、大統領選初回投票でマクロン氏に投票すると答えたのは約23%。ルペン氏は16%で、6月初旬の28%から大きく後退した。一方、6月上旬に出馬の意向を示唆したばかりのゼムール氏は今回急浮上し13%を獲得した。
 仏メディアは、ソフト路線への転向に失望したルペン氏支持者がゼムール氏支持に流れたと指摘している。ゼムール氏を「保守派の論客」として評価する右派の有力野党、共和党の一部支持者も取り込んでいると分析される。

という人物です。
 「ルペンのソフト路線」というのは「マヌーバー」にすぎませんが、その結果「ルペンより極右のゼムール」が注目を集めるというのは「日本での維新躍進」を連想させる「悩ましい事態」です。
 「一応、民主国のフランス」でこのような事態が生じていることには困惑を禁じ得ません。

 無知なもので「ルペン」は知っていましたが「ゼムール」については知らなかったので勉強になりました。
 しかし40年間移民を拒否してきた日本がモデルだですか。
 以前もアンネシュ・ベーリング・ブレイビク - Wikipediaが「移民政策を理由に麻生太郎をたたえていた」なんて報道がありましたし「欧州の排外主義極右にとって日本は理想郷」なんでしょうか。日本人として恥ずかしさを禁じ得ません。
 そうした意味では「ウイシュマさん死亡事件の徹底追及(当然、入管職員に対する刑事処罰もされるべきでしょう)」を改めて訴えたいところですね。あんな無法行為を放置していては「欧州の排外主義極右にとって日本は理想郷」という認識がさらに強化されてしまいます。
 なお、現在ホットな「難民問題」といえばやはり「シリア難民」だと思いますが。

 シリア難民については「トルコのエルドアン*16大統領やベラルーシのルカシェンコ大統領」が「難民ウエルカム」と呼び込んだあげく「西欧に送り込む(『送り込まれたくなければ、我々の要望に従え』と要求)」という「無茶苦茶な行為」まで発生しています。そうした「恫喝行為の先輩」はエルドアンであり「俺も同じ事をやってみよう」とルカシェンコが後に続いたとされます。
 「シリアの隣国」トルコはともかく、ベラルーシはシリアの隣国ではなく、その無茶苦茶さには呆れざるを得ません。
 とはいえ、「西欧各国」が「難民受け入れ」に「建前はともかく本音では消極的な点」をエルドアンやルカシェンコに利用された点は否定できません。
 「エルドアンらの無法」を批判した上での話ですが、「西欧各国が難民支援にもっと積極的」だったら、「エルドアンらの策略」はそもそも成立し得なかった。
 難民からすれば「エルドアンらの思惑」に関係なく「西欧に行けるのなら行きたい」ということでエルドアンらの行為「難民送り込み作戦」に乗るのは自然です。
 「西欧各国が難民支援に消極的な点」を考えれば私は「エルドアンらの行為に乗る難民」は勿論『エルドアンら』についても批判ばかりする気にはあまりなりません。『エルドアンらは難民を送り込むな、難民を恫喝の材料にするな(西欧各国)』は正論だとして、では『送り込み』がなくなればそれでいいのか。
 『送り込み作戦に乗っかるまでに追い詰められた難民』を誰がどう支援するのか。それ抜きで「送り込むな」では『シリア難民の見殺し』ではないのか。あえて言えば「送り込むな」ではなく「エルドアンやルカシェンコがどんな思惑だろうが難民に罪はない。全部引き受ける。だから連中の恫喝には屈しない(EU)」つう方向性だってあり得るわけです(勿論、現実問題として難しいでしょうが)。
 まあ「西欧と比べて全く難民を受け入れてない日本」の国民として「あまり偉そうなこともいえない」のですが。

 id:noharraが放言してる「脱北者を10万人受け入れれば北朝鮮崩壊!」つうのは寝言だと言うことを改めて実感しました(野原への嫌み)。しかし「エルドアンらのような汚いまねをやれ」とはさすがに言いませんが「コロナ問題」などで「米国に言うべきことも言わない安倍、菅、岸田ら自民党政権」には心底呆れますね。
 「やり方は『非人道的(難民を物扱い)』で明らかに間違っています」が「欧米相手に対決姿勢」のエルドアンらを「自民党も少しは見習え」とすら言いたくなります。
 今日は本当にありがとうございました。

【参考:ハンガリーのオルバン政権】

反LGBT法「一線越えた」 EU各国首脳、ハンガリー猛批判:時事ドットコム2021.6.27
 教材などで性的少数者(LGBT)に関する描写を禁じるハンガリーの新法が、欧州連合(EU)で猛批判にさらされている。人間の尊厳や平等などEUの基本理念に反すると深刻視され、24日の首脳会議では「一線を越えた」と各国から非難や怒りの声が噴出した。
 「ハンガリーはもうEUにいる資格はない」。
 オランダのルッテ首相はEU追放にまで言及。EU首脳会議でもオルバン首相に新法撤回かEU離脱を選択するよう迫った。

オルバーン・ヴィクトル - Wikipedia参照
EU加盟国の中でも移民・難民に対して最も強硬な政府指導者で知られ、「民族が混ざりすぎると問題が起こる」「移民は毒」と発言したこともある。移民・難民を貨物コンテナに収容する法案も成立させている。
・2014年に「国を成功させるのはおそらく民主主義ではない。(欧米から権威主義と批判される)シンガポール、中国、ロシアなどは(経済的?)成功者だからだ」と語り、国家による統制を重視している。
・公共事業の多くがオルバンに近い企業に発注され、発注金額の一部が与党への裏金になっていると報道されている。EUの下部組織である欧州不正対策局(OLAF)が不正を指摘したケースもあるが、検事総長が政府に任命されるハンガリー検察は捜査をほとんど行っていない。
補助金配分をめぐってEUに対して「EUが資金を出せないなら、中国に頼る」と発言しており、中国政府の人権弾圧や南シナ海での立場に抗議したEUの書簡や声明をギリシャとともに拒否もしている。

【参考:シリア難民とトルコ】

トルコ「批判するなら難民360万人送る」 EUに警告:朝日新聞デジタル2019年10月11日
 少数民族クルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)のシリア北部の支配地域に対し、越境攻撃に踏み切ったトルコのエルドアン大統領は10日、首都アンカラで演説し、攻撃停止を求める欧州連合(EU)を名指しして「我々の作戦を侵略と呼ぶなら、ドアを開けて360万人のシリア難民をあなたのところに送る」と警告した。
 トルコが9日にYPG攻撃を始めたことを受けて、EUの外務大臣にあたるモゲリーニ*17外交安全保障上級代表は同日、「EUはトルコの一方的な軍事行動の停止を求める」とする声明を発表。エルドアン氏の発言はこれに猛反発したものだ。
 トルコは世界で最も多くのシリア難民を受け入れており、欧州をめざすシリア難民の事実上の「防波堤」になっている。エルドアン氏はシリア難民を取引材料にして、EU側がトルコ軍のYPG攻撃を批判しないよう牽制(けんせい)する狙いだ。

欧州、シリア難民の流入阻止へ トルコと首脳会談: 日本経済新聞2020年3月10日
 EUのミシェル*18大統領とフォンデアライエン*19欧州委員長は、トルコのエルドアン大統領との会談で、双方が2016年にまとめた合意に基づき、難民の渡欧を抑えるよう求めた。ブリュッセルでの会談後の記者会見でフォンデアライエン氏は、トルコが合意を守るなら「約束を前に進める」と述べた。
 合意の一部である同国への60億ユーロ(約7千億円)の資金援助のうち、未払い分を支払う考えを表明した。トルコとの今後の協議で、EUは外相にあたるボレル*20外交安全保障上級代表が担当する見通しだ。
 エルドアン氏はEU首脳との会談に先立ち、北大西洋条約機構NATO)のストルテンベルグ*21事務総長と会った。会談後の共同記者会見でエルドアン氏は、トルコがシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)と戦って犠牲者を出しながら多数のシリア難民を受け入れている唯一のNATO加盟国だと強調して「全加盟国の具体的な支援を期待する」と述べた。

【参考:シリア難民とベラルーシ

ベラルーシ、難民放出でEUに報復 陸路リトアニアへ - 産経ニュース2021.7.9
 リトアニア(人口約270万人)に向けて中東などからの移民・難民を意図的に放出しているとして、EUがベラルーシを非難している。ベラルーシのルカシェンコ政権は5月、反体制派ジャーナリストの拘束を目的にアイルランド旅客機を強制着陸させ、EUから制裁を発動された。難民らを事実上の武器にしてEUに報復している形だ。
 ベラルーシから陸路でリトアニアに入る不法移民・難民は6月以降に急増。
 リトアニアのナウセーダ大統領は「故意に政治的道具として移民らを送っている」とルカシェンコ政権を非難。EUのミシェル大統領も「ベラルーシリトアニアを含むEUを試し、圧力をかける目的で不法移民を利用しているのは明白だ」と述べ、リトアニアを支援する意向を示した。
 リトアニア当局によれば、イラクやシリア、トルコといった国々からの移民・難民が目立つ。ベラルーシの「旅行会社」が首都ミンスクへの航空便を斡旋するなど、各国から移民・難民を意図的に呼び込んでいるという。

 まあ、「素人の思いつき」で書いていますが、例のリトアニアの「台湾接近」の背景の一つはこれでは無いか。
 ベラルーシは「ロシア・プーチン政権と近い関係」にあり「プーチン政権は中国・習近平政権と近い関係にある」わけです。
 ベラルーシに対抗するためには「ロシアと対抗する必要がある」→「ロシアと対抗するには中国と」→「台湾への接近」ではないか。

対ベラルーシ、EUが難民・移民問題で「包囲網」 高まる緊張:朝日新聞デジタル2021年11月16日
 欧州連合EU)は15日、ベラルーシが中東などから移民・難民を送り込んでいるとされる問題について、外相理事会で協議を始めた。ルカシェンコ政権への追加制裁だけでなく、移民・難民の出身国や経由地の政府も巻き込んだ「包囲網」を作る考えだ。ベラルーシは「国の安全が脅かされている」と反発しており、軍事的緊張も高まっている。
 ベラルーシポーランドの国境では8日に激しい衝突があった後も、集まった移民や難民と、越境を阻止しようとするポーランド治安部隊とのにらみ合いが鉄条網やフェンス越しに続いている。

「EU・ベラルーシ国境 移民・難民 新たな危機」(時論公論) | 時論公論 | 解説アーカイブス | NHK 解説委員室2021年11月29日 (月)
 EUは、ルカシェンコ政権が「意図的に移民や難民を集め」、EUに圧力をかけるため、「人間を道具として使用した」のではないかと批判しています。
ベラルーシでは、去年8月に行われた大統領選挙の不正疑惑をめぐって大規模な抗議行動が起き、ルカシェンコ大統領はEUをはじめ国際社会から厳しい批判を受けました。
・さらにことし5月には、ルカシェンコ政権が反体制派のジャーナリストの乗った航空機を強制着陸させて身柄を拘束し、「国家によるハイジャック」と非難され、EUから追加制裁を受けることになりました。
・EUは、ルカシェンコ政権がこうしたEUの制裁に対抗するため、移民たちを利用したのではないかと疑念を強めています。
【対立深まるEUとベラルーシ
ポーランドのモラウィエツキ*22首相は、ルカシェンコ政権の行為について、EUを不安定化させるための「国家によるテロだ」と非難しました。
・またEUのフォンデアライエン委員長も、「EUに対するハイブリッド攻撃だ」と非難しました。
・ハイブリッド攻撃というのは、2014年のウクライナ危機で、ロシアがクリミアを併合した際にとった作戦として注目された言葉です。
・軍による武力行使以外の手段を組み合わせた攻撃のことで、EUは今回ベラルーシが移民たちを使って嫌がらせを行い、そうした手段をとっていると非難しているわけです。
・これに対してルカシェンコ大統領は、「意図的ではない」と否定して見せたものの、移民たちの移動や越境を容認していることは隠していません。
・そのうえでEU側に人道的な見地から受け入れを求めています。
・またベラルーシの後ろ盾となってきたロシアのプーチン大統領は、「問題の原因は(ボーガス注:難民を受け入れない)欧米側にある。ベラルーシへの制裁は逆効果だ」としてベラルーシの立場を擁護する姿勢を示しました。
・EUは、ルカシェンコ大統領を人道問題でこれまで再三にわたって非難してきました。
・しかし今回は、そのルカシェンコ大統領から、移民や難民を受け入れないことが非人道的だと非難される皮肉な状況となっています。
・双方が“人道”を主張して相手を非難するなか、厳しい環境に置かれた移民たちが体調を崩し、さらに命が奪われかねない事態となっています。
【終わりに】
ベラルーシに渡ってきた移民や難民の人たちは、本国の財産を処分したり、厳しい道のりを乗り越えたりしてヨーロッパにたどりつこうとしてきました。
・EUとベラルーシ双方がともに人道を主張するのであれば、これ以上犠牲者が出ないよう、まずは人命と安全を第一に、協力して人道的な対応をとり、緊張を緩和していくべきでしょう。

 話が脱線しますけど、拉致被害者家族会には「エルドアンやルカシェンコのやってること」をどう思うか聞きたくなりますね。
 「拉致被害者を帰さない北朝鮮は酷い」て、確かにそうですけど、「エルドアンやルカシェンコのやってること」考えたら「北朝鮮のやってることは取り立てて酷くない」。まあ、北朝鮮を免罪したいわけではなくて「世の中、ろくでもない奴ばかりだ」つう話ですけど。
 で「北朝鮮拉致被害者を返せ」で帰ってくるならいいけど、そううまく行かないわけですからね。バーター取引しかねえだろと。
 「エルドアンやルカシェンコ」も、ぶっちゃけ「難民を政治的道具扱いしてEUを恫喝する」とは「やってることはクズ」だと思いますけど、どう見ても「やめろ」といって辞めるタマじゃないですからねえ。これも「EUがバーター取引で適当に片付けるしかないんだろうなあ」感はあります。トルコ(ベラルーシ)のエルドアン(ルカシェンコ)の反対派で政権崩壊とか起これば話は別ですけど。
 しかし360万人のシリア難民をあなたのところに送るには、中ソ対立をネタにしたスターリンジョークで

https://twitter.com/JosephStalinbot/status/1459221510573670400
 中ソ開戦!ソ連軍は初日だけで一千万人を捕虜にした。二日目にはなんと五千万人。
 翌日、中国から最後通牒を受け取った。
「投降せよ。さもなくば次は三億人の捕虜をおくりつけてやる」

つうのがあったのを思い出しました。

*1:著書『週労働35時間への挑戦:戦後ドイツ労働時間短縮のたたかい』(1992年、学習の友社)、『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)、『あなたは何時間働きますか?。:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)、『増補改訂版・企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2019年、本の泉社)

*2:メルケル内閣厚労相財務相を経て首相

*3:京都大学名誉教授。京都橘大学教授。自治体問題研究所理事長。著書『日本資本主義と農村開発』(1989年、法律文化社)、『一人ひとりが輝く地域再生』(2009年、新日本出版社)、『道州制で日本の未来はひらけるか(増補版)』(2010年、自治体研究社)、『震災からの地域再生』(2012年、新日本出版社)、『「自治体消滅」論を超えて』(2014年、自治体研究社)、『公共サービスの産業化と地方自治』(2019年、自治体研究社)、『地域づくりの経済学入門(増補改訂版)』(2020年、自治体研究社)など

*4:東京大学名誉教授。著書『イギリス社会政策史』(1986年、東京大学出版会)、『男女共同参画社会をつくる』(2002年、NHKブックス)、『現代日本の生活保障システム』(2007年、岩波書店)、『いまこそ考えたい生活保障のしくみ』(2010年、岩波ブックレット)、『生活保障のガバナンス』(2014年、有斐閣)、『企業中心社会を超えて』(2020年、岩波現代文庫)など

*5:仏教大学教授。著書『現代福祉社会論』(2005年、高菅出版)など

*6:東京工科大学名誉教授。著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文眞堂

*7:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎』(2010年、光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『アベノミクスの終焉、ピケティの反乱、マルクスの逆襲』(2015年、かもがわ出版)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『AIと資本主義:マルクス経済学ではこう考える』(2019年、本の泉社)、『コロナ・パンデミックと日本資本主義』(2020年、学習の友社)など

*8:駒澤大学名誉教授。著書『アメリ連結会計生成史論』(2002年、日本経済評論社)、『株式会社会計の基本構造』(2014年、中央経済社)など

*9:著書『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(2008年、世界思想社)、『脱原発再生可能エネルギー中心の社会へ』(2011年、あけび書房)、『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略』(2013年、かもがわ出版)、『再生可能エネルギー100%時代の到来』(2016年、あけび書房)など

*10:大阪経済大学名誉教授。著書『関西、その活力の源をさぐる:産業集積と起業家精神』(編著、2000年、法律文化社

*11:役職は8月当時。現在は岸田内閣外相

*12:役職は8月当時。現在は立憲民主党代表代行

*13:著書『大増税時代:消費税率二ケタ化へのシナリオ』(2004年、大月書店)、『格差社会と大増税』(2011年、学習の友社)、『タックスヘイブンに迫る』(2014年、新日本出版社)、『これでわかるタックスヘイブン』(2016年、合同出版)、『パナマ文書とオフショア・タックスヘイブン』(2016年、日本機関紙出版センター)、『パンデミックと財政の大転換』(2021年、新日本出版社

*14:日本共産党基地対策委員会責任者。著書『防衛問題の「常識」を斬る』(1987年、新日本ブックレット)、『核軍事同盟と自衛隊』(1988年、新日本新書)、『日米軍事同盟史研究』(2002年、新日本出版社)、『今日の「日米同盟」を問う』(2019年、学習の友社)

*15:青山学院大学教授。著書『ハンガリー革命史研究』(1989年、勁草書房)、『統合ヨーロッパの民族問題』(1994年、講談社現代新書)、『拡大するヨーロッパ 中欧の模索』(1998年、岩波書店)、『グローバリゼーションと欧州拡大』(2002年、御茶ノ水書房)、『グローバル時代のアジア地域統合』(2012年、岩波ブックレット)、『拡大ヨーロッパの挑戦(増補版)』(2014年、中公新書)、『ヨーロッパの分断と統合』(2016年、中央公論新社)など

*16:イスタンブル市長、首相を経て大統領

*17:イタリア外相、EU外交安全保障上級代表を歴任

*18:ベルギー首相などを経て現在、EU大統領

*19:ドイツ厚労相、国防相などを経て、現在、欧州委員長

*20:スペイン環境相、外相を経て、現在、EU外交安全保障上級代表

*21:ノルウェー首相などを経て現在、NATO事務総長

*22:財務相などを経て首相

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2022年1/14日分:荒木和博の巻)

◆荒木のツイート

荒木和博がリツイート
レブラくん(RBRA)予備役ブルーリボンの会
 政府・法務省制作の北朝鮮による拉致問題啓発ポスター。
 防衛省(陸海空自衛隊)も「絶対取り戻す!」のフレーズで戦闘機や輸送機や落下傘を背景に制作したら北朝鮮も少しは慌てて交渉してくるのではないか。

 こういうバカなことしかいえないのだから心底呆れます。


北朝鮮から脱出した人の話(R4.1.14): 荒木和博BLOG

 令和4年1月14日金曜日のショートメッセージ(Vol.650)。韓国人拉致被害者の中には北朝鮮から脱出して韓国に戻った人もいます。日本人の拉致被害者でもそれをすることはできないかと考えています。

 8分程度の動画です。呆れて二の句が継げません。
 というのも、この動画は、「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年12/7日分:荒木和博の巻) - bogus-simotukareのブログで批判した荒木動画

拉致被害者の北朝鮮脱出(R3.12.7): 荒木和博BLOG
 「拉致被害者北朝鮮を脱出することはできないのですか」という質問*1をときどき受けます。韓国人拉致被害者の中には脱出して韓国に戻った人もいます。

と「全く内容が同じ」だからです。「ほとんど内容が同じ動画」を1ヶ月後にまたやる。「バカか」としか言い様がない。

「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年12/7日分:荒木和博の巻) - bogus-simotukareのブログ
 6分51秒の動画です。タイトルと説明文で予想がつきますが、見る価値のない馬鹿馬鹿しい代物です。
 荒木ももはや「毎日動画を流すと言ったからメンツの維持のために何でも流そう」つうくだらない考えじゃないか。
 何が馬鹿馬鹿しいか。まず第一に拉致被害者帰国と何一つ関係ない。
 荒木ら巣くう会の目的は「拉致被害者が独力では帰れない」という前提の上での「拉致被害者救出」ではないのか。
 そこで「レアケースだけど、韓国人拉致被害者で自力脱出した例(例:映画監督の申相玉、女優の崔銀姫)があるから、日本人でもできるかもしれない」と言って何の意味があるのか?
 何の意味も無い。まさか、「スパイ大作戦夜逃げ屋本舗的な形で俺たち救う会拉致被害者の自力帰国を支援する」とでもいうのか?(「自衛隊北朝鮮に突っ込む」というのはもはや「自力帰国」とはいえないのでここでは考えません。荒木ら巣くう会だと「自衛隊を突っ込むこと」すら「自力帰国」と言いかねませんが)。
 そんなことができるわけがないでしょう。「そんなことが救う会にできるのなら、小泉訪朝から19年間も放置しないでその間にとっくにやってろ」つう話です。
 第二にそんなこと(日本人拉致被害者の自力帰国が可能かどうか)は荒木ではなく「5人の帰国拉致被害者」に聞くべきことでしょう(まあ、そもそもこの話、あまりにも非常識なので、そんな質問者はどこにもおらず、荒木のデマの疑いが濃厚ですが)。例えば「蓮池透氏や地村保志氏や曽我ひとみ氏」に「彼らの講演」後にでも聞いたらどうか。
 とはいえ、彼らも「一応答える」にしても、そんなことは「彼らに質問しなくても答えが予想できる」。
 彼らも「私が知る限り、そんなことはできないと思いますね。そんなことができるようなら私たちも小泉訪朝前に自分で帰国しました」というでしょう。さすがに「何でこの人はこんなバカな質問するんだろう」と呆れ顔になるんじゃないか。

という批判が今回も勿論該当します。
 大体、申相玉なんて明らかなレアケースでしょうよ。
 つうか「申相玉や映画大脱走 - Wikipediaのように、拉致被害者には何とか脱走(自主帰国)してほしい(荒木)」と言い出すなんて「お前、救出する展望がないと自白してるのと同じだろ、荒木。なめてるのか、手前!」て話です。
 まあ、映画においても「映画のモデルとなった実際の事件」においてもほとんどの米軍捕虜は「殺されたり、捕まったりして」脱走に成功したのはごくわずかだそうですが。

*1:あまりにも「非常識な質問」なので、勿論、そんな質問が本当にあるかは疑問です。 荒木和博も、朴正煕や全斗煥をそんなに高く評価するのなら、拓殖大学の紀要や極右雑誌でないまともな学術誌に彼らの時代制約もふくめて論じる論文でも投稿したらどうか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が批判する『友人である元工作員李氏』、『韓国のある大学教授』のような『いつもの荒木のデマ』かもしれません。

珍右翼・高世仁に突っ込む(2022年1/13日分)(副題:今日も高世&リベラル21に悪口する)

スウェーデン経済の強みに学ぶ - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 基本的に俺は高世については「悪口しか書かないつもり」「高世など絶対に褒めたくない」ので、「高世への悪口」が思いつかなかった入管長期収容 国提訴へ - 高世仁の「諸悪莫作」日記インド北東部への旅『いのち綾なす』 - 高世仁の「諸悪莫作」日記スウェーデン経済の強みに学ぶ2 - 高世仁の「諸悪莫作」日記についてはコメントしません。

 きのう髪をカットしにいった。美容師と雑談しているうち、彼がとんでもないことを言い出した。
「知ってます?。佐藤栄作*1からこれまでの歴代首相で、小渕さん以外はみんな『帰化人』だってこと。安倍さんの本名は李ですよ」
「あと、去年のオリンピックに出場した日本代表、ほとんどが在日なんですよ」
 はぁ??
 あまりに確信ありげに断言するので、どう返していいか困った。この美容師には20年前から通ってよく知った間柄なのだが、ここ数年、オカルトっぽい変なことを言うようになっていた。しかし、ここまで言うとは。
 さらに話を聞くと、どうやら「神真都Q(やまときゅー)」というグループに影響されているらしい。これはアメリカの「Qアノン」の日本支部で、9日、全国で反マスク、反ワクチンのデモをやっている。
「コロナってそもそも陰謀で、あんなのウソなんですよ」という彼。そういえば、私をカットしている間、ずっとマスクをしていない。

 ここまで悪口したからには高世も「もう二度と行かないつもり」でしょうか。
 確かに俺もこんな所には行きたくありませんが。
 それにしても「韓国、北朝鮮に好意的=帰化人」と言うとんでもない理解なのだとして日韓共同宣言の小渕首相が除外される理由が分かりません。
 まあ

◆佐藤首相
 日韓国交正常化
◆鈴木首相
 歴史教科書問題での宮沢官房長官談話
◆中曽根首相
 「韓国併合正当化発言」をした藤尾文相の更迭
◆海部首相
 韓国側の要望に応え、永住者に対する指紋押捺制度を廃止
◆宮沢首相
 河野官房長官談話(宮沢内閣)や宮沢官房長官談話(鈴木内閣)
◆村山首相
 村山談話アジア女性基金
小泉首相
 金正男の国外退去処分、日朝平壌宣言
菅直人首相
 菅首相談話日韓図書協定
野田首相
 日韓図書協定に基づく朝鮮王室儀軌の返還(例えば、赤旗朝鮮王朝儀軌など返還/日韓首脳会談 野田首相が大統領に参照)
◆安倍首相
 2018年平昌冬期五輪開会式への出席

で「韓国、北朝鮮に好意的=帰化人」と言うとんでもない理解なのだとして「他のメンツ(三木、福田赳夫、大平、竹下、宇野、細川、羽田、橋本、森、福田康夫、麻生、菅義偉、岸田)は何故帰化人理解なのか」も意味不明ですが。

 先日、経済の最先端でバリバリやっている若手経済人と話したときのこと。
アメリカに、打つのも投げるのも一流の日本人の野球選手がいるらしいんですよ。こないだ先輩に教えてもらったんですけど、オオタニっていう人らしいです」と言う。
 えっ?大谷翔平を知らなかったの?・・ほんとに?
 私も野球には全く興味ない人間なのだが、大谷はテレビニュースの冒頭に流れるし、新聞でも一面や社会面に出るので、自然に知識を得る。
 彼の場合は、情報収集はネットからだけだという。

 確かに「大谷を知らない」と言うのも信じがたい。ネットだって「大谷に触れた記事はいくらでもあります」からね。しかし、「俺的にもっと信じがたい」のは「ジャーナリストを事実上廃業した高世」が

経済の最先端でバリバリやっている若手経済人と話した

ということですね。「何でそんな人間と話す機会があるの?」ですね。
 そもそも高世が「その経済人の名前どころかどんな業種(例えば小売業、外食産業など)か、若手とは何歳くらいなのか、一体どんな役職なのか(創業者社長なのか、専務や常務と言った役職なのか)など、具体的なことは何も書かない」ので「本当かよ?」ですね。

 きのう、録画しておいた元日の番組「BS1スペシャル」【欲望の資本主義2022 成長と分配のジレンマを超えて】を見て、スウェーデンの社会運営にあらためて感嘆した。
 私は以前からスウェーデンモデルを高く評価していて、去年11月25日の「納税で持続可能な日本。」シンポジウムでは、スウェーデンの税金システムについて、非常に高い税金を国民が進んで払うのは、政府への強い信頼があるという事情を報告したのだった。
緑は命の青信号 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 スウェーデンをライフワークにしていたわけでもない高世がよくもまあ恥知らずにも「そんな報告」ができたもんです。
 「スウェーデン」でググれば

【刊行年順】
◆北岡孝義*2スウェーデンはなぜ強いのか:国家と企業の戦略を探る』(2010年、PHP新書)
◆三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(2013年、岩波ジュニア新書)
◆三瓶恵子『女も男も生きやすい国、スウェーデン』(2017年、岩波ジュニア新書)
◆井手英策*3『富山は日本のスウェーデン:変革する保守王国の謎を解く』(2018年、集英社新書)
 「富山(勿論、自民党王国)が日本のスウェーデン(つまり福祉が充実してると言うことなのでしょうが)かどうか」はひとまずおきます(『田中絹代監督』絶賛並みの与太ではないかと疑いますが。俺もこんな話は、今回が「初耳」です)。今や保守層ですら「岩波から本を出す井手氏のようなような穏健派」は「富山は日本のスウェーデンだ!」「スウェーデンのような福祉社会を日本に作るべきだ」と宣伝したがるというのは「なかなか面白い」と思い紹介しておきます。まあ一方で櫻井よしこ島田洋一のような極右はその種の「福祉の話」にまるきり興味が無いわけですが。井手氏のような「福祉に目配りするある程度まともな保守派の集まり」が自民党なら、正直「俺も自民党支持してもいい」のですが、「明らかにそうではない」ですからねえ(維新、国民民主が論外なのは当然として、最大野党・立民もその点は怪しい)。福祉重視なら正直「共産支持、この道しかない(アベノミクス風に)」と俺は思っています。

などの本がヒットするのでどうせ高世のスウェーデン知識はこうした本の受け売りでしょう。
 「受け売りの浅い知識で人前で偉そうにスウェーデンについて語る」つうんだから呆れます。
 さて「スウェーデン絶賛の高世」ですが、一方で赤旗は「アイスランドを絶賛」していました。

欧州政界 カラフル/アイスランド 女性議員47.6%に スウェーデン抜く2021.9.29
 北欧アイスランドで25日に行われた議会選挙で、女性議員が63議席*4中30議席を占めることが27日、分かりました。女性議員の割合は議会全体の47・6%となり、欧州最高の割合となりました。これまでのトップはスウェーデンの47%。
 列国議会同盟(IPU)の9月時点の統計によると、国会議員の半数を女性が占める欧州以外の国は、ルワンダ*5約61%、キューバ53%、ニカラグア51%、メキシコやアラブ首長国連邦(UAE)50%となっています。

きょうの潮流 2021年11月4日(木)2021.11.4
 北欧アイスランド。大学まですべての教育課程でジェンダー平等を教えることがすすめられ、女性の社会進出についての授業が毎日のように行われている高校も。テレビのニュースで紹介されていました
▼男女平等度をはかる指数で12年連続1位の国。賃金格差を違法とする法律を世界で初めて施行し、50人以上が働く企業の女性役員を4割以上とすることも義務づけています。父親の育休制度もいち早く導入し、その間の給与の8割は国から支給されます
▼首相も女性で9月の議会選挙では過半数には届かなかったものの63議席中、女性議員が30議席を占めました。

2022年 日本共産党はこうたたかう/NHK「党首に問う」 志位委員長の発言からアイスランド関係のみ紹介(2021.1.10)
 9日放送のNHK日曜討論「党首に問う」での日本共産党志位和夫委員長の発言は次の通りです。聞き手は伊藤雅之解説委員、井上あさひアナウンサーです。
◆井上
 通常国会にどう臨むのか、論戦の焦点についてどう考えますか。
◆志位
 先ほど、“やさしく強い経済”というふうに話したんですけれども、大いに具体化する論戦をやっていきたい。
 同時に、気候危機打開とジェンダー平等、この二つの問題で、私たちはかなりまとまった政策を出して、この間、訴えてきまして、とくに若い方を中心に反響が強いですね。この二つの問題もしっかり位置付けてやっていきたい。
 この二つの問題は、これをやることが、結果として、“やさしく強い経済”をより豊かにするということにもなると思うんですね。アイスランドジェンダー(平等)は世界一ですよね。それがやはり強い経済につながっているというふうにもいわれています。ですから、この問題をそういう角度でも重視して位置付けて論戦をやっていきたいと思っております。

ジェンダー平等実現 経済成長の原動力に/アイスランドに注目 報道続く/“やさしく強い経済”をより豊かに2022.1.11
 北欧の島国アイスランドジェンダー平等の実現が経済成長の原動力となっていることに注目する報道が続いています。日本共産党志位和夫委員長は9日のNHK「日曜討論」で、アイスランドの例をあげて、ジェンダー平等の実現への取り組みが「結果として“やさしく強い経済”をより豊かにする」と主張しました。
 日本経済新聞9日付は、シリーズ「成長の未来図」で「男女平等が生む活力」を見出しに、アイスランドの取り組みを特集しました。2009年に女性首相*6が誕生し、同年に「ジェンダーギャップ指数」で世界のトップになり、その後12年連続でトップを維持していることを紹介。同時に、「11年以降、新型コロナウイルス禍前までの実質国内総生産の成長率は平均で3・5%に高まった」と指摘しています。
 一方で、日本の現状と課題について「男女平等を成長の原動力とする国が目立つ中、日本は女性を生かす社会を描けていない。賃金格差、子育て、積極的な登用などの課題に本気で向き合わなければ成長へのきっかけはつかめない」と言います。
 NHK番組「クローズアップ現代+」(4日)は「社会を変える“一歩”」と題して、アイスランドを特集。父親の育児休暇取得率が8割を超え、国会議員の割合も男女同数に迫っていることや、「リーマン・ショック」で財政破綻寸前に追い込まれながら、性別を問わず仕事を失った人たちが再び学ぶことができるように後押しするなどしたことが多くの技術革新を生み、同国の経済再生を支えたことを紹介しました。

 でこういう話についての俺の考えは「使えそうなもんは何でも使えばいい」ですね。「アイスランドスウェーデン」の制度で学べる物、日本でも使える物があれば大いに学び、使えばいい。その一方で、何も「アイスランドスウェーデンに必要以上にこだわる必要は無い」わけです。どこの国の制度でも、いい物は何でも学び、使えばいい。
 なお

スウェーデン - Wikipedia
 国境なき記者団による世界報道自由度ランキングでもノルウェーフィンランドに次ぐ世界3位である(2020年)。『イギリス・レスター大学のエイドリアン・ホワイトによる世界幸福地図』では幸福度は世界178か国で第7位(2006年)。世界価値観調査での幸福度はアイスランドデンマークに次いで第3位(2005年)であった。世界経済フォーラムによる世界男女格差指数(ジェンダーギャップ指数:2021年)では第5位に評価されている。

ということでスウェーデンが比較的高評価されてることは確かです。
 まあ、それはともかく、志位氏ら共産党が近年、絶賛(?)のアイスランドは「社民主義」の立場とはいえ当然ながら共産国家ではありません。
 いい加減「日本共産党ソ連の仲間」みたいな理解は辞めてほしいもんです(勿論、そういう「イメージ戦略」の一環としての志位発言でもあります)。
 あと、こういう志位氏の「アイスランド高評価」は「志位氏個人の能力」というよりは勿論「党員研究者(例:渡辺治一橋大学名誉教授)」「党員ではないものの、共産党にある程度好意的な研究者(例:野党共闘を進める市民連合幹部の山口二郎・法政大学教授)」などからの情報でしょう(アイスランドへの注目は比較的最近らしく、スウェーデンと違い、ググっても、それらしい本が全くヒットしません)。つまり共産党も「それなりに新しい情報を仕入れて、常にバージョンアップを目指している」。当然ですがそういうバージョンアップなしで「1922年の結党」から今年まで100年間やっていくことなど出来るわけもない。
 まあ、「共産党を過大評価する気は無い」のですが、そういう意味ではリベラル21あたりの共産党への悪口には「お前らごときにそんなことを言われる筋合いはないわ」「お前らの方こそ知識をバージョンアップしてるのか」と言いたくなります。
【参考:日本でも知られる著名なスウェーデン出身者】

スウェーデン - Wikipedia参照
アルフレッド・ノーベル(1833~1896年)
 ノーベル賞設立者。ダイナマイトの発明者。
◆セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940年)
 ノーベル文学賞受賞者(1909年)。日本ではNHKでアニメ化された小説『ニルスのふしぎな旅』(邦訳は岩波少年文庫)の作者として知られる。
イングリッド・バーグマン(1915~1982年)
 映画『ガス燈』(1944年)、『追想』(1956年)でアカデミー主演女優賞を、映画『オリエント急行殺人事件』(1974年)でアカデミー助演女優賞を受賞
◆ヤン=オベ・ワルドナー(1965年生まれ)
 1992年バルセロナ五輪男子卓球シングルス金メダル、2000年シドニー五輪男子卓球シングルス銀メダル

【参考:日本では多分著名でないアイスランド出身者】

アイスランド - Wikipedia参照
◆ハルドル・キリヤン・ラクスネス(1902~1998年)
 ノーベル文学賞受賞者(1955年)。
◆ヴィグディス・フィンボガドゥティル(1930年生まれ)
 世界初の民選の女性大統領(1980~1996年:4期16年)。
◆フリドリック・トール・フリドリクソン(1954年生まれ)
 映画監督。1991年の『春にして君を想う』はアカデミー外国語映画賞にノミネートされた(なお、受賞は『エーゲ海の天使』のガブリエレ・サルヴァトレス)。その後もコンスタントに映画を撮っているが、日本公開作品は少ない。

*1:佐藤からカウントするのは「1965年の国交正常化時から」ということでしょうか。いわゆる「帰国運動の開始」が岸内閣であることで分かるように国交正常化以前も一定の交流はあるのですが。

*2:明治大学名誉教授。著書『アベノミクスの危険な罠:繰り返されるマネーの暴走』(2013年、PHP研究所)など

*3:慶應義塾大学教授。著書『日本財政』(2013年、岩波新書)、『18歳からの格差論』(2016年、東洋経済新報社)、『財政から読みとく日本社会』(2017年、岩波ジュニア新書)、『幸福の増税論:財政はだれのために』(2018年、岩波新書)、『いまこそ税と社会保障の話をしよう!』(2019年、東洋経済新報社)など

*4:アイスランドの総人口は「約35万人」なので国会議員数がこんなに少ないわけです。

*5:ルワンダの場合「例の虐殺で男性が大幅に減ったから」つう物騒な理由のようですが。

*6:カトリーン・ヤコブスドッティル - Wikipedia首相のこと